概要: 日本の英語力は世界的に見てどの程度なのか、都道府県別のランキングや、英語力が高い国との比較を解説します。また、意外な高さを誇るネパールにも注目し、日本人自身の英語力向上への道筋を探ります。
日本の英語力、世界ランキングと国際比較
日本のEF EPIスコア、過去最低を更新
「EF EPI英語能力指数 2024」は、世界の英語力を測る重要な指標として注目されています。EFエデュケーション・ファーストが発表したこの調査によると、日本の英語能力は世界116カ国・地域中92位と、残念ながら過去最低を更新しました。
これは「低い英語力」に分類されるレベルであり、EF EPIスコアは454点でした。2011年の調査開始以来、日本のEF EPIスコアは年々低下傾向にあり、この現状は国際社会における日本の立ち位置を考える上で、非常に憂慮すべき事態と言えるでしょう。
世界平均スコアは477点であり、日本は23点もの差をつけられています。このスコアが示すのは、単なる学力テストの結果ではなく、国際的なコミュニケーション能力の不足が日本全体で進行している可能性です。この傾向を食い止め、改善していくための具体的な施策が急務となっています。
世界平均との差と若年層の英語力低下
世界平均との23点差という数字は、日本の英語力が国際水準に達していないことを明確に示しています。特に注目すべきは、調査対象となった210万人のデータが示す、18歳から20歳の若年層の英語力低下が顕著であるという点です。
彼らはこれからの社会を担う世代であり、グローバル化が加速する世界において、英語力は不可欠なツールとなります。この若年層の英語力低下の要因として、コロナ禍における対面授業の制限や交流の減少が挙げられています。
海外への留学や国際交流イベントが制限されたことで、実際に英語を使う機会が失われ、学習意欲や実践力の低下につながった可能性が高いです。将来の国際競争力に直結する若年層の英語力向上は、喫緊の課題と言えるでしょう。
なぜ日本は苦戦しているのか?国際的な視点
日本が英語力で苦戦している背景には、いくつかの構造的な要因が考えられます。一つは、従来の英語教育が文法や読み書きに偏重し、実践的なコミュニケーション能力の育成に十分な力が注がれてこなかった点です。
また、日常生活で英語を使う機会が少ないことや、失敗を恐れて発言をためらう国民性も影響しているかもしれません。完璧な英語を話そうとしすぎるあまり、結局何も話せないという状況に陥りがちです。国際社会では、流暢さよりもまず「伝えようとする意欲」が重要視されます。
他のアジア諸国、例えばシンガポールやフィリピン、そして後述するネパールが英語力を高めている中、日本がこのままでは国際的なプレゼンスを維持することが難しくなるでしょう。文化的な背景や教育システムを根本から見直す時期に来ているのかもしれません。
都道府県別!英語力ランキングの実態
文部科学省調査が示す地域差
日本の英語力は国全体で課題を抱えていますが、国内の地域間でどの程度の差があるのでしょうか。文部科学省が公表した2023年度「英語教育実施状況調査」は、高校3年生の英語力を対象とした興味深いデータを提供しています。
この調査では、CEFR A2レベル(英検準2級相当)以上の英語力を取得、または有する生徒の割合を基に都道府県別のランキングが算出されています。結果を見ると、地域によって英語教育への取り組みや生徒の英語力に大きな違いがあることが浮き彫りになりました。
一律に「日本の英語力が低い」と捉えるだけでなく、地域ごとの特性や成功事例に目を向けることで、全国的な底上げに向けたヒントが見えてくるはずです。特定の地域がなぜ高い英語力を維持できているのか、その秘訣を探ることは非常に有意義です。
トップランナー富山県と福井県の戦略
都道府県別英語力ランキングでは、富山県が堂々の1位を獲得しました。そして、福井県は2位と、北陸地方の躍進が目立つ結果となりました。
特に福井県では、61.1%もの生徒がCEFR A2レベル以上の英語力を有しており、全国平均の50.6%を大きく上回っています。福井県がこのような高い実績を上げている背景には、綿密に練られた英語教育戦略があります。
福井県では、小学校から中学校、高校まで連携した一貫した英語教育を推進しているだけでなく、外部検定の積極的な活用、ALT(外国語指導助手)の増員、さらには独自の教材配布など、多岐にわたる支援を行っています。これらの総合的なアプローチが、生徒たちの英語力向上に大きく貢献していると言えるでしょう。
地域ごとの教育格差と課題
富山県や福井県の成功事例は素晴らしい一方で、都道府県間の英語力格差は、日本の英語教育全体が抱える課題を浮き彫りにしています。この格差は、単に地域ごとの教育予算の違いだけでなく、以下のような複合的な要因によって生じている可能性があります。
- 教員の英語力と指導スキル: 英語を教える教員自身の英語力や、最新の教授法に関する研修機会の差。
- ALTの配置と活用状況: 外部のネイティブスピーカーとの交流機会の多寡。
- 地域の国際交流機会: 外国人との接触機会や異文化体験の機会の差。
- 保護者や生徒の学習意欲: 英語学習への関心や、将来への投資としての認識の違い。
これらの要因を考慮し、地域特性に応じたきめ細やかな支援や、成功事例の全国的な共有・横展開が、日本の英語力全体の底上げには不可欠です。都市部と地方における英語学習機会の不均衡を是正し、どこに住んでいても質の高い英語教育を受けられる環境を整備することが求められます。
なぜネパールは英語力で上位なのか?
