休職できるのはどんな時?知っておきたい条件

休職は企業の就業規則で定められる

「休職」とは、従業員が病気や怪我、その他のやむを得ない理由で業務遂行が困難になった際に、雇用契約を維持したまま長期にわたって休業することを認める制度です。

これは法律で一律に定められたものではなく、それぞれの企業の就業規則によって、期間や条件が詳細に規定されています。

そのため、「どのような状況で休職が認められるか」は会社によって大きく異なります。まずは自身の会社の就業規則を確認することが非常に重要です。

会社によっては、そもそも休職制度自体が存在しないケースもゼロではありません。もし休職を検討している場合は、まず人事担当部署や上司に相談し、制度の有無や詳細について確認しましょう。早めの情報収集が、スムーズな手続きの第一歩となります。

主な休職の種類と具体例

休職にはいくつかの種類があり、最も一般的なのが「私傷病休職」です。これは業務外の病気や怪我により、長期間の療養が必要と診断された場合に適用されます。

例えば、うつ病などのメンタルヘルス不調や、入院を伴う大きな怪我などがこれに該当します。この際、医師の診断書は休職申請において非常に重要な書類となります。

その他にも、企業の判断によって様々な休職が認められることがあります。「事故欠勤休職」は、病気や怪我以外の、本人の都合による長期休養を指し、海外留学、ボランティア活動、自己啓発のための研修などが含まれる場合があります。

また、稀なケースですが、刑事事件で起訴された場合の「起訴休職」や、労働組合の業務に専念するための「組合専従休職」などもあります。いずれも、就業規則に明記されているか、会社が個別に認めるかによって適用が変わってきます。

診断書提出は必須?申請時の注意点

多くの企業では、私傷病休職を申請する際に医師の診断書提出が必須となります。これは、休職が必要な客観的な理由と、おおよその療養期間を会社が把握し、適切な対応を取るために必要とされるからです。

診断書には、病名、症状、療養期間の目安などが記載されていることが一般的です。主治医とよく相談し、休職が必要であると判断された場合は、速やかに会社の人事担当者や直属の上司に相談しましょう。

この際、口頭だけでなく、書面での申請が必要な場合もあるため、就業規則に定められた手続きに沿って進めることが重要です。

申請時には、まず自身の体調を最優先し、無理をしないことが大切です。万が一、休職制度が利用できない場合でも、有給休暇の取得や配置転換の検討など、会社と相談して別の解決策を探ることも可能です。

休職できる期間はどれくらい?上限や注意点

休職期間は企業の就業規則によって様々

休職できる期間は、労働基準法などの法律で一律に定められているものではなく、各企業の就業規則に委ねられています。そのため、会社によって「休職できる期間」は大きく異なります。

一般的には、勤続年数に応じて休職期間の上限が長くなったり、傷病の種類や重症度によって期間が考慮されたりすることが多いです。例えば、「勤続1年以上5年未満なら最大6ヶ月、5年以上なら最大1年」といったように、年数によって細かく規定されているケースも見られます。

休職を検討する際は、必ず自社の就業規則を確認し、自身に適用される期間を正確に把握することが不可欠です。あいまいな理解のまま手続きを進めると、予期せぬトラブルにつながる可能性もあります。

私傷病休職の期間目安と傷病手当金

私傷病休職の場合、多くの企業では3ヶ月から1年程度の期間を設定し、必要に応じて延長を認める体制を取っています。特にメンタルヘルス不調の場合、回復には個人差があるため、慎重な期間設定が求められます。

例えば、うつ病の場合、軽度なら1ヶ月、中等度なら3〜6ヶ月、重度なら1年以上が療養期間の目安とされることもあります。

また、休職期間中、健康保険に加入していれば「傷病手当金」を受け取れる可能性があります。傷病手当金は、病気や怪我で会社を休んだ際に、健康保険から支給される生活保障制度で、最長で「通算1年6ヶ月」の期間、支給されます。

