概要: 確定申告は、一定以上の所得がある場合に必要となります。会社員、副業、フリーランスなど、働き方によって申告が必要になる金額や条件が異なります。本記事では、それぞれのケースでいくらから確定申告が必要なのか、分かりやすく解説します。
【2024年最新】確定申告はいくらから?給与所得・副業・フリーランス別に徹底解説
毎年、税金の時期になると「確定申告」という言葉を耳にするものの、「自分には関係ない」「いくらから申告が必要なの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
特に、働き方が多様化している現在、会社員の方で副業をしているケースや、フリーランスとして独立した方など、確定申告の必要性が分からず不安に思うこともあるかもしれません。
この記事では、2024年(令和6年)の確定申告について、給与所得者、副業をしている方、フリーランス・個人事業主の方など、ケース別にいくらから申告が必要になるのかを徹底解説します。
確定申告の基本から、しないとどうなるかの注意点、困ったときの相談先まで詳しくご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
確定申告の基本:いくらから申告が必要になる?
確定申告とは何か?その目的
確定申告とは、個人が1年間(1月1日から12月31日まで)の所得と、それに対する所得税額を計算し、税務署に申告・納税する一連の手続きのことです。
日本は「申告納税制度」を採用しているため、納税者自身が所得を正確に計算し、国に報告する義務があります。
主な目的は、適切な所得税額を確定させて納めることですが、それだけではありません。
源泉徴収などで納めすぎた税金がある場合に、その差額を返してもらう「還付申告」の役割も持っています。
例えば、多額の医療費を支払った場合や、住宅ローンを組んだ初年度などは、還付申告によって税金が戻ってくる可能性があります。申告期間は毎年2月中旬から3月中旬ですが、還付申告は1月から提出可能です。
確定申告が必要な人の全体像
確定申告が必要となる人は、その働き方や所得の種類によって多岐にわたります。全ての人に関係のない制度だと考えるのは早計です。
まず、会社員でも給与収入が年間2,000万円を超える方や、2ヶ所以上から給与を受けており、年末調整を受けていない給与収入が20万円を超える方は確定申告が義務付けられています。
また、会社員以外では、副業による所得(収入から経費を引いたもの)が年間20万円を超える場合も、所得税の確定申告が必要です。
フリーランスや個人事業主は原則として確定申告が必要ですが、所得額によっては免除されるケースもあります。その他、年金収入が一定額を超える方、不動産収入がある方なども対象となる場合がありますので、ご自身の状況をしっかり確認することが大切です。
不明な点があれば、税務署の相談窓口や税理士などの専門家に問い合わせることをおすすめします。
基礎控除と申告不要の目安
所得税の計算において、多くの人が活用できるのが「基礎控除」です。これは、所得金額から一律に差し引かれる所得控除の一種で、課税所得を減らす効果があります。
2024年分の所得税においては、合計所得金額が2,400万円以下の場合、**48万円**の基礎控除が適用されます。
つまり、事業所得や副業所得など、所得の種類に関わらず、この基礎控除額48万円よりも所得が少なければ、課税所得がゼロとなり、所得税の確定申告は不要となるケースが多いです。
例えば、所得が40万円のフリーランスであれば、この基礎控除を適用することで所得税は発生しません。ただし、この基礎控除額は2025年(令和7年)分から変更され、合計所得金額2,350万円以下の場合、**58万円**に引き上げられる予定であるため、今後の税制改正にも注意が必要です。
以下の表で、所得額と基礎控除の目安を確認しましょう。
合計所得金額(2024年分) | 基礎控除額 | 確定申告の要否(所得税) |
---|---|---|
2,400万円以下 | 48万円 | 所得が48万円以下なら不要 |
2,400万円超 2,450万円以下 | 32万円 | 原則必要 |
2,450万円超 2,500万円以下 | 16万円 | 原則必要 |
2,500万円超 | 0円 | 原則必要 |
※上記は基礎控除のみを考慮した場合であり、他の控除や特例は考慮していません。
会社員・サラリーマンの確定申告:いくらから税金がかかる?
