ふるさと納税ワンストップ特例制度とは?

ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付をすることで、寄付額から自己負担額2,000円を差し引いた金額が所得税や住民税から控除されるお得な制度です。

その中でも、多くの方が利用しているのが「ワンストップ特例制度」。これは、確定申告の手間を省き、より手軽に寄付金控除を受けられる画期的な仕組みです。

忙しい会社員の方や、確定申告に不慣れな方にとっては、まさに「ふるさと納税を始めるならまず知っておきたい」制度と言えるでしょう。

制度の概要とメリット

ふるさと納税のワンストップ特例制度は、確定申告をせずに寄付金控除を受けられる、非常に便利な制度です。

通常、ふるさと納税による寄付金控除を受けるためには、寄付金受領証明書などを添付して確定申告を行う必要があります。</しかし、ワンストップ特例制度を利用すれば、寄付先の自治体に所定の申請書を提出するだけで手続きが完了します。

この制度の最大のメリットは、その手軽さにあります。わざわざ税務署に行ったり、複雑な書類を作成したりする必要がないため、ふるさと納税へのハードルを大きく下げてくれます。

具体的な控除の仕組みとしては、寄付額から自己負担額2,000円を除いた金額が、翌年度の住民税から全額控除される形になります。これにより、実質2,000円の負担で地域の特産品などのお礼の品を受け取りつつ、税制上の優遇も享受できるのです。

特に、会社員など給与所得がメインで、普段確定申告をする機会がない方にとっては、この制度があるおかげでふるさと納税を気軽に始められると評判です。

寄付先の自治体も、ワンストップ特例制度の普及に力を入れており、申請書の同封やオンライン申請の導入など、利用しやすい環境が整えられています。これにより、初めてふるさと納税をする方でも安心して制度を利用できるようになっています。

確定申告との違いとどちらを選ぶべきか

ふるさと納税による寄付金控除を受ける方法は、大きく分けて「ワンストップ特例制度」と「確定申告」の2つがあります。両者には明確な違いがあり、ご自身の状況に応じて適切な方を選択することが重要です。

ワンストップ特例制度は、前述の通り、確定申告が不要な給与所得者が利用できる制度で、寄付金控除は翌年度の住民税からのみ行われます。

一方、確定申告を行う場合は、寄付金控除が所得税と住民税の両方から行われます。所得税からの控除分は、確定申告後に還付金として口座に振り込まれ、住民税からの控除分は翌年度の住民税から減額されます。

「どちらを選ぶべきか」という問いに対しては、まずはご自身の状況を確認することが大切です。以下のような場合は、ワンストップ特例制度は利用できず、確定申告が必須となります。

  • 年収が2,000万円を超える方
  • 給与所得以外の所得(副業所得、不動産所得など)があり、確定申告が必要な方
  • 医療費控除や住宅ローン控除(初年度)など、他の控除を受けるために確定申告をする方
  • 寄付先の自治体数が6団体以上になった方

これらの条件に当てはまらない、確定申告が不要な給与所得者であれば、ワンストップ特例制度の手軽さを享受できます。ただし、控除額の上限はどちらの制度を利用しても同じですので、ご安心ください。

もし、途中でワンストップ特例制度の申請をしていたとしても、確定申告を行った場合はその申請は自動的に無効となります。そのため、確定申告をする場合は、ふるさと納税で寄付した全ての自治体について、確定申告書に記載して申告する必要があります。

ご自身のライフスタイルや税制上の状況を考慮し、最も手間なく、確実に控除を受けられる方法を選びましょう。</

制度利用者の推移と人気の理由

ふるさと納税のワンストップ特例制度は、その利便性の高さから年々利用者が増加しており、今やふるさと納税を行う上で欠かせない選択肢となっています。

参考情報によると、制度がスタートした2015年(平成28年度課税)には42万人だった利用者数が、直近の令和6年度課税分では537万人にまで増加しています。これは、わずか数年で10倍以上に膨れ上がった驚異的な数字と言えるでしょう。

