【完全ガイド】雇用保険の離職票・基本手当受給を徹底解説!

退職は新たな一歩を踏み出す機会でもありますが、同時に生活の不安を伴うことも少なくありません。そんな時に頼りになるのが、雇用保険の基本手当、いわゆる「失業保険」です。

しかし、「離職票って何?」「どうすればもらえるの?」「いくら、いつまで受け取れるの?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。この記事では、雇用保険の離職票から基本手当の受給条件、手続き方法、さらには2025年4月からの法改正情報まで、知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。

あなたの再就職活動をスムーズに進めるためにも、ぜひ最後までお読みください。

離職票とは?発行までの流れと離職理由コードの重要性

離職票の基本と発行義務

離職票とは、正式名称を「雇用保険被保険者離職票」といい、退職者が雇用保険の基本手当(失業保険)を受給する際にハローワークへ提出が義務付けられている重要な書類です。

この書類は、ハローワークが発行しますが、実際には会社を通じて退職者の手元に届きます。会社には、従業員が雇用保険の資格を喪失した日の翌日から10日以内に、ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出する義務があります。

この手続きが完了すると、ハローワークから離職票が会社に発行され、最終的に退職者へ交付されるという流れです。もし会社が手続きを遅延したり、離職票がなかなか届かない場合は、速やかに管轄のハローワークに相談しましょう。遅れることで基本手当の受給開始も遅れてしまう可能性があります。

離職理由コードが持つ意味

離職票-2には「離職理由」が記載されており、これが基本手当の受給資格や給付期間、さらには待期期間後の「給付制限期間」の有無に大きく影響します。

例えば、自己都合退職の場合と、倒産・解雇など会社都合による退職(特定受給資格者)や、契約期間満了などのやむを得ない理由による退職(特定理由離職者)では、基本手当の受給条件が大きく異なります。

  • 特定受給資格者・特定理由離職者:
    • 被保険者期間が離職日以前1年間に通算6ヶ月以上で受給資格あり。
    • 原則として給付制限期間なし。
    • 所定給付日数が自己都合退職者よりも長くなる傾向があります。
  • 自己都合退職:
    • 被保険者期間が離職日以前2年間に通算12ヶ月以上必要。
    • 2025年4月1日以降の離職者は、待期期間満了後1ヶ月の給付制限期間があります(以前は2ヶ月でしたが短縮されました)。

このように、離職理由コードは、あなたがどれくらいの期間、どのくらいの金額の基本手当を受給できるかを決定する非常に重要な情報となるのです。

離職票以外に準備すべき書類

ハローワークで基本手当の申請をする際には、離職票以外にもいくつかの書類が必要です。

以下のリストを確認し、事前に準備を進めておきましょう。

  1. 雇用保険被保険者離職票-1、離職票-2: 会社から交付されるもの。
  2. 本人確認書類: 運転免許証、マイナンバーカード、写真付き住民基本台帳カードなど。
  3. マイナンバー確認書類: マイナンバーカード、通知カード、マイナンバー記載の住民票のいずれか。
  4. 印鑑: シャチハタ以外のもの。
  5. 金融機関の通帳またはキャッシュカード: 基本手当の振込先として指定する口座のもの。本人名義に限ります。
  6. 証明写真: 最近撮ったもの(縦3.0cm×横2.5cm)2枚。ただし、マイナンバーカードを提示する場合は不要なハローワークも増えています。

これらの書類に不備があると、手続きがスムーズに進まない可能性があります。必ず事前に確認し、漏れのないように準備してください。

雇用保険の基本手当(失業保険)を受給できる条件と期間

受給資格のポイント:被保険者期間

雇用保険の基本手当(失業保険)を受給するためには、まず「受給資格」を満たす必要があります。この最も重要な条件が「被保険者期間」です。

原則として、離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上必要とされています。ここでいう「1ヶ月」とは、賃金の支払い基礎となった日数が11日以上ある月を指します。

