概要: 確定申告は、バイト収入、メルカリでの売上、家賃収入、投資など、様々な収入に対して必要になる場合があります。特に2年目以降は、前年の状況を踏まえて適切に対応することが重要です。この記事では、これらのケースごとの確定申告のやり方や注意点、いくらから申告が必要なのかを分かりやすく解説します。
バイト・副業:確定申告は必要?いくらから?
給与所得者の副業、年間20万円の壁
会社員やパート、アルバイトとして働きながら、副業で収入を得ている方は少なくありません。しかし、「確定申告って必要なの?」と疑問に思う方も多いでしょう。最も基本的なルールとして、給与所得者の方が副業で得た所得(収入から経費を差し引いた額)が年間20万円を超える場合、確定申告が義務付けられています。
この「20万円の壁」は非常に重要で、所得税の申告対象となるかどうかの大きな分かれ目となります。例えば、Webライターやデリバリー、ハンドメイド作品の販売などで収入を得ている場合、その収入から材料費や通信費、交通費などの経費を差し引いた金額が20万円を超えたら、翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告を行う必要があります。
この基準を知らずに申告を怠ってしまうと、後から税務署から指摘を受け、延滞税や無申告加算税といった追徴課税が発生するリスクがあります。たかが副業と甘く見ず、ご自身の所得状況をしっかりと把握しておくことが大切です。確定申告期間は原則として、所得が発生した年の翌年2月16日から3月15日までと決まっていますので、早めの準備を心がけましょう。
年末調整と確定申告、どちらを選ぶ?
「会社で年末調整をしているから、確定申告は関係ない」と思っていませんか?実は、年末調整はあくまで「主たる給与」に関する税金を精算する手続きであり、副業で得た所得は年末調整の対象外です。そのため、先述の年間20万円を超える副業所得がある場合は、別途確定申告が必要になります。
また、年末調整を受けていない方や、特定の控除(医療費控除、寄附金控除など)を受けたい場合は、副業所得が20万円以下であっても、確定申告をすることで税金が還付される可能性があります。これを「還付申告」といい、確定申告期間とは関係なく、翌年の1月1日から5年間提出が可能です。
例えば、年間10万円を超える医療費を支払った場合、医療費控除を適用することで納める税金が少なくなる場合があります。ご自身の状況に合わせて、年末調整で完結させるか、確定申告でさらに控除を受けるかを検討することが賢明です。正しい知識を持つことで、税金で損をすることを防ぎ、賢く節税につなげることができます。
複数からの給与所得、申告の落とし穴
「ダブルワークやトリプルワークで複数の会社から給与をもらっている」という方もいるかもしれません。この場合も、確定申告が必要になるケースがあります。具体的には、2ヶ所以上から給与を受け取っており、年末調整を受けていない給与と副業所得の合計が20万円を超える場合、確定申告が必要です。
例えば、昼間のアルバイトで年末調整を受け、夜のバイトでは年末調整を受けていない場合、夜のバイトの給与額と、もし他に副業で得た所得があればその合計額が20万円を超えると、確定申告の対象となります。複数の収入源がある場合、それぞれの収入を合算して税額を計算するため、一つ一つの収入が少なくても、合計すると申告義務が生じる可能性があるため注意が必要です。
全ての収入を正確に把握し、不明な点があれば税務署や税理士に相談することをおすすめします。これにより、申告漏れによる追加課税のリスクを未然に防ぐことができます。特に、給与明細をしっかり保管し、年間を通して自身の収入状況を把握しておくことが、スムーズな確定申告への第一歩です。
メルカリ・ラクマ等フリマアプリでの確定申告:やり方と注意点
「不用品」と「事業」の境界線
メルカリやラクマなどのフリマアプリは、もはや生活に欠かせないツールとなっていますが、「これって確定申告が必要なの?」と迷う人は少なくありません。ポイントは、販売が「生活用動産の売却(不用品処分)」なのか、「利益を目的とした継続的な販売(事業・副業)」なのかという点です。基本的に、個人が使用していた不要な家具や衣類などを売却して得た所得は、生活用動産の売却として非課税となります。
しかし、同じフリマアプリでの販売でも、転売目的で商品を仕入れて販売したり、ハンドメイド品を継続的に販売して利益を追求している場合は、「雑所得」または「事業所得」に該当し、課税対象となります。副業として行っている場合は年間所得20万円超で、本業として行っている場合は年間所得48万円超(基礎控除額分)で確定申告が必要です。
この境界線は曖昧に感じられるかもしれませんが、「利益を追求する目的で継続性・反復性があるか」が判断の基準となります。もし継続的な販売活動をしている自覚があるなら、税務署に相談するなどして、自身の活動がどちらに該当するかを確認することが重要です。適切な申告を怠ると、後々大きな問題になる可能性があります。
経費計上で節税!何をどこまで含める?