また、ふるさと納税制度利用者全体の過半数がワンストップ特例制度を利用しており、令和6年度課税分では、寄付額全体に占める割合も30%を超えています。過去の調査では、「ワンストップ特例制度」を利用した人が42.6%、「確定申告」を利用した人が38.7%と、ほぼ同程度の割合であった時期もありましたが、現在ではワンストップ特例制度の利用が主流になりつつあります。

この圧倒的な人気を支える理由は、やはりその「手軽さ」に尽きるでしょう。

  • 確定申告の知識がなくても大丈夫: 税制に関する専門知識がなくても、簡単な申請書を郵送するだけで控除が受けられる安心感があります。
  • 時間と労力の節約: 確定申告期間中の混雑や、書類作成にかかる時間を大幅に削減できます。特に、年末の忙しい時期に確定申告の準備をするのは大きな負担です。
  • 会社員にとって理想的な制度: 普段から会社で年末調整を受けている給与所得者にとって、追加で特別な手続きが不要になるワンストップ特例制度は、まさに理想的な選択肢です。

これらのメリットが広く認知されるようになり、多くの人がふるさと納税を始めるきっかけとしてワンストップ特例制度を活用しています。

自治体側も、寄付を増やすために制度の利用を積極的に推奨しており、申請書を返礼品と一緒に送付したり、オンライン申請システムを導入したりと、利用者の利便性向上に努めています。

今後も、この手軽で便利な制度の利用者は増え続けることが予想されます。

ワンストップ特例制度の利用上限額と条件

ふるさと納税のワンストップ特例制度は非常に便利ですが、誰もが利用できるわけではありません。利用するにはいくつかの条件があり、また、控除される金額には上限があります。

これらの条件や上限額を正しく理解しておくことが、制度を最大限に活用し、意図しない自己負担増を防ぐために非常に重要です。

ここでは、ワンストップ特例制度を利用するために必要な条件と、控除の上限額について詳しく解説します。

利用できる人の条件

ワンストップ特例制度を利用できるのは、以下の2つの条件を両方満たす方に限られます。

  1. 確定申告が不要な給与所得者であること
  2. 1年間(1月~12月)の寄付先が5自治体以内であること

最も重要なのは、「確定申告が不要な給与所得者であること」という条件です。

これは具体的に、会社員などで年末調整のみで税金の手続きが完結する方を指します。以下のような方は、この条件に当てはまらないため、ワンストップ特例制度を利用できません。

  • 年収2,000万円を超える方: 年末調整の対象外となり、確定申告が必須となるため。
  • 給与所得以外の所得がある方: 副業による所得、不動産所得、株式の譲渡所得などがあり、それらの合計が一定額を超える場合は確定申告が必要です。例えば、給与以外の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。
  • 医療費控除や住宅ローン控除(初年度)などを受けるために確定申告をする方: 確定申告を一度でも行うと、ワンストップ特例制度の申請は全て無効になります。これらの控除を受けたい場合は、ふるさと納税分も含めて確定申告をする必要があります。

したがって、普段から確定申告を行っている自営業者やフリーランスの方、あるいは給与所得者でも上記に該当する方は、ふるさと納税の控除を受けるためには確定申告を選択するしかありません。

ご自身の状況がこの条件に当てはまるか、事前にしっかりと確認することが、スムーズなふるさと納税を行うための第一歩となります。

寄付先の自治体数に関する条件

ワンストップ特例制度を利用するためのもう一つの重要な条件は、「1年間(1月~12月)の寄付先が5自治体以内であること」です。

この条件は「寄付回数」ではなく「寄付先の自治体の数」でカウントされます。つまり、同じ自治体に複数回寄付をした場合でも、その自治体は1団体としてカウントされます。

例えば、A市に3回、B町に1回、C村に1回寄付した場合、寄付回数は合計5回ですが、寄付先の自治体数は3団体(A市、B町、C村)となり、条件を満たします。

しかし、もしA市、B町、C村、D市、E町、F村と、合計6団体以上の自治体に寄付してしまった場合は、残念ながらワンストップ特例制度は利用できません。この場合、全ての寄付について確定申告を行う必要があります。

