概要: 確定申告は、1年間の所得を計算し、所得税額を確定させる手続きです。副業やバイト、会社員、学生など、ご自身の状況に合わせて必要な知識をわかりやすく解説します。必要書類や提出時期、年末調整との違いなども網羅しているので、初めての方でも安心です。
【図解】確定申告とは?初心者でもわかる!副業・バイト・会社員・学生
「確定申告」と聞くと、なんだか難しそう、自分には関係ないと思っていませんか?
実は、副業を始めた会社員の方や、アルバイトを頑張る学生さん、もちろん個人事業主の方々にとっても、確定申告は非常に身近な手続きです。
この記事では、確定申告の基本から、副業・バイト・会社員・学生といったケース別のポイント、必要な書類や提出時期まで、初心者の方でも分かりやすく解説します。
「自分には確定申告が必要なの?」「やらないとどうなるの?」といった疑問をスッキリ解消し、賢く税金を納めるための第一歩を踏み出しましょう!
確定申告とは?基本からわかりやすく解説
確定申告のキホン:何のためにやるの?
確定申告とは、個人が1年間に得た全ての所得(収入から経費を差し引いたもの)にかかる所得税を計算し、国(税務署)に申告・納税する手続きのことです。
これにより、納税者自身の所得状況に応じた正確な所得税額が確定します。
会社員の場合、通常は勤務先が「年末調整」で所得税の精算を行ってくれるため、確定申告は不要なケースが多いです。
しかし、副業をしている場合や特定の控除を受けたい場合など、ご自身で確定申告を行う必要が出てきます。
確定申告を怠ると、本来納めるべき税金に加えて、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課される可能性がありますので、対象となる場合は必ず手続きを行いましょう。
「収入」と「所得」の違いをマスターしよう
確定申告を理解する上で、まず大切なのが「収入」と「所得」の違いです。この二つは混同されがちですが、税金を計算する上では明確に区別されます。
- 収入:給与所得者の場合は、税金や社会保険料などが源泉徴収される前の「額面金額」を指します。個人事業主の場合は「売上金額」に当たります。
- 所得:収入から、その収入を得るためにかかった「必要経費」や「各種控除」を差し引いた金額を指します。所得税は、この所得に対して計算されます。
例えば、副業での売上が25万円あったとしても、仕入れや通信費、交通費などの必要経費が10万円かかっていれば、所得は「25万円(収入)-10万円(経費)=15万円」となります。
この違いを理解することが、確定申告の要否判断や節税対策において非常に重要になります。
どんな人が確定申告の対象になる?
確定申告が必要となる人は多岐にわたります。主なケースは以下の通りです。
- 個人事業主やフリーランス:年間の所得が基礎控除額(48万円)を超える場合、基本的に確定申告が必要です。
- 給与所得者(会社員・パート・アルバイトなど):
- その年の給与収入が2,000万円を超える人。
- 副業の所得が年間20万円を超える人(いわゆる「20万円ルール」)。
- 1か所から給与の支払いを受けており、給与所得および退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える人。
- 2か所以上から給与の支払いを受けている場合で、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人。
- 公的年金の受給者:年金以外の所得が一定額を超える場合。
- 給与所得者で年末調整を受けていない人:年の途中で退職し、年末までに再就職していない場合など。
また、これらの条件に当てはまらなくても、医療費控除や住宅ローン控除(初年度)を受けたい場合は、確定申告を行うことで税金が還付される可能性があります。
副業・バイト・会社員・学生…ケース別確定申告のポイント
会社員・パート・アルバイトと副業の「20万円ルール」
会社員やパート・アルバイトの方が副業をしている場合、最も注意すべきなのが「年間所得20万円ルール」です。
本業以外の副業で得た所得(収入から必要経費を差し引いたもの)が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
例えば、Webライターとして年間に30万円の収入があり、関連する書籍購入費や通信費で5万円の経費がかかった場合、所得は25万円となります。このケースでは、20万円を超えているため確定申告が必要です。
一方、パートやアルバイトの場合、給与収入が年間20万円以下であれば基本的に確定申告は不要ですが、これはあくまで「所得税」の話です。住民税については、所得の金額に関わらず申告が必要になる場合があるので注意しましょう。
副業所得が20万円以下で確定申告が不要な場合でも、医療費控除や住宅ローン控除(初年度)など、税金が還付される制度を利用したい場合は、確定申告を行うことで税金が戻ってくるメリットがあります。
個人事業主・フリーランスの確定申告:白色・青色申告
個人事業主やフリーランスの方は、原則として確定申告の対象となります。年間の所得が基礎控除額(48万円)を超える場合は、必ず申告が必要です。
確定申告には、主に「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。
- 白色申告:記帳が比較的簡単で、事前の届け出も不要なため、手軽に始められます。しかし、受けられる控除や特典は少ないです。