幼少期からの徹底した英語教育
日本の英語力が低迷する中で、アジアの小国であるネパールがなぜ高い英語力を誇るのかは、非常に興味深い問いです。ネパールでは、公用語の一つであるネパール語に加え、英語教育が非常に盛んに行われています。
その特徴は、教育の早期段階からの徹底した導入にあります。多くの私立学校では、なんと幼稚園から英語の授業がカリキュラムに組み込まれています。また、公立学校でも小学校から英語は必須科目となっており、幼い頃から英語に触れる機会が非常に多いのです。
このような早期からの英語教育は、子どもたちが自然な形で英語に親しみ、抵抗感なく学習を進める土壌を育んでいます。学校での学習に加え、英語圏のメディアに触れる機会も多いため、リスニング力やスピーキング力も自然と養われていきます。
国際社会で求められる英語力への高い意識
ネパール人の平均TOEFLスコアは86点と、日本の平均スコア73点を大きく上回っており、国際的にも高い水準にあると言えます。この高い英語力の背景には、国民の「英語ができないと将来の選択肢が限られる」という強い危機感と高いモチベーションがあります。
ネパールでは、経済発展や観光業の振興において、英語力が非常に重要な役割を担っています。特に首都カトマンズのような都市部では観光業が盛んなため、日常的に英語を使う機会も多く、国際的な場で活躍できる英語力が自然と身につく環境があります。
さらに、多くのネパール人が海外での就労や留学を志すため、英語は彼らの夢を実現するための必須ツールです。そのため、日本企業がネパール人を採用する際にも、その高い英語力が重視される傾向にあり、彼らの国際的な活躍の場を広げています。
ネパールの英語教育、その光と影
ネパールの英語教育は高い成果を上げている一方で、いくつかの課題も抱えています。一つは、学校教育が文法や読み書きに重点を置いているため、会話力には個人差が見られることです。
試験対策に特化した学習になりがちで、流暢な日常会話やディスカッションのスキルが不足しているケースも少なくありません。また、都市部と地方では教育インフラや英語に触れる機会に差があるため、地域による英語力の差も存在します。
地方の学校ではALTの配置が難しかったり、英語教材の入手が困難だったりすることもあります。しかし、全体として英語学習への意欲が非常に高く、教育機関もより実践的な英語教育の導入に向けて努力を続けています。ネパールの事例は、「なぜ英語を学ぶのか」という学習の目的意識が、英語力に大きく影響することを教えてくれます。
日本人と英語力の現状、そして未来
「低い英語力」がもたらす影響
日本の英語力が世界92位という現状は、単なるランキングの数字以上の深刻な影響を私たちの社会にもたらしています。最も直接的なのは、国際的なコミュニケーションにおける障壁です。
ビジネスの場では、海外のパートナー企業との交渉や契約において、意思疎通のミスが生じやすくなり、ビジネスチャンスの損失につながることがあります。学術分野では、最新の研究動向や論文を英語で効率的に読み解くことができず、情報格差が広がるリスクを抱えています。
また、観光立国を目指す日本にとって、外国人観光客への適切な対応ができないことは、おもてなしの質の低下を招きます。個人的なレベルでも、海外旅行での不便さや、多様な文化・価値観に触れる機会の減少など、その影響は多岐にわたります。
日本の国際競争力と英語教育の重要性
グローバル化が不可逆的に進む現代において、英語力は個人の能力だけでなく、国家の国際競争力を左右する重要な要素となっています。経済、科学技術、外交、文化交流など、あらゆる分野で国際的な協力や競争が活発化しており、英語はその共通言語として機能しています。
日本企業が海外市場で事業を拡大するためには、英語を駆使して現地の文化やニーズを理解し、効果的な戦略を立てる人材が不可欠です。また、日本の技術や文化を世界に発信し、国際社会での存在感を高めるためにも、英語による情報発信力は欠かせません。
次世代を担う若者たちが国際社会で活躍し、日本の未来を切り拓いていくためには、英語教育の抜本的な見直しと強化が喫緊の課題です。単に文法や単語を覚えるだけでなく、実践的なコミュニケーション能力を養う教育への転換が求められています。
未来に向けた英語学習へのアプローチ
日本の英語教育が目指すべき未来は、「使える英語」を習得することにあります。そのためには、従来の詰め込み型の知識偏重から、実践的なコミュニケーション重視の教育へとシフトする必要があります。
具体的には、小学校からの英語学習をさらに強化し、中学校・高校ではディスカッションやプレゼンテーションなど、アウトプットの機会を増やすことが重要です。また、ICT(情報通信技術)を活用した学習も不可欠であり、AIを活用した発音矯正アプリやオンライン英会話などを積極的に取り入れるべきでしょう。