寄付先の自治体数が6団体以上になった場合、たとえ他の条件(確定申告不要な給与所得者であること)を満たしていても、ワンストップ特例制度の申請は無効になります。したがって、ふるさと納税をする際には、事前に寄付先の自治体数を計画的に管理することが大切です。

特に、年末に駆け込みで寄付をする場合などには、うっかり6団体以上の自治体に寄付してしまうこともあるため注意が必要です。複数の自治体に寄付を検討している場合は、事前にどの自治体に何回寄付をするか、メモなどで管理することをおすすめします。

もし、途中で寄付先の自治体数が6団体以上になってしまったと気づいた場合は、速やかに確定申告への切り替えを検討し、必要な書類(寄付金受領証明書)を準備するようにしましょう。

控除上限額の考え方と注意点

ふるさと納税で寄付した金額が全額控除される(自己負担2,000円を除く)のは、控除上限額の範囲内での寄付に限られます。

この控除上限額は、収入(所得)や家族構成、他の控除の適用状況などによって一人ひとり異なります。ワンストップ特例制度を利用する場合でも、確定申告をする場合でも、この控除上限額の考え方は同じです。

控除上限額を超えて寄付を行った場合、その超過分は自己負担となってしまいます。つまり、お礼の品を受け取れても、税金からの控除は行われないため、実質的な支出が増えてしまうことになります。

例えば、控除上限額が5万円の人が10万円寄付した場合、5万円分は控除対象となりますが、残りの5万円は自己負担となります(厳密には自己負担2,000円を差し引いた金額が控除される)。

したがって、ふるさと納税を行う際には、まずご自身の控除上限額を把握することが非常に重要です。</多くのふるさと納税サイトには、収入や家族構成などを入力することで控除上限額の目安を算出できるシミュレーターが用意されていますので、積極的に活用しましょう。

ただし、シミュレーターによる算出額はあくまで目安です。住宅ローン控除や医療費控除など、他の控除を利用する予定がある場合は、その分控除上限額が変動することがあります。</

特に、住宅ローン控除の適用を受けている場合は、ふるさと納税の控除上限額に影響が出やすい傾向があります。正確な上限額を知りたい場合は、税理士や税務署に相談するか、ご自身の源泉徴収票や確定申告書を参考に慎重に計算することをおすすめします。

控除上限額の範囲内で賢く寄付を行い、ふるさと納税のメリットを最大限に享受しましょう。

無職・年金受給者・学生でもワンストップ特例は使える?

ふるさと納税のワンストップ特例制度は、手軽さが魅力ですが、利用条件は「確定申告が不要な給与所得者」に限定されています。この条件に照らし合わせると、無職の方や年金受給者、学生の方など、働き方や収入状況が多様な人々が利用できるのか疑問に思うかもしれません。

ここでは、それぞれのケースにおけるワンストップ特例制度の利用可否と、もし利用できない場合の代替手段について詳しく解説します。

無職の場合の原則と例外

「無職」の方がふるさと納税のワンストップ特例制度を利用できるか、という問いに対しては、原則として利用できません

その理由は、ワンストップ特例制度の利用条件である「確定申告が不要な給与所得者」に該当しないためです。この制度は、主に会社員など、安定した給与収入があり、年末調整のみで税金の手続きが完結する方を想定しています。

無職の場合、多くは給与所得がない、あるいは極めて少ない状態であるため、そもそも住民税や所得税からの控除を受ける「税金」が存在しないか、控除の恩恵が薄いケースがほとんどです。