- 青色申告:事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。また、複式簿記での記帳が求められるため、手間はかかりますが、最大65万円の青色申告特別控除など、税制上の大きなメリットがあります。
例えば、青色申告特別控除65万円と基礎控除48万円を適用した場合、合計で113万円の控除が受けられます。この場合、事業所得が95万円以下(基礎控除48万円+青色申告特別控除65万円=113万円なので、これより少ない所得であれば課税対象となる所得がゼロになる)であれば、所得税はかからず確定申告は不要です。
適切な帳簿付けを行い、ご自身の事業規模や状況に合わせて、どちらの申告方法を選択するか検討しましょう。
学生アルバイトの所得税と確定申告
学生アルバイトの方も、確定申告が必要になるケースがあります。主なポイントは以下の通りです。
- 年間の給与収入103万円の壁:学生アルバイトの場合、年間の給与収入が103万円以下であれば所得税はかかりません(基礎控除48万円+給与所得控除55万円)。この場合、原則として確定申告は不要です。
- 勤労学生控除の活用:もし年間の給与収入が103万円を超えても、学生であれば「勤労学生控除(27万円)」を適用できます。この控除を利用すると、年収が130万円まで所得税がかからなくなります。扶養控除等申告書を勤務先に提出する際に、勤労学生控除の適用を申告しておきましょう。
- 払いすぎた税金の還付:年度途中でアルバイトを辞めて再就職しなかった場合など、年末調整を受けていないと所得税を払いすぎている可能性があります。源泉徴収されている税金がある場合は、確定申告をすることで税金が還付される(戻ってくる)可能性がありますので、ぜひ手続きを検討してください。
ご自身の収入状況や勤務先の対応を確認し、必要に応じて確定申告をしましょう。不明な点があれば、学校の事務室や税務署の相談窓口で確認することをおすすめします。
確定申告に必要な書類と提出時期・保管期間
これで安心!確定申告に必要な書類リスト
確定申告には、いくつかの重要な書類が必要です。ケースによって異なりますが、副業を行っている方が一般的に必要となる書類をリストアップしました。
- 本人確認書類:
- マイナンバーカード(またはマイナンバーがわかる書類と身元確認書類)
- 収入に関する書類:
- 給与所得の源泉徴収票(本業の勤務先から発行されます)
- 報酬の支払調書、業務委託契約書など(副業の種類によって異なります)
- 所得計算に関する書類:
- 収支内訳書(白色申告の場合)または青色申告決算書(青色申告の場合)
- 帳簿や領収書、請求書など、経費を証明できるもの
- 各種控除を受けるための書類(該当する場合):
- 生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書
- 医療費の領収書や明細書(医療費控除を受ける場合)
- 寄付金の受領証明書(寄付金控除を受ける場合)
- 住宅ローン控除証明書(住宅ローン控除を受ける場合)
- 還付金を受け取るための情報:
- 本人名義の銀行口座情報(金融機関名、支店名、口座番号)
これらの書類は、税務署への提出やe-Taxでの申告時に必要となりますので、日頃から整理して保管しておくことが大切です。
確定申告の提出時期と注意点
確定申告には、原則として提出期間が定められています。この期間を守ることが非常に重要です。
- 所得税の確定申告期間:原則として、翌年2月16日から3月15日までです。この期間内に、前年1月1日から12月31日までの所得について申告・納税を行います。
- 還付申告の場合:税金が戻ってくる「還付申告」の場合は、提出義務がある申告とは異なり、翌年の1月1日から5年間提出することができます。例えば、2023年分の還付申告は、2024年1月1日から2028年12月31日まで提出が可能です。
提出期限に遅れてしまうと、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課される可能性があります。
もし、期限内に申告が間に合わないと分かった場合は、すぐに税務署に相談するようにしましょう。また、税務署は確定申告期間中、大変混雑しますので、早めに準備を進めることをおすすめします。
書類の保管期間と電子申告のすすめ
確定申告で提出した書類の控えや、申告の根拠となる帳簿、領収書などは、申告後も一定期間の保管義務があります。
- 白色申告の場合:帳簿や総勘定元帳、仕訳帳などの記録は5年間、取引で発生した領収書や請求書、契約書などの書類は5年間保管する必要があります。
- 青色申告の場合:帳簿(仕訳帳、総勘定元帳など)は7年間、それ以外の書類(領収書、請求書、契約書など)は5年間保管が必要です。
これらの書類は、税務調査などがあった際に提出を求められることがありますので、紛失しないよう大切に保管してください。
近年では、e-Tax(電子申告)の利用が推奨されています。e-Taxを利用すれば、自宅のパソコンやスマートフォンから確定申告書の作成・提出が可能で、税務署に行く手間が省けます。
また、一部の添付書類の提出が省略できたり、青色申告特別控除の控除額が優遇されたり(特定の条件を満たす場合)といったメリットもありますので、ぜひ活用を検討してみてください。
年末調整との違いを理解して賢く税金を納める
年末調整と確定申告、役割の違いとは?