フリマアプリでの販売で利益が出た場合、売上から「経費」を差し引いた「所得」に対して税金がかかります。この経費をどこまで計上できるかを知っていると、賢く節税につながります。例えば、商品を購入した仕入れ代金はもちろんのこと、出品時の送料、梱包材費、フリマアプリの手数料(販売手数料)、銀行への振込手数料なども経費として計上可能です。
さらに、商品を撮影するための機材費用(カメラ、照明)、インターネット回線費用、場合によっては自宅の作業スペースにかかる家賃や光熱費の一部なども、事業に関連する支出であれば経費として認められることがあります。これらの経費を正確に記録し、領収書などを保管しておくことが重要です。
経費を漏れなく計上することで、課税対象となる所得を減らし、結果として納める税金を抑えることができます。日々の取引を記録する習慣をつけ、確定申告の際にスムーズに処理できるよう準備しましょう。特に、仕入れや販売にかかる手数料などは忘れがちなので、こまめな記録が節税の鍵となります。
30万円超えの商品、メルカリポイントも要注意
フリマアプリでの販売には、いくつかの注意点があります。まず、基本的に非課税となる生活用動産の売却であっても、1点30万円を超える高額な貴金属や宝石、書画、骨董品などを売却した場合は課税対象となります。これは、一般的に生活に必要ではない「ぜいたく品」とみなされるためです。もし高額な商品を売却する予定がある場合は、事前に税務署に確認することをおすすめします。
次に、メルカリの売上金をメルカリポイントに交換して利用している場合も注意が必要です。「売上金を現金化していないから関係ない」と思われがちですが、ポイントへの交換も、現金を受け取ったのと同様に「経済的利益」とみなされ、課税対象となる可能性があります。ポイントの利用履歴も、確定申告の際には収入として計上する必要があるかもしれません。
フリマアプリでの活動は手軽ですが、税金に関するルールは意外と複雑です。不用品の処分と割り切って利用しているつもりが、いつの間にか課税対象となる行為をしている可能性もゼロではありません。不明な点があれば、必ず税務署や税理士に相談し、適切な申告を行いましょう。
家賃収入・ライバー・夜職:意外と知らない確定申告の対象
夜職の確定申告:個人事業主として経費を計上
夜職、例えばホステスや風俗店従業員の方々の収入は、その働き方によって確定申告の扱いが異なります。多くの場合、お店と雇用契約を結ばず、歩合制で働いているケースが多いため、「個人事業主」として扱われます。この場合、年間の所得(収入から経費を差し引いた額)が48万円を超える場合に確定申告が必要です。48万円という数字は、基礎控除額に相当し、合計所得金額が2,400万円以下の納税者全員が受けられる控除です。
個人事業主として申告するメリットは、事業に必要な支出を経費として計上できる点にあります。例えば、お店までの交通費、仕事で着用する衣装代や美容院代、ネイル代、同伴のための飲食費、通信費なども、業務上必要と認められれば経費として計上可能です。また、家賃収入がある場合は不動産所得として、ライバーの収入は多くの場合、個人事業主として雑所得または事業所得として申告が必要になる可能性があります。
これらの経費をしっかりと記録・保管しておくことで、課税所得を減らし、節税につながります。特に領収書やレシートは紛失しないよう、日頃から整理整頓を心がけましょう。適切な経費計上は、税務調査の際にも自身の収入を正しく説明する上で重要な証拠となります。
副業としての夜職と住民税の申告
もし会社員として働きながら、副業として夜職に就いている場合、確定申告の基準は先述の通り、夜職からの所得が年間20万円を超えるかどうかで判断されます。20万円を超えれば、確定申告が必要です。
しかし、夜職からの所得が20万円以下で、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は必要となる点に注意が必要です。住民税は所得の金額に関わらず発生するため、所得税の確定申告をしない場合は、別途、お住まいの市区町村へ住民税の申告を行う必要があります。これを怠ると、後から住民税の追徴やペナルティを受ける可能性があります。
副業が本業の会社にバレたくない場合は、確定申告書の住民税に関する項目で「自分で納付(普通徴収)」を選択することで、副業分の住民税通知が自宅に直接届くようになり、会社に通知が行くことを防ぐことができます。これは重要な対策なので覚えておきましょう。住民税の申告も怠らず、適切な手続きを行うことが、予期せぬトラブルを避ける上で肝要です。
無申告のリスクと税務調査の実態
