新卒・中途採用の昇給事情とは?

新卒の昇給は「定期昇給」がメイン

社会人としてキャリアをスタートさせる新卒社員にとって、初めての昇給は大きな関心事でしょう。多くの企業では、新卒入社の場合、入社2年目以降から「定期昇給」が始まります。

定期昇給とは、従業員の年齢や勤続年数、個人の評価などに基づいて基本給が増える仕組みのこと。参考情報によると、初任給が20万円の場合、社会人2年目の昇給額は月収で3,000円~4,000円程度が目安とされています。

これは、新卒社員が基本的な業務を習得し、会社への貢献度が高まることへの期待が込められた昇給と言えるでしょう。会社によっては「ベースアップ」(全社員の給与水準を一律に引き上げる仕組み)も実施されることがありますが、新卒にとっては個人の成長に応じた定期昇給が主な昇給の機会となります。

日々の業務に真摯に取り組み、着実にスキルアップすることが、安定した昇給への第一歩となるのです。

中途採用は入社時の交渉が重要

中途採用の場合、新卒とは異なり、入社時の給料交渉がその後の昇給に大きく影響を与えることがあります。あなたの給料は、面接時にアピールしたスキルや経験、前職での給料、そして具体的な実績などを総合的に考慮して決定されるからです。

入社後ももちろん定期昇給や評価による昇給はありますが、スタート地点が高ければ高いほど、その後の給与水準も有利になります。

そのため、内定が出た際には、給与提示額があなたの市場価値に見合っているか、昇給・昇格の有無や、給与の見直し時期、そしてその根拠についても確認しておくことが非常に重要です。

不明な点があれば遠慮なく質問し、納得した上で入社を決めるようにしましょう。入社後に「こんなはずではなかった」とならないためにも、事前の情報収集と交渉がカギを握ります。

年齢による昇給の傾向と実態

昇給は、年齢によってもその傾向が異なります。参考情報にある2024年の年代別昇給額の平均を見てみましょう。

年代 昇給額(平均)
20代 15,274円
30代 14,650円
40代 14,778円
50代 14,354円

このデータからわかるように、20代の昇給額が他の年代に比べてやや高い傾向が見られます。これは、若手のうちは業務経験を積むことで急激にスキルアップし、会社への貢献度が高まるため、その成長が昇給に反映されやすいと考えられます。

一方、30代以降は年代による大きな差は少なく、安定した昇給が続く傾向にあります。この年代になると、単に年齢や勤続年数だけでなく、個人の能力や役職、実績がより昇給に直結するようになります。年功序列が根強い企業では年齢とともに着実に昇給するかもしれませんが、成果主義の企業では年齢に関わらず、実績に応じて昇給額が変動することが特徴です。

昇給は何年目から?年齢や勤続年数でどう変わる?

社会人2年目からの「定期昇給」の現実

「昇給はいつから始まるの?」という疑問は、多くの新社会人が抱くものです。一般的に、多くの企業では入社1年後、つまり社会人2年目から定期昇給が始まるのが現実です。入社初年度は研修や業務の基礎固めに充てられるため、本格的な評価とそれに基づく昇給は2年目以降となることが多いのです。

参考情報でも、昇給した理由として最も多かったのが「年定期昇給(年に1・2回、年齢や勤続年数で上がる)」で61.6%を占めていることからも、この仕組みが広く浸透していることがわかります。

2024年の調査では、昇給を実施した企業は89.1%に上り、一人あたりの昇給平均額は14,701円、昇給率の平均は3.67%というデータがあります。これはあくまで平均値ですが、多くの企業で毎年一定の昇給が期待できることを示しています。

入社2年目からの昇給は、これまでの努力が評価され、会社の一員として認められた証でもあります。

勤続年数と評価が昇給に与える影響

昇給の要因として、勤続年数は非常に大きな要素です。長く会社に貢献し続けることで、業務知識や経験が深まり、より複雑な業務や責任ある立場を任されるようになります。これにより、基本給のベースが徐々に上がっていくのが一般的な流れです。

しかし、単に長く勤めていれば良いというわけではありません。定期昇給の仕組みは、「従業員ごとに仕事の成績なども考慮して昇給する」と定義されているように、個人の評価や能力、そして成績がより重要になります。

特に、勤続年数が長くなるにつれて、若手時代のような画一的な昇給ではなく、個々のパフォーマンスに応じた差が顕著になります。上司からの評価、達成した目標、チームへの貢献度などが昇給額を左右する要素となるため、日頃から成果を意識した働き方を心がけることが重要です。

年代別の昇給額とその特徴

昇給は年齢とともにどのように変化するのでしょうか。先ほども触れましたが、改めて年代別の昇給額の平均を見てみましょう。

年代 昇給額(平均)
20代 15,274円
30代 14,650円
40代 14,778円
50代 14,354円

このデータが示すように、20代は比較的昇給額が大きい傾向にあります。これは、業務習熟度が急速に高まる時期であり、新しい知識やスキルを吸収し、短期間で会社への貢献度を上げやすいためと考えられます。

一方、30代以降は昇給額の大きな変動は少なく、比較的安定した推移を見せています。この年代になると、役職や専門性、マネジメント能力などが昇給の鍵を握るようになります。単に勤続年数が長いだけでなく、組織内での役割や責任に応じた評価が、昇給額に直接的に影響を与えるようになるのです。

ただし、これはあくまで全体の平均値であり、企業規模や業界、個人の成果によっては、年代に関わらず大きく昇給する可能性も十分にあります。

昇給がストップする年齢や理由とは?

