1. 雇用保険の基本:加入のメリットと対象者
    1. 雇用保険ってどんな制度?その大きなメリット
    2. パート・アルバイトも対象!加入条件の基本
    3. 2025年度の保険料率はいくら?計算例もご紹介
  2. パート・アルバイトのための雇用保険加入条件:時間数と月給の目安
    1. 週20時間ってどのくらい?具体的な働き方
    2. 31日以上の雇用見込みとは?短期バイトでも対象?
    3. 月給で見る雇用保険料の目安
  3. 雇用保険加入条件の年齢制限と学生の場合
    1. 年齢制限はある?定年後の働き方と雇用保険
    2. 学生でも加入できる?適用除外となるケース
    3. 二重加入はできる?複数の職場で働く場合
  4. 雇用保険加入条件の変更点と2025年に向けての注意点
    1. 2025年4月改正の主要ポイントを再確認
    2. 2028年改正への展望:週10時間へ短縮
    3. 雇用保険加入漏れを防ぐために:事業主と労働者の義務
  5. 意外と知らない?雇用保険加入のQ&A
    1. 加入条件を満たしているのに会社が手続きしてくれない場合は?
    2. 雇用保険被保険者証はどこでもらえる?確認方法は?
    3. 雇用保険料はどのように計算されるの?手取りへの影響は?
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 雇用保険に加入できる年齢の上限・下限はありますか?
    2. Q: パートで週10時間しか働いていない場合、雇用保険に加入できますか?
    3. Q: 雇用保険の加入条件は月によって変動しますか?
    4. Q: 学生でも雇用保険に加入することはできますか?
    5. Q: 2025年に雇用保険の加入条件に変更はありますか?

雇用保険の基本:加入のメリットと対象者

雇用保険ってどんな制度?その大きなメリット

雇用保険は、働く皆さんの生活と再就職を支える大切なセーフティネットです。

例えば、会社を辞めたり、事業が立ち行かなくなったりして失業してしまった場合、生活費の不安を軽減するための「失業等給付」を受け取ることができます。

また、育児や介護のために仕事を休まざるを得ない時にも、「育児休業給付」や「介護休業給付」が支給され、安心してライフイベントに取り組めるようサポートしてくれます。

さらに、スキルアップのための教育訓練を受ける際には「教育訓練給付金」が、2025年10月からは「教育訓練休暇給付金」も創設される予定で、キャリア形成の支援も手厚くなっています。

これらの給付は、万が一の事態に備えるだけでなく、皆さんのキャリアを広げるための後押しにもなる、非常に重要な制度なのです。

パート・アルバイトも対象!加入条件の基本

「パートだから」「アルバイトだから」と、雇用保険は自分には関係ないと思っていませんか?

実は、2025年現在、パートやアルバイトの方でも以下の2つの条件を満たせば、雇用保険の加入対象となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上であること
  • 同一の事業主に継続して31日以上雇用される見込みがあること

以前は「6ヶ月以上働く見込み」が必要でしたが、この条件が「31日以上働く見込み」へと緩和されたことで、より多くのパート・アルバイトの方が雇用保険に加入しやすくなりました。

ただし、週の所定労働時間が20時間未満の場合は加入対象外となります。

そして、さらに嬉しいお知らせとして、2028年10月からは週の所定労働時間が10時間以上であれば、雇用保険の加入対象となる予定です。これにより、さらに多くの短時間労働者の方々がセーフティネットの恩恵を受けられるようになります。

2025年度の保険料率はいくら?計算例もご紹介

雇用保険料は、事業の種類によって料率が異なります。

2025年度(令和7年度)の雇用保険料率は、以下の通りです。

事業の種類 項目 労働者負担 事業主負担 合計保険料率
一般の事業 失業等給付・育児休業給付 5.5/1,000 (0.55%) 9/1,000 (0.90%) 18/1,000 (1.80%)
雇用保険二事業 3.5/1,000 (0.35%)
合計 0.55% 1.25%
農林水産業・清酒製造業 失業等給付・育児休業給付 6.5/1,000 (0.65%) 10/1,000 (1.00%) 20/1,000 (2.00%)
雇用保険二事業 3.5/1,000 (0.35%)
合計 0.65% 1.35%
建設業 失業等給付・育児休業給付 6.5/1,000 (0.65%) 11/1,000 (1.10%) 22/1,000 (2.20%)
雇用保険二事業 4.5/1,000 (0.45%)
合計 0.65% 1.55%

