概要: 2025年(令和7年)の雇用保険料率改定に備え、過去の推移や最新情報を分かりやすく解説します。計算方法や小数点以下の取り扱いについても触れ、雇用保険制度の理解を深めます。
2025年(令和7年)の雇用保険料率に関する最新情報が厚生労働省より公表され、多くの企業や労働者がその内容に注目しています。
今回は、2025年度からの雇用保険料率の改定ポイントから、過去の推移、さらには具体的な計算方法や制度の基本まで、網羅的に解説していきます。
8年ぶりの引き下げとなる今回の改定は、私たちの働き方や生活にどのような影響をもたらすのでしょうか。
最新情報をしっかり押さえ、雇用保険制度への理解を深めていきましょう。
雇用保険料率の推移:令和5年~令和6年度の動向
コロナ禍からの変動と令和5年度
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、世界の経済に大きな打撃を与え、日本も例外ではありませんでした。
企業活動の停滞による失業者の増加や、休業を余儀なくされた労働者への給付金・助成金の支出増大は、雇用保険財政に大きな影響を及ぼしました。
これに対応するため、雇用保険料率は一時的に引き上げられる措置が取られ、例えば令和5年度(2023年度)においては、一般の事業の場合で合計1.55%(労働者負担0.6%+事業主負担0.95%)まで上昇した時期がありました。
この料率引き上げは、失業等給付の財源を確保し、雇用の安定を支援するための緊急的な対応として行われたものです。
当時の厳しい雇用情勢を反映した動きと言えるでしょう。
令和6年度の据え置きと経済状況
令和6年度(2024年度)に入ると、経済状況は緩やかながら回復の兆しを見せ始めました。
企業の業績回復や新規採用の動きが活発化し、失業率は徐々に改善傾向にありました。
このような状況下で、雇用保険料率は令和5年度から据え置かれたと見られています。
これは、雇用保険財政が安定に向かいつつも、まだ完全な引き下げには至らないという判断が背景にあったと推測されます。
経済回復の恩恵は、失業者の減少という形で現れ、雇用保険の積立金にも好影響をもたらし始めました。
この時期の安定は、次年度の料率改定に向けた重要なステップとなりました。
今後の展望と積立金の役割
雇用保険料率は、国の経済状況、失業者の数、そして雇用保険の積立金の残高など、様々な要因に基づいて毎年見直しが行われます。
今回の令和7年度での引き下げ決定は、まさにそうした要因の改善を反映したものです。
積立金が十分に確保されていることは、将来的な経済変動や予期せぬ事態が発生した際に、安定した給付を継続するための重要な基盤となります。
また、事業主が負担する「雇用保険二事業」の財源も、この積立金の一部から賄われています。
これは、失業予防、労働者の能力開発、雇用機会の拡大などを目的とした事業であり、日本の労働市場の活性化に不可欠な役割を担っています。
今後の経済状況によっては、再び料率が変動する可能性も常にありますが、現在のところは安定傾向が続いています。
令和7年度(2025年)の雇用保険料率はいつから?最新情報
適用開始日と全体の傾向
2025年(令和7年)の雇用保険料率は、2025年4月1日から適用開始され、2026年3月31日までの期間にわたって適用されます。
厚生労働省からの発表によると、全体として失業等給付の保険料率が引き下げられることとなり、これは実に8年ぶりの雇用保険料率の低下となります。
この引き下げの背景には、コロナ禍からの経済回復が進み、失業者が減少したことが大きく寄与しています。
コロナ禍で一時的に引き上げられていた料率が、雇用環境の改善に伴い、積立金に影響がない範囲で引き下げが可能になったというわけです。
この改定は、企業にとっては人件費負担の軽減、労働者にとっては手取り額の増加に繋がるため、多くの関係者から注目されています。
業種別の具体的な料率:労働者負担
令和7年度の雇用保険料率は、事業の種類によって細かく設定されています。
まずは、労働者の方々が負担する失業等給付と育児休業給付の合計料率を見ていきましょう。
主な業種別の料率は以下の通りです。
- 一般の事業: 0.55% (5.5/1,000)
- 農林水産・清酒製造業: 0.65% (6.5/1,000)
- 建設業: 0.65% (6.5/1,000)
これらの料率は、ご自身の給与から天引きされる雇用保険料の計算に直接影響します。
ご自身の所属する事業の種類を把握しておくことが重要です。
業種別の具体的な料率:事業主負担と合計