「昇給停止年齢」の平均とその背景

多くのビジネスパーソンが気になることの一つに、「昇給はいつまで続くのか?」という疑問があるでしょう。残念ながら、定期昇給は永久に続くわけではありません。一般的に、従業員が一定の年齢に達すると停止されることがあります。

公益財団法人日本生産性本部が2014年に行った調査では、定期昇給の停止年齢の平均は48.9歳という結果が出ています。多くの企業では、50代半ばから60歳前後で昇給がストップする傾向が見られます。

この背景には、いくつかの理由があります。一つは、定年(60〜65歳)に向けて給与水準を調整する目的です。定年前の数年間で給与を緩やかに下降させることで、会社は人件費をコントロールし、年金の受給開始時期も考慮したスムーズな移行を促します。

もう一つは、若手社員の昇給原資を確保するためです。ベテラン層の昇給を抑えることで、若手社員への投資を可能にし、組織全体の活性化を図る狙いもあります。

企業規模による昇給停止年齢の違い

昇給が停止する年齢は、企業規模によっても異なる傾向があります。参考情報によれば、多くの企業で50代半ばから60歳前後で昇給がストップする一方で、中規模企業では30代後半、小規模企業では50代で停止するケースもあるとされています。

これは、企業の人件費構造や年齢構成、そして給与制度の柔軟性が影響していると考えられます。大企業に比べ、中・小規模企業では総人件費に占める給与の割合が大きく、昇給停止のタイミングを早めることで、人件費の管理をより厳格に行う必要がある場合があるためです。

また、若返りを図りたい、あるいは経営資源を特定の層に集中させたいといった経営戦略が、昇給停止年齢に影響を与えることも考えられます。あなたの勤める企業の規模や業界の慣習によって、昇給の期間が異なる可能性があるため、自社の就業規則や給与規定を一度確認してみることをお勧めします。

昇給停止後も給与を上げる方法

もし昇給が停止する年齢に達してしまったとしても、給与を上げる道が閉ざされるわけではありません。いくつかの方法で、給与水準を維持、あるいは向上させることが可能です。

  1. 役職・専門職手当の獲得:昇給停止後も、管理職への昇進や、特定の専門知識・スキルを持つ人材としての評価が高まれば、役職手当や専門職手当など、基本給とは別の形で手当が付与されることがあります。
  2. 成果報酬の追求:営業職など成果が明確に数値化される職種であれば、インセンティブやボーナスといった形で、個人の業績に応じた報酬を得ることができます。
  3. 部署異動や職務転換:新しい部署やプロジェクトで、これまで培ってきた経験やスキルを活かし、より価値の高い業務に就くことで、給与体系の見直しが期待できる場合もあります。
  4. 転職の検討:現職での昇給が見込めない場合、自身の市場価値を再評価し、より高い給与を提示する企業へ転職することも有効な選択肢です。特に、キャリアを積んだベテラン層は、即戦力として高く評価される可能性があります。

これらの方法を検討することで、昇給停止後も自身のキャリアを積極的にマネジメントし、給与アップを目指すことが可能です。

飛び級昇給の可能性と現実

「飛び級昇給」は誰でも可能?

「飛び級昇給」という言葉を聞くと、誰もが目指せる夢のような話に聞こえるかもしれません。しかし、現実には飛び級昇給は、誰もが経験できるほど一般的なものではありません。これは、一般的な定期昇給や年功序列とは一線を画し、顕著な成果や会社への多大な貢献が認められた場合にのみ発生する、特別な昇給形態だからです。

特に、成果主義や実力主義を強く打ち出している企業、あるいは成長著しいベンチャー企業などでその可能性が高まります。例えば、新規事業を成功に導いた、画期的な技術開発を行った、大規模なコスト削減を実現したなど、企業に大きなインパクトを与える実績を残した人が対象となることが多いでしょう。

飛び級昇給を目指すのであれば、日々の業務で与えられた役割をこなすだけでなく、一歩踏み込んで「どうすれば会社に最も貢献できるか」を常に考え、行動に移す意識が不可欠です。

