概要: 退職届の郵送は、レターパックを活用することで丁寧かつ確実に送付できます。封筒の選び方や記載事項、品名の書き方など、退職届を郵送する際のルールを解説します。
退職届を郵送する際の基本
郵送が認められるケースと法的な根拠
退職届の提出は、一般的には手渡しが最も丁寧で推奨される方法とされています。
しかし、職場が遠方にある場合や、体調不良で出社が困難な場合、あるいは上司や同僚との人間関係で直接会うことが難しいといったやむを得ない事情がある場合には、郵送での提出も認められています。
日本の法律上、従業員は退職希望日の2週間前までに会社に退職の意思を伝えれば良いとされており、その伝達方法については特に定めがありません。
そのため、適切な郵送方法を選べば、法的な問題なく退職の意思を伝えることが可能です。
ただし、確実に会社に届いたことを確認するためには、単なる普通郵便ではなく、追跡や配達証明が可能な方法を選ぶことが極めて重要となります。
この点を怠ると、後々のトラブルの原因となる可能性があるので注意が必要です。
確実性を高める郵送方法の選び方
退職届という重要な書類を郵送する際には、その確実性が最も重視されます。紛失のリスクがある普通郵便は、絶対に避けるべきでしょう。
確実に会社に届け、かつその証拠を残すためには、以下のような郵送方法が推奨されます。
- レターパックプラス(赤色): 対面での受け取りが必要で、配達記録が残ります。いつ、誰に届いたかが明確になるため、最も確実な方法の一つです。
- レターパックライト(青色): 郵便受けへの投函で配達が完了します。追跡は可能ですが、対面受け取りではないため、紛失のリスクを完全に排除できるわけではありません。手軽さよりも確実性を重視するならプラスが良いでしょう。
- 簡易書留: 通常郵便に追跡機能と発送控えが付きます。郵便局窓口での手続きが必要ですが、受け取りには受領印が必要となるため、比較的確実です。
- 一般書留: 簡易書留よりも厳重な管理が行われ、損害要償額を設定できます。配達証明を付けることで、配達日時と受取人を証明できるため、法的な証拠力も高まります。
これらのオプションの中から、自身の状況と、どれほどの確実性を求めるかに応じて最適な方法を選ぶことが大切です。
退職届郵送前の準備と確認事項
退職届を郵送する前に、いくつかの重要な準備と確認が必要です。まず、退職届自体が適切に作成されているかを確認しましょう。
会社指定のフォーマットがある場合はそれに従い、ない場合は一般的な形式で作成します。押印(認印または実印、シャチハタは不可)も忘れずに行いましょう。
次に、退職届だけでなく、添え状(送り状)を同封するのがビジネスマナーです。
添え状には、退職の意思を伝えること、同封書類の内容(退職届1通)などを簡潔に記載します。PCで作成しても問題ありません。
そして最も重要なのは、郵送前に可能であれば直属の上司や人事担当者に一報を入れておくことです。
「〇月〇日付けで退職届を郵送いたしましたので、ご確認をお願いいたします」といった連絡を入れることで、会社側もいつ頃届くか把握でき、書類の受け取りがスムーズになります。
この連絡を怠ると、会社側が退職届の到着を認識できず、トラブルに発展する可能性があります。退職希望日の2週間前という法的な期限を考慮し、余裕を持って郵送手続きを完了させましょう。
レターパックがおすすめな理由
レターパックのメリットと種類ごとの違い
退職届の郵送方法として、レターパックは非常に優れた選択肢です。その最大のメリットは、全国一律料金で利用できる手軽さと、追跡サービスが標準で付帯している点にあります。
郵便局やコンビニエンスストアで購入でき、切手を貼る手間もありません。しかし、レターパックには「レターパックプラス(赤色)」と「レターパックライト(青色)」の2種類があり、それぞれの特徴を理解して選ぶことが重要です。
- レターパックプラス(赤色): 料金は520円(税込)です。最大のポイントは、受取人への対面手渡しで配達が完了し、受領印または署名が必要な点です。配達状況は追跡サービスで確認でき、配達完了の証拠が残るため、退職届のように「確実に届いたこと」が重要な書類の郵送には最適です。
- レターパックライト(青色): 料金は370円(税込)です。こちらは郵便受けへの投函で配達が完了します。追跡サービスは利用できますが、対面での受け渡しではないため、万が一の郵便受けからの紛失リスクはゼロではありません。コストを抑えたい場合や、そこまで厳密な配達記録が不要な場合に向きますが、退職届においてはプラスの方が安心です。
確実性と証拠力を求めるのであれば、多少料金が高くてもレターパックプラス(赤色)を選ぶのが賢明でしょう。
品名記載とサイズに関する注意点
レターパックを利用する際には、いくつか注意すべき点があります。