ただし、倒産や解雇といった会社都合による退職(特定受給資格者)、または契約期間満了などやむを得ない理由での退職(特定理由離職者)の場合は、条件が緩和され、離職日以前1年間に通算して6ヶ月以上の被保険者期間があれば受給資格が得られます。自分がどちらの区分に該当するかは、離職票の離職理由コードで確認できます。

また、65歳以上で退職した場合は、基本手当の代わりに「高年齢求職者給付金」という一時金が支給されます。こちらは被保険者期間に応じて給付日数が決まりますので、ご注意ください。

待期期間と給付制限期間の理解

基本手当の受給資格が決定しても、すぐに支給が始まるわけではありません。以下の期間を理解しておくことが重要です。

  1. 待期期間:

    ハローワークに求職申込みを行い、受給資格が決定した日から、原則として7日間設けられます。この期間は離職理由に関わらず、全員に適用され、失業手当は支給されません。待期期間中にアルバイトをすることは避けるべきです。

  2. 給付制限期間:

    待期期間満了後に設けられる期間で、離職理由によって有無や期間が異なります。

    • 自己都合退職: 2025年4月1日以降の離職者は、原則として1ヶ月の給付制限期間が適用されます。以前は2ヶ月でしたが、法改正により短縮されました。この期間中は失業手当が支給されませんが、条件を満たせばアルバイトをすることが可能です。
    • 会社都合退職・特定理由離職者: 原則として給付制限期間はありません。待期期間満了後から失業手当の支給が開始されます。

これらの期間を正確に把握することで、失業中の生活設計を立てやすくなります。

所定給付日数と受給期間

基本手当が支給される日数である「所定給付日数」は、離職理由、年齢、そして雇用保険の被保険者期間によって細かく定められています。

離職理由 被保険者期間 所定給付日数(目安)
自己都合退職 10年未満 90日
10年以上20年未満 120日
20年以上 150日
会社都合退職・特定理由離職者 1年未満~20年以上 90日~360日(年齢により変動)

特に会社都合退職の場合は、年齢や被保険者期間によっては最大360日と、長期にわたる支援を受けられる可能性があります。

基本手当の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。この1年間の間に、上記で示された所定給付日数分の手当を受給し終える必要があります。

ただし、病気や怪我、妊娠・出産、育児などで30日以上連続して就職できない期間がある場合は、受給期間の延長申請が可能です。この延長は最大3年間認められるため、状況に応じてハローワークに相談しましょう。

離職票の書き方と注意点:ハローワークでの手続き

ハローワークでの手続きの流れ

ハローワークでの基本手当受給手続きは、いくつかのステップを踏んで進められます。

まず、離職票が手元に届いたら、速やかに住所地を管轄するハローワークへ赴き、求職の申込みを行います。この際、持参した書類を提出し、失業状態であることが認定されれば「受給資格の決定」が行われます。

次に、多くの場合、雇用保険制度についての「説明会」に参加を求められます。ここで今後の手続きの流れや注意点などを詳しく聞くことができます。説明会への参加は必須となることが多いので、忘れずに参加しましょう。

その後、原則4週間に一度の頻度で指定された「失業認定日」にハローワークへ出向き、求職活動の実績を報告します。この失業認定日に、前回の認定日から今回の認定日までの期間について、失業状態であったことが確認されれば、指定口座に基本手当が振り込まれるという流れです。この一連の流れを理解しておくことで、スムーズに手続きを進めることができます。

離職票-2の記載内容と確認ポイント

離職票-2は、基本手当の支給額や期間を決定する上で非常に重要な情報が記載されています。

特に以下の2点は、あなたの権利に直結するため、必ず内容を詳細に確認してください。

  1. 離職理由:

    会社が記載した離職理由と、ご自身の認識に相違がないかを確認します。前述の通り、離職理由によって給付制限期間の有無や所定給付日数が大きく変わります。もし内容に異議がある場合は、離職票提出時にハローワークの担当者にその旨を伝え、異議申し立ての手続きを行いましょう。会社の担当者と話し合い、認識を合わせることも重要です。