年末調整で完結するケース
ほとんどの会社員・サラリーマンの方にとって、所得税の手続きは勤務先が行う「年末調整」で完結します。年末調整とは、会社が従業員に支払った給与や賞与から天引きした所得税(源泉徴収税額)と、本来納めるべき所得税額を年末に精算する手続きです。
生命保険料控除や扶養控除など、一般的な所得控除は年末調整で適用されるため、別途確定申告をする必要はありません。これにより、従業員は煩雑な税務手続きから解放され、会社が代わりに税金の計算と納税を行ってくれるため、非常に効率的な制度と言えます。
したがって、給与所得のみで働いており、特別な控除を申請する予定がない会社員は、基本的に確定申告は不要です。自身の給与明細や源泉徴収票を確認し、年末調整が適切に行われているかを確認する習慣をつけましょう。
ただし、特定の条件に当てはまる場合は、会社員でも確定申告が必要になるため、次項で詳しく解説します。
会社員でも確定申告が必要なケース
普段は年末調整で完結する会社員でも、以下の特定の条件に当てはまる場合は確定申告が必要です。これらは年末調整の対象外となるため、個人で税務署に申告を行わなければなりません。
- 給与収入が年間2,000万円を超える場合:高額所得者向けの制度で、年末調整の対象外となります。
- 2ヶ所以上から給与を受けており、年末調整を受けていない方の給与収入が年間20万円を超える場合:例えば、本業の他にアルバイトをしているケースなどが該当します。
- 副業による所得(給与所得以外)が年間20万円を超える場合:アフィリエイト、クラウドソーシング、フリマアプリでの利益などが含まれます。
- 医療費控除、住宅ローン控除(初年度)、寄附金控除(ふるさと納税でワンストップ特例を使わない場合)など、特定の所得控除を適用したい場合:これらは年末調整では対応できないため、確定申告を行うことで税金の還付を受けられる可能性があります。
- 退職所得があり、確定申告が義務付けられている場合。
これらのいずれかに該当する場合は、ご自身の状況を正確に把握し、忘れずに確定申告を行いましょう。不明な点があれば、勤務先の人事・経理担当者や税務署に相談することをおすすめします。
還付申告で税金を取り戻すケース
確定申告は義務ではないけれど、行うことで納めすぎた税金が戻ってくる「還付申告」というものがあります。これは、本来納めるべき税額よりも多くの税金を源泉徴収などで納めていた場合に、その差額を返してもらうための手続きです。
還付申告ができる主なケースとしては、以下のようなものがあります。
- 多額の医療費を支払った場合の「医療費控除」:年間10万円(または所得の5%)を超える医療費を支払った場合に対象となります。家族の医療費も合算可能です。
- 住宅ローンを組んだ最初の年の「住宅借入金等特別控除」:住宅ローン控除は2年目以降は年末調整で対応できますが、初年度のみ確定申告が必要です。
- ふるさと納税をした場合の「寄附金控除」:ワンストップ特例制度を利用しない場合や、6団体以上の自治体に寄付した場合に確定申告が必要です。
- 年の途中で退職し、再就職せずに年末を迎えた場合:源泉徴収された税金が過払いになっている可能性があります。
- 災害や盗難などで損失を受けた場合の「雑損控除」。
これらの控除は年末調整では対応できないため、確定申告をすることで適用し、源泉徴収された所得税から還付を受けることができます。義務がなくても、こうした控除の適用を忘れてしまうと損をしてしまう可能性があるため、ご自身の状況に当てはまるか確認し、積極的に活用することをおすすめします。還付申告は、過去5年間に遡って申請することが可能です。
副業・フリーランス・個人事業主:いくらから申告が必要?
