概要: 「福利厚生」とは、給与以外に会社が従業員に提供する様々な制度のことです。法定福利厚生と法定外福利厚生があり、休暇制度や食事補助など、その種類は多岐にわたります。働く上で知っておきたい福利厚生の基本を解説します。
「福利厚生」という言葉、よく耳にするけれど、具体的にどんなものかご存知でしょうか?
給与やボーナスとは違う「もう一つの報酬」として、私たちの仕事や生活を豊かにしてくれる福利厚生は、実は日々のモチベーションや企業選びにおいて非常に重要な要素です。
この記事では、福利厚生の基本的な知識から、法律で定められたものと企業独自のユニークなもの、さらにはアルバイトの方も知っておきたいポイントまで、幅広く解説します。
自分に合った企業を見つけるためにも、福利厚生の知識をしっかり身につけていきましょう!
1. 福利厚生とは?知っておきたい基本
1-1. 福利厚生の定義と目的
「福利厚生」とは、企業が従業員に支給する給与や賞与とは別に、従業員やその家族の生活をサポートするために提供する報酬やサービス全般を指します。
これは、ただ単に「おまけ」として与えられるものではありません。
従業員が安心して働ける環境を整え、仕事への意欲向上や定着率向上を図ることを大きな目的としています。
例えば、住宅手当や社員食堂、健康診断の補助などが代表的です。
これらの制度を通じて、従業員は経済的負担の軽減や健康維持のサポートを受けられるため、より仕事に集中し、充実した生活を送ることが可能になります。
企業側も、優秀な人材の確保や離職率の低下、さらには企業全体の競争力強化に繋がる重要な投資と捉えています。
1-2. 給与・賞与との違い
福利厚生と給与・賞与は、どちらも従業員への報酬であることには変わりありませんが、その性質には明確な違いがあります。
給与や賞与は、労働の対価として直接支払われる金銭であり、従業員の労働時間や成果に応じて変動することが一般的です。これらは従業員の銀行口座に直接振り込まれ、自由に使うことができます。
一方、福利厚生は「現物支給」や「サービス提供」の形をとることが多く、直接現金が支給されるわけではありません。
例えば、社員食堂での食事が割引価格で利用できたり、提携施設の割引チケットがもらえたり、研修費用を補助してもらえたりする形です。
税法上の取り扱いも異なり、福利厚生の中には非課税となるものも多く、従業員にとって実質的な手取り収入が増えるのと同じ効果をもたらすこともあります。
1-3. 企業にとっての重要性
福利厚生は、単なる従業員へのサービス提供に留まらず、企業経営において非常に重要な戦略的な意味を持っています。
まず、充実した福利厚生は企業の採用力を高めます。求職者は給与だけでなく、働きやすさやサポート体制も重視するため、魅力的な福利厚生は企業を選ぶ大きな理由となります。
また、従業員の生活の安定や健康維持をサポートすることで、離職率の低下にも繋がります。
安心して長く働ける環境は、従業員のエンゲージメントを高め、生産性の向上にも貢献します。
さらに、企業の社会的責任(CSR)の一環としても評価され、企業イメージの向上にも寄与します。
近年では、働き方の多様化や従業員のウェルビーイング(心身の健康と幸福)重視の流れから、福利厚生の充実は「従業員への投資」として、その重要性がますます高まっています。
2. 知っておくべき福利厚生の種類(法定・法定外)
2-1. 法律で義務付けられた「法定福利厚生」
福利厚生には、法律によって企業に実施が義務付けられている「法定福利厚生」があります。
これは、すべての企業が従業員を雇用する上で必ず提供しなければならない最低限の福利厚生であり、社会保険料として企業が費用の一部または全額を負担する義務があります。
具体的には、以下の6つが挙げられます。
- 健康保険: 医療費の一部負担などをカバー
- 厚生年金保険: 老齢・障害・死亡時の年金給付
- 介護保険: 40歳以上の従業員が対象
- 雇用保険: 失業時の手当や育児・介護休業給付など
- 労災保険: 業務上の災害や通勤中の事故に対する補償
- 子ども・子育て拠出金: 児童手当などの費用に充当
これらの制度は、従業員の生活保障の基盤となる重要なものであり、企業は加入手続きや保険料の負担を適切に行う必要があります。
参考情報によると、福利厚生費全体の約8割を法定福利厚生費が占めており、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料が増加傾向にあることが背景にあります。
2-2. 企業が独自に提供する「法定外福利厚生」
「法定外福利厚生」とは、法律で義務付けられていないものの、企業が独自の方針や従業員のニーズに合わせて任意で導入する福利厚生のことです。
企業の特色を出しやすく、従業員の満足度向上に直結するため、近年ではその内容が多様化・進化しています。
法定外福利厚生は多岐にわたり、以下のようなカテゴリーに分類できます。
- 住宅関連: 家賃補助、住宅手当、社宅・寮
- 食事関連: 社員食堂、食事補助、ドリンク無料提供
- 健康管理・医療: 健康診断補助、メンタルヘルスケア、スポーツジム利用補助
- 休暇制度: リフレッシュ休暇、サバティカル休暇、慶弔休暇
