1. 雇用保険の基本:対象者と対象外になるケース
    1. 雇用保険とは?その役割と目的
    2. 雇用保険の「加入義務」が生じる条件
    3. 雇用保険の対象外となる具体的なケース
  2. パート・アルバイトの雇用保険加入条件とは?
    1. パート・アルバイトも対象!基本条件のおさらい
    2. 「1週間の所定労働時間20時間以上」の正しい理解
    3. 「31日以上引き続き雇用される見込み」の判断基準
  3. 雇用保険の加入条件を満たさなくなった場合
    1. 退職時の手続きと雇用保険の基本
    2. 自己都合と会社都合、給付要件の違い
    3. 雇用保険の適用が外れた後の注意点
  4. 知っておきたい!雇用保険の年齢・賃金・期間
    1. 65歳以上でも加入できる!雇用保険と年齢制限
    2. 雇用保険料の計算と賃金との関係
    3. 失業給付を受けるための「被保険者期間」
  5. 複数箇所勤務や40歳・45歳以上の雇用保険について
    1. 複数の職場で働く「マルチジョブホルダー制度」
    2. 40歳・45歳以上の雇用保険と介護保険料
    3. 育児・介護休業給付金も雇用保険から支給
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 雇用保険の一般的な加入条件は何ですか?
    2. Q: パートやアルバイトでも雇用保険に加入できますか?
    3. Q: 雇用保険の対象外になる年齢はありますか?
    4. Q: 雇用保険の対象となる賃金とは具体的に何ですか?
    5. Q: 雇用保険の対象期間はどのように決まりますか?

雇用保険の基本:対象者と対象外になるケース

雇用保険とは?その役割と目的

雇用保険は、私たち労働者が安心して働けるよう、国が設けている大切なセーフティネット制度です。
もし失業してしまっても、一定の条件を満たせば給付金を受け取り、次の仕事を探すまでの生活を支えてくれます。

再就職の支援はもちろんのこと、子育て中のパパ・ママをサポートする育児休業給付金や、家族の介護が必要な方を支える介護休業給付金も、この雇用保険制度に含まれています。

さらに、企業が雇用を維持するための助成金なども、雇用保険から支払われます。
つまり、私たち労働者だけでなく、企業にとっても非常に重要な役割を担っているのです。

万が一の事態に備えるだけでなく、様々なライフイベントをサポートする、まさに「働く人を守る」ための制度と言えるでしょう。

雇用保険の「加入義務」が生じる条件

雇用保険は、働く人の雇用形態に関わらず、特定の条件を満たすすべての労働者に加入が義務付けられています。
これは、事業主と労働者双方の意思とは関係なく、法律で定められたものです。

主な加入条件は以下の3つです。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 31日以上引き続き雇用されることが見込まれること
  • 学生ではないこと(ただし、例外あり)

これらの条件をすべて満たしている場合、パートやアルバイトであっても、事業主は雇用保険への加入手続きを行う義務があります。
もし、条件を満たしているにもかかわらず会社が加入手続きを行わない場合は、法律違反となりますので注意が必要です。

疑問や不安がある場合は、会社の所在地を管轄するハローワークに相談することができます。
自身の権利を守るためにも、加入状況を定期的に確認することが大切です。

雇用保険の対象外となる具体的なケース

雇用保険は多くの労働者に適用されますが、残念ながら対象外となるケースも存在します。
主な対象外のケースは、前述の加入条件のいずれかを満たさない場合です。

  • 1週間の所定労働時間が20時間未満の場合:例えば、週15時間勤務のパートタイム労働者は原則として対象外です。
  • 31日未満の雇用期間であり、更新の見込みがないことが明示されている場合:短期的なスポット勤務などが該当します。
  • 学生である場合:昼間の学校に通う学生は、基本的には雇用保険の加入対象外となります。

ただし、学生であっても、夜間大学や定時制高校の学生、休学中の学生は、他の加入条件を満たせば例外的に加入が認められることがあります。
これは、学業と並行して安定的な就労を継続しているとみなされるためです。

自身が対象になるかどうかの判断に迷った場合は、まずは勤務先の担当部署やハローワークに確認することをおすすめします。
誤った認識でメリットを享受できないことのないよう、正確な情報を得ることが重要です。

パート・アルバイトの雇用保険加入条件とは?

