1. 時短勤務で感じる「つらい」「使えない」… 評価やハラスメント問題も解説
  2. 時短勤務で生じる「つらい」と感じる現実
    1. 仕事量の過多と時間内の業務完了の困難さ
    2. 孤立感と不公平感の蔓延
    3. キャリア形成への不安と機会損失
  3. 「使えない」というレッテル?時短勤務者の葛藤
    1. 「使えない」と見なされる心理的負担
    2. 成果主義と時間管理のジレンマ
    3. 退職金や不利益取り扱いへの懸念
  4. 時短勤務を「取らせてもらえない」状況とハラスメント
    1. 時短勤務制度利用への無言の圧力
    2. 「時短ハラスメント(ジタハラ)」の実態
    3. 法が禁じる不利益取り扱いとは
  5. 時短勤務と評価の低下・評価方法の課題
    1. 勤務時間数で測られる評価の壁
    2. 成果主義評価の難しさと限界
    3. 公平な評価制度構築への提言
  6. 人手不足、飲み会、配慮… 時短勤務のリアルな声
    1. 周囲の社員に集中する業務負担
    2. 「飲み会」文化とコミュニケーションの壁
    3. 誰もが働きやすい環境整備のために
  7. まとめ
  8. よくある質問
    1. Q: 時短勤務で「つらい」と感じるのは具体的にどのようなことですか?
    2. Q: 時短勤務だと「使えない」と思われそうで不安です。
    3. Q: 時短勤務を申請したいのに、上司に「取らせてもらえない」場合はどうすればいいですか?
    4. Q: 時短勤務だと、どうしても評価が下がってしまいますか?
    5. Q: 時短勤務者が飲み会を断る際に、角が立たない断り方を教えてください。

時短勤務で感じる「つらい」「使えない」… 評価やハラスメント問題も解説

仕事と家庭生活の両立を支援する短時間勤務(時短勤務)制度は、現代社会において不可欠な制度として定着しつつあります。しかし、その一方で、制度を利用する従業員や周囲の同僚、そして企業側にも様々な課題や悩みが山積しているのが現状です。

本記事では、時短勤務者が直面する「つらい」「使えない」といった感情の背景から、評価の課題、ハラスメント問題まで、多角的に掘り下げていきます。誰もが働きやすい職場環境を実現するために、どのような対策が必要なのかを考えていきましょう。

時短勤務で生じる「つらい」と感じる現実

時短勤務を選択した従業員が日々感じている「つらい」という感情は、多岐にわたる要因から生まれます。時間的な制約がある中で、以前と同様の責任を負わされることへのプレッシャー、周囲とのコミュニケーション不足による孤立感、そして自身のキャリアに対する不安など、精神的な負担は決して小さくありません。

仕事量の過多と時間内の業務完了の困難さ

時短勤務を利用する方々が「つらい」と感じる最も大きな要因の一つは、依然として過大な仕事量が与えられることです。育児や介護といった理由で勤務時間を短縮したにもかかわらず、以前と変わらない、あるいはこなせないほどの業務を任され、時間内に終えられない状況に陥ることが少なくありません。

これにより、時間外に持ち帰って仕事をするサービス残業が常態化したり、他の社員に業務の引き継ぎが発生したりする事態が生じます。時短勤務者は、周囲に負担をかけているという引け目や申し訳なさを感じ、精神的な疲弊に繋がりやすいのです。本来、仕事と家庭の両立支援であるはずの制度が、かえって負担を増大させてしまう皮肉な現実がここにあります。

孤立感と不公平感の蔓延

職場におけるコミュニケーション不足や、時短勤務者に対する職場の理解不足も、大きな問題です。これにより、時短勤務者は職場で孤立感を感じたり、「肩身が狭い」と感じる状況に陥ることがあります。

また、時短勤務者と通常勤務者の間で業務負担の不均衡が生じ、結果として不公平感につながるケースも散見されます。特に、マンパワーグループが2022年8月に実施した調査では、人事担当者が感じている社員の時短勤務に関する課題の第1位が「周囲の社員の業務が上乗せされる」ことでした。このような状況は、周囲の理解を遠ざけ、さらに時短勤務者の孤立感を深める悪循環を生み出しかねません。

キャリア形成への不安と機会損失

時短勤務が自身のキャリアに与える影響についても、多くの従業員が不安を抱えています。具体的には、「簡単な仕事しか任せてもらえないのではないか」「重要なプロジェクトからは外されてしまうのではないか」といった懸念です。

さらに、昇進・昇給の機会が減るのではないか、スキルアップのための研修に参加しづらくなるのではないかといった、キャリアに関する機会損失への不安も尽きません。これらの不安は、時短勤務を選択すること自体をためらわせる要因となり、長期的なキャリアプランを見直すきっかけとなることもあります。本来多様な働き方を支援する制度が、結果的にキャリアの停滞を招いてしまう可能性をはらんでいるのです。

「使えない」というレッテル?時短勤務者の葛藤

「自分は職場で『使えない』と思われているのではないか」という不安は、時短勤務者が抱える深刻な葛藤の一つです。時間的な制約がある中で成果を出すことの難しさや、周囲の期待に応えられないと感じる心理的な負担は、計り知れません。ここでは、そうした葛藤の背景にある問題点について掘り下げていきます。

「使えない」と見なされる心理的負担

時短勤務をしている従業員は、時間あたりの業務量が減ることで、周囲から「仕事ができない」「戦力にならない」といったレッテルを貼られているのではないか、と感じることが少なくありません。実際に、以前よりも任される業務の範囲が狭まったり、責任の大きい仕事から外されたりする経験をすることもあります。