次に、事業主が負担する部分と、労働者負担分を合わせた合計の雇用保険料率を見ていきましょう。
事業主負担には、労働者負担分と同じく失業等給付と育児休業給付に加え、雇用保険二事業のための保険料も含まれています。
以下の表で、主な業種別の具体的な料率を確認してください。
事業の種類 | 事業主負担(失業等給付・育児休業給付+雇用保険二事業) | 合計雇用保険料率 |
---|---|---|
一般の事業 | 0.90% (9/1,000) | 1.45% |
農林水産・清酒製造業 | 1.00% (10/1,000) | 1.65% |
建設業 | 1.10% (11/1,000) | 1.75% |
注: 園芸サービス、牛馬の育成、酪農、養鶏、養豚、内水面養殖および特定の船員を雇用する事業については、一般の事業の率が適用されます。
事業主の皆さまは、これらの数値を基に正確な保険料計算を行う必要があります。
雇用保険料率の計算方法:端数・小数点以下の取り扱い
基本的な計算式と賃金総額の範囲
雇用保険料を算出する際の基本的な計算式は非常にシンプルです。
それは「雇用保険料額 = 賃金総額 × 雇用保険料率」となります。
この賃金総額には、基本給はもちろんのこと、役職手当、通勤手当、残業代、賞与など、労働の対価として支払われる全てのものが含まれます。
ただし、退職金や結婚祝い金などの慶弔金、福利厚生として支給される現物支給の一部などは含まれませんので注意が必要です。
正確な賃金総額を把握することが、正しい雇用保険料を計算する第一歩となります。
特に、賞与が支給される月は、その分雇用保険料も高くなることに留意しましょう。
計算例で具体的に理解する
具体的な例を挙げて、雇用保険料の計算方法をより深く理解しましょう。
例えば、毎月の給与総支給額が20万円で、一般の事業に勤務する労働者の場合、労働者負担の雇用保険料率は0.55%です。
この場合、労働者負担分の雇用保険料は以下のようになります。
200,000円 × 0.0055 = 1,100円
したがって、この労働者の給与からは毎月1,100円の雇用保険料が天引きされることになります。
同様に、事業主も同額の失業等給付・育児休業給付分に加え、雇用保険二事業分の保険料を負担します。
ご自身の給与明細を確認する際に、この計算例を参考にしてみてください。
端数処理のルールと注意点
雇用保険料を計算した結果、1円未満の端数(小数点以下の金額)が生じることがあります。
この場合、原則として「50銭未満切り捨て、50銭以上切り上げ」というルールに従って、1円単位に調整します。
例えば、計算結果が1,100.49円であれば1,100円に、1,100.50円であれば1,101円となります。
この端数処理は、給与計算や社会保険料の計算において非常に重要なポイントであり、正確な処理が求められます。
事業主の方は、給与計算ソフトの機能を確認したり、手計算の場合は特に注意深く処理を行ったりする必要があります。
わずかな端数でも、積み重なれば大きな違いとなる可能性があります。
令和6年度の雇用保険料率:具体的な数値と改定のポイント
令和6年度の料率再確認と背景
令和6年度(2024年度)の雇用保険料率は、令和5年度から据え置かれたと見られます。
一般の事業の場合、労働者負担が0.6%、事業主負担が0.95%(合計1.55%)でした。
この据え置きは、コロナ禍からの経済回復がまだ途上にあり、雇用保険財政の安定を継続的に図る必要があったためと考えられます。
失業率の改善傾向はあったものの、国際情勢の不安定さや物価高騰など、経済全体にはまだ不透明な要素も存在していました。
このような背景から、急激な料率の変更を避け、慎重な判断がなされた結果が、令和6年度の料率に反映されていると言えるでしょう。
雇用保険料率改定のプロセス
雇用保険料率の改定は、単一の要因で決定されるわけではありません。
毎年、厚生労働省が中心となり、その時点での経済状況、失業給付の受給者数、雇用保険の積立金の残高などを総合的に分析し、料率の見直しを行います。
特に重要なのは、失業等給付にかかる費用と積立金のバランスです。
積立金が過剰に増えれば引き下げの余地が生まれ、逆に減少すれば引き上げが検討されます。
このプロセスは、日本の労働市場の安定と、保険制度の健全な維持を目的としています。
料率改定は、毎年4月に実施されるのが通例であり、その年の経済動向や雇用情勢を反映した、重要な政策決定と言えます。
事業主と労働者への影響
雇用保険料率の変動は、事業主と労働者の双方に直接的な影響を及ぼします。
例えば、令和7年度の引き下げでは、労働者にとっては給与からの天引き額が減ることで、手取り額が増加するメリットがあります。