副業所得の申告基準と注意点
会社員として働きながら副業をしている場合、副業による所得の申告基準は明確に定められています。具体的には、給与所得以外の副業による所得(収入から経費を差し引いた金額)が、年間で**20万円以下**であれば、原則として所得税の確定申告は**不要**となります。
この「20万円以下なら不要」というルールは、アフィリエイト収入、ウェブライター報酬、フリマアプリでの利益、クラウドソーシングでの報酬など、さまざまな副業収入に適用されます。
しかし、この20万円という基準は所得税に関するものであり、住民税の申告は別途必要になる場合がありますので注意が必要です。住民税は所得の多寡に関わらず、お住まいの自治体への申告が必要となることがあります。
また、副業所得が20万円以下であっても、医療費控除や住宅ローン控除など、他の所得控除を適用したい場合は、確定申告をすることで税金の還付を受けられる可能性があります。確定申告不要=税金がかからない、ではないという点に注意しましょう。所得税がかからないだけで、住民税は発生する可能性があります。
フリーランス・個人事業主の申告基準
フリーランスや個人事業主の場合、事業による所得が主な収入源となるため、原則として確定申告が必要です。これは、会社員のように年末調整という制度がないため、ご自身で1年間の所得と税額を計算し、申告・納税する義務があるからです。
しかし、全てのフリーランスが必ずしも所得税の確定申告を義務付けられているわけではありません。具体的には、1年間の所得金額が**48万円以下**であれば、所得税の確定申告は不要となるケースが多いです。
これは、全ての納税者に適用される基礎控除(2024年分は48万円)を適用することで、課税所得がゼロになるためです。つまり、所得が基礎控除額を下回れば、所得税は発生しないため申告の必要がない、という考え方になります。
また、事業が赤字の場合も、所得税が発生しないため確定申告は必須ではありませんが、青色申告をしている場合は**赤字を翌年以降に繰り越す**といった特典を受けるために確定申告を行う必要があります。
ご自身の事業所得がどれくらいになるかを正確に把握し、必要に応じて税務署や専門家へ相談することが重要です。
住民税の申告忘れに注意
所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要となるケースがあることを忘れてはいけません。特に、副業による所得が20万円以下で所得税の確定申告をしなかった場合や、フリーランスで所得が48万円以下で確定申告をしなかった場合などが該当します。
住民税は、お住まいの市区町村が住民サービスを維持するために課税する地方税であり、その計算には所得情報が不可欠です。
所得税の確定申告をしない場合、税務署から市区町村へ所得情報が連携されないため、別途「住民税申告書」を提出する必要があります。
この申告を怠ると、**国民健康保険料や介護保険料の算定が不正確になったり、所得証明書が発行されず、ローン申請や保育園の入園申請などに支障が出る**恐れがあります。
例えば、所得が少ないことで受けられる保険料の軽減措置が適用されなくなったり、ローン審査に必要な所得証明書が発行されなかったりする可能性があるため、所得税の申告が不要でも、住民税の申告は必ず行うようにしましょう。
確定申告をしないとどうなる?ペナルティと注意点
無申告加算税と延滞税
確定申告が必要な人が期限までに申告をしなかった場合、または期限後に申告した場合、本来納めるべき税金に加えて**ペナルティ(加算税)**が課されます。最も一般的なのが「無申告加算税」です。
これは、税務署からの指摘で申告した場合は、納付すべき税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%が上乗せされます。しかし、期限後であっても、税務署の調査を受ける前に自主的に申告すれば、無申告加算税は5%に軽減されます。早めの対応が肝心です。
また、納税が遅れた場合は、納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて「延滞税」が発生します。延滞税は、金融機関の延滞利息と同じように日割りで計算され、滞納期間が長くなるほど負担が大きくなります。これらの加算税や延滞税は、本来納めるべき税金に上乗せされるため、納税額が大きく膨らんでしまう可能性があります。期限内の正確な申告・納税を強く意識しましょう。
税務調査のリスクと影響
確定申告を怠ったり、内容に不備があったりすると、税務調査の対象となるリスクが高まります。税務調査とは、税務署が納税者の帳簿や書類などを確認し、申告内容が適切であるかを確認するものです。近年では、副業収入や個人事業主への税務調査が強化される傾向にあります。
調査の結果、申告漏れや不正が発覚した場合、過去数年間に遡って追徴課税されることがあります。この際には、先述の無申告加算税や延滞税に加えて、場合によってはより重い「過少申告加算税」や「重加算税」が課される可能性もあります。特に、意図的な脱税と判断された場合は、刑事罰の対象となることもあります。
税務調査は精神的な負担も大きく、事業活動に支障をきたす可能性もあるため、日頃から収入や経費の記録を正確に残し、期限内の正しい申告を心がけることが非常に重要です。正確な記帳と申告が、最も確実なリスク回避策となります。
住民税への影響と所得証明の重要性
所得税の確定申告をしない場合、税務署から市区町村へ所得情報が連携されないため、住民税の計算に大きな影響が出ます。住民税の申告も怠ると、市区町村はあなたの正確な所得を把握できず、住民税が適正に計算されません。