夜職は、現金でのやり取りが多く、申告漏れが多い業種の一つとして税務署に認識されています。そのため、税務調査の対象となるリスクが高いと言われています。無申告や過少申告が発覚した場合、非常に重いペナルティが課せられる可能性があります。
具体的には、期限内に申告・納付しなかった場合、無申告加算税、延滞税が課せられます。さらに悪質な隠蔽と判断された場合は、重加算税が課せられ、税額の最大40%が加算されることもあります。最悪の場合、脱税として刑事罰が科される可能性もゼロではありません。
税務署は、SNSやインターネット上の情報、銀行口座の取引履歴、お店の売上データなど、様々な情報源から個人の収入を把握しようとしています。安易な気持ちで申告を怠ることはせず、ご自身の収入状況を正直に申告することが、何よりも大切です。困ったときは、早めに税務署や税理士に相談し、適切な対応を取りましょう。
投資・有価証券・持株会:楽天証券などの賢い確定申告
特定口座(源泉徴収あり)なら原則不要
株式や投資信託など、有価証券の取引を行っている方も多いでしょう。楽天証券をはじめとする多くの証券会社では、「特定口座(源泉徴収あり)」という口座を開設することができます。この口座を選んだ場合、売却益や配当金などにかかる税金(所得税および住民税)は、証券会社が自動的に計算し、徴収して納税してくれるため、原則として確定申告は不要となります。
これは投資家にとって非常に便利な制度であり、税金に関する煩雑な手続きから解放されます。そのため、特に株式投資初心者の方や、手軽に取引を行いたい方には、特定口座(源泉徴収あり)の開設をおすすめします。
しかし、確定申告が不要だからといって、全く気にする必要がないわけではありません。年間を通じて取引が多かったり、複数の証券会社で取引を行っている場合は、後述する「損失の繰越控除」を利用することで節税できるケースもあります。ご自身の投資スタイルや口座の種類を把握し、確定申告の要否を判断することが重要です。
損失の繰越控除で賢く節税
投資の世界では、利益が出ることもあれば、損失が出てしまうこともあります。特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合でも、年間の取引で損失が出てしまった場合、確定申告をすることで、その損失を翌年以降3年間繰り越して、将来の利益と相殺できる「損失の繰越控除」という制度があります。
例えば、ある年に株式売却で50万円の損失が出たとします。その年は税金が発生しませんが、翌年に30万円の利益が出た場合、この繰り越した損失と相殺することで、翌年の30万円の利益に対しても課税されなくなります。さらに残りの20万円の損失は翌々年に繰り越すことができます。
この制度を利用するには、損失が出た年も確定申告を行う必要があります。たとえ税金が発生しなくても、将来の節税のために忘れずに手続きを行いましょう。複数の証券会社で取引している場合も、損益通算と合わせて活用することで、より大きな節税効果が期待できます。
確定申告が必要なケースと手続き
特定口座(源泉徴収なし)や一般口座で取引を行っている場合、年間で利益が出たら確定申告が必須です。これらの口座では、証券会社が税金を徴収してくれないため、投資家自身で利益額を計算し、税務署に申告・納税する必要があります。
また、複数の証券会社で特定口座(源泉徴収あり)を開設しており、一方では利益が出て、もう一方では損失が出ている場合、確定申告を行うことで、それぞれの口座の利益と損失を合算して税金を計算し直す「損益通算」が可能です。これにより、トータルで納める税金を減らせる可能性があります。
確定申告の準備としては、各証券会社から発行される年間取引報告書や支払通知書などを用意します。これらの書類をもとに、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」や会計ソフトを利用して申告書を作成し、期限内に税務署に提出しましょう。e-Tax(電子申告)を利用すれば、自宅からでも簡単に手続きを完了できます。
養育費・楽天ペイ・楽天ポイント:知っておきたい確定申告の豆知識
医療費控除とふるさと納税、賢い税金対策
確定申告は、税金を納めるだけでなく、納めすぎた税金を還付してもらうための制度でもあります。その代表的なものが「医療費控除」と「ふるさと納税」です。
医療費控除は、自分自身や家族が1年間(1月1日~12月31日)に支払った医療費が、総所得金額の5%または10万円のいずれか低い方を超える場合に適用され、所得控除を受けることができます。これは年末調整では対応できないため、必ず確定申告が必要です。病院の領収書や薬局のレシートは5年間大切に保管しておきましょう。