  2. 賃金状況:

    離職前の6ヶ月間の給与総額や勤務状況が記載されています。この情報をもとに基本手当日額が算出されるため、記載された金額が実際の給与明細と一致しているか、間違いがないかを確認してください。給与計算に誤りがあると、本来受け取れるはずの手当が減額されてしまう可能性があります。

これらの項目に疑問点や不審な点がある場合は、決してそのままにせず、ハローワークの窓口で必ず質問し、納得できるまで説明を求めましょう。

申請時の必須持ち物リスト

ハローワークでの手続きをスムーズに進めるためには、必要な持ち物を完璧に揃えておくことが肝心です。

以下のリストを参考に、事前に準備を怠らないようにしましょう。

  • 雇用保険被保険者離職票-1、離職票-2: 最も重要な書類です。
  • 個人番号確認書類: マイナンバーカード、または通知カードと運転免許証などの身元確認書類。
  • 身元確認書類: マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど(顔写真付きの公的身分証明書が望ましい)。
  • 写真: 最近撮影した正面上半身の写真(縦3.0cm×横2.5cm)2枚。ただし、マイナンバーカードを提示する場合など、不要なハローワークもありますので、事前に確認してください。
  • 印鑑: シャチハタ以外の認印。
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード: 基本手当の振込先として登録するため。インターネット銀行など、一部利用できない金融機関もありますので、確認が必要です。

これらの持ち物が一つでも欠けていると、その日のうちに手続きを完了できない可能性があります。二度手間にならないよう、チェックリストを活用して準備を万全にしましょう。

雇用保険をもらいながら働く?技能習得手当も活用しよう

基本手当受給中のアルバイト・パート

基本手当の受給中にアルバイトやパートをすることは可能です。

しかし、注意すべき点がいくつかあります。まず、「失業」とは「労働の意思と能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態」を指します。そのため、一定以上の収入があったり、労働時間が長すぎたりすると、失業とみなされず、基本手当の支給が停止されたり、減額されたりする可能性があります。

一般的な目安としては、1日の労働時間が4時間未満で、週の労働時間が20時間未満であれば、基本手当と同時に収入を得られるケースが多いですが、収入額によっては支給額が調整されます。また、給付制限期間中(自己都合退職者で1ヶ月間)のアルバイトは比較的自由が利きますが、待期期間中(7日間)のアルバイトは基本的に認められていません。

どのような働き方をする場合でも、必ずハローワークに申告し、指示を仰ぐようにしてください。申告を怠ると不正受給となり、厳しい罰則が科せられる可能性があります。

再就職手当・就業促進手当の活用

基本手当は失業中の生活を支えるものですが、早期の再就職を促進するための制度も充実しています。

その代表的なものが「再就職手当」と「就業促進手当」です。

  • 再就職手当:

    所定給付日数を多く残して安定した職業に就いた場合に支給される一時金です。残りの給付日数が多いほど、支給される金額も高くなります。例えば、所定給付日数の3分の2以上を残して再就職した場合は、残日数の70%に相当する額、3分の1以上を残した場合は60%に相当する額が支給されます。

  • 就業促進手当:

    再就職手当の他に、早期再就職を支援する様々な手当の総称です。具体的には、就業手当(アルバイトなどで一定の収入があった場合に基本手当の減額分を補填)、常用就職支度手当(再就職手当の対象とならない就職困難者への支援)などがあります。

これらの手当を賢く活用することで、安心して再就職を目指すことができます。受給には条件があるため、ハローワークで詳細を確認しましょう。

教育訓練給付・技能習得手当でスキルアップ

失業期間は、自身のスキルアップを図る絶好の機会でもあります。雇用保険制度には、再就職に役立つスキルや知識の習得を支援するための「教育訓練給付制度」と「技能習得手当」があります。

  • 教育訓練給付制度:

