概要: 2025年度の昇給平均額は、全体として緩やかな上昇が見込まれます。特に中小企業では、人材確保と定着のために昇給への期待が高まっています。本記事では、最新の昇給動向を詳しく解説します。
2025年度の昇給平均額:全体像と注目すべきポイント
2025年の賃上げ、過去最高の見込みとその背景
2025年度の賃上げは、多くの企業で実施が予定されており、調査開始以来最高の水準となる見込みです。具体的には、85.2%もの企業が賃上げを実施する予定で、これは2024年度の84.2%を上回る数字です。
平均賃上げ率についても明るい予測が出ており、2025年の春闘では5.46%と予測されています。これは2年連続で5%台の伸びが期待される、非常に注目すべき動向と言えるでしょう。この賃上げの背景には、従業員の離職防止(78.0%)、物価高騰、そして深刻な人手不足といった要因が複合的に絡み合っています。
企業は、優秀な人材の確保と定着を図るために、賃上げが不可欠であると認識していることが明らかになっています。野村證券も2025年の春闘で3.5%程度のベースアップを予想しており、基調としての賃金改善が期待されています。
実質賃金の動向と物価上昇への追いつきは?
長らく課題とされてきた実質賃金の動向にも、改善の兆しが見え始めています。厚生労働省が発表した2024年の実質賃金(速報値)は、前年比で-0.2%と、マイナス幅が縮小しました。
これは、賃上げが物価上昇に追いつくまでに「あと一歩」という状況を示唆しています。企業努力による賃上げが、いよいよ日々の生活実感として現れてくる可能性があり、消費者の購買力向上にも期待が寄せられます。
物価上昇の勢いが続く中で、賃上げが実質的な所得向上につながるかどうかが、今後の経済動向を占う上で重要なポイントとなるでしょう。この傾向が維持されれば、従業員の生活の安定だけでなく、内需の活性化にも寄与する可能性を秘めています。
賃上げを牽引する要因と企業の戦略
今回の賃上げの動きを牽引している主な要因は、「従業員の離職防止」が78.0%と最も高く、人材確保への強い意識が伺えます。特に人手不足が深刻化する中、企業は人材流出を防ぎ、優秀な人材を引きつけるために賃上げに踏み切っています。
賃上げの原資確保については、大企業・中小企業ともに「値上げ」が約7割でトップに挙げられています。これは、コスト増を価格転嫁することで賃上げを実現しようとする企業の共通した戦略です。
特に中小企業からは、「税制優遇、補助・助成制度の拡充」といった行政支援を求める声も多く、賃上げを持続可能なものにするためには、政府のサポートも不可欠であることが示されています。これらの要因が複合的に作用し、現在の賃上げムードを作り出していると言えるでしょう。
中小企業における2025年度の昇給平均額は?
中小企業の賃上げ状況と大企業との格差
2025年度の賃上げ動向において、中小企業も積極的な姿勢を見せていますが、大企業との間には依然として格差が存在します。中小企業において賃上げを実施する予定の企業の割合は84.6%にとどまっており、大企業の92.8%と比較すると、8.2ポイントの差が見られます。
中小企業の平均賃上げ率は4.93%と、これも過去最高水準ではあるものの、大手企業の5.36%には及ばず、その差は依然として存在します。この格差は、中小企業が賃上げの原資を確保する上で直面する課題の大きさを示しています。
厳しい経営環境の中での賃上げは、中小企業にとって大きな挑戦であり、その努力は高く評価されるべきですが、大企業との賃金水準の差は、人材獲得競争において不利な状況を生み出す可能性も秘めています。
目標と現実のギャップ:連合の6%目標と実態
労働組合のナショナルセンターである連合は、中小企業に対して「6%以上」の賃上げ目標を掲げています。これは、物価上昇を上回る実質賃金の向上を目指すものであり、従業員の生活を安定させる上で重要な目標です。
しかし、東京商工リサーチの調査によると、この「6%以上」の賃上げを見込む中小企業は、全体のわずか9.1%にとどまっています。この数字は、目標と現実の間に大きなギャップがあることを明確に示しています。
一方で、商工中金が実施した調査では、2025年の賃上げ計画として69.8%の企業が賃上げを計画していると回答しており、過去の賃上げ計画と比較しても高い意欲が示されています。これは、厳しいながらも賃上げに前向きな中小企業が多いことを示唆しており、今後の動向が注目されます。
中小企業が賃上げを実現するために必要なこと
中小企業が賃上げを持続的に実施していくためには、いくつかの重要な要素が必要となります。賃上げの主な原資確保の方法としては、大企業と同様に「値上げ」が7割の企業でトップに挙げられています。
