休職中でも在籍扱い?知っておきたい休職期間と賞与の疑問

病気や怪我、あるいは家族の介護などでやむを得ず仕事を休む「休職」。会社に籍を置いたまま業務を離れるこの期間は、在籍扱いとなるのでしょうか?また、賞与(ボーナス)は支給されるのか、社会保険料や税金はどうなるのかなど、多くの疑問が浮かびます。

本記事では、休職中の「在籍扱い」に関する基本的な考え方から、賞与の支給、キャリアへの影響、そして休職を上手に活用するためのポイントまで、最新情報をもとに詳しく解説します。

休職中の「在籍扱い」とは?基本的な考え方

会社に籍を置くことの意味

休職中の従業員は、会社に籍を置いている「在籍扱い」となるのが一般的です。これは、雇用契約が継続している状態を指し、一時的に業務を停止している期間とみなされます。

在籍扱いであるため、会社の福利厚生の一部が利用できたり、退職金算定期間に含まれたりする場合もあります。しかし、その具体的な取り扱いは、法律で一律に定められたものではなく、各企業の就業規則や賃金規程によって異なります。

休職に入る前に、必ず自身の会社の規定を詳細に確認しておくことが重要です。

休職中の給与・手当と社会保険料の扱い

休職期間中の給与は、多くの企業で原則として支給されない(「ノーワーク・ノーペイ」の原則)のが一般的です。ただし、業務外の病気や怪我で休職している場合は、健康保険から「傷病手当金」が支給される可能性があります。

社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料など)は、産休・育休期間中の免除を除き、休職期間中も原則として支払い義務が継続します。給与が一部でも支給されればそこから控除されますが、無給の場合は会社が立て替えるか、従業員自身が直接納付する必要があります。

無給時の社会保険料の納付方法については、事前に会社と確認を取り、計画を立てておくことが大切です。

住民税と所得税の課税関係

休職中であっても、社会保険料と同様に、住民税の支払い義務は継続します。住民税は前年の所得に基づいて課税されるため、休職期間中も納税義務が発生するのです。給与から天引き(特別徴収)されていた場合、無給になると自分で納付書を使って支払う「普通徴収」に切り替わることがあります。

一方、所得税については、休職中に給与の支払いがない場合、原則として源泉徴収されないため、納付する必要はありません。また、傷病手当金は非課税所得であり、所得税の課税対象にはなりません。

税金に関する不明な点は、会社の経理担当者や税務署に確認することをお勧めします。

休職期間は在籍期間に含まれる?キャリアへの影響

勤続年数と在籍期間の関係

休職期間は、原則として会社の「在籍期間」に含まれるのが一般的です。これは、雇用契約が継続している状態であるためです。例えば、退職金制度において勤続年数を算定する際、休職期間が対象に含まれることが多いでしょう。

しかし、企業の退職金規程によっては、休職期間を算定対象外とするケースも存在するため、自身の会社の規程を確認することが重要です。この「在籍扱い」は、将来的な復職を前提とした、会社と従業員の信頼関係の維持を意味します。

昇進・昇給査定への影響

休職期間が在籍期間に含まれる一方で、実際の業務実績がない期間であるため、昇進や昇給の査定には影響が出やすいのが実情です。多くの企業では、賞与と同様に「ノーワーク・ノーペイ」の考え方が適用され、評価期間中の勤務実績が重視されます。

そのため、休職期間が査定期間に含まれる場合、通常通り勤務していた従業員と比較して、昇進・昇給が見送られたり、査定評価が低くなる可能性があります。復職後のキャリアパスや評価について、会社としっかりと話し合う機会を持つことが重要です。

復職後のキャリアパスと会社のサポート

休職からの復職は、従業員の心身の回復状態だけでなく、会社のサポート体制によって大きく左右されます。多くの企業では、休職者がスムーズに職場復帰できるよう、リハビリ出勤制度や時短勤務、業務内容の配慮といった支援策を設けています。

復職後も、以前と同じ業務量や責任をすぐに負うことが難しい場合があるため、会社側が柔軟な対応をすることが求められます。従業員としては、復職前に主治医や産業医と連携し、具体的な復職計画を会社と共有することが大切です。

休職中でも賞与はもらえる?在職扱いとの関係

「ノーワーク・ノーペイ」の原則と賞与

賞与(ボーナス)は、基本的に従業員の勤務実績や貢献度に対して支払われるものです。そのため、休職期間中の業務実績がない場合は、多くの企業で「ノーワーク・ノーペイ」の原則に基づき、賞与が減額または支給されないと定めています。

これは、賞与が労働基準法で義務付けられた賃金ではなく、企業が任意で支給する「恩恵的な賃金」とみなされることが多いためです。賞与の支給基準や計算方法は、各企業の就業規則や賃金規程、または労使協定によって詳細が定められています。