会社員にとって、所得税の精算といえば「年末調整」が一般的です。しかし、年末調整と確定申告には、その対象や役割において明確な違いがあります。
- 年末調整:
- 対象者:主に会社員やパート・アルバイトなど、給与所得者。
- 手続き主体:勤務先が従業員に代わって行います。
- 対象所得:その勤務先から支払われた「給与所得」のみが対象です。
- 目的:その年の給与にかかる所得税を正確に計算し、源泉徴収された税金との過不足を精算します。
- 確定申告:
- 対象者:個人事業主、フリーランス、特定の条件に当てはまる給与所得者など、全ての納税義務者。
- 手続き主体:納税者自身が行います。
- 対象所得:給与所得だけでなく、副業所得、不動産所得、年金所得など、全ての所得が対象です。
- 目的:1年間の全ての所得にかかる所得税を計算し、税務署に申告・納税します。
年末調整は会社が代行してくれる便利な制度ですが、全ての所得や控除に対応できるわけではありません。そのため、年末調整だけでは不十分な場合に、確定申告が必要となります。
年末調整だけでは不十分なケース
年末調整は給与所得の精算に特化しているため、以下のような場合には、年末調整だけでは完結せず、ご自身で確定申告を行う必要があります。
- 副業の所得が年間20万円を超える人:給与所得以外の所得は年末調整の対象外です。
- 給与収入が2,000万円を超える人:高額所得者は年末調整の対象外となります。
- 2か所以上から給与をもらっている人:複数の勤務先から給与を受け取っている場合、年末調整は主たる給与の支払い元でのみ行われます。
- 年末調整を受けていない人:年の途中で退職し、その後再就職しなかった場合など。
- 特定の控除を受けたい人:
- 医療費控除:1年間で10万円を超える医療費を支払った場合など。
- 住宅ローン控除の初年度:2年目以降は年末調整で対応できますが、初年度は確定申告が必要です。
- ふるさと納税による寄付金控除:「ワンストップ特例」を利用しない場合や、複数の自治体に寄付した場合。
これらのケースに該当する場合は、年末調整の有無に関わらず、ご自身で確定申告の手続きを進める必要があります。特に控除については、税負担を軽減できる大きなチャンスとなるため、該当する費用があるか確認しましょう。
税金が戻る「還付申告」を賢く活用しよう
確定申告は、税金を納めるためだけの手続きではありません。実は、払いすぎた税金が戻ってくる「還付申告」という大切な役割も担っています。
還付申告とは、確定申告の結果、納めすぎた税金がある場合に、税務署にその税金を返してもらうための手続きです。
還付申告は、前述の「提出時期」で説明した通り、義務的なものではないため、翌年の1月1日から5年間いつでも提出することができます。
還付申告ができる主なケースとしては、以下のようなものがあります。
- 多額の医療費を支払った(医療費控除)。
- 住宅ローンを借りて住宅を購入し、住宅ローン控除(初年度)を適用したい。
- ふるさと納税などを行い、寄付金控除を受けたい(ワンストップ特例を利用しない場合)。
- 年の途中で退職し、年末調整を受けていないため所得税を払いすぎている。
- 災害や盗難などで損害を受けた(雑損控除)。
「自分は払いすぎた税金があるかもしれない」と感じたら、上記のケースに該当するか確認し、積極的に還付申告を行うことで、手元に税金が戻ってくる可能性があります。もし心当たりのある方は、一度ご自身の状況を見直してみましょう。
確定申告の疑問を解決!よくある質問(FAQ)
Q1: 確定申告をしないとどうなるの?