これにより、国民健康保険料や介護保険料の算定が不正確になったり、本来受けられるはずの軽減措置が適用されなくなったりする可能性があります。結果として、必要以上に高い保険料を支払うことになりかねません。
さらに、正確な所得情報がないと、所得証明書や課税証明書といった重要な公的書類が発行されなくなります。これらの書類は、住宅ローンや自動車ローンの申請、賃貸契約、子どもの保育園・幼稚園の入園申請、奨学金の申請など、日常生活の様々な場面で必要となるため、取得できないと大きな支障が生じます。
確定申告が不要な場合でも、必ず住民税の申告は行うようにしましょう。住民税申告の有無は、あなたの社会生活に大きく影響することを忘れてはいけません。
迷ったら専門家へ相談:税理士に依頼するメリット
税理士ができることと依頼のメリット
税理士は、税金に関する専門家として、確定申告の準備から提出までを全面的にサポートしてくれる心強い味方です。複雑な税法の解釈や、収入・経費の仕訳、帳簿作成、各種控除の適用判断など、個人では難しい作業を正確に行ってくれます。
税理士に依頼する最大のメリットは、税務に関する不安や手間から解放され、本業やプライベートに集中できることです。特に、事業が成長し取引が増えたり、副業の種類が増えたりすると、税務処理はより複雑になり、時間も労力もかかります。
また、税理士は最新の税法改正にも精通しており、合法的な範囲で税負担を軽減するための節税対策に関するアドバイスも期待できます。万が一、税務調査が入った際も、税理士が納税者の代理として対応してくれるため、安心して手続きを進めることができます。これにより、時間的コストだけでなく、精神的な負担も大幅に軽減されるでしょう。
税理士に相談するタイミングと選び方
税理士に相談するタイミングは、確定申告の直前だけでなく、事業を始めたばかりの頃や、所得が増えて税金について不安を感じ始めた時など、早めがおすすめです。特に、副業が本格化してきた、フリーランスとして独立した、あるいは多額の医療費がかかったなど、例年と異なる状況になった際は、積極的に相談を検討しましょう。
税理士を選ぶ際には、以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 専門分野:個人の確定申告や副業に強いか、特定の業界(IT、クリエイティブなど)に詳しいかを確認します。
- 料金体系:顧問料、申告代行費用などが明確で、予算に合った料金体系であるかを確認します。
- コミュニケーション:話しやすく、質問しやすい人柄か、疑問点を丁寧に説明してくれるかといった相性も重要です。
- ITツールへの対応:クラウド会計ソフトなど、最新のツールに対応しているかどうかも確認ポイントです。
複数の税理士と面談し、ご自身の状況や要望に合った、信頼できるパートナーを見つけることが大切です。
無料相談や低価格サービスを活用する
税理士への相談は費用がかかるイメージがあるため、ためらってしまう方もいるかもしれません。しかし、最近では**初回無料相談**を提供している税理士事務所も多くあります。まずはこうした無料相談を活用し、ご自身の状況を説明して、どのようなサポートが必要か、どれくらいの費用がかかるのかを具体的に聞いてみるのが良いでしょう。
また、小規模事業者や副業所得者向けに、クラウド会計ソフトと連携した比較的低価格な申告代行サービスも増えています。例えば、日々の記帳はご自身で行い、最終的な申告書の作成と提出のみを依頼する「記帳代行なしの申告代行」サービスなどを利用すれば、費用を抑えつつ専門家のサポートを受けることが可能です。
税理士報酬は決して安くはありませんが、節税効果や手間削減、ペナルティ回避などを考慮すると、費用対効果は非常に高いと言えます。ご自身の状況に最適なサービスを選ぶことで、賢く確定申告の負担を軽減することができます。
まとめ
よくある質問
Q: 確定申告は、どのような場合に必要になりますか?
A: 原則として、給与所得以外の所得が年間20万円を超える場合や、給与所得が2,000万円を超える会社員などが確定申告を行う必要があります。ただし、給与所得者でも副業所得が20万円を超える場合などは申告が必要です。
Q: 会社員(サラリーマン)の場合、いくらから確定申告が必要ですか?
A: 会社員の場合、基本的には年末調整で税額が確定するため、給与所得のみで他に所得がなければ確定申告は不要です。しかし、副業所得が年間20万円を超える場合や、2ヶ所以上から給与を得ている場合などは確定申告が必要になることがあります。
Q: 副業で得た収入は、いくらから確定申告が必要ですか?
A: 副業で得た所得(収入から経費を差し引いたもの)が年間20万円を超える場合は、原則として確定申告が必要です。アルバイト収入でも、給与所得以外の所得として計算されます。
Q: フリーランスや個人事業主の場合、いくらから確定申告が必要ですか?
A: フリーランスや個人事業主は、事業所得として確定申告が必要です。年間を通して所得がある限り、金額に関わらず原則として確定申告を行う必要があります。ただし、赤字の場合は青色申告の特典を受けられる場合があります。
Q: 確定申告をしないと、どのようなペナルティがありますか?
A: 確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。また、青色申告の特別控除を受けられなくなるなど、税制上の不利益が生じることもあります。不正な申告は重い罰則の対象となる場合もあります。