まず、レターパックの品名欄についてです。品名欄には、単に「書類」と記載するのではなく、「退職届在中」などと具体的に記載することが推奨されます。
これにより、受取人である会社側が内容物をすぐに把握でき、速やかに担当部署へ回付される可能性が高まります。重要な書類であることが一目でわかるように配慮することは、ビジネスマナーとしても適切です。
次に、サイズに関する注意です。
レターパックはA4サイズまで対応していますが、厚さ制限があります。レターパックプラスは厚さ制限なし(ただし重量4kgまで)、レターパックライトは厚さ3cmまでという制限があります。退職届を封入する内封筒のサイズや厚みが、レターパックの規定サイズ内に収まるかを事前に確認しましょう。
一般的に、退職届を三つ折りにして長形3号などの封筒に入れる場合、レターパックのサイズ規定は問題なくクリアできますが、複数の書類を同封する際は厚みに注意が必要です。推奨されているのは、A4用紙を三つ折りにして角形2号封筒に入れることです。
郵送後の確認とアフターフォロー
レターパックで退職届を郵送した後も、いくつかの重要なステップがあります。まず、最も重要なのが追跡サービスを利用して配達状況を確認することです。
レターパックの専用封筒に記載されているお問い合わせ番号を郵便局のウェブサイトに入力すれば、現在の配達状況や配達完了日時を確認できます。これにより、退職届が確実に会社に届いたかどうかを客観的に把握できます。
配達が完了したことを確認したら、可能であれば直属の上司や人事担当者に電話やメールで連絡を入れ、「退職届が配達されたことを追跡サービスで確認いたしました。お忙しいところ恐縮ですが、ご確認いただけますでしょうか」といった形で、到着確認を促すアフターフォローを行うとより丁寧です。
この一手間が、会社側との不要なトラブルを防ぎ、円滑な退職手続きにつながります。
万が一、追跡サービス上で配達が完了しているにもかかわらず、会社側が「届いていない」と主張するような場合は、追跡記録が強力な証拠となります。また、万一紛失してしまった場合は、追跡サービスで状況を確認し、必要に応じて再度、記録の残る方法で送付し直す必要があります。
退職届郵送時の封筒の選び方と記載事項
封筒の選び方:色、サイズ、素材のポイント
退職届は企業にとって重要な書類であり、個人のキャリアにおいても節目となるものです。そのため、郵送に際しては封筒選びにも細やかな配慮が必要です。
まず封筒の色は、白無地が最も丁寧でビジネスシーンにふさわしいとされています。茶封筒は事務的な連絡に使われることが多く、退職届のような個人的かつ重要な書類には不向きです。
また、郵便番号枠がない無地の封筒を選ぶと、よりフォーマルな印象を与えられます。
次に、封筒のサイズですが、退職届は三つ折りにして封入するのが一般的です。A4サイズの用紙を三つ折りにした場合は「長形3号」、B5サイズの用紙の場合は「長形4号」の封筒が適しています。
中身が中で動かないよう、ちょうど良いサイズを選びましょう。
最後に、素材の透けにくさも重要なポイントです。退職届はプライベートな情報を含む書類であるため、中身が透けない素材の封筒や、二重封筒を選ぶことを強く推奨します。
これにより、情報漏洩のリスクを軽減し、受け取る側にも配慮を示すことができます。
内封筒と外封筒の書き方とルール
退職届を郵送する際は、中身の退職届を入れる「内側の封筒」と、それを入れて郵送する「外側の封筒」の二重構造にするのがマナーです。それぞれの封筒には異なる書き方があります。
【退職届を入れる内側の封筒】
- 表面: 封筒の中央よりやや上に、「退職届」と赤字で明記します。これにより、中身がすぐに認識できます。宛名は不要です。
- 裏面: 左下に、ご自身の所属部署名と氏名を記載します。
- 封: 手渡しであれば封をする必要はありませんが、郵送する場合は封をして、封をした部分に「〆」マークを記載するのが一般的です。
【郵送用の外側の封筒】
- 表面: 宛先の会社の住所と、担当部署名(人事部など)または担当者名を記載します。担当者名が不明な場合は「人事部御担当者様」や「直属の上司 御侍史」といった形で記載します。
- 左下: 「親展」と赤字で明記します。これは「ご本人様が開封してください」という意味で、重要な書類であることが伝わり、担当者以外が開封するのを防ぐ効果があります。
- 裏面: ご自身の住所と氏名を記載します。
これらのルールを守ることで、丁寧かつ確実な郵送が可能となります。
正しい封入方法と添え状の重要性
封筒の準備が整ったら、次は退職届を正しく封入します。まず、退職届の用紙を三つ折りにします。具体的には、文字が内側に来るように、下から約1/3を折り上げ、次いで上から約1/3を折り下げるのが一般的な方法です。