ただし、一概に「無職だから利用できない」と言い切れない例外も存在します。

  • 退職前の給与所得: 年の途中で退職し、その年に退職前の給与所得があった場合、その給与所得に対しては税金が発生しています。この場合、ワンストップ特例制度は利用できませんが、確定申告をすることで、退職までの給与所得を対象にふるさと納税の控除を受けることは可能です。
  • その他の所得: 無職であっても、過去の投資による配当所得や不動産所得など、給与以外の所得がある場合があります。これらの所得に対して税金が発生している場合は、確定申告を通じてふるさと納税の控除を受けることができます。ただし、ワンストップ特例制度は利用できません。
  • 失業保険(失業給付金)は控除対象外: 失業保険は非課税所得であるため、たとえ受給していても、これを根拠にふるさと納税の控除を受けることはできません。

結論として、無職の方がふるさと納税の控除を受けるためには、基本的に確定申告が必要となります。そして、控除の対象となるのは、税金が発生している所得(退職までの給与やその他の課税所得)がある場合に限られます。

所得がなく、税金を納めていない場合は、ふるさと納税をしても控除の恩恵を受けることはできませんのでご注意ください。

年金受給者の利用可否

年金受給者の方がふるさと納税のワンストップ特例制度を利用できるかについては、その方の所得状況によって異なります

まず、公的年金のみを受給しており、確定申告が不要な場合であれば、ワンストップ特例制度を利用できる可能性があります。公的年金には、年齢や年金額に応じて確定申告が不要となる基準が設けられています。例えば、65歳未満で年金収入が108万円以下、65歳以上で年金収入が158万円以下(その他の所得がない場合)であれば、原則として確定申告は不要です。

このようなケースでは、給与所得者と同様に、年金収入に対して課税される住民税からふるさと納税の控除を受けることができます。ただし、ここでも「寄付先の自治体数が5団体以内」という条件は適用されます。

しかし、以下のような場合は、ワンストップ特例制度は利用できず、確定申告が必要となります。

  • 公的年金以外の所得がある場合: 例えば、パート・アルバイト収入、不動産所得、個人年金や企業年金など、公的年金以外の所得があり、その合計額が一定額を超える場合は、確定申告が必要です。
  • 医療費控除や扶養控除など、他の控除を受けたい場合: これらの控除を適用するには確定申告が必要となるため、ふるさと納税分もまとめて確定申告を行うことになります。
  • 年金収入が確定申告が必要な基準を超える場合: 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円を超える場合や、400万円を超える公的年金収入がある場合など。

年金受給者の方でふるさと納税を検討している場合は、ご自身の年金収入額とその他の所得の有無、さらには確定申告が必要となる他の理由がないかを確認することが重要です。不明な点があれば、お住まいの地域の税務署や市区町村の窓口に相談することをおすすめします。

学生が利用する際のポイント

学生の方がふるさと納税のワンストップ特例制度を利用できるかについては、アルバイトなどの収入状況によって判断が分かれます

学生であっても、アルバイト収入があり、その収入が「確定申告が不要な給与所得者」の条件を満たしていれば、ワンストップ特例制度を利用することが可能です。

具体的には、アルバイト収入が年間で103万円を超え、所得税や住民税が発生している場合、そして、確定申告が必要となるほどの他の所得がない場合が該当します。この条件を満たし、寄付先の自治体数が5団体以内であれば、ワンストップ特例制度を利用してふるさと納税の控除を受けることができます。

しかし、学生ならではの注意点もいくつかあります。

  • 扶養控除との関係: 学生の多くは、親や保護者の扶養に入っている場合があります。ふるさと納税で控除を受けるということは、納税者自身が所得税や住民税を納めていることが前提です。もし、扶養されている学生の収入が少なく、親の扶養控除の対象となっている場合、学生自身がふるさと納税で控除を受けても、親の税負担軽減額に比べてメリットが少ない、あるいは親の扶養控除から外れてしまう可能性も考慮する必要があります。
  • そもそも控除メリットが小さい場合: アルバイト収入が少なく、所得税や住民税の発生額がごくわずかである場合、ふるさと納税の控除額も小さくなります。ふるさと納税の最低自己負担額は2,000円なので、実質的な控除メリットが2,000円を下回るようであれば、無理に制度を利用する意味は薄いかもしれません。
  • 収入が不安定な場合: 学生のアルバイト収入は、学業との両立から変動しやすいことがあります。正確な控除上限額を把握し、上限を超えないように注意が必要です。