パート・アルバイトも対象!基本条件のおさらい

「パートだから」「アルバイトだから」という理由で雇用保険に入れない、と誤解されている方が少なくありません。
しかし、雇用保険の加入条件は、正社員もパート・アルバイトも基本的に同じです。

雇用形態に関わらず、以下の3つの条件をすべて満たせば、雇用保険の加入対象となります。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 31日以上引き続き雇用されることが見込まれること
  3. 学生ではないこと(ただし、例外あり)

これらの条件は、労働者の働き方を実態に合わせて評価するためのものです。
たとえ短時間勤務であっても、一定の要件を満たせば、失業時のセーフティネットや育児・介護の支援を受けることができるのです。

自身の労働条件と照らし合わせ、加入対象となるかを確認しましょう。
もし、条件を満たしているにも関わらず加入できていない場合は、会社に確認するか、ハローワークに相談することが大切です。

「1週間の所定労働時間20時間以上」の正しい理解

雇用保険の加入条件の一つである「1週間の所定労働時間が20時間以上」とは、単に週に20時間以上働いた実績があるという意味ではありません。
雇用契約書や就業規則で定められた労働時間が、1週間あたり20時間以上であることが必要です。

例えば、雇用契約では週15時間勤務と定められているものの、忙しくて残業が多く、一時的に週20時間を超える週があったとしても、原則として雇用保険の加入対象にはなりません。
あくまで、「所定」の労働時間が基準となります。

ただし、例外もあります。
例えば、複数の事業所で働く65歳以上の労働者の場合、それぞれの事業所での所定労働時間が週5時間以上20時間未満であっても、合算して週20時間以上になれば、雇用保険の加入対象となる「マルチジョブホルダー制度」が利用できる場合があります。
この制度については後ほど詳しく解説します。

自身の契約内容を改めて確認し、正確な所定労働時間を把握することが重要です。

「31日以上引き続き雇用される見込み」の判断基準

もう一つの重要な条件は「31日以上引き続き雇用されることが見込まれること」です。
これは、短期的な雇用ではなく、ある程度の期間にわたって雇用が継続されることを示すものです。

具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 雇用期間の定めがない場合:正社員や無期雇用のパート・アルバイトがこれにあたります。
  • 雇用契約に更新規定があり、31日以上雇用される見込みがある場合:例えば、「契約更新あり」と明示されている場合や、過去の実績から更新が繰り返されてきた場合などです。
  • 雇用契約が31日未満であっても、更新規定や過去の実績により、31日以上の雇用が見込まれる場合:試用期間が31日未満でも、その後に長期雇用が見込まれる場合などが該当します。

雇用契約書に「更新なし」と明記されている場合は、原則として対象外となりますが、実態として更新が繰り返され、31日以上の雇用が続いている場合は、加入対象となる可能性もあります。

この条件も、雇用契約の内容だけでなく、実際の雇用の実態に基づいて判断されるため、疑問がある場合は会社やハローワークに相談するようにしましょう。

雇用保険の加入条件を満たさなくなった場合

退職時の手続きと雇用保険の基本

雇用保険の加入条件を満たさなくなった場合、最も一般的なのは退職するケースでしょう。
退職すると、これまで加入していた雇用保険の「被保険者資格」を喪失する手続きが会社によって行われます。

この際、会社から「離職票」が発行されます。
離職票は、失業給付(基本手当)を受け取るためにハローワークに提出する、非常に重要な書類です。

離職票には、退職理由や離職前の賃金、雇用保険の加入期間などが記載されています。
記載内容に誤りがないか、特に退職理由については、失業給付の受給期間や金額に影響するため、よく確認することが大切です。

万が一、記載内容に異議がある場合は、ハローワークにその旨を申し出ることができます。
会社が行う手続きは、あなたの失業後の生活を左右する可能性があるため、無関心でいることなく、しっかりと内容を把握しておきましょう。