これにより、書類を開いたときに読みやすい状態になります。
次に、この三つ折りにした退職届を内側の封筒に入れます。封筒の裏面から見て、退職届の右上が封筒の裏面右上に来るように入れると、受け取った相手が封筒を開封してすぐに退職届が読める向きになります。
このように細部にわたって配慮することで、相手に丁寧な印象を与えることができます。
また、退職届を郵送する際には、添え状(送り状)を同封することがビジネスマナーとされています。添え状には、誰が、何を、誰に送ったのかを簡潔に記載します。
例えば、「拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。さて、私こと、この度一身上の都合により、来る〇月〇日をもちまして退職させて頂きたく、ここにお届けいたします。つきましては、退職届を同封いたしましたので、ご査収のほどお願い申し上げます。敬具」といった内容を記載します。
添え状はPCで作成しても問題ありません。これにより、退職届が何の書類であるか、誰からのものか、という情報が明確になり、受け取る側の混乱を防ぐことができます。
退職届の渡し方|郵送以外の方法
原則である手渡しについて
退職届の提出方法として、最も一般的で推奨されるのは、やはり直属の上司への手渡しです。
この方法は、退職の意思を直接伝え、上司との間で今後のスケジュールや引き継ぎについて話し合う機会を持つことができるため、円満な退職を実現しやすいという大きなメリットがあります。
手渡しする際は、事前にアポイントメントを取り、「お時間をいただけますでしょうか」といった形で丁寧に依頼することが重要です。渡す際には「一身上の都合により、本日をもって退職させていただきます」といった言葉を添え、真摯な態度で臨みましょう。
内封筒に入れた退職届は、手渡しの場合は封をする必要はありませんが、封をしていても失礼には当たりません。上司が不在の場合は、人事部の担当者に直接渡すのが次善の策です。
ただし、誰に渡すにせよ、「退職届を確かに渡した」という記録や記憶が残る形で行うことが肝要です。
手渡しは、郵送に比べて誤配や紛失のリスクが低く、何よりも相手への敬意を示すことができるため、特別な事情がない限りはこの方法を選ぶべきでしょう。
特定の状況下での郵送の妥当性
手渡しが原則とはいえ、時には郵送がより適切な、あるいは唯一の方法となる状況も存在します。
例えば、体調不良や精神的な負担が大きく、出社することが困難な場合です。
会社に連絡を取ることすら難しい状況では、無理をして出社するよりも、郵送で確実に意思表示を行う方が優先されるべきです。また、職場でのハラスメントを受けているなど、直接会うこと自体が精神的な苦痛を伴う場合も、郵送は有効な選択肢となります。
さらに、会社が遠隔地にある場合や、リモートワークが主で物理的な出社がほとんどない場合も、手渡しが現実的でないため、郵送が合理的な方法となります。
これらの場合でも、郵送の際には「確実に相手に届いたこと」が確認できる方法(レターパックプラスや書留など)を選ぶことが必須です。
郵送後には、可能であれば電話やメールで会社に一報を入れ、到着確認を促すことで、トラブルを未然に防ぎ、円滑な手続きを進めることができます。
郵送は、状況によっては最善の解決策となり得ることを理解しておきましょう。
郵送・手渡し以外の特別なケース
手渡しや一般的な郵送方法以外にも、より特殊な状況に対応するための方法が存在します。その一つが、内容証明郵便の利用です。
これは、会社が退職届の受け取りを拒否する可能性がある場合や、退職の意思表示をしたことの確実な証拠を残したい場合に有効な手段です。
内容証明郵便は、郵便局が「いつ」「誰が」「誰に」「どのような内容の文書」を送ったかを証明してくれる制度です。これにより、退職届が確実に会社に送付され、会社側がその内容を認識したことを法的に証明できるようになります。
ただし、内容証明郵便は通常の郵送方法よりも手続きが複雑で費用もかかるため、あくまでトラブルが懸念される場合の最終手段として検討すべきでしょう。
もう一つの特別なケースは、弁護士を介した提出です。
退職を巡る会社とのトラブルが深刻化している場合や、自身での対応が困難な状況にある場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談し、代理人として退職届の提出や交渉を進めてもらうことも可能です。
これは費用がかかりますが、法的な専門知識を持った第三者が介入することで、問題をスムーズかつ有利に解決できる可能性があります。
これらの方法は、あくまで例外的な状況で利用されるべきであり、一般的な退職手続きでは手渡しやレターパック等での郵送が基本となります。
退職届郵送に関するよくある疑問
押印は必要?シャチハタはNG?