確定申告の義務があるにもかかわらず、手続きを怠ってしまうと、いくつかのペナルティが課される可能性があります。
- 無申告加算税:本来納めるべき税額に対し、追加で税金が課されます。原則として、納付すべき税額の15%(50万円を超える部分は20%)が加算されます。
- 延滞税:納期限の翌日から納付する日までの日数に応じ、利息に相当する税金が課されます。期間が長くなるほど税額も増えていきます。
- 青色申告特別控除の取り消し:青色申告を利用している場合、期限内に申告をしないと最大65万円の特別控除が受けられなくなることがあります。
これらの追加の税金は、本来納める税額に上乗せされるため、経済的な負担が大きくなります。また、度重なる無申告や延滞は、将来的に社会的な信用を失うことにも繋がりかねません。
もし申告を忘れてしまった、あるいは期限に間に合わないと分かった場合は、速やかに税務署に相談し、自主的に申告・納税を行うことで、加算税の割合が軽減される場合があります。
Q2: 副業がバレるのが不安…確定申告で会社に通知される?
副業をしている会社員の方にとって、会社に副業がバレてしまうのではないかという不安はつきものです。確定申告がきっかけで会社に副業が知られる可能性はゼロではありませんが、対策を講じることは可能です。
副業が会社にバレる主な原因の一つは、住民税の通知です。住民税は、所得に応じて計算され、会社員の住民税は通常、給与から天引き(特別徴収)されます。
副業による所得が増えると、会社に通知される住民税額も増えるため、会社が「なぜ住民税が高いのだろう?」と疑問に思い、副業が発覚する可能性があります。
この対策として、確定申告書を提出する際に、副業による住民税を「普通徴収(自分で納付)」にチェックを入れることで、副業分の住民税が給与から天引きされず、ご自身で納付書を使って支払う形にできます。
これにより、会社に通知される住民税額は本業の給与分のみとなるため、副業がバレるリスクを軽減できます。
ただし、この方法は完全にバレないことを保証するものではなく、会社によっては他の方法で副業が発覚する可能性も残ります。会社の就業規則を事前に確認し、慎重に対応することが大切です。
Q3: 確定申告はどこで相談できる?
確定申告の手続きに不安がある場合や、複雑な状況で判断に迷う場合は、専門家や公的機関に相談することをおすすめします。主な相談先は以下の通りです。
- 税務署:
- 確定申告期間中(主に2月16日~3月15日)は、全国の税務署に「確定申告相談会場」が設置されます。無料で相談でき、その場で申告書の作成指導も受けられます。ただし、大変混雑するため、時間に余裕を持って訪問しましょう。
- 通常期でも、電話や窓口で一般的な質問に答えてもらえます。
- 税理士:
- 税金に関する専門家です。有料ですが、個別の状況に応じた詳細なアドバイスや、申告書の作成代行も依頼できます。複雑なケースや節税対策をしっかり行いたい場合に有効です。
- 自治体の税務相談会:
- 市区町村によっては、無料で税理士による税務相談会を定期的に開催している場合があります。広報誌やウェブサイトで確認してみましょう。
- 国税庁のウェブサイト・確定申告書作成コーナー:
- 国税庁のウェブサイトには、確定申告に関する詳細な情報が掲載されており、質問回答形式の「チャットボット」なども利用できます。
- 「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の案内に従って入力するだけで申告書が作成でき、そのままe-Taxで提出することも可能です。
これらの相談先を上手に活用し、ご自身に合った方法でスムーズに確定申告を乗り切りましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 確定申告とは何ですか?
A: 確定申告とは、1年間の所得(収入から経費などを差し引いたもの)を計算し、それにかかる所得税額を自分で計算して税務署に申告・納税する手続きのことです。給与所得者でも、一定の条件を満たす場合は必要になります。
Q: 副業をしている場合、確定申告は必要ですか?
A: 副業による所得が年間20万円を超える場合、原則として確定申告が必要です。ただし、給与所得者で副業所得が20万円以下であっても、住民税の申告は必要になる場合があります。
Q: アルバイト(バイト)をしている学生でも確定申告は必要ですか?
A: アルバイト収入のみで、かつ年間所得が48万円(給与所得の場合は給与所得控除後の金額で103万円)以下の場合は、原則として確定申告は不要です。ただし、所得がこれを超える場合や、他に所得がある場合は必要になることがあります。
Q: 会社員でも確定申告が必要な場合がありますか?
A: 会社員の方でも、年間の給与収入が2,000万円を超える場合、2か所以上から給与を得ていて、年末調整を受けていない給与以外の所得が20万円を超える場合、医療費控除や住宅ローン控除などで還付を受けたい場合などは確定申告が必要です。
Q: 確定申告はいつまでの収入分を対象に行いますか?
A: 確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得を対象に行います。申告期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。