例えば、毎月の給与総支給額が20万円で、一般の事業に勤務している場合、労働者負担分の雇用保険料は以下のように計算されます。

200,000円 × 0.0055 = 1,100円

このように、給与から差し引かれる保険料は決して高額ではありませんが、万が一の際に大きな安心を与えてくれるものです。

パート・アルバイトのための雇用保険加入条件:時間数と月給の目安

週20時間ってどのくらい?具体的な働き方

雇用保険の加入条件である「週の所定労働時間20時間以上」とは、具体的にどのような働き方を指すのでしょうか?

これは、労働契約書などで定められた1週間あたりの労働時間が20時間以上であることを意味します。

例えば、以下のような働き方が該当します。

  • 1日4時間、週5日勤務(4時間 × 5日 = 20時間)
  • 1日5時間、週4日勤務(5時間 × 4日 = 20時間)

この「週20時間」は、複数の事業所で働いた場合の合算はできません。あくまで一つの事業所での労働時間が基準となります。

自身の労働時間がこの条件を満たしているか、労働契約書や勤務表で確認してみましょう。

もし週20時間に少し足りない場合でも、会社との相談で勤務時間を調整できる可能性もありますので、一度話してみるのも良いでしょう。

31日以上の雇用見込みとは?短期バイトでも対象?

もう一つの加入条件である「同一の事業主に継続して31日以上雇用される見込みがあること」は、比較的ハードルが下がったことで、パートやアルバイトの方々にとって加入しやすくなったポイントです。

以前の「6ヶ月以上」と比べると、短期のアルバイトでも適用される可能性が広がりました。

例えば、以下のようなケースが該当します。

  • 期間の定めがなく雇用される場合(自動的に「見込みあり」と判断されます)
  • 雇用期間が31日以上と定められている場合
  • 雇用契約に更新規定があり、31日未満で雇い止めされる明確な理由がない場合
  • 雇用契約に更新規定はないが、31日以上雇用された実績がある場合

極端に短い期間(例えば1ヶ月未満)の契約で、更新の見込みも全くない場合は対象外となりますが、一般的な短期アルバイトであれば、この条件を満たす可能性が高くなっています。

ご自身の契約内容がこの条件に該当するか、ぜひ確認してみてください。

月給で見る雇用保険料の目安

雇用保険料は、給与総支給額に所定の料率を掛けて算出されます。

ここでは、一般の事業に勤務していると仮定し、月給ごとの労働者負担分の雇用保険料の目安を見てみましょう。

(労働者負担分料率:0.55%)

  • 月給10万円の場合:100,000円 × 0.0055 = 550円
  • 月給15万円の場合:150,000円 × 0.0055 = 825円
  • 月給20万円の場合:200,000円 × 0.0055 = 1,100円
  • 月給25万円の場合:250,000円 × 0.0055 = 1,375円

このように、月々の負担額はそれほど大きくありません。

この保険料は、給与から天引きされる形で徴収されるため、自分で納付手続きをする必要はありません。

給与明細を確認し、雇用保険料が正しく引かれているかどうか、一度確認してみることをお勧めします。

もし、自分の業種が「農林水産業・清酒製造業」や「建設業」に該当する場合は、上記の表で示したそれぞれの労働者負担分料率(0.65%)を掛けて計算してください。

雇用保険加入条件の年齢制限と学生の場合

年齢制限はある?定年後の働き方と雇用保険

雇用保険の加入に、基本的に年齢制限はありません。

かつては65歳以上の新規加入はできませんでしたが、法改正により、現在は65歳以上で働き始める方でも加入対象となります。

つまり、定年退職後に再雇用されたり、新たな職場で働き始めたりする場合でも、週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みという条件を満たせば、雇用保険に加入できるのです。

