概要: 令和7年(2025年)から雇用保険の加入要件が緩和されることが決定しました。本記事では、これまでの制度と比較しながら、変更点、具体例、そして緩和による影響について詳しく解説します。
【最新】雇用保険の加入要件緩和!令和7年からの変更点と注意点
雇用保険は、働く私たちにとって非常に重要なセーフティネットです。失業した際の生活を支えたり、育児や介護と仕事の両立をサポートしたり、スキルアップを支援したりと、その役割は多岐にわたります。
この度、雇用保険制度が大きく見直されることになり、令和7年(2025年)から段階的にさまざまな変更が実施されます。
特に注目すべきは、加入要件の緩和。これまで対象外だった短時間労働者の方々も、新たに雇用保険の恩恵を受けられるようになる可能性があります。
この記事では、雇用保険の基本から、令和7年以降の具体的な変更点、そしてそれが私たち労働者や企業にどのような影響を与えるのかを詳しく解説していきます。
最新情報をしっかりと把握し、今後の働き方やキャリアプランに役立てていきましょう。
雇用保険の加入要件、知っておきたい基本
雇用保険の目的と主な給付
雇用保険は、労働者が失業した場合の生活の安定と再就職の促進、育児や介護による休業期間中の所得保障、そして能力開発の支援などを目的とした社会保険制度です。もしもの時に備える「セーフティネット」としての役割と、キャリア形成をサポートする「投資」としての役割を併せ持っています。
主な給付には、失業した際に受け取れる「基本手当」、育児休業中に支給される「育児休業給付」、介護休業中の「介護休業給付」、特定の教育訓練を受けた場合に支給される「教育訓練給付金」、そして高年齢で働き続ける方を支援する「高年齢雇用継続給付」などがあります。
これらの給付は、労働者が安心して働き続けられる環境を整える上で不可欠です。
雇用保険の保険料は、事業主と労働者がそれぞれ負担することで成り立っています。労働者の賃金から一定割合が天引きされ、それに事業主が負担する分を加えて国に納められています。
これにより、加入者は万一の事態に備えることができるのです。
現在の加入要件をおさらい
現在、雇用保険に加入するための主な要件は二つあります。一つは「週の所定労働時間が20時間以上であること」、もう一つは「31日以上継続して雇用される見込みがあること」です。これらを満たす労働者は、原則として雇用形態(正社員、パートタイマー、アルバイトなど)に関わらず、雇用保険の被保険者となります。
ただし、学生アルバイトについては、卒業見込みがある場合や、定時制・通信制の学生を除き、原則として雇用保険の適用対象外とされています。この「週20時間以上」という要件は、これまで多くの短時間労働者、特にパートタイマーやアルバイトの方が雇用保険の恩恵を受けられない原因となっていました。
この要件は、従来の日本社会における「フルタイムで働く労働者」を主な対象として設計されてきました。しかし、近年では短時間勤務や多様な働き方が増えており、現在の要件ではセーフティネットから漏れてしまう人々が多く存在するという課題が指摘されていました。
今回の制度改正は、こうした社会の変化に対応するための重要な一歩と言えるでしょう。
加入するとどんなメリットがある?
雇用保険に加入することで得られるメリットは多岐にわたります。最も分かりやすいのは、失業した際に生活の支えとなる「基本手当」を受け取れることです。これにより、次の仕事を探す期間に経済的な不安を軽減し、焦らずに再就職活動に専念できます。
また、出産・育児や介護のために休業する際にも、育児休業給付や介護休業給付が支給され、収入が途絶えるリスクを低減できます。これにより、キャリアを中断することなく、ライフイベントと仕事の両立を図りやすくなります。さらに、スキルアップやキャリアチェンジを目指す方にとっては、教育訓練給付金が大きな助けとなります。
例えば、専門的な資格取得のための講座費用の一部が支給されたり、新しい分野に挑戦するためのリスキリング支援を受けたりすることが可能です。これらの給付は、個人の能力開発を後押しし、長期的なキャリア形成を支援する上で非常に重要です。たとえ保険料の負担があったとしても、将来への安心感や、万が一の際の備えとして、雇用保険への加入は大きなメリットがあると言えるでしょう。
令和7年(2025年)からの変更点とは?