休職前に自身の会社の規程を必ず確認しましょう。

減額・不支給の具体的な計算方法

賞与の算定期間中に休職期間が含まれる場合、具体的な減額方法としては、その期間に応じて日割り計算されたり、勤務日数に応じて支給割合が変動したりすることがあります。

例えば、査定期間の勤務日数に応じて支給割合が定められている場合、休職日数分だけ勤務日数が減るため、支給割合も下がることになります。国家公務員の場合も、賞与の査定期間中の休職期間が長くなるほど支給額が少なくなる規定があり、具体的な支給割合は人事院規則で定められています。

このように、休職期間が賞与に与える影響は大きく、経済的な計画を立てる上で十分に留意する必要があります。

賞与が支給される可能性のあるケース

全てのケースで賞与が不支給となるわけではありません。特に、産前産後休業や育児休業など、法律で取得が認められている休業期間については、一定割合の賞与が支給される傾向にある企業が多いです。

これは、これらの休業が社会的に保護されており、従業員のライフイベントを支援する目的があるためです。また、ごく一部の企業では、就業規則で休職中の従業員に賞与を一定割合支給すると定めている場合もあります。

いずれにしても、個別の事情や企業の規程によって対応が異なるため、自身の状況と会社の就業規則を照らし合わせて確認することが不可欠です。

休職中の残業時間や業務復帰について

休職期間中は業務から完全に離れる

休職期間中は、心身の回復に専念するため、原則として会社の業務から完全に離れることが求められます。これは、残業はもちろんのこと、メールチェックや電話対応など、一切の業務を行わないことを意味します。

無理に業務に関わろうとすると、回復が遅れたり、症状が悪化したりするリスクがあります。会社側も、休職中の従業員に業務を指示することは原則としてできません。この期間は、自身の健康を最優先し、治療や休養に集中するための大切な時間であることを理解することが肝要です。

スムーズな業務復帰のための準備

休職期間は、ただ休むだけでなく、スムーズな復帰に向けた準備期間でもあります。主治医や産業医と密に連携を取りながら、自身の回復状況を正確に把握し、復帰のタイミングや条件について相談を進めることが不可欠です。

多くの企業では、復職支援プログラムやリハビリ出勤制度を設けており、いきなりフルタイム勤務に戻るのではなく、段階的に業務に慣れていくことができます。復職の意思を会社に伝える際には、主治医からの診断書を提出し、会社と十分に話し合い、無理のない復職計画を立てることが重要です。

復帰後の残業規制と業務調整

復職後すぐに以前と同じ業務量や残業時間に対応することは、再発のリスクを高める可能性があるため、慎重な対応が求められます。会社は、休職から復帰した従業員に対して、健康状態に応じた適切な配慮を行う義務があります。

具体的には、一定期間の残業規制、業務量の調整、部署異動や業務内容の見直しなどが検討されます。主治医や産業医からの意見書に基づき、会社と従業員が協力して、無理のない働き方を模索することが肝要です。従業員自身も、自分の体調や限界を理解し、無理をしない姿勢が大切です。

休職を乗り越えるための注意点と上手に活用する方法

就業規則の事前確認と情報収集の重要性

休職を検討する際、または休職に入ることが決まったら、まず自身の会社の就業規則や賃金規程を徹底的に確認することが最も重要です。休職期間の長さ、給与や賞与の有無と計算方法、社会保険料の取り扱い、復職手続き、傷病手当金の申請方法など、重要な情報が網羅されています。

不明な点があれば、人事を担当する部署に直接問い合わせて、正確な情報を入手しておくべきです。事前にこれらの情報を把握しておくことで、休職期間中の経済的な不安を軽減し、心身の回復に専念できる環境を整えることができます。

傷病手当金などの経済的支援制度の活用

休職中の経済的な不安を和らげるために、「傷病手当金」は非常に重要な支援制度です。これは、健康保険の被保険者が業務外の病気や怪我で働けなくなった場合に、最長1年6ヶ月間、標準報酬日額の約2/3が支給されます。

申請には医師の診断書や会社の証明が必要となるため、早めに準備を進めることが大切です。また、障害年金や生活福祉資金貸付制度など、状況に応じて利用できる公的支援制度もあります。これらの制度を上手に活用することで、治療や休養に専念し、焦らず復職を目指すことが可能となります。

心身の回復に専念し、専門家と連携する

休職の最大の目的は、心身の回復と健康を取り戻すことです。この期間は、仕事のことを一旦忘れ、治療や休養に集中することが何よりも重要です。主治医の指示に従い、必要な治療を継続し、規則正しい生活を送ることを心がけましょう。

また、一人で抱え込まず、カウンセリングやリワークプログラムなどの専門的なサポートも積極的に活用することも有効です。復職に向けては、主治医だけでなく、会社の産業医や保健師とも連携し、計画的に進めることが成功の鍵となります。焦らず、自分のペースで回復を目指しましょう。