概要: 退職届を出す時期やタイミング、出し方、封筒の包み方など、円満退職を目指す上で知っておくべきポイントを解説します。退職届提出の前日でも良いのか、仏滅のような日取りは気にするべきかといった疑問にもお答えします。
退職届の提出時期と正しい出し方:スムーズな円満退職の秘訣
円満退職を実現するためには、退職届の提出時期と正しい出し方を理解しておくことが重要です。法律上のルールと企業ごとの就業規則、そして円満退職のための配慮すべき点を把握しておきましょう。
退職届を出すのに最適な時期とは?
法律上のルールと企業の就業規則
退職届を提出する上で、まず押さえておきたいのが法律と企業の就業規則です。民法では、雇用期間の定めがない従業員(正社員など)の場合、退職の意思表示から2週間が経過すれば退職できると定められています。
これは、2020年4月以降、月給制など期間によって報酬が定められている場合でも同様に適用されます。つまり、法律上は退職日の2週間前までに退職届を提出すれば問題ないとされています。
しかし、多くの企業では、就業規則で退職の申し出期日を別途定めており、一般的には退職希望日の1ヶ月前までとされていることが多いです。法律上の2週間前という規定よりも長い期間が定められている場合でも、円満退職を目指すのであれば、原則として就業規則のルールを尊重することが推奨されます。
ただし、あまりに長すぎる期間(例えば半年以上など)が就業規則で定められている場合は、法的拘束力がないと判断され、無効となる可能性もあります。
円満退職のための実務的な目安期間
法律や就業規則上の期日だけでなく、実務的な観点から最適な時期を考えることも重要です。円満退職を目指す場合、業務の引き継ぎ、後任者の選定、そして各種事務手続きなどを考慮すると、退職意思を伝えてから実際に退職するまでに2ヶ月程度を見込むのが理想的と言えるでしょう。
具体的なスケジュールとしては、退職の意思表示は、退職希望日の1ヶ月~2ヶ月前、あるいはそれ以前に行うことが推奨されています。例えば、退職の意思表示を3ヶ月前に行い、上司や就業規則の指示に従った適切なタイミングで退職届を提出するのが、円満退職に繋がるベターなスケジュール例として挙げられます。
この期間を確保することで、会社側も余裕を持って後任者を見つけ、円滑な引き継ぎ体制を整えることができ、あなた自身も責任を果たすことができます。
繁忙期やプロジェクト完了時期を見極める
退職届を提出するタイミングとして、企業の状況を考慮することも非常に重要です。特に、会社の繁忙期や重要なプロジェクトの進行中に退職を申し出るのは避けるべきです。会社に大きな迷惑をかけるだけでなく、引き止めにあう原因にもなりかねません。
理想としては、会社の年間スケジュールやプロジェクトの進捗状況を把握し、業務が一段落した時期や、担当しているプロジェクトが完了したタイミングを見計らって意思表示を行うのが賢明です。
これにより、後任者への引き継ぎもスムーズに行いやすくなり、会社への負担を最小限に抑えることができます。このような配慮は、最終的にあなた自身の円満退職、そして今後のキャリア形成においても良い影響をもたらすでしょう。
退職届の提出タイミング:いつ、どうやって渡すのが正解?
退職の意思はまず直属の上司に口頭で
退職の意思を固めたら、退職届をいきなり提出するのではなく、まずは直属の上司に口頭で伝えるのが社会人としての基本的なマナーです。これは、あなたが会社を去ることを会社が認識する最初のステップであり、上司に相談することで今後の手続きがスムーズに進みます。
上司に伝える前に同僚に話したり、人事部に直接連絡したりするのは避けるべきです。情報が上司の耳に入る前に他のルートで伝わると、上司の顔を潰すことになりかねず、円満退職から遠ざかる可能性があります。
伝える際には、「お忙しいところ恐縮ですが、ご相談したいことがございます」といった形でアポイントを取り、改めて感謝の気持ちや、迷惑をかけることへのお詫びの言葉を添えることで、よりスムーズに進められるでしょう。
「退職願」と「退職届」の違いと使い分け
退職を伝える書類には、「退職願」と「退職届」の二種類があり、それぞれ意味合いが異なります。
- 退職願(たいしょくねがい):退職したい旨を願い出る書類であり、会社がそれを承認するまでは撤回が可能です。会社との話し合いの初期段階や、まだ退職日が確定していない段階で提出することが多いです。
- 退職届(たいしょくとどけ):退職の意思を通知する書類であり、一度提出・受理されると原則として撤回できません。退職日が確定し、会社から正式に退職届の提出を求められた場合に提出するのが一般的です。
会社によっては、特定のフォーマットや提出時期が指定されている場合もあるため、上司と相談し、会社の方針に従って適切な書類を準備しましょう。
原則は上司への手渡し、郵送は最終手段
作成した退職届は、原則として直属の上司に手渡しするのが正しい提出方法です。上司に直接渡すことで、退職の意思を明確に伝え、今後の手続きや引き継ぎに関する相談もその場で行うことができます。