週10時間以上への要件緩和
今回の雇用保険制度改正における最大のポイントは、加入要件の大幅な緩和です。現在「週所定労働時間20時間以上」とされている要件が、2028年10月1日から「週10時間以上」へと変更されます。この変更により、これまで雇用保険の対象外だった短時間労働者の多くが、新たに被保険者となる見込みです。
厚生労働省の試算では、これにより500万人を超える労働者が新たに雇用保険のセーフティネットの対象になるとされています。パートタイマーやアルバイトとして働く方々が、失業時の基本手当や育児休業給付などを受け取れるようになることで、より安心して働き、生活設計を立てられるようになります。
ただし、この緩和措置はすぐに適用されるわけではなく、令和10年(2028年)10月1日からの実施となります。まだ期間があるため、労働者も企業も十分に準備を進める必要があります。この変更は、多様な働き方を社会全体で支えていこうという国の強い姿勢を示しており、短時間労働者の雇用の安定化に大きく寄与することが期待されています。
教育訓練・リスキリング支援の拡充
個人の能力開発とキャリア形成を支援するため、教育訓練に関する制度も手厚く拡充されます。まず、2024年10月1日からは、教育訓練給付金の給付率の上限が引き上げられます。これは、専門的なスキル習得やキャリアアップを目指す方にとって朗報となるでしょう。
さらに、2025年10月1日からは、労働者が教育訓練を受けるために休暇を取得した場合に、その期間中の生活を支援するための新たな給付金「教育訓練休暇給付金」が創設されます。これにより、仕事を休んで学び直したいという意欲を持つ人々が、経済的な不安なく学習に専念できる環境が整います。
また、自己都合退職者が職業関連の教育訓練を受ける場合、失業給付の給付制限期間が、原則2ヶ月から1ヶ月に短縮される見直しも行われます(ただし、短期間での離職を繰り返した場合は3ヶ月となる場合があります)。これらの支援拡充は、現代社会で求められる「学び直し(リスキリング)」を強力に後押しし、労働者のキャリアアップを促進するものです。
育児休業関連給付の新設と保険料率の見直し
「共働き・共育て」を推進し、育児期を通じた柔軟な働き方をサポートするため、育児休業に関する新たな給付制度も創設されます。特に注目されるのが、「出生後休業支援給付」です。これは、男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に、14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間、休業開始前賃金の13%が支給されるというものです。
これにより、夫婦で協力して育児を行う環境がさらに整備され、特に男性の育児休業取得を促進する効果が期待されます。また、育児のために短時間勤務を選択した労働者を支援するため、「育児時短就業給付」も新たに創設されます。これは、育児短時間勤務中の賃金の一部を補填することで、収入減の不安を軽減し、育児と仕事の両立を支援するものです。
これらの制度拡充に伴い、雇用保険料率の見直しも行われます。2025年4月1日から2026年3月31日までの雇用保険料率は、失業等給付および育児休業給付の保険料率が変更されます。一般の事業の場合、失業等給付等の保険料率は労働者・事業主負担ともに5.5/1,000に変更となり、雇用保険二事業の保険料率は引き続き3.5/1,000です。
緩和で何が変わる?具体例で解説
パート・アルバイトの恩恵
雇用保険の加入要件が「週10時間以上」に緩和されることで、これまで制度の対象外だった多くのパートタイマーやアルバイトの方が、さまざまな恩恵を受けられるようになります。例えば、これまでは週15時間勤務で雇用保険の対象外だったAさんがいたとしましょう。
もしAさんが会社を辞めることになった場合、現在の制度では失業時の基本手当を受け取ることはできませんでした。しかし、2028年10月1日以降は、Aさんも雇用保険に加入していれば、要件を満たせば基本手当を受け取ることが可能になります。これにより、次の仕事を探す間の生活費の心配が大きく軽減され、精神的な安心感にも繋がります。
また、Aさんが将来的に出産や育児を経験することになった場合でも、育児休業給付を受け取れる可能性が出てきます。これは、短時間勤務で家計を支える方々にとって、大きなライフイベントに際しての経済的保障となり、より安心して家庭と仕事を両立できる環境が整うことを意味します。この変更は、特に主婦層や学生アルバイト層のセーフティネットを強化し、社会全体での「支え合い」をより広範にするものです。
企業側の対応と準備