この傷病手当金の支給期間に合わせて、休職期間を設けている企業も少なくありません。自身の健康保険組合の規定も確認しておくと良いでしょう。

休職期間中の給与と社会保険

休職期間中は、労働の提供がないため、原則として企業からの給与は支給されません。これは多くの企業で共通している点です。

しかし、生活の心配がある中で安心して療養に専念できるよう、前述の傷病手当金制度が大きな支えとなります。傷病手当金は、業務外の事由による病気や怪我で労務不能となり、連続する3日間を含み4日以上休んだ場合に、標準報酬日額の約3分の2が支給されます。

ただし、傷病手当金は健康保険からの支給であり、会社が支払う給与とは異なります。また、休職期間中も社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料など)の支払いは継続されます。

会社が一時的に立て替えてくれる場合もありますが、最終的には自身で負担することになりますので、その点も考慮に入れて資金計画を立てておくことが大切です。

「病休」「病欠」と休職の違いを理解しよう

「欠勤」は労働義務の不履行

会社を休む際に「欠勤」という言葉を耳にすることがあるでしょう。これは、労働義務がある日に、本人の都合で出勤しないことを指します。つまり、会社との雇用契約上は働く義務があるにもかかわらず、その義務を果たせない状態です。

例えば、体調不良で数日休む場合や、個人的な事情で会社を休む場合などが欠勤に当たります。

欠勤期間中は原則として給与が支払われません。また、連続して欠勤が続くと、企業の就業規則によっては、その後の休職制度の適用や、場合によっては懲戒処分の対象となる可能性もあります。

無断欠勤は会社の信頼を失う行為であり、病気や家庭の事情などで休む必要がある場合は、必ず事前に会社に連絡し、適切な手続きを取ることが求められます。

「休業」は会社都合の休み

「休業」という言葉も、一見すると休職と似ているように感じますが、その意味合いは大きく異なります。

休業は、会社の都合(例:設備故障による操業停止、一時的な業務縮小など)により、労働が休みになることを指します。従業員側に働く意思があるにもかかわらず、会社側の事情で労働ができない状態です。

この場合、労働者の責任ではないため、労働基準法に基づき、会社は原則として休業期間中の賃金(平均賃金の6割以上)を支払う義務があります。

また、育児休業や介護休業のように、法律で定められた特定の目的のための休業制度も存在しますが、これらは本記事で扱う「休職」とは制度の根拠や目的が異なります。

「休職」は雇用維持したまま長期休む制度

これに対して「休職」は、従業員本人の理由(病気、怪我、その他やむを得ない事情)により、長期的な休業が必要な場合に、雇用関係を維持しながら労働義務を免除される制度です。

欠勤が短期的な労働義務の不履行であるのに対し、休職は会社が従業員の回復や事情を考慮し、特別に労働義務を免除する措置と言えます。

つまり、休職は会社と従業員の信頼関係に基づいて成立する制度であり、従業員の生活保障と職場の円滑な運営を両立させるための仕組みです。

それぞれの違いをまとめると以下のようになります。

項目 欠勤 休業 休職
理由 本人の都合 会社の都合 本人の長期的な事情
労働義務 あり(履行せず) なし 免除される
給与 原則無給 原則支給(6割以上) 原則無給
目的 一時的な休み 会社の調整 雇用維持しつつ長期療養・休養

休職したらどうなる?復帰までの流れと知っておくべきこと

休職中の過ごし方と復職への準備

休職期間は、何よりも心身の回復に専念することが最も重要です。焦って職場復帰を急ぐと、かえって再休職のリスクを高めてしまうことがあります。医師の指示に従い、適切な治療を受け、十分に休息を取りましょう。

この期間は、会社との連絡は最小限に留めることが望ましいですが、月に一度程度の状況報告など、会社の指示に従って連絡を取り合う必要があります。

回復の兆しが見えてきたら、主治医と相談しながら復職に向けた準備を始めます。例えば、生活リズムを整える、軽い運動を取り入れる、図書館やカフェで過ごす時間を増やすなど、少しずつ負荷を上げていくことが大切です。