    厚生労働大臣が指定する教育訓練講座を修了した場合に、受講費用の一部が支給される制度です。種類は「専門実践教育訓練給付」「特定一般教育訓練給付」「一般教育訓練給付」があり、支給額は訓練の種類や個人の状況によって異なりますが、最大で受講費用の70%(年間56万円上限)が支給されるものもあります。専門性の高いスキル習得を目指す方には特に有効です。

  • 技能習得手当:

    ハローワークの指示により、公共職業訓練を受講する場合に支給される手当です。これには「受講手当」(日額500円、上限20,000円)や「通所手当」(交通費)などが含まれ、訓練期間中の生活を支援します。

2025年4月からの法改正では、教育訓練給付の拡充が予定されており、失業期間中のスキルアップ支援がさらに強化される見込みです。積極的にこれらの制度を活用し、より良い再就職を目指しましょう。

雇用保険が切れたら?再加入や再就職支援について

受給期間延長の申請

基本手当の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。この期間内に所定給付日数分の手当を受給し終える必要がありますが、やむを得ない事情でこの期間内に求職活動ができない場合があります。

このようなケースでは、受給期間の延長申請が可能です。

主な延長事由としては、以下のものが挙げられます。

  • 病気や怪我(30日以上連続して就職できない場合)
  • 妊娠・出産・育児(3歳未満の子の育児を含む)
  • 家族の介護
  • 事業の開始準備

これらの理由で30日以上続けて働けない場合、最大で3年間、受給期間を延長することができます。申請は、延長の事由が発生した翌日から1ヶ月以内に行うのが望ましいですが、事情によっては遅れても認められる場合があります。ただし、延長が認められる期間には限りがあり、延長後の合計期間が4年を超えることはありません。該当する方は、早めにハローワークに相談し、必要な手続きを行いましょう。

再就職支援制度の活用

雇用保険の基本手当は、あくまでも再就職までの期間を支援するものです。ハローワークは、基本手当の支給だけでなく、多岐にわたる再就職支援サービスを提供しています。

これらの支援制度を積極的に活用することで、次の仕事を見つけるまでの期間を短縮し、より希望に合った職場を見つけることが可能です。

主な再就職支援制度には、以下のようなものがあります。

  • 職業相談: 専門の相談員が、個別の状況に応じた求職活動のアドバイスを提供します。
  • 職業紹介: 希望やスキルに合わせた求人情報の提供や、マッチングを行います。
  • 職業訓練: 新たなスキルを習得するための無料の職業訓練(前述の技能習得手当が支給されるものも含む)を提供します。
  • 就職支援セミナー: 履歴書・職務経歴書の書き方、面接対策、ビジネスマナーなど、実践的なスキルを学ぶセミナーを開催します。
  • 合同企業説明会: 複数の企業が参加する説明会や面接会を定期的に開催し、企業との出会いの場を提供します。

ハローワークのウェブサイトや窓口で、利用可能な支援制度について詳しく確認し、積極的に活用しましょう。

雇用保険料率の変更と影響

雇用保険制度は、国の経済状況や雇用情勢に合わせて常に変化しています。2025年4月1日からも、雇用保険料率の一部が変更されることが決定しており、これは労働者と事業主双方に影響を与えるものです。

具体的には、失業等給付等の保険料率が一般の事業で6/1,000から5.5/1,000に変更されます(労働者負担・事業主負担)。これは、労働者にとっては手取り額がわずかに増えることになり、事業主にとっても負担が軽減されることになります。

雇用保険料は、基本手当をはじめとする様々な雇用保険事業の財源となっています。料率の変更は、これらの制度の持続可能性や、現在の経済状況に合わせた調整の一環として行われます。私たち労働者も、雇用保険制度がどのように機能し、どのように支えられているかを理解することで、より賢くその恩恵を受けることができるでしょう。

最新の正確な情報については、常にハローワークや厚生労働省の公式ウェブサイトで確認するようにしてください。