ふるさと納税も、寄附金控除を受けるためには原則として確定申告が必要です。ただし、「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用すれば、寄附先が5自治体以内の場合に限り、確定申告が不要になります。しかし、医療費控除など他の理由で確定申告をする場合は、ワンストップ特例制度の申請は無効になるため、ふるさと納税分も合わせて確定申告に含める必要があります。これらの制度を上手に活用することで、家計の負担を軽減できます。
楽天ポイント・楽天ペイの利用と課税の可能性
現代の生活に深く浸透しているポイントやキャッシュレス決済。楽天ポイントや楽天ペイを日常的に利用している方も多いでしょう。原則として、通常の買い物などで貯まるポイントは、値引きとして扱われるため非課税です。しかし、ポイントの獲得方法によっては課税対象となる場合があります。
例えば、特定のキャンペーンやアンケート回答で得たポイント、クレジットカードの入会特典で得た多額のポイントなどは、「一時所得」とみなされ、年間50万円を超える場合に課税対象となる可能性があります。また、メルカリの項目でも触れた通り、売上金を楽天ポイントなどに交換して利用した場合も、課税の対象となり得ます。
楽天ペイなどのキャッシュレス決済による収入も、事業所得や雑所得の対象となり得ます。例えば、個人事業主が楽天ペイで決済を受けた場合、その売上は当然、収入として計上する必要があります。ポイントやキャッシュレス決済に関する税金は複雑なため、疑問があれば税務署に確認することをおすすめします。
住民税の申告もお忘れなく!
確定申告は、主に所得税に関する手続きですが、確定申告を行うことで、住民税の申告も同時に行われたことになります。しかし、所得税の確定申告が不要なケースでも、住民税の申告は必要となる場合があります。
例えば、副業所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、その副業所得に対する住民税は発生します。この場合、税務署への確定申告は行わず、お住まいの市区町村へ別途「住民税の申告」を行う必要があります。これを怠ると、後から追徴課税の通知が届く可能性がありますので注意が必要です。
住民税は、所得に応じて地域社会の維持のために支払う税金であり、国民の義務です。確定申告書の提出義務がない方も、年の途中で退職した方や、給与所得以外の収入があった方は、ご自身の自治体に問い合わせて住民税の申告が必要か確認するようにしましょう。正しい知識を身につけ、安心して納税生活を送ることが大切です。
まとめ
よくある質問
Q: バイト収入で確定申告が必要になるのはいくらからですか?
A: 原則として、給与収入が年間2,000万円を超える場合や、2か所以上から給与を受けていて、主たる給与以外の給与収入とその他の所得の合計が20万円を超える場合に確定申告が必要です。ただし、源泉徴収されている場合は、確定申告をすることで還付を受けられることもあります。
Q: メルカリで売れた商品も確定申告は必要ですか?
A: 生活用動産(日常的に使用していたもの)の売却益は非課税ですが、事業として行っているとみなされた場合や、同一品目を継続して大量に販売している場合は課税対象となり、確定申告が必要になることがあります。具体的には、総収入額から経費を差し引いた所得が年間20万円を超える場合が目安です。
Q: 家賃収入やライバー収入も確定申告の対象になりますか?
A: はい、家賃収入やライバーからの収入は、事業所得または雑所得として計上され、一定の金額を超えると確定申告が必要になります。経費を差し引いた所得が年間20万円を超える場合が目安です。夜職からの収入も同様に、源泉徴収の有無や所得額によって確定申告が必要になります。
Q: 楽天証券でNISA以外での投資をしていますが、確定申告は必要ですか?
A: NISA口座以外での株式取引や投資信託などで利益が出た場合、総合課税の対象となることがあります。特定口座(源泉徴収あり)の場合は、証券会社が税金を源泉徴収してくれるため原則として確定申告は不要ですが、損益通算や繰越控除を利用したい場合は確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収なし)や一般口座の場合は、原則として確定申告が必要です。
Q: 養育費や楽天ペイ、楽天ポイントの利用は確定申告に影響しますか?
A: 養育費は原則として非課税のため、確定申告の対象外です。楽天ペイや楽天ポイントの利用も、通常の買い物で消費する場合は確定申告には影響しません。ただし、ポイントを現金化したり、事業での収入として受け取ったりした場合は、所得とみなされる可能性があります。