ただし、高齢者の就労を支援する目的で設けられている「高年齢雇用継続給付」については、2025年4月1日から支給率が引き下げられることになります。

これは、働く高齢者の所得保障と雇用促進を図る制度ですが、制度の見直しに伴い給付内容が変更されますので、該当する方は最新の情報を確認するようにしましょう。

学生でも加入できる?適用除外となるケース

原則として、昼間学生(全日制の学校に在学中の学生)は雇用保険の適用除外とされています。

これは、学生の本業は学業であり、労働は一時的なものとみなされるためです。

しかし、いくつかの例外もあります。

  • 休学中の学生:学業を休止して仕事に専念していると判断される場合、加入対象となることがあります。
  • 卒業見込みの学生:卒業を控えて就職する予定の学生が、卒業前から働き始め、卒業後もその会社で継続して働く見込みがある場合。
  • 夜間学生や通信制の学生:昼間に学業を行っていないため、一般の労働者と同様に労働時間などの条件を満たせば加入対象となります。
  • 定時制の学生:昼間の全日制学生とは異なり、原則として加入対象となります。

ご自身がどのケースに該当するか不明な場合は、勤務先の担当者やハローワークに確認することをお勧めします。

安易に「学生だから加入できない」と諦めず、一度確認してみることが大切です。

二重加入はできる?複数の職場で働く場合

複数の職場でパートやアルバイトをしている方もいるでしょう。

では、雇用保険に二重で加入することはできるのでしょうか?

残念ながら、雇用保険は原則として一ヶ所の事業所のみで加入となります。

これは、雇用保険の給付は「労働者を一人として」行われるため、二重に加入することはできないという考え方に基づいています。

複数の職場で加入条件を満たしている場合、基本的に「生計を維持している主たる事業所」または「最も労働時間の長い事業所」で加入することになります。

ただし、どちらの職場で加入するかは、労働者と事業主が話し合って決めることが推奨されます。

もし、複数の職場で条件を満たしているにもかかわらず、どこからも雇用保険に加入できていない場合は、早急に会社やハローワークに相談し、適切な手続きを取るようにしましょう。

雇用保険加入条件の変更点と2025年に向けての注意点

2025年4月改正の主要ポイントを再確認

2025年4月1日より施行される雇用保険制度の改正は、パート・アルバイトを含む多くの労働者に影響を与えます。

主なポイントを改めて確認しておきましょう。

  • 教育訓練やリスキリング支援の充実:
    • 自己都合退職時の失業保険の給付制限期間が、原則2ヶ月から1ヶ月に短縮されます。
    • 「教育訓練支援給付金」の給付率は60%に引き下げられますが、2年間の延長措置が取られます。
    • 2025年10月からは、新たな「教育訓練休暇給付金」が創設され、スキルアップの機会がさらに広がります。
  • 育児休業給付に関する見直し:
    • 「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」が新たに創設されます。特に男性の育児休業取得を後押しする目的があります。
    • これにより、育児と仕事の両立がよりしやすくなることが期待されます。
  • 高年齢雇用継続給付の支給率引き下げ:
    • 働く高齢者を対象とした給付の支給率が引き下げられます。

これらの改正は、労働者のキャリア形成支援や多様な働き方の推進を目指すものであり、ご自身の働き方やライフプランに合わせて活用することが重要です。

2028年改正への展望:週10時間へ短縮

2025年の改正だけでなく、2028年10月からは雇用保険の加入条件がさらに緩和され、週の所定労働時間が10時間以上であれば加入対象となる予定です。

これは、現在の週20時間以上という条件から半減するため、非常に大きな変更点と言えます。

これまで労働時間が短いために雇用保険の対象とならなかった方々、例えば「扶養の範囲内で働きたいけれど、もしもの時の保障も欲しい」と考えていた方々にとって、大きな安心材料となるでしょう。