企業によっては、「試し出勤制度」や「リハビリ出勤」といった、段階的に職場に慣れるための制度を設けている場合もありますので、活用を検討してみましょう。

復職までの具体的なステップ

職場復帰は、会社側の慎重な判断を経て行われます。一般的な流れとしては、まず主治医から復職可能である旨の診断書が提出されます。

その後、会社によっては産業医との面談が実施され、就業可否の判断が行われます。さらに、復職判定委員会が開催され、本人の状態、主治医の意見、産業医の意見、職場の状況などを総合的に判断して、最終的な復職が決定されます。

復職の際は、いきなりフルタイム勤務に戻るのではなく、短時間勤務や軽易な業務からのスタートなど、段階的な復帰を認める企業もあります。これは、従業員が無理なく職場環境に再適応できるよう配慮するものです。

復職後も、定期的な面談や状況確認を通じて、再休職を防止するためのサポートが継続されることが一般的です。

復職率と再休職のリスクについて

休職からの復職率は、期間によって変動します。ある調査によると、休職期間3ヶ月までに復職した割合は35%、6ヶ月までで58%、12ヶ月までで71%、18ヶ月までで75%となっています。

およそ半年で6割、1年で7割が職場復帰しているというデータです。しかし、過去3年間の病気休職制度利用者の復職率の平均値は51.9%という調査結果もあり、企業のサポート体制や個人の状況によって差があることが伺えます。

一方で、復職後の再休職率も考慮する必要があります。復職から6ヶ月後で19.3%、1年後で28.3%、2年後で37.7%、5年後で47.1%が再休職しているというデータもあります。

この高い再休職率からもわかるように、復職後のケアや無理のない働き方がいかに重要であるかがわかります。会社側と協力し、再休職を防ぐための環境整備やサポート体制を整えることが、持続的な職場定着につながります。

休職に関するQ&A:疑問を解消します

休職期間中のボーナスや退職金への影響は?

休職期間中のボーナス(賞与)や退職金への影響は、企業の就業規則や賃金規程によって異なります。一般的には、ボーナスは過去の勤務実績や業績への貢献度に基づいて支給されるため、休職期間中は勤務実績がないものとみなされ、支給対象外となったり、減額されたりするケースがほとんどです。

査定期間中に休職期間が含まれる場合も同様に影響を受ける可能性が高いでしょう。

退職金についても、勤続年数に応じて支給されることが多いですが、休職期間が勤続年数としてカウントされない、あるいは支給額が減額されるといった規定がある企業もあります。

休職を検討する際は、これらの経済的な影響についても事前に就業規則で確認するか、人事担当者に問い合わせておくことが賢明です。

休職中に転職活動はできる?

休職の目的は、心身の回復に専念し、職場復帰を目指すことにあります。そのため、原則として休職期間中に転職活動を行うことは推奨されません。

多くの企業の就業規則では、休職期間中の兼業や他の会社での就労を禁止している場合があります。もし転職活動が会社に発覚した場合、就業規則違反となり、休職の取り消しや懲戒処分の対象となる可能性もゼロではありません。

また、療養に専念すべき時期に転職活動を行うことは、回復を遅らせる要因にもなりかねません。

もし現在の職場への復帰が難しいと感じているのであれば、まずはしっかりと療養に専念し、復職後に、改めて今後のキャリアについて考えるのが健全なアプローチと言えるでしょう。

休職制度がない会社の場合はどうすればいい?

法律で休職制度が義務付けられているわけではないため、中小企業などでは休職制度がない会社も存在します。もし自社に休職制度がない場合は、まず有給休暇の活用を検討しましょう。

まとまった日数の有給休暇があれば、一時的な療養期間を確保できる可能性があります。

それでも期間が足りない場合、あるいは有給休暇を使い果たしてしまった場合は、健康保険の「傷病手当金」の申請を検討してください。傷病手当金は、会社の休職制度の有無に関わらず、健康保険に加入していれば条件を満たせば支給される可能性があります。

また、会社の対応に疑問がある場合や、個別の事情で困っている場合は、労働基準監督署や、弁護士などの専門家に相談することも有効な選択肢となります。