学生の方がふるさと納税を検討する際は、ご自身の年間収入の見込み額、扶養状況、そして納税額をしっかりと把握することが重要です。もし不明な点があれば、ご家族や税務署に相談し、ご自身にとって最もメリットのある方法を選択するようにしましょう。

ワンストップ特例制度の申請方法と注意点

ふるさと納税のワンストップ特例制度は、手軽さが魅力ですが、そのメリットを最大限に享受するためには、正しい申請方法といくつかの注意点を理解しておくことが不可欠です。

申請書の提出期限や、提出後に住所変更などがあった場合の対応を怠ると、せっかくの控除が受けられなくなってしまう可能性もあります。

ここでは、ワンストップ特例制度の具体的な申請方法から、見落としがちな注意点までを詳しく解説します。

申請の具体的な流れと必要書類

ワンストップ特例制度の申請は、以下の具体的な流れで進みます。

  1. 寄付申し込み時に希望を伝える: ふるさと納税サイトで寄付を申し込む際、多くの場合「ワンストップ特例制度の申請を希望しますか?」という項目がありますので、ここで「希望する」を選択します。この選択により、寄付先の自治体から申請書が送付されることになります。
  2. 申請書の入手: 寄付先の自治体から「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」が郵送されてきます。通常は、寄付金受領証明書と返礼品とは別に送られてくるか、同封されている場合もあります。
  3. 必要事項の記入: 申請書に、氏名、住所、生年月日、マイナンバーなどの必要事項を記入します。記入漏れや誤りがないよう、丁寧に記入しましょう。
  4. 本人確認書類の準備: 申請書と合わせて、本人確認書類の提出が必要です。
    • マイナンバーカードをお持ちの場合: マイナンバーカードの表と裏のコピー
    • マイナンバーカードをお持ちでない場合:
      • マイナンバー通知カードのコピー、または住民票の写し(マイナンバー記載あり)のいずれか1点
      • 運転免許証やパスポートなどの顔写真付き身分証明書のコピー1点、または健康保険証や年金手帳などの顔写真なし身分証明書のコピー2点
  5. 申請書の提出: 記入済みの申請書と本人確認書類のコピーを、寄付先の自治体へ郵送します。最近では、自治体によってはオンラインでの申請も可能になっています。オンライン申請の場合、専用のアプリやウェブサイトを通じて、マイナンバーカードを読み取るなどの手続きで完結するため、郵送の手間が省けます。

申請書は、寄付を行った自治体ごとに提出が必要です。例えば、3つの自治体に寄付した場合は、それぞれに申請書と本人確認書類のコピーを送付することになります。

オンライン申請が可能な場合は、より手軽で迅速な手続きが期待できますので、各自治体の対応状況を確認してみることをお勧めします。

申請期限と提出漏れ・不備の対処法

ワンストップ特例制度を利用する上で、最も重要な注意点の一つが申請期限です。

申請書の提出期限は、寄付した年の翌年の1月10日必着と定められています。この期限を1日でも過ぎてしまうと、ワンストップ特例制度は適用されません。例えば、2023年中に寄付した分の申請書は、2024年の1月10日までに自治体に到着している必要があります。

年末に寄付をまとめて行った場合、申請書の準備や郵送に時間がかかることがありますので、余裕をもって手続きを進めることが重要です。特に年末年始は郵便局が混雑することもありますので、早めの投函を心がけましょう。

もし、申請書の提出を忘れてしまったり、記入漏れや必要書類の不備があったりして、期限までに適切な申請ができなかった場合は、確定申告に切り替えて控除を受ける必要があります。

提出期限を過ぎてから不備に気づいた場合も同様で、ワンストップ特例制度による控除は受けられません。その場合は、寄付金受領証明書を全て集め、確定申告の準備を進めることになります。

確定申告は、通常2月中旬から3月中旬までの期間に行われます。ワンストップ特例制度を利用できなかった場合でも、この期間に確定申告を行えば、ふるさと納税の控除を諦める必要はありません。