自己都合と会社都合、給付要件の違い

雇用保険の失業給付(基本手当)を受給するためには、一定の期間、雇用保険に加入していた実績(被保険者期間)が必要です。
原則として、離職の日以前2年間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が12ヶ月以上必要となります。

さらに、失業給付の受給資格があっても、退職理由によって給付が始まるまでの期間が異なります。

  • 自己都合退職の場合:正当な理由がない自己都合退職では、通常、ハローワークで求職の申し込みをしてから約2ヶ月間の給付制限期間が設けられます(令和2年10月1日以降の離職票から、以前の3ヶ月から短縮)。
  • 会社都合退職の場合:倒産や解雇など、やむを得ない理由による会社都合退職(特定受給資格者)や、契約満了で更新されなかった場合(特定理由離職者)などは、この給付制限期間がありません。また、被保険者期間の条件も「離職の日以前1年間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が6ヶ月以上」と緩和されます。

パートやアルバイトの方でも、会社都合による退職は十分にあり得ますので、自身の退職理由を正確に把握し、適切な手続きを行うことが重要です。

雇用保険の適用が外れた後の注意点

雇用保険の適用が外れた、つまり失業した場合には、失業給付(基本手当)を受けられる可能性がありますが、それ以外のメリットも受けられなくなることに注意が必要です。

例えば、先に述べた育児休業給付金や介護休業給付金は、雇用保険の被保険者でなければ受給できません。
また、キャリアアップのための教育訓練給付金なども、雇用保険の加入者であったことが条件となります。

失業給付の受給期間は、原則として離職の翌日から1年間です。
この期間内に求職活動を行い、給付を受け終わるか、再就職を果たす必要があります。
病気や怪我、妊娠・出産、育児などによりすぐに働くことができない場合は、申請すれば受給期間の延長が認められる制度もあります。

再就職が決まり、再び雇用保険の加入条件を満たした場合は、速やかに新たな勤務先で加入手続きを行いましょう。
雇用保険は、一度加入期間がリセットされても、再度加入すればその後の被保険者期間が積み重なっていきます。
空白期間を最小限に抑えることが、将来の安心に繋がります。

知っておきたい!雇用保険の年齢・賃金・期間

65歳以上でも加入できる!雇用保険と年齢制限

かつては、65歳になると雇用保険の取り扱いが変わる「高年齢継続被保険者」という区分がありましたが、現在は制度が改正され、原則として年齢による加入条件の区別はありません

つまり、65歳以上の方であっても、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される見込みがあり、学生ではないという条件を満たせば、他の年代の労働者と同じように雇用保険に加入することができます。

これは、高齢者の就労を促進し、長期にわたる安定した雇用を支援するための重要な改正です。
65歳以降も働き続けたいと考える方にとって、失業時の生活保障や再就職支援が受けられることは、大きな安心材料となるでしょう。

ただし、65歳以上の労働者で、複数の事業所で働いている場合は、「マルチジョブホルダー制度」という特別な制度を利用できる場合があります。
これについては次のセクションで詳しく解説しますが、高齢者の多様な働き方に対応できるよう、雇用保険制度も進化していると言えます。

雇用保険料の計算と賃金との関係

雇用保険の保険料は、労働者の賃金に基づいて計算され、労働者と事業主がそれぞれ負担します。
その負担割合は、業種によって異なりますが、毎年見直されることがあります。

例えば、2024年4月現在の一般事業における保険料率は以下の通りです。

区分 労働者負担率 事業主負担率 合計
失業等給付 0.5% 0.85% 1.35%
雇用保険二事業 0% 0.3% 0.3%
合計 0.5% 1.15% 1.65%

この表によると、例えば月収20万円の場合、労働者負担分として月1,000円(20万円 × 0.5%)が給与から天引きされることになります。

このように、わずかな負担で万が一の際の大きな保障を得られるのが雇用保険のメリットです。
また、失業給付の金額や育児休業給付金の金額なども、離職前の賃金をベースに計算されます。
ご自身の給与明細を確認し、雇用保険料が正しく徴収されているかを確認することをおすすめします。