この変更により、日本の労働人口の約2割にあたる短時間労働者の多くが、新たに雇用保険のセーフティネットの対象となると見込まれています。

ご自身の働き方を一度見直し、将来的に雇用保険の恩恵を受けられるようになるか、今から確認しておくことをお勧めします。

雇用保険加入漏れを防ぐために:事業主と労働者の義務

雇用保険の加入条件を満たしている労働者がいる場合、事業主には雇用保険に加入させる義務があります。

これは法律で定められた義務であり、怠った場合には罰則が科せられることもあります。

しかし、従業員数の少ない企業や、制度に不慣れな事業主の場合、意図せず加入手続きが漏れてしまう可能性もゼロではありません。

そのため、労働者自身も自分の加入条件を確認し、もし「条件を満たしているはずなのに加入できていない」と感じた場合は、積極的に会社に確認することが大切です。

まずは会社の担当部署や上司に相談し、それでも解決しない場合は、ハローワークに相談するなどの対応を検討しましょう。

自身の権利を守るためにも、制度への理解と適切な行動が求められます。

意外と知らない?雇用保険加入のQ&A

加入条件を満たしているのに会社が手続きしてくれない場合は?

雇用保険の加入条件を満たしているにもかかわらず、会社が加入手続きをしてくれないというケースは残念ながら存在します。

このような状況に遭遇した場合、まずは直接会社の担当部署や上司に、雇用保険の加入状況について確認してみましょう。

単に手続きが漏れていただけの場合や、誤解がある場合も考えられます。

もし、会社が意図的に加入を拒否していると判断される場合や、相談しても解決しない場合は、管轄のハローワークに相談してください。

ハローワークは、事業主の加入義務を指導し、労働者の雇用保険加入をサポートする機関です。相談する際は、労働契約書や給与明細、タイムカードなど、ご自身の労働条件を証明できる書類を持参するとスムーズです。

事業主は雇用保険への加入義務があるため、ハローワークからの指導が入れば、適切に手続きが行われる可能性が高いです。

雇用保険被保険者証はどこでもらえる?確認方法は?

雇用保険に加入すると、「雇用保険被保険者証」が発行されます。

これは、雇用保険に加入していることを証明する大切な書類です。

通常、会社がハローワークで加入手続きを行った後、事業主に交付され、その後、会社から労働者本人に手渡されます。

ただし、会社によってはすぐに渡されず、退職時に離職票と一緒に渡される場合もあります。

もし被保険者証が手元にない場合でも、以下の方法で確認することができます。

  • 給与明細を確認する: 毎月の給与明細に雇用保険料の控除があれば、加入している可能性が高いです。
  • 会社に問い合わせる: 人事や経理の担当部署に直接確認するのが確実です。
  • ハローワークに問い合わせる: 会社に問い合わせても解決しない場合や、退職後に確認したい場合は、本人確認書類を持ってハローワークで照会することができます。
  • マイナポータルで確認する: マイナンバーカードをお持ちの場合、マイナポータルから自身の雇用保険情報(被保険者番号など)を確認できる場合があります。

被保険者証は、失業給付の申請時などに必要となる重要な書類なので、紛失しないよう大切に保管しておきましょう。

雇用保険料はどのように計算されるの?手取りへの影響は?

雇用保険料は、毎月の給与総支給額(残業手当や通勤手当、各種手当なども含んだ金額)に、ご自身の負担する雇用保険料率を掛けて算出されます。

先ほどご紹介した計算例をもう一度見てみましょう。

例えば、一般の事業に勤務していて、給与総支給額が20万円の場合、労働者負担分の雇用保険料は0.55%なので、200,000円 × 0.0055 = 1,100円となります。

この雇用保険料は、社会保険料(健康保険、厚生年金保険)や所得税などと共に、給与から天引きされて徴収されます。

そのため、給与明細に記載されている「総支給額」からこれらの費用が差し引かれ、実際に銀行口座に振り込まれる金額が「手取り額」となります。

手取り額は減る形になりますが、雇用保険料は失業時や育児休業時などに受けられる給付の財源となるものです。将来の安心のための「投資」と捉えることもできるでしょう。

給与明細をこまめにチェックし、雇用保険料が正しく計算されているかを確認する習慣をつけることが大切です。