これは、日々の生活費に充てられる金額が増えることを意味し、家計にとっては嬉しいニュースです。
一方、事業主にとっては、会社が負担する雇用保険料が減少するため、人件費負担の軽減に繋がります。
特に従業員数の多い企業では、この負担軽減が経営に与える影響は小さくありません。
浮いた資金を設備投資や従業員への福利厚生に充てることで、企業活動の活性化にも繋がる可能性があります。
雇用保険制度の理解を深める:加入期間や給付金について
雇用保険の役割と給付の種類
雇用保険は、単に失業した時に給付金を受け取るだけの制度ではありません。
その役割は多岐にわたり、労働者の生活と雇用の安定を保障する重要な社会保険制度の一つです。
具体的には、失業時の「基本手当」の支給はもちろん、育児休業中の収入減を補う「育児休業給付金」や、介護休業中の「介護休業給付金」など、人生の様々なライフイベントにおける収入をサポートします。
労災保険と合わせて「労働保険」と総称されますが、労災保険料が全額事業主負担であるのに対し、雇用保険料は労働者と事業主の双方が負担する点が大きな違いです。
これらの給付は、労働者が安心して働き続けられる環境を整える上で不可欠なセーフティネットとなっています。
雇用保険二事業とは?その重要性
雇用保険制度の中には、事業主のみが負担する「雇用保険二事業」というものがあります。
これは、具体的には「雇用安定事業」と「能力開発事業」の二つの柱から成り立っています。
「雇用安定事業」は、失業の予防や雇用機会の拡大を目的とし、雇用調整助成金や生涯現役支援助成金などが含まれます。
一方、「能力開発事業」は、労働者の職業能力の開発・向上を目的とし、職業訓練への助成金や教育訓練給付金などがこれに該当します。
これらの事業は、労働者が新しいスキルを習得したり、企業が従業員の定着を図ったりする上で非常に重要な役割を果たしています。
単に失業者を救済するだけでなく、積極的に雇用の創出や維持、労働者のスキルアップを支援することで、労働市場全体の活性化と企業の競争力向上に寄与しているのです。
加入要件と給付金受給のポイント
雇用保険の各種給付金を受け取るためには、いくつかの加入要件を満たす必要があります。
基本的な要件としては、週20時間以上の労働時間で、31日以上の雇用見込みがある場合に加入対象となります。
そして、給付金の種類によって、さらに個別の受給要件が定められています。
例えば、失業手当である「基本手当」を受け取るためには、原則として離職日以前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上あることが必要です(特定受給資格者や特定理由離職者の場合は異なる場合があります)。
また、育児休業給付金や介護休業給付金も、一定期間以上の被保険者期間や、賃金が休業前より一定割合以上減少していることなどの条件があります。
これらの要件は、厚生労働省やハローワークのウェブサイトで詳細を確認できるため、ご自身が対象となる給付金の情報を事前に調べておくことが重要です。
適切な申請を行うことで、必要な時に経済的なサポートを受けることができます。
まとめ
よくある質問
Q: 雇用保険料率はいつ改定されるのですか?
A: 一般的に、雇用保険料率は毎年度の見直しが行われ、4月から適用されることが多いです。令和7年度(2025年)の具体的な適用開始時期については、厚生労働省からの正式発表をご確認ください。
Q: 令和7年度の雇用保険料率は、令和6年度から変更されますか?
A: 現時点(2024年5月)では、令和7年度の雇用保険料率に関する確定情報はありません。厚生労働省の発表を注視する必要がありますが、過去の推移を踏まえると、社会情勢によって変更される可能性はあります。
Q: 雇用保険料率の計算で、端数や小数点以下の扱いはどうなりますか?
A: 雇用保険料率の計算では、小数点以下第3位を四捨五入するなど、一定のルールに基づいて端数処理が行われます。具体的な計算例とともに、最新の計算方法をご確認ください。
Q: 令和6年度の雇用保険料率はいくらですか?
A: 令和6年度の雇用保険料率は、一般の労働者(被保険者)で賃金総額の1.2%(雇用保険2事業分0.4%を含む)です。事業主負担分は別途設定されています。
Q: 雇用保険制度について、もっと詳しく知るにはどうすれば良いですか?
A: 雇用保険制度の詳細は、厚生労働省のウェブサイトや、最寄りのハローワークで提供されている資料をご確認いただくのが確実です。給付金や加入条件など、様々な情報が掲載されています。