失業給付を受けるための「被保険者期間」

失業給付(基本手当)を受け取るためには、雇用保険の「被保険者期間」が一定以上あることが条件となります。
この期間は、あなたが雇用保険に加入していた実績を示すものです。

一般的な自己都合退職の場合、原則として離職の日以前2年間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が12ヶ月以上必要です。

しかし、倒産や解雇などによる会社都合退職(特定受給資格者)や、契約期間満了で更新されなかった場合など(特定理由離職者)では、要件が緩和されます。
その場合は、離職の日以前1年間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が6ヶ月以上あれば、失業給付の対象となります。

これらの被保険者期間は、失業給付が受けられるかどうかだけでなく、給付される日数にも影響を与えます。
つまり、加入期間が長いほど、より長く給付を受けられる可能性が高まるのです。

ご自身の被保険者期間がどれくらいあるかについては、離職票やハローワークで確認することができます。
長期的なキャリアプランを考える上でも、重要な情報となるでしょう。

複数箇所勤務や40歳・45歳以上の雇用保険について

複数の職場で働く「マルチジョブホルダー制度」

多様な働き方が広がる中で、複数の事業所で働く方も増えています。
特に65歳以上の方が複数の事業所で働く場合、雇用保険の加入に関して「マルチジョブホルダー制度」という特別な制度が設けられています。

この制度は、以下のような条件をすべて満たす場合に利用できます。

  • 複数の事業所で雇用されている65歳以上の労働者であること。
  • それぞれの事業所での1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であること。
  • 複数の事業所での1週間の所定労働時間を合算すると、合計で20時間以上となること。
  • それぞれの事業所で31日以上引き続き雇用されることが見込まれること。

これらの条件を満たした場合、労働者自身がハローワークに届け出を行うことで、主たる事業所を定め、複数事業所の労働時間を合算して雇用保険に加入することができます。

この制度は、高齢者が柔軟な働き方をしながらも、雇用保険によるセーフティネットを確保できるようにすることを目的としています。
該当する方は、積極的に活用を検討してみましょう。

40歳・45歳以上の雇用保険と介護保険料

雇用保険には、年齢による保険料率の変動は原則ありませんが、40歳以上になると、社会保険料全体で考慮すべき点があります。
それは、介護保険料の負担が生じることです。

40歳以上になると、医療保険料(健康保険料)と合わせて、介護保険第2号被保険者として介護保険料を支払う義務が生じます。
これは、雇用保険料とは全く別の社会保険料です。

介護保険料は、加入している健康保険組合や市町村によって料率や徴収方法が異なりますが、基本的に給与から天引きされるため、手取り額が減ることになります。

給与明細を見ると、「雇用保険料」の他に「健康保険料」や「介護保険料」といった項目が記載されていますので、ご自身の負担額を確認してみてください。
雇用保険の加入条件自体には年齢制限はありませんが、40歳という節目で社会保険料全体の見直しが必要になることを知っておくと良いでしょう。

育児・介護休業給付金も雇用保険から支給

雇用保険に加入していることの大きなメリットの一つが、失業給付だけでなく、育児休業給付金や介護休業給付金の受給資格が得られることです。
これらの給付金は、私たちの大切なライフイベントを経済的に支援し、仕事と家庭の両立を可能にするための重要な制度です。

育児休業給付金は、子どもが1歳になるまで(特別な事情がある場合は最長2歳まで)育児休業を取得する労働者に対し、休業期間中の賃金の一部を支給します。
介護休業給付金も同様に、家族の介護のために休業を取得する労働者を支援する制度です。

これらの給付金を受け取るためには、雇用保険の被保険者であることに加え、育児休業開始前または介護休業開始前2年間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あるなどの条件を満たす必要があります。

これらの制度は、男性も女性も利用できます。
「雇用保険は失業した時だけ」というイメージがあるかもしれませんが、人生の様々な段階で私たちを支えてくれる、非常に幅広い役割を担っているのです。
いざという時に困らないよう、ご自身の雇用保険の加入状況と制度内容を把握しておくことを強くおすすめします。