多忙な上司であれば、会議室など落ち着いた場所で短時間でも時間を取ってもらい、直接手渡ししましょう。渡し方としては、封筒に入れた状態で、封筒の表書きを上司に向けて差し出すのが一般的です。
万が一、上司が長期出張中であったり、何らかの事情で直接会うことが非常に困難な場合に限り、郵送も選択肢に入りますが、これは最終手段と考えてください。郵送する場合は、内容証明郵便で送ることで、いつ、どのような内容の書類を送ったかを証明できるため、後々のトラブルを防ぐ上で有効です。
退職届の封筒と包み方:マナーを守って失礼なく
退職届の書式と用紙の選び方
退職届を作成するにあたり、まず確認したいのは会社から指定されたフォーマットの有無です。会社によっては、独自の退職届用紙やテンプレートを用意している場合がありますので、上司や人事部に確認しましょう。
指定がない場合は、市販の退職届用紙を利用するか、白の便箋(B5またはA4サイズ)を使用するのが一般的です。手書きで作成する場合は、黒のボールペンまたは万年筆を使用し、丁寧に楷書で記入します。パソコンで作成する場合は、白いコピー用紙に印刷し、署名欄は自筆で記入するのが望ましいです。
内容に誤りがないか最終確認し、誤字脱字がある場合は修正テープなどを使わず、新しい用紙に書き直すのがマナーです。丁寧な文字や整った書式は、最後まで会社に対して敬意を払う姿勢を示すことにも繋がります。
封筒の種類と表面の書き方
退職届を提出する際は、封筒に入れるのがマナーです。使用する封筒は、白の無地の封筒を選びましょう。郵便番号欄や会社のロゴなどが印刷されていないものが適しています。サイズは、退職届を三つ折りにした状態で収まる「長形3号」が一般的です。
封筒の表面には、中央に「退職願」または「退職届」と、内容に応じた表書きを記入します。これらの文字は、黒のボールペンまたは万年筆で、他の文字よりも少し大きめに、読みやすく丁寧に書きましょう。裏面には何も書かないのが一般的ですが、郵送する場合は自分の住所、氏名、会社名を記入します。
封筒の選び方や書き方一つにも、社会人としての常識と相手への配慮が表れますので、抜かりなく準備しましょう。
封筒の裏面と内容物の入れ方
退職届を入れる封筒の裏面には、左下に所属部署名と氏名を記載します。これは、誰からの書類であるかを明確にするためのものです。住所を記載する必要はありませんが、念のため記載しても問題ありません。
退職届の用紙は、内容が読める面を内側にして、丁寧に三つ折りにするのが基本です。用紙の下から1/3程度の位置で上に折り、さらに上から1/3程度の位置で下に折る「三つ折り」が良いでしょう。これを、封筒の表書きと退職届の書き出しが同じ方向になるように封筒に入れます。
手渡しで提出する場合、封筒は糊付けして閉じなくても構いません。これは、上司がすぐに中身を確認できるようにするためです。ただし、郵送する場合は、個人情報保護の観点から必ず糊付けし、「〆」や「封」の字を書いて封をすることをおすすめします。
退職届提出のよくある疑問:前日でも大丈夫?仏滅は避けるべき?
退職日の前日提出はNG!法律・就業規則の遵守
「退職届は退職日の前日でも大丈夫?」という疑問を抱く方もいるかもしれませんが、答えは明確にNGです。これは、法律上も企業の就業規則上も認められません。
前述の通り、民法では「退職の意思表示から2週間が経過すれば退職できる」と定められており、多くの企業の就業規則では「退職希望日の1ヶ月前まで」と規定されています。これらの期間を無視して退職日の前日に退職届を提出することは、会社への無責任な行為と見なされ、トラブルの原因となるだけでなく、無断欠勤と誤解される可能性もあります。
円満退職を目指すのであれば、法律や就業規則に則り、十分に余裕を持った期間で退職届を提出することが必須です。引き継ぎ期間などを考慮すると、最低でも1ヶ月前には意思表示を済ませるようにしましょう。
お日柄(仏滅など)は気にするべき?
退職届を提出する際、「仏滅などの不吉とされるお日柄は避けるべきか?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。日本の伝統的な文化では、冠婚葬祭などでお日柄を気にする習慣がありますが、ビジネスシーンにおける退職届の提出においては、さほど気にする必要はありません。
現代の企業社会では、お日柄よりも業務の引き継ぎや会社の都合を優先する考え方が一般的です。お日柄を気にして提出を遅らせることで、結果的に会社に迷惑をかけたり、引き継ぎに支障が出たりする方が問題視される可能性が高いです。
もし個人的に気になるようであれば、避けても構いませんが、それが理由で適切な提出時期を逃すことのないように注意しましょう。最も大切なのは、会社とスムーズなコミュニケーションを取り、円満に退職することです。
退職届は誰に渡すべき?上司が不在の場合は?