自治体によっては、申請書の受付状況をオンラインで確認できるサービスを提供しているところもあります。提出後、心配な場合はそういったサービスを利用したり、必要であれば自治体に問い合わせたりして、申請が正しく受理されたか確認しておくと安心です。

期限厳守を徹底し、万が一の際には確定申告にスムーズに切り替えられるよう、常に準備をしておくことが大切です。

申請後に住所変更などがあった場合の対応

ワンストップ特例制度の申請書を提出した後に、住所が変わったり、氏名が変更になったりする場合があります。このような申請内容に変更があった場合も、適切な手続きを行う必要があります。

寄付先の自治体に提出した申請書の情報は、控除を受けるための重要なデータとなります。住所変更などの情報が変わると、翌年度の住民税を控除する際に影響が出る可能性があるため、必ず自治体に変更を届け出る必要があります。

具体的な手続きとしては、「寄附金税額控除に係る申告特例事項変更届出書」を、変更があった寄付先の自治体へ提出します。

この変更届出書は、各自治体のウェブサイトからダウンロードできる場合が多いです。届出書に新しい情報(新しい住所など)を記入し、本人確認書類のコピーを添付して、寄付先の自治体へ郵送します。

変更届出書の提出期限も、寄付した年の翌年の1月10日必着となります。これは、ワンストップ特例制度の申請書と同じ期限です。例えば、2023年に寄付をして申請書を提出し、その後2023年中に住所が変わった場合は、2024年1月10日までに変更届出書を提出しなければなりません。

もし、変更届出書を提出し忘れてしまうと、新しい住所地の市区町村に情報が正しく伝わらず、せっかく申請したふるさと納税の控除が受けられないという事態になりかねません。

特に、年末に引越しを予定している場合などは、ふるさと納税の寄付時期と申請期限、そして住所変更の届け出が重なることになり、手続きが複雑になる可能性があります。計画的に手続きを進めるか、あるいは引越し後に新しい住所で寄付を行うことを検討するなど、注意が必要です。

住所変更などがあった場合は、速やかに各寄付先の自治体に変更届出書の提出状況を確認し、必要な手続きを漏れなく行うようにしましょう。

【ケース別】ワンストップ特例制度の疑問を解消

ふるさと納税のワンストップ特例制度は便利な反面、複数の自治体に寄付した場合や、確定申告の必要が生じた場合など、様々なケースで疑問が生じやすい制度でもあります。

「確定申告と併用できるのか?」「寄付先が6団体以上になったらどうすればいい?」といった疑問は、多くの方が抱く共通の不安でしょう。

ここでは、そうしたよくある疑問について、ケース別に詳しく解説し、安心してふるさと納税を利用できるようお手伝いします。

確定申告とワンストップ特例制度を併用したい場合

「ふるさと納税の一部はワンストップ特例制度で、残りは確定申告で処理したい」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら確定申告とワンストップ特例制度を併用することはできません。

このルールは非常に重要であり、多くの方が誤解しやすい点ですので注意が必要です。

もし、何らかの理由で確定申告を行うことになった場合(例えば、医療費控除を受ける、住宅ローン控除の初年度である、年収2,000万円を超えた、副業所得があるなど)、ワンストップ特例制度の申請は自動的に無効となります。

確定申告書を提出した時点で、その年の納税に関する全ての情報が税務署に集約され、税金の計算が確定されるため、ワンストップ特例制度による住民税控除の申請は上書きされる形になります。

したがって、確定申告をする場合は、ふるさと納税で寄付した全ての自治体(1月~12月に行った全ての寄付)について、確定申告書に記載して申告しなければなりません。一部の寄付だけ確定申告書に記載し、残りをワンストップ特例制度任せにする、という方法は認められません。

この場合、ワンストップ特例制度の申請書を提出していたとしても、その分も改めて確定申告書に記載する必要があります。確定申告をする際には、寄付金受領証明書が必須となりますので、全ての自治体から発行された寄付金受領証明書を大切に保管しておくようにしましょう。

このように、確定申告が必要になった時点で、ふるさと納税の控除は全て確定申告によって行われると理解しておくことが、二重申請や控除漏れを防ぐために非常に大切です。ご自身の確定申告の有無を明確にし、適切な手続きを選択してください。

寄付先の自治体数が6団体以上になったら?