- 育児・介護: 短時間勤務制度、ベビーシッター費用補助
- 自己啓発・キャリア支援: 資格取得補助、研修制度、書籍購入補助
- 財産形成: 財形貯蓄、社員持ち株会
- その他: 社員旅行、慶弔見舞金、退職金制度、カフェテリアプラン
これらは企業の個性や「働きやすさ」をアピールする上で非常に重要な要素となります。
従業員一人ひとりのライフステージや価値観に合わせた制度があることで、働きがいや会社への帰属意識が高まります。
2-3. 福利厚生費の現状とトレンド
近年の福利厚生費の動向を見ると、法定福利厚生費は増加傾向にあり、福利厚生費全体の約8割を占めています(2019年度)。
これは、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料の負担が増加していることが主な要因です。
一方、法定外福利厚生費は減少傾向にありますが、その中でも「医療・健康」関連の費用は増加しており、健康経営を重視する企業の姿勢がうかがえます。
例えば、人間ドック受診の補助やメンタルヘルスケア支援などが積極的に導入されています。
物価高の影響もあり、食費や住居費といった生活の基本となる部分への支援(食事補助や家賃補助など)も、従業員から強く求められているトレンドです。
また、独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、企業が実施している法定外福利厚生制度で最も実施率が高いのは「慶弔休暇制度」(90.7%)であり、次いで「慶弔見舞金制度」(86.5%)となっています。
今後企業が充実させたい福利厚生としては、健康管理、仕事と家庭の両立支援、自己啓発、そして多様な働き方に関連する施策への注目が集まっています。
3. 魅力的な福利厚生の具体例(休暇、食事補助、その他)
3-1. 従業員の生活を支える住宅・食事関連
従業員の生活基盤を支える上で、住居と食事に関する福利厚生は非常に重要です。
特に都市部では家賃が高騰しており、住宅関連の支援は従業員にとって大きな助けとなります。
参考情報によると、法定外福利厚生費のうち住宅関連が占める割合は48.2%と非常に高く、一人あたりの平均月額は11,639円でした(2019年度)。
具体例としては、以下のような制度が挙げられます。
- 家賃補助・住宅手当: 毎月の家賃の一部を企業が補助する制度。
- 社宅・社員寮: 企業が所有または借り上げた住宅を従業員に提供。
- 引越し補助: 転居に伴う費用を一部負担。
また、毎日の食生活をサポートする食事関連の福利厚生も人気です。
社員食堂の設置や、提携レストランでの割引、食事補助手当、オフィスでのドリンク無料提供などは、食費の節約だけでなく、従業員間のコミュニケーションの場としても機能します。
3-2. 心身の健康をサポートする制度
現代社会において、従業員の心身の健康は企業活動の根幹を支える重要な要素です。
そのため、健康管理や医療に関する福利厚生を充実させる企業が増えています。
参考情報では、法定外福利費に占める医療・健康費用の割合は13.2%と、1963年度以来の高い数値を示しており、企業の健康投資への意識の高まりが伺えます。
具体的な例は以下の通りです。
- 健康診断の補助・人間ドック受診補助: 法定健診以上の検査費用を補助。人間ドックの受診補助は実施率44.6%と高い。
- メンタルヘルスケア支援: 専門家によるカウンセリング、ストレスチェック後のフォローアップ。
- スポーツジム利用補助: 従業員の運動習慣をサポートし、健康増進を図る。
- 予防接種補助: インフルエンザなどの予防接種費用を補助。
これらの制度は、病気の予防や早期発見に繋がり、従業員の長期的な健康維持に貢献します。
また、企業が従業員の健康に配慮しているという姿勢は、従業員の安心感や企業への信頼感を高める効果も期待できます。
3-3. 働きがいを高める休暇・自己啓発・その他
休暇制度や自己啓発支援は、従業員が仕事とプライベートのバランスを取り、キャリアアップを図る上で欠かせない福利厚生です。
これらは従業員のモチベーション向上やスキルアップに繋がり、結果的に企業の成長にも寄与します。
特に休暇制度では、慶弔休暇制度が90.7%の企業で実施されており、法定外福利厚生の中で最も実施率が高い制度です。
その他にも、以下のような制度があります。
- リフレッシュ休暇: 長期勤続者への特別休暇。
- サバティカル休暇: キャリアの再構築や自己研鑽のための長期休暇。
- 資格取得補助・研修制度: 業務に必要な資格取得やスキルアップのための費用を補助。
- 書籍購入補助・語学学習補助: 自己啓発を支援。
さらに、「その他」の福利厚生には、従業員同士の親睦を深めるための社員旅行やレクリエーション活動、人生の節目を祝う慶弔見舞金(実施率86.5%)、将来の安心を支える退職金制度などがあります。
近年注目されているカフェテリアプランは、企業が用意したメニューの中から従業員が自由に福利厚生を選べる制度で、個々のニーズに応じた柔軟なサポートが可能です。
4. アルバイトでも関係ある?福利厚生の意外な側面
4-1. 正社員とアルバイトで福利厚生は異なる?