しかし、中小企業の場合、値上げによる価格転嫁が大手企業ほど容易ではないという実情もあります。そのため、中小企業からは、「税制優遇、補助・助成制度の拡充」といった行政支援を求める声が強く聞かれます。
具体的な支援策としては、賃上げ促進税制の適用拡大や、事業再構築補助金のような制度が、賃上げの原資や生産性向上への投資を後押しし、中小企業の賃上げを支援する上で不可欠であると言えるでしょう。外部からのサポートが、中小企業の賃上げ実現の鍵を握っています。
大手企業との比較:昇給傾向の違い
大手企業の賃上げ動向:9割超えの実施率
大手企業の賃上げ動向は、日本経済全体の賃上げを牽引する重要な指標となっています。2025年度において、大手企業で賃上げを実施する企業の割合は92.8%と9割を超えており、その積極的な姿勢が際立っています。
平均賃上げ率も5.36%と、過去最高水準を記録しており、物価上昇や人手不足といった課題に対し、大手企業が強力な対応策を講じていることが伺えます。これは、グローバル競争に勝ち抜くため、優秀な人材を確保し続ける必要性が高まっていることの表れでもあります。
大手企業は、比較的に経営体力が大きく、市場での価格決定力も高いため、賃上げの原資確保においても有利な立場にあると言えるでしょう。この高水準な賃上げは、従業員のモチベーション向上にも寄与し、企業の競争力強化にもつながっています。
中小企業との賃上げ率・実施率の具体的な差
大手企業と中小企業の間には、賃上げの実施率と平均賃上げ率において明確な差が見られます。賃上げ実施率では、大手企業が92.8%であるのに対し、中小企業は84.6%と8.2ポイントの差があります。
平均賃上げ率においても、大手企業の5.36%に対し、中小企業は4.93%と0.43ポイントの差が生じています。この数値は一見小さいようにも見えますが、従業員一人当たりの昇給額に換算すると、年収ベースでは無視できない差となります。
このような規模間の格差は、人材獲得競争において中小企業を不利な立場に置く可能性があり、労働市場全体の公平性にも影響を与える可能性があります。この差をどう埋めていくかが、今後の課題の一つと言えるでしょう。
初任給の動向に見る企業規模間の格差拡大
賃上げの動向は、既存社員の給与だけでなく、新規採用される新卒者の初任給にも大きな影響を与えています。特に大手企業では、優秀な新卒人材の確保競争が激化しており、初任給の引き上げが積極的に進められています。
これにより、大手企業と中小企業との間で、初任給の差がさらに拡大する見込みです。これは、新卒者が就職先を選択する際に、賃金水準が重要な判断基準となるため、中小企業にとっては人材確保がより一層困難になることを意味します。
初任給の格差拡大は、将来的な所得格差にもつながる可能性があり、企業規模による賃金構造の二極化が懸念されます。中小企業は、賃金以外の魅力、例えばワークライフバランスやキャリアパスの多様性などで、人材を惹きつける戦略を強化する必要があるでしょう。
定期昇給の平均額と昇給率の目安
2025年の春闘で予測される昇給率の目安
2025年の春闘では、平均賃上げ率が5.46%と予測されており、これは過去最高水準が2年連続で続くという異例の状況です。この賃上げ率は、ベースアップと定期昇給を合わせたものです。
特に、ベースアップについては野村證券が3.5%程度と予測しており、これは企業が賃金水準そのものを引き上げる動きが活発であることを示しています。この高い昇給率の目安は、個人の定期昇給額にも大きな影響を与えることになります。
多くの企業がこの目安を参考に、自社の賃上げ方針を決定していくため、従業員にとっては自身の昇給期待値を測る上で非常に重要な指標となるでしょう。この高い賃上げ機運は、労働者にとって明るい兆しと言えます。
ベースアップと定期昇給の違いと影響
賃上げを理解する上で重要なのが、「ベースアップ」と「定期昇給」の違いです。ベースアップは、企業が全従業員の基本給水準を底上げすることで、物価上昇や社会情勢に応じて実施されることが多いです。これは全従業員の賃金に一律または特定のルールで影響を与えます。
一方、定期昇給は、従業員の勤続年数や職務遂行能力、評価などに基づいて、個別に基本給が上がる制度です。これは主に毎年実施され、個人の成長や貢献度を反映するものです。
今回の5.46%という平均賃上げ率は、このベースアップと定期昇給の両方を含んだ数字です。ベースアップが高いほど、全従業員の基本給が押し上げられ、その上に個人の定期昇給が加算される形となるため、結果として全体の昇給額が大きくなる傾向にあります。