労働者にとって大きなメリットがある一方で、企業側もこの制度改正に対応するための準備が必要です。2028年10月1日の施行に向けて、これまで雇用保険の対象外だった「週10時間以上20時間未満」の短時間労働者を新たに被保険者として把握し、加入手続きを行う必要があります。
これには、従業員の労働時間管理の徹底、雇用保険の新規加入手続き、毎月の保険料計算と納付、そして労働条件通知書の見直しなどが含まれます。特に、多数の短時間労働者を雇用している企業にとっては、事務負担が増加する可能性があります。
また、従業員に対して雇用保険の加入対象となることや、制度変更の内容を周知し、疑問点に対応するための説明体制を整えることも重要です。社内規程の見直しや、社会保険労務士などの専門家への相談を早めに行い、円滑な移行を目指すことが求められます。こうした対応を適切に行うことで、従業員のエンゲージメント向上にも繋がり、優秀な人材の確保にも寄与するでしょう。
働き方の多様化を後押し
雇用保険の加入要件緩和は、個人の働き方の多様化をさらに後押しするものです。これまで「週20時間以上」という壁があったため、フルタイムでは働けないが、もう少し働きたいという人が、雇用保険のメリットを諦めて短時間勤務を選択するケースがありました。
しかし、要件が「週10時間以上」に緩和されることで、より柔軟な労働時間で働きながらも、失業や育児・介護といったリスクに備えられるようになります。例えば、子育てや介護と両立しながら働く人が、無理なく働ける時間を選びつつ、将来の不安を軽減できるでしょう。
また、副業や兼業をしている人にとっても、メインの仕事と合わせて合計週10時間以上働く場合、いずれかの事業所で雇用保険に加入できる可能性が出てきます。これにより、キャリアチェンジや学び直し(リスキリング)を検討する際にも、失業時の生活不安が軽減され、新たな挑戦へのハードルが下がります。この制度改正は、個人の選択肢を広げ、社会全体の労働市場の流動性を高める効果も期待されます。
加入要件緩和によるメリット・デメリット
労働者側のメリット
雇用保険の加入要件緩和は、労働者、特にこれまで対象外だった短時間労働者にとって、非常に大きなメリットをもたらします。最大のメリットは、セーフティネットが大幅に拡大することです。失業した際の基本手当や、育児・介護休業中の給付金を受け取れるようになるため、万が一の事態に対する経済的な不安が大きく軽減されます。
例えば、パートで家計を支える方が突然職を失ったとしても、一定期間の生活費が保障されることで、安心して再就職活動に専念できるようになります。また、教育訓練給付金などのスキルアップ支援も利用できるようになるため、キャリアアップや学び直しへの挑戦がしやすくなります。
これにより、短時間勤務でも安心して働き続けられるようになり、ワークライフバランスを重視した働き方を実現しやすくなります。収入が少なくても、将来への備えができるという安心感は、労働意欲の向上や生活の質の向上にも繋がるでしょう。
労働者側のデメリット(注意点)
メリットが多い一方で、労働者側にはいくつかのデメリットと注意点があります。最も直接的なのは、新たに雇用保険料の負担が発生することです。これまで雇用保険料を支払っていなかった短時間労働者も、加入対象となることで毎月の給与から保険料が控除されることになります。
収入がわずかに減ることになりますが、その分、将来の万が一の事態に備えられるという点を理解しておく必要があります。また、雇用保険制度は複雑であり、給付を受けるための要件(加入期間、離職理由など)や計算方法を理解しておく必要があります。単に加入すれば全ての給付が受けられるわけではないため、制度内容をきちんと確認することが重要です。
さらに、今回の加入要件緩和は2028年10月1日からの施行であり、すぐに適用されるわけではない点にも注意が必要です。それまでの間は、現在の「週20時間以上」という要件が適用されますので、適用時期を誤解しないよう情報をしっかり確認しましょう。
企業側の影響
企業側にとっても、今回の制度改正はメリットとデメリットの両面をもたらします。デメリットとしては、まず事務負担の増加が挙げられます。これまで雇用保険の対象外だった従業員の管理、加入手続き、毎月の保険料計算など、新たな事務作業が発生します。
また、事業主負担分の雇用保険料も増えるため、人件費がわずかに増加する可能性があります。しかし、これらの負担を上回るメリットも期待できます。短時間労働者のセーフティネットが拡充されることで、従業員の安心感が増し、結果として離職率の低下や定着率の向上に繋がる可能性があります。
さらに、雇用保険のメリットを提示できるようになることで、これまで優秀な短時間労働者の採用に苦戦していた企業にとっては、人材確保の面で有利に働くことも考えられます。社会の変化に対応し、多様な働き方を支援する企業としてイメージ向上にも寄与するでしょう。