「福利厚生は正社員だけのもの」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、実はアルバイトやパートタイムで働く方々にも、福利厚生は関係があります。
ただし、正社員と比較すると、その適用範囲や内容は異なる場合があります。
法定福利厚生に関しては、労働時間や勤務日数などの一定の条件を満たせば、アルバイトでも正社員と同様に加入義務が発生します。
一方、法定外福利厚生については、企業の方針や制度設計によって、正社員のみを対象とするものもあれば、アルバイトにも適用されるもの、あるいはアルバイト向けに特化した制度が用意されている場合もあります。
求人情報や雇用契約書でしっかり確認することが重要です。
近年では、多様な働き方を支援する企業が増えており、アルバイト・パート従業員の定着率向上やモチベーション維持のために、独自の福利厚生を導入する企業も少なくありません。
4-2. アルバイトでも受けられる「法定福利厚生」
アルバイトとして働いていても、一定の条件を満たせば、正社員と同様に法定福利厚生の恩恵を受けることができます。
これは、労働者の権利として法律で定められているため、企業は必ず適用しなければなりません。
具体的には、以下の法定福利厚生が該当します。
- 健康保険・厚生年金保険: 所定労働時間が正社員の4分の3以上である場合(従業員数101人以上の企業では週20時間以上等の条件緩和あり)。
- 雇用保険: 週20時間以上働き、31日以上継続して雇用される見込みがある場合。
- 労災保険: 雇用形態にかかわらず、すべての労働者に適用。
これらの保険に加入することで、病気やケガ、失業時などの万が一の事態に備えることができます。
特に労災保険は、アルバイトの方でも業務中の事故や通勤災害に対して補償を受けられるため、非常に重要です。
自身の労働時間や契約内容を確認し、適用されているか不明な場合は、勤務先に確認することをおすすめします。
4-3. アルバイト向け「法定外福利厚生」の具体例
法定外福利厚生は企業の任意であるため、アルバイト向けの制度は企業によって様々ですが、近年は多様な働き方への配慮から、アルバイト・パート従業員にも適用される魅力的な制度が増えています。
例えば、以下のような具体例があります。
- まかない・食事補助: 飲食店などで従業員向けに食事を提供する制度。
- 交通費支給: 通勤にかかる費用を補助。
- 有給休暇: 勤務日数や時間に応じて付与される有給休暇。
- 社員割引: 自社の商品やサービスを割引価格で購入できる制度。
- インセンティブ制度: 売上目標達成時などにボーナスを支給。
- 正社員登用制度: 一定期間の勤務後、正社員への転換を可能にする制度。
- 慶弔見舞金: 結婚や出産、不幸があった際に支給される金銭。
- 研修制度: スキルアップのための研修機会の提供。
これらの法定外福利厚生は、アルバイトの方々のモチベーション向上や、職場への定着に大きく貢献します。
特に正社員登用制度は、将来のキャリアを考える上で非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
求人情報を確認する際は、給与額だけでなく、どのような福利厚生があるかにも注目してみることをおすすめします。
5. 自分に合った福利厚生を見つけるには?