退職届は、原則として直属の上司に手渡しするべきです。これが最も丁寧で、会社への敬意を示す方法とされています。上司に渡すことで、退職の意思が直接伝わり、その後の手続きもスムーズに進みます。
しかし、様々な事情で直属の上司が長期不在の場合もあるかもしれません。そのような時は、勝手に郵送したり、他の同僚に預けたりするのではなく、まず直属の上司の上長(部長など)や人事部の責任者に相談し、指示を仰ぐのが適切です。
いずれにしても、誰に提出したか、いつ提出したかを明確にしておくためにも、口頭だけでなくメールなどでその旨を伝えておくのも有効です。会社への連絡や相談を怠らないことが、トラブルを未然に防ぎ、円満退職への道を開きます。
円満退職のための退職届提出ガイド
退職理由の伝え方:ネガティブな真実は避けてポジティブに
退職理由を伝える際、たとえ本心は会社の不満や人間関係の悩みであったとしても、それをそのまま伝えるのは円満退職の妨げとなります。退職理由は、ポジティブな表現に言い換えることが、最後まで良い関係を保つための秘訣です。
例えば、「新たな環境で挑戦したい」「自身のキャリアアップのため」「〇〇のスキルを深めたい」といった、前向きな理由を伝えましょう。具体的な表現例としては、「現在の仕事を通して、〇〇の分野に強く興味を持つようになりました。今後はその分野で専門性を高めていきたいと考えております」などが挙げられます。
決して会社の不満や愚痴、批判を口にしないこと。それは周囲に悪い印象を与えるだけでなく、あなたの評価を下げ、退職後の連絡や証明書の発行などで支障が出る可能性も否定できません。
最重要課題:業務の丁寧な引き継ぎ
退職届を提出し、退職日が確定したら、業務の丁寧な引き継ぎが円満退職のための最重要課題となります。引き継ぎが不十分だと、会社に大きな迷惑がかかるだけでなく、あなた自身の評価も下がりかねません。
引き継ぎ期間を十分に確保し、後任者がスムーズに業務を行えるよう、責任を持って業務を引き継ぎましょう。具体的には、担当業務の一覧、取引先情報、進行中のプロジェクトの状況、未処理のタスク、各種資料の保管場所などをまとめた「引き継ぎ書」を作成することをおすすめします。
さらに、引き継ぎ書を元に、後任者に対して直接口頭で説明し、質問に答える時間も設けましょう。これにより、会社はあなたの退職後も円滑に業務を継続でき、あなたは最後まで責任を果たしたプロフェッショナルとして評価されます。
退職前の挨拶と社内外への配慮
退職前には、社内外への適切な挨拶を忘れずに行いましょう。社内の同僚や関係者には、退職の挨拶とともに、これまでの感謝の気持ちを伝えます。最終出社日には、菓子折りなどを持参して感謝を示すのも良いでしょう。
取引先や関係会社に対しては、退職の旨と後任者の紹介を兼ねて、丁寧な挨拶を行います。この際も、会社の悪口や不満を伝えるのは厳禁です。また、転職先の具体的な情報や詳細な退職理由などを伝えるのは避けるべきです。
退職の意思を伝えてから実際に会社を去るまで、あなたはまだ会社の従業員です。最後までプロフェッショナルとしての意識を持ち、責任ある行動を心がけましょう。こうした細やかな配慮が、あなたの円満退職を確実なものにし、今後の人間関係やキャリアに良い影響をもたらすはずです。
まとめ
よくある質問
Q: 退職届を出すのは、退職の意思を伝えた後、いつ頃が適切ですか?
A: 一般的には、退職の意思を口頭で伝えて上司の承認を得てから、1週間~1ヶ月以内を目安に提出するのが一般的です。会社の就業規則で定められた期間を確認しましょう。
Q: 退職届を提出するタイミングは、退勤前が良いのでしょうか?
A: 退職届の提出は、業務時間内、できれば上司が対応できる時間帯に、直接手渡しで渡すのが丁寧です。退勤間際や、相手に迷惑がかかるようなタイミングは避けましょう。
Q: 退職届は、どのような封筒に入れて、どのように包めば良いですか?
A: 白無地の封筒を使用し、表書きには「退職届」、裏書きには所属部署と氏名を記入します。封筒は二重封筒ではなく、白無地の単封筒が基本です。封は糊でしっかりと閉じます。
Q: 退職届を提出する前日でも、受け付けてもらえますか?
A: 原則として、退職届の提出は余裕を持ったタイミングで行うべきですが、やむを得ない事情がある場合は、前日でも相談してみる価値はあります。ただし、会社の規定や上司の判断によります。
Q: 退職届を出す際に、仏滅などの日取りを気にする必要はありますか?
A: 退職届の提出において、仏滅などの六曜を気にする必要は全くありません。大切なのは、誠意を持って適切な手続きを行うことです。日付にこだわりすぎる必要はありません。