企業は、この機会に働き方を見直し、より魅力的な職場環境づくりを進めることが求められます。
雇用保険の計算方法と令和7年の影響
雇用保険料の計算基礎
雇用保険料は、原則として労働者の「賃金総額」に定められた保険料率を乗じて計算されます。この賃金総額には、基本給のほか、通勤手当、残業手当、家族手当など、税法上の課税対象となる手当のほとんどが含まれます。ただし、退職金や役員報酬などは対象外です。
計算された保険料は、事業主と労働者でそれぞれ負担する形が一般的です。労働者の負担分は毎月の給与から天引きされ、事業主の負担分と合わせて、事業主が国に納付します。例えば、月給20万円の場合、保険料率が1000分の5.5であれば、労働者負担分は約1,100円となります。
この計算方法は、雇用保険の加入者全員に適用されるため、新たに加入対象となる短時間労働者も、自身の賃金総額に応じた保険料を負担することになります。計算式の理解は、給与明細を確認する上でも重要です。
令和7年からの保険料率変更の詳細
2025年4月1日から2026年3月31日までの雇用保険料率は、失業等給付および育児休業給付の保険料率が見直されます。一般の事業の場合、現在の料率から変更され、失業等給付等の保険料率が5.5/1,000になります。この変更は、労働者負担分と事業主負担分の双方に影響を与えます。
例えば、現在の一般の事業における失業等給付等の保険料率は労働者と事業主合わせて6/1,000(時期により変動)でしたが、これが5.5/1,000に変更されることになります。これは、保険財政の状況や給付内容の拡充などを考慮して決定されます。
一方、雇用保険二事業(雇用安定事業や能力開発事業など)に関する保険料率は、引き続き3.5/1,000で据え置きとなります。これらの料率変更は、短時間労働者が新たに加入することで財政規模が拡大することや、育児休業関連給付などの新たな支援が始まることと密接に関連しています。企業も労働者も、最新の料率情報を確認し、適切な保険料を計算・納付することが重要です。
給付額に影響する賃金と期間の考え方
雇用保険から支給される給付額は、原則として休業前や離職前の賃金を基に計算されます。例えば、失業時の基本手当の額は、離職日以前の2年間に雇用保険に加入していた期間のうち、賃金が支払われた期間の賃金総額を基に算出されます。
具体的には、離職直前の6ヶ月間の賃金総額を180で割った「賃金日額」を算出し、その賃金日額に一定の割合(給付率)を乗じて基本手当日額が決まります。育児休業給付金も同様に、休業開始前の賃金を基に支給額が決定されます。
今回の要件緩和で「週10時間」の短時間労働者が加入対象となることで、これまで給付を受けられなかった人もセーフティネットが得られるようになりますが、その給付額は当然ながら賃金日額に応じて決まるため、フルタイム労働者に比べて少なくなるのが一般的です。
給付を受けるためには、加入期間要件など、他の要件も満たす必要があります。自身の働き方や収入状況に応じて、どの程度の給付が期待できるのかを事前に確認しておくことが、今後のライフプランを立てる上で非常に重要です。
まとめ
よくある質問
Q: 雇用保険の加入要件は、いつから緩和されるのですか?
A: 令和7年(2025年)4月1日から順次、雇用保険の加入要件が緩和される予定です。
Q: 具体的に、どのような要件が緩和されるのですか?
A: これまで週20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みが必要とされていた加入要件が、週18時間以上、かつ31日以上の雇用見込みに緩和される見込みです。ただし、一部例外もあります。
Q: 雇用保険の加入要件緩和は、過去にもありましたか?
A: はい、雇用保険制度は時代に合わせて何度か改正されており、加入要件も変更されてきました。例えば、令和4年度や令和5年度にも制度の見直しが行われています。
Q: 雇用保険の加入要件緩和によって、失業給付の計算方法も変わりますか?
A: 加入要件が緩和されることで、新たに雇用保険に加入できる方が増える可能性があります。失業給付の計算自体に直接的な変更があるわけではありませんが、給付を受けられる対象者が広がることで、間接的に影響が出ることも考えられます。令和7年の正確な計算方法については、詳細な発表をご確認ください。
Q: 雇用保険の加入要件緩和は、私にどのようなメリットがありますか?
A: 短時間労働者の方や、これまで加入要件を満たせなかった方でも、雇用保険に加入できる可能性が高まります。これにより、万が一の失業時などに、失業給付などのセーフティネットを利用できる機会が増えることが大きなメリットです。