5-1. 転職・就職活動でのチェックポイント
転職や就職活動を行う際、給与や仕事内容と同じくらい、福利厚生も重要なチェックポイントです。
自身のライフスタイルや将来設計に合った福利厚生が用意されているかどうかで、入社後の満足度が大きく変わってきます。
まず、自分にとって何が重要かを明確にしましょう。
例えば、子育て中の人なら育児支援制度、住宅ローンを抱えているなら住宅補助、健康に不安があるなら手厚い健康サポートなど、優先順位を整理します。
次に、企業の採用サイトや求人情報で福利厚生の項目を詳しく確認しましょう。
もし情報が不足している場合は、企業説明会や面接時に質問するのも良い方法です。
また、企業の口コミサイトやSNSなども参考になることがあります。
ただし、情報の真偽を確かめるためにも、最終的には企業に直接確認することが最も確実です。
5-2. 従業員ニーズに合った福利厚生の重要性
企業側にとって、福利厚生を導入・見直しする際に最も重要なのは、「従業員のニーズを把握すること」です。
どんなに素晴らしい制度を導入しても、従業員が求めていないものであれば、その効果は半減してしまいます。
従業員アンケートやヒアリング、意見交換会などを通じて、実際にどのようなサポートが求められているのかを正確に把握することが肝心です。
また、福利厚生制度は全従業員が平等に利用できるような「公平性」を保つことも重要です。
特定の層だけが優遇されるような制度では、不満や不公平感が生じる原因にもなりかねません。
さらに、導入・運用コストを考慮しつつ、無理のない範囲で適切な費用設定を行うことも企業の責任です。
従業員のライフステージや社会情勢の変化に合わせて、制度を定期的に見直し、常に最適な状態を保つ努力が求められます。
5-3. 福利厚生を最大限に活用するために
せっかく企業が用意してくれた福利厚生も、その存在を知らなかったり、利用方法が分からなかったりすれば意味がありません。
自分にとってメリットのある制度を最大限に活用するために、以下のポイントを意識しましょう。
まず、入社時に配布される就業規則や福利厚生に関する資料をしっかりと読み込み、どのような制度があるのかを把握することが大切です。
企業のイントラネットや社内報などで、福利厚生の情報が定期的に発信されていないかもチェックしましょう。
不明な点があれば、人事部や総務部に遠慮なく質問してください。
次に、自身のライフプランと照らし合わせて、利用できる制度がないか積極的に検討しましょう。
例えば、住宅を購入する計画があれば財形貯蓄や住宅関連の補助を、資格取得を目指しているなら自己啓発支援を利用するなど、自身の目標達成や生活の質の向上に役立てることができます。
福利厚生は、あなたのキャリア形成やプライベートの充実に大きく貢献する「隠れた報酬」です。賢く活用して、より豊かなワークライフを実現しましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 福利厚生とは、具体的にどのようなものですか?
A: 福利厚生とは、会社が従業員に対して、給与や昇給といった直接的な報酬以外に提供する様々な制度やサービスのことです。例えば、健康保険や年金などの社会保険、有給休暇、住宅手当、育児・介護支援などが含まれます。
Q: 福利厚生にはどのような種類がありますか?
A: 福利厚生は、法律で義務付けられている「法定福利厚生」と、企業が独自に提供する「法定外福利厚生」の2種類に分けられます。法定福利厚生には、社会保険料の会社負担分などがあります。法定外福利厚生は、休暇制度の拡充、食事補助、フィットネスジムの割引、自己啓発支援など、企業によって様々です。
Q: 具体的な福利厚生の例を教えてください。
A: 休暇制度としては、有給休暇のほかに、夏季休暇、年末年始休暇、慶弔休暇、リフレッシュ休暇、看護休暇などがあります。また、食事補助として社食の提供や食事券の支給、住宅手当、通勤手当、資格取得支援、社員割引、保養所の利用なども代表的な例です。Netflixのようなエンタメ関連の福利厚生を提供する企業もあります。
Q: アルバイトでも福利厚生は受けられますか?
A: アルバイトでも、労働時間や契約内容によっては一部の福利厚生を受けられる場合があります。特に、社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)は、一定の条件を満たせば適用されます。法定外福利厚生については、企業の方針によりますが、正社員と同じように利用できる場合もあれば、利用できない場合もあります。
Q: 自分にとって魅力的な福利厚生を見つけるにはどうすれば良いですか?
A: まずは、自分が仕事に求めることやライフスタイルを整理することが大切です。例えば、ワークライフバランスを重視するなら休暇制度が充実している企業、スキルアップを目指すなら研修制度が手厚い企業などが考えられます。求人情報や企業の採用ページで福利厚生の詳細を確認し、OB・OG訪問などで実際に働く人の声を聞くことも有効です。