さらに、英語学習を「受験のため」だけでなく、「生涯学習」として捉える意識改革も必要です。異文化理解を深めるための国際交流プログラムや、社会人が継続して学べる環境整備も、未来の日本の英語力を高める上で重要な要素となります。
英語力向上のためのヒント
日常生活に取り入れる英語学習の習慣
英語力向上は特別な努力だけではなく、日常生活に英語を自然に取り入れることから始まります。忙しい毎日の中でも、少しの工夫で学習機会を創出することができます。
- メディアの活用: 好きな洋画や海外ドラマを英語字幕または字幕なしで視聴する。英語の音楽を聴き、歌詞を調べてみる。英語のニュースサイトやブログを読む習慣をつける。
- 環境設定: スマートフォンやPCの言語設定を英語にしてみる。英語のSNSアカウントをフォローし、タイムラインを英語情報で満たす。
- 短時間学習: 通勤・通学中に英語学習アプリを利用する。シャドーイング(音声に合わせて発音する練習)を日課にする。
このように、楽しみながら英語に触れる機会を増やすことで、無理なく学習を継続し、英語への抵抗感をなくすことができます。インプットとアウトプットのバランスを意識し、少しずつ英語に慣れていきましょう。
アウトプットを重視した実践的な学び
日本の英語教育で不足しがちと指摘されるのが、アウトプットの機会です。知識として英語を理解しているだけでなく、実際に「使う」ことで初めて英語は「使える」ようになります。
アウトプットを増やすための具体的な方法としては、以下のようなものがあります。
- オンライン英会話: 低価格で毎日ネイティブスピーカーと話す機会が得られます。間違えてもいいから積極的に話す姿勢が重要です。
- 言語交換パートナー: 互いの言語を教え合うことで、自然な会話の練習ができます。異文化理解も深まります。
- 英語学習コミュニティ: 地域の英会話サークルやオンラインの学習グループに参加し、意見交換を行う。
- 独り言・シャドーイング: 英語で独り言を言ったり、英語の音声に合わせて発音練習をしたりするだけでも効果があります。
「間違えることは成長の証」と前向きに捉え、積極的に英語を発信する機会を作りましょう。完璧を求めすぎず、まずは「伝えよう」とすることが大切です。
学習を継続するためのモチベーション維持
英語学習は一朝一夕で成果が出るものではなく、継続することが最も重要です。モチベーションを維持するための工夫は、成功への鍵となります。
まず、具体的な目標を設定しましょう。例えば、「TOEICで〇点取る」「来年の海外旅行で英語で道を尋ねる」「英語のニュースを理解できるようになる」など、達成可能な目標を立てることが大切です。目標が明確であれば、学習の方向性も定まります。
次に、学習の進捗を可視化しましょう。学習アプリの記録機能を使ったり、専用のノートに学習時間や内容を記録したりすることで、自分の成長を実感でき、達成感につながります。また、同じ目標を持つ仲間との交流もモチベーション維持に役立ちます。
そして何よりも、英語学習を楽しむことを忘れないでください。好きなテーマで英語を学んだり、英語を使って新しいことに挑戦したりすることで、学習は苦痛ではなくなります。無理なく、楽しく続けることが、着実な英語力向上への最短ルートと言えるでしょう。
まとめ
よくある質問
Q: 日本の英語力は世界ランキングでどのあたりですか?
A: 日本の英語力は、EF EPI(EF英語能力指数)などの主要な国際ランキングでは、毎年概ね中位から下位に位置しています。上位国と比較すると、まだ向上の余地があると言えるでしょう。
Q: 都道府県によって英語力に差はありますか?
A: はい、都道府県によって英語力の地域差や地域格差が見られます。一般的に、都市部や国際的な交流が多い地域の方が英語力が高い傾向がありますが、一概には言えません。都道府県別のランキングも発表されており、参考になります。
Q: ネパールはなぜ英語力が高いのですか?
A: ネパールは、教育制度における英語の重要度、国際機関やNGOの活動、観光業など、英語が生活や経済活動に密接に関わる機会が多いことが、国民の英語力向上に繋がっていると考えられます。
Q: 日本人全体の英語力は、世界基準で見るとどうですか?
A: 日本人全体の英語力は、世界基準で見るとまだ十分とは言えず、特にスピーキングやリスニングといった実践的な能力に課題があると言われています。学習方法や機会の不足が要因として挙げられます。
Q: さいたま市の英語力はランキングでどうなっていますか?
A: さいたま市の英語力に関する具体的な都道府県別ランキングは、公表されているデータによって変動します。一般的には、大都市圏の一部として、一定レベルの英語力が期待されますが、詳細な順位は最新の調査をご確認ください。