過去の昇給率と今年の傾向の比較
近年の昇給率を振り返ると、デフレ経済が長らく続いた日本では、賃上げは停滞気味でした。しかし、ここ数年で状況は大きく変化しています。特に、2年連続で5%台という平均賃上げ率は、過去に例を見ない高水準です。
これは、長引く物価高騰と深刻な人手不足が、企業に賃上げを強く促していることを示しています。従来の「横並び」意識が強かった春闘の構図も変化し、企業が自社の競争力維持のために積極的に賃上げに踏み切る傾向が顕著になっています。
この賃上げの傾向が一時的なものに終わらず、日本経済全体の持続的な成長へとつながるかどうかが、今後の焦点となるでしょう。労働者にとっては、自身の働きがより適正に評価される機会が増えていると言えます。
昇給額3000円は平均的?2年目の昇給事情
昇給額3000円が平均的かどうかを判断する基準
昇給額3000円が平均的かどうかを判断するには、まず「平均賃上げ率5.46%」という数字を具体的な給与に当てはめて考える必要があります。例えば、月給20万円の場合、5.46%の賃上げが実現すると、昇給額は約10,920円となります。
この例で見ると、3000円の昇給は平均的な賃上げ率からはかなり低い水準と言えます。しかし、昇給額は基本給だけでなく、役職手当や評価によっても変動するため一概には言えません。
特に定期昇給は個人の評価に強く連動するため、勤続年数が浅い場合や、評価が平均的であった場合は、平均賃上げ率を下回ることもありえます。自身の現在の給与額や、会社の評価制度を総合的に考慮することが重要です。
2年目社員の昇給における一般的な傾向
新卒入社2年目の社員の場合、昇給の事情は企業によって大きく異なりますが、いくつかの一般的な傾向があります。多くの企業では、1年目は研修期間や試用期間と見なされ、昇給が定額であったり、評価制度が本格的に適用されないケースがあります。
しかし、2年目になると、正式な評価制度が適用され始めることが多く、個人のパフォーマンスや貢献度が昇給額に直接反映されるようになります。そのため、1年目の努力や成果が2年目の昇給に影響を与える重要な時期と言えます。
企業によっては、2年目以降から役職手当や職能給の対象となる場合もあり、単純な定期昇給額だけでなく、給与体系全体での増額が期待できることもあります。自身の会社の人事評価制度を理解することが肝心です。
昇給交渉のポイントと自身の市場価値を高める方法
今回の高い賃上げ機運は、昇給交渉を行う上で有利な材料となり得ます。交渉の際には、自身の業務における具体的な貢献度や達成した成果を明確に伝えることが重要です。客観的なデータや数字を用いてアピールすることで、説得力が増します。
また、自身の市場価値を高めることも長期的な昇給に繋がります。新たなスキル習得や資格取得、プロジェクトでのリーダーシップ発揮など、付加価値を高める努力を続けることが重要です。
定期的に業界の給与水準や転職市場の動向をリサーチし、自身のスキルがどれくらいの価値があるのかを把握することも有効です。企業は、市場価値の高い人材を失いたくないと考えるため、交渉に臨む上での強い武器となるでしょう。
まとめ
よくある質問
Q: 2025年度の昇給平均額は、全体でいくらくらいになりそうですか?
A: 2025年度の昇給平均額は、例年通りであれば数千円から1万円程度が目安となります。具体的な金額は、各種調査の結果や経済動向によって変動する可能性があります。
Q: 中小企業の場合、2025年度の昇給平均額は大手企業と比べてどうなりますか?
A: 一般的に、中小企業では大手企業に比べて昇給額が控えめになる傾向がありますが、近年は人材不足から中小企業も積極的に昇給を行う動きが見られます。2025年度も、企業努力次第で大手並みの昇給が期待できる場合もあります。
Q: 定期昇給とは何が違いますか?2025年度の定期昇給の平均額は?
A: 定期昇給は、人事評価や勤続年数に基づいて毎年一定の時期に行われる昇給のことです。2025年度の定期昇給の平均額も、全体の昇給平均額と同様に、調査結果によって異なりますが、一般的には数千円程度が目安となることが多いです。
Q: 昇給率2025年度の平均はどのくらいですか?
A: 2025年度の昇給率の平均は、現時点では確定していませんが、例年1%~3%程度が目安となることが多いです。これも経済状況や企業の業績に左右されます。
Q: 昇給額が3000円というのは、2年目の昇給としては平均的でしょうか?
A: 昇給額3000円は、2年目の昇給としては平均的、あるいはやや平均より高めの可能性もあります。昇給額は、入社時の給与水準、評価、会社の規定などによって大きく異なります。