ワンストップ特例制度の重要な条件の一つに、「1年間(1月~12月)の寄付先が5自治体以内であること」というものがあります。では、もし寄付先の自治体数が6団体以上になってしまった場合はどうなるのでしょうか。

結論から言うと、この場合、ワンストップ特例制度は利用できません。

たとえ他の条件(確定申告が不要な給与所得者であること)を満たしていても、寄付先の自治体数が6団体以上になった時点で、ワンストップ特例制度の申請は全て無効になります。これは、1つでも条件を外れると、制度全体が適用されなくなるという厳格なルールです。

この状況に陥ってしまった場合、ふるさと納税の控除を受けるためには、確定申告を行うしかありません。

確定申告では、寄付先の自治体数に制限はありません。したがって、6団体以上の自治体に寄付した場合でも、確定申告を行うことで全ての寄付に対して控除を受けることが可能です。

ただし、その際には、寄付した全ての自治体から発行された「寄付金受領証明書」が必要になります。これらの証明書を添付して、税務署に確定申告書を提出する準備を進めましょう。

特に年末に駆け込みでふるさと納税を行う際には、うっかり寄付先の自治体数が多くなってしまいがちです。ふるさと納税サイトで複数回寄付をする場合や、複数のサイトを利用して寄付をする場合は、寄付先の自治体数を常に意識し、メモなどで管理することをおすすめします。

もし、既にワンストップ特例制度の申請書を送ってしまっていたとしても、慌てる必要はありません。確定申告を行えば、その申請は無効になり、確定申告の内容が優先されます。重要なのは、控除を受けたい全ての寄付について、漏れなく確定申告を行うことです。

計画的な寄付を心がけ、万が一の場合でも確定申告にスムーズに切り替えられるよう、寄付金受領証明書の保管を徹底しましょう。

申請書を複数回送ってしまったらどうなる?

ワンストップ特例制度の申請書を、同じ寄付に対して複数回送ってしまった場合、「何か問題があるのではないか?」と不安に感じる方もいるかもしれません。

結論から言うと、基本的に大きな問題になることはありません。

自治体では、複数の申請書が届いた場合でも、最初に届いた有効な申請書を処理し、それ以降に届いた同じ内容の申請書は二重申請として扱われるか、あるいは破棄されることが一般的です。特にペナルティが課されたり、控除が受けられなくなったりする心配はほとんどありません。

しかし、複数回送ってしまうことで、自治体の事務負担を増やす可能性はあります。また、利用者側からすると、無駄な郵送費がかかってしまうことにもなります。

このような状況を避けるためには、以下のような点に注意すると良いでしょう。

  • 送付控えの確認: 申請書を送付する際、控えを写真に撮っておく、あるいは送付したことをメモしておくなどして、送付済みであることを確認できるようにしましょう。
  • 自治体からの連絡を待つ: 自治体によっては、申請書を受理した旨のメールや書面を送付してくれる場合があります。このような連絡が来たら、申請が正しく受け付けられたと判断できます。連絡がない場合でも、大半は問題なく処理されています。
  • オンライン申請の活用: オンライン申請が可能な自治体では、申請履歴がウェブ上で確認できることが多く、二重申請のリスクを減らすことができます。

万が一、複数回送付してしまったとしても、焦らず、自治体からの連絡を待つか、どうしても不安な場合は、該当の自治体に問い合わせて確認することも可能です。ただし、電話が混み合う時期もあるため、基本的には冷静に対応することが推奨されます。

重要なのは、有効な申請書が期限内に1度でも自治体に届いているかどうかですので、その点をまずは確認するようにしてください。