退職届における押印は、慣習として行われることが一般的です。法律上の明確な規定はありませんが、日本のビジネス文化において書類への押印は意思表示の証として重要視されてきました。
そのため、退職届を作成する際には、ご自身の氏名の横に押印するのがマナーとされています。
使用する印鑑については、認印または実印を用いるのが適切です。実印を使用する場合は、印鑑証明書を添付する必要はありません。
一方で、シャチハタ(インク浸透印)の使用は避けるべきとされています。
シャチハタは、インク内蔵型で手軽に押せる便利な印鑑ですが、大量生産されており、印影が複製されやすいため、重要な書類における「本人の意思表示」の証としては不向きと見なされることが多いからです。
正式な書類ではシャチハタを避けるのが一般的ですので、退職届のような重要な書類では、朱肉を使って押すタイプの印鑑を使用するようにしましょう。
これにより、書類の信頼性が保たれ、会社側にもより丁寧な印象を与えることができます。
提出期限や撤回に関する注意点
退職届の提出には、いくつかの重要な期限と、提出後の取り扱いに関する注意点があります。
法律上、雇用期間に定めのない労働者が退職する場合、退職希望日の2週間前までに会社にその意思を伝えれば、退職が成立します(民法第627条)。
この「2週間」という期間は、会社が後任者の手配や引き継ぎを行うための猶予期間として設けられています。そのため、郵送で退職届を送る場合は、この2週間という期間に加えて、郵送にかかる日数も考慮し、十分な余裕を持って手続きを進めることが不可欠です。
ギリギリになって郵送すると、会社側の対応が間に合わず、トラブルの原因となる可能性があります。
また、退職届は一度提出すると、原則として撤回はできません。退職届は、労働者からの一方的な契約解除の意思表示であるため、会社が合意しない限り撤回は難しいとされています。
ただし、会社との話し合いや合意があれば、例外的に撤回が認められるケースもあります。しかし、これはあくまで例外であり、提出前に本当に退職する意思があるのかを熟慮することが非常に重要です。
安易な気持ちで提出しないようにしましょう。
郵送後のトラブル対応と紛失時の対処法
退職届を郵送した後も、予期せぬトラブルが発生する可能性があります。まず、郵送後に会社に連絡しないとトラブルになる可能性があります。
会社側が退職届の到着を認識できず、退職手続きが進まないといった事態を避けるためにも、郵送後は必ず上司や人事担当者に連絡を入れ、到着確認を促しましょう。
万が一、郵送した退職届が紛失されてしまった場合は、まずはレターパックや書留の追跡サービスで配達状況を確認します。
「配達完了」になっているにもかかわらず会社が「届いていない」と主張する場合は、その追跡記録が強力な証拠となります。もし「紛失」と表示された場合は、直ちに郵便局に連絡し、調査を依頼します。
その上で、再度、配達記録が残る確実な方法(レターパックプラスや一般書留)で退職届を再送し、その旨を会社に伝えます。
さらに深刻なケースとして、会社が退職届の受け取りを拒否するような場合も考えられます。
このような状況では、先述の「内容証明郵便」の利用を検討すべきです。内容証明郵便を利用すれば、会社が受け取りを拒否したとしても、法的に退職の意思表示を行ったことの証拠を残すことができます。
これらのトラブルを未然に防ぐためには、郵送方法の選択(確実性の高いもの)、郵送後の連絡、そして追跡記録の確認という一連のステップを怠らないことが肝心です。
まとめ
よくある質問
Q: 退職届を郵送する際に、品名には何と書けば良いですか?
A: 「退職届」または「退職届在中」と記載するのが一般的です。社内規定によって異なる場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。
Q: 退職届を送るのにレターパックは適していますか?
A: はい、レターパックは追跡サービスがあり、相手に確実に届いたことを確認できるため、退職届の郵送に適しています。
Q: 退職届を入れる封筒の選び方にルールはありますか?
A: 白無地の封筒が一般的です。A4サイズの書類が入る角形2号(A4)などがよく使われます。宛名には「〇〇株式会社 〇〇様(役職名)」と正確に記載しましょう。
Q: 退職届を郵送する際、「在中」と封筒に書くべきですか?
A: 「退職届在中」と赤字で記載することで、中身が重要書類であることを明示し、丁寧な印象を与えられます。
Q: 退職届は郵送以外にどのように渡せますか?
A: 直接手渡し、または社内便で渡す方法があります。直属の上司や人事担当者に確認し、適切な方法を選びましょう。