評価制度と成果主義の重要性

飛び級昇給が現実のものとなるためには、企業内に明確な評価制度と成果主義の文化が根付いていることが不可欠です。透明性の高い評価制度があれば、社員は自身の目標と会社の期待を理解し、その達成度に応じて正当な評価を受けることができます。

成果主義の企業では、年齢や勤続年数に関わらず、個人のパフォーマンスやプロジェクトの成功が直接的に昇給や昇格に結びつきます。例えば、具体的なプロジェクトでのリーダーシップ、予期せぬトラブルを解決した手腕、顧客満足度を大幅に向上させた実績などが高く評価されます。

このような企業文化の下では、与えられた業務をこなすだけでなく、自ら課題を見つけ、解決策を提案し、実行する主体性が求められます。自分の仕事が会社の成長にどう貢献しているかを常に意識し、定量的なデータで示すことができるように準備しておくことも重要です。

資格取得・スキルアップが昇給に繋がる

飛び級昇給を直接的に保証するものではありませんが、仕事に関連する資格やスキルの習得は、昇給額を増やす上で非常に有効な手段となり得ます。自身の専門性を高めることで、会社にとってより価値のある人材として認識され、それが特別昇給や昇格のきっかけとなることがあります。

例えば、IT業界であれば高度なプログラミング言語の習得やプロジェクトマネジメントの資格、医療・福祉系であれば専門性の高い国家資格、語学力を要する職種であればビジネスレベルの語学資格などが挙げられます。これらの資格やスキルは、単に知識があるだけでなく、実務でその能力を発揮し、具体的な成果に結びつけることが重要です。

企業によっては、資格手当を支給したり、資格取得の費用を補助したりする制度もあります。自己投資を惜しまず、常に自身の市場価値を高める努力を続けることが、結果として大きな昇給へと繋がる可能性を秘めているのです。

退職を考える前に知っておきたい昇給のヒント

現在の職場で昇給を増やす交渉術

「給料が上がらない」と不満を抱え、すぐに退職を考えてしまう前に、現在の職場で昇給を増やすための交渉を試みる価値は十分にあります。昇給交渉を成功させるためには、感情論ではなく、具体的な根拠に基づいたアピールが重要です。

まず、自身の業務における貢献度や実績を明確に整理しましょう。

  1. 達成した目標やプロジェクト
  2. コスト削減や売上向上に貢献した事例
  3. チームや組織へのポジティブな影響
  4. 取得した資格や習得したスキル

といった項目を、具体的な数値や事実を交えて説明できるように準備します。

次に、上司との面談の機会を設け、これらの実績を伝えながら、自身の市場価値に見合った昇給を求める姿勢を示しましょう。業界の平均給与水準や同業他社の情報をリサーチしておくことも、交渉に説得力を持たせる上で有効です。

ただし、交渉は会社の業績や状況を見極め、適切なタイミングで行うことが肝心です。日頃から上司との良好な関係を築いておくことも、成功の確率を高めるでしょう。

昇給が難しい場合の「転職」という選択肢

現在の職場で努力を重ね、交渉も試みたものの、企業風土や評価制度、あるいは業界全体の傾向から昇給が難しいと判断せざるを得ない場合もあります。そのような時は、「転職」を一つの有効な選択肢として真剣に検討する時期かもしれません。

特に、あなたのスキルや経験が市場で高く評価される分野であれば、転職によって大幅な年収アップを実現できる可能性は十分にあります。現職では正当な評価が得られていないと感じる場合でも、他社ではその能力を高く買ってくれるかもしれません。

転職活動を通じて、自身の市場価値を客観的に再確認できるというメリットもあります。異なる企業文化や給与体系に触れることで、現在の職場に対する見方も変わるかもしれません。

ただし、転職は慎重に行うべきです。焦って決断するのではなく、複数の求人を比較検討し、自分のキャリアプランに合致した企業を選ぶことが重要です。

昇給に繋がる情報収集と自己投資

自身の昇給チャンスを最大化するためには、常にアンテナを張り、情報収集と自己投資を怠らないことが非常に重要です。まず、自分が属する業界の給与水準やトレンド、企業の評価制度について常に情報を更新しましょう。

例えば、

  • 業界団体の発表する給与統計
  • 転職サイトの求人情報や年収診断ツール
  • キャリアコンサルタントからのアドバイス

などを活用することで、自身の市場価値を客観的に把握することができます。

次に、その情報を基に、自身のスキルアップやキャリア形成のための「自己投資」を行いましょう。仕事に関連する資格の取得、専門分野の研修受講、ビジネス書の読書、オンライン学習など、自己投資の方法は多岐にわたります。

これらの努力は、すぐに昇給に直結しないかもしれませんが、長期的なキャリアアップと自身の市場価値向上に必ず繋がります。結果として、現在の職場での昇給交渉に有利に働いたり、より高い給与を提示する企業への転職を成功させたりするための強力な武器となるでしょう。