このような状況は、個人の能力や意欲とは関係なく、勤務時間の「量」だけで評価されてしまうことによって生じます。結果として、自己肯定感が低下し、「自分は会社に貢献できていないのではないか」という心理的負担を抱え込んでしまうのです。これは、時短勤務者が直面する最も精神的に「つらい」部分と言えるでしょう。

成果主義と時間管理のジレンマ

現在の多くの企業で導入されている人事評価制度は、成果主義を基盤としつつも、勤務時間数を評価の要素に含んでいるケースが少なくありません。しかし、人事評価において、勤務時間数といった「量」で評価されてしまうと、時短勤務を利用したことで評価が低くなる可能性が高くなります。

時短勤務者は限られた時間の中で最大のパフォーマンスを発揮しようと努力しますが、時間管理の制約があるため、物理的に達成できる業務量に限界があります。成果主義と時間管理のバランスを取る評価制度の構築は難しく、結果として時短勤務者が正当な評価を得られないケースが見られます。このジレンマが、時短勤務者のキャリア形成への不安を一層深めています。

退職金や不利益取り扱いへの懸念

時短勤務を利用する上で、従業員が懸念するのは、単に現在の評価だけでなく、将来的な不利益な取り扱いです。育児・介護休業法では、時短勤務利用者が不利益な取り扱いを受けることを明確に禁止しています。

これには、解雇、降格、基本給の減額などが含まれますが、実際に制度を利用することで、昇給・昇格の機会が限定されたり、不当に給与が下げられたりするケースも耳にします。特に退職金の算定において、時短勤務期間を一切除外する会社の対応は、違法となる可能性があります。こうした法的な側面への懸念は、従業員が安心して制度を利用する上での大きな障壁となっています。

時短勤務を「取らせてもらえない」状況とハラスメント

時短勤務制度は法律で定められた権利であるにもかかわらず、実際には「制度があるのに使えない」「使うと嫌な顔をされる」といった声が聞かれます。こうした状況の背景には、職場の雰囲気や人手不足、そして制度利用を妨げるハラスメントの問題が潜んでいます。

時短勤務制度利用への無言の圧力

多くの企業で時短勤務制度が導入されているにもかかわらず、その利用率は男女間で大きな差があるのが現状です。厚生労働省の2023年12月の資料によると、時短勤務制度の利用率は、正社員の女性が51.2%であるのに対し、正社員の男性はわずか7.6%に留まっています。

この数字は、制度があるにもかかわらず、特に男性が時短勤務を利用しづらい職場の雰囲気や無言の圧力が存在することを示唆しています。「制度はあっても、自分だけ利用するのは気が引ける」「上司や同僚に迷惑をかけたくない」といった心理から、制度利用を躊躇してしまうケースが多々見られます。こうした「取らせてもらえない」状況は、結果として、制度が形骸化してしまう原因となっています。

「時短ハラスメント(ジタハラ)」の実態

働き方改革が進む中で、新たなハラスメントとして「時短ハラスメント(ジタハラ)」が問題視されています。これは、業務量は減っていないにも関わらず、「残業せずに定時退社しろ」と上司から強要される状況を指します。

企業が残業時間の削減目標を掲げる一方で、業務量の見直しが伴わないために発生する問題です。目につきやすい残業時間を減らすことだけが目的となり、社員は自宅でのサービス残業を余儀なくされたり、精神的に追い詰められたりします。ジタハラは、社員のモチベーション低下や離職につながるだけでなく、健全な働き方を阻害する深刻なハラスメントとして、企業は真摯に向き合う必要があります。

法が禁じる不利益取り扱いとは

育児・介護休業法は、時短勤務を含む育児休業等を取得した労働者に対する不利益な取り扱いを厳しく禁止しています。具体的には、時短勤務を理由とした解雇、降格、基本給の減額、不当な異動などがこれに該当します。

例えば、退職金の算定において、時短勤務期間を一切除外する会社の対応は、賃金差別とみなされ違法となる可能性があります。企業は、時短勤務制度を利用する従業員が、法的にも保護されていることを十分に理解し、制度の利用を理由とした不当な扱いを決して行ってはなりません。従業員側も、自身の権利を認識し、不利益な取り扱いがあった場合には、適切な相談窓口を利用することが重要です。

時短勤務と評価の低下・評価方法の課題

時短勤務がキャリアに与える影響として、最も多くの従業員が懸念するのが評価の低下です。限られた時間で成果を出す努力をしても、従来の評価制度では勤務時間の「量」が重視され、正当な評価が得られないという課題が指摘されています。ここでは、この評価に関する問題点と、その解決策について考えていきます。

勤務時間数で測られる評価の壁

人事評価において、依然として勤務時間数といった「量」が評価基準の大きな要素となっている企業は少なくありません。時短勤務者は、通常勤務者と比較して物理的に勤務時間が短いため、この「量」の基準で評価されると、どうしても不利な立場に置かれてしまいます。

たとえ短時間で高い生産性を発揮し、質の高い成果を出していたとしても、勤務時間の短さによって「頑張っていない」「貢献度が低い」と見なされ、正当な評価を得られないケースが多発しています。これにより、時短勤務者のモチベーションは低下し、自身の働きがいを失ってしまう原因にもなりかねません。

成果主義評価の難しさと限界

成果主義を導入している企業でも、時短勤務者の評価には課題が残ります。成果のみで評価するといっても、その成果の定義や測定方法が曖昧な場合、勤務時間の短い時短勤務者が不利になることがあります。

例えば、成果の達成に時間のかかるプロジェクトや、チーム全体の貢献度が重視される業務では、個人の短時間での成果を明確に切り出して評価することが困難です。また、時短勤務によって情報共有の機会が減ることで、自身の貢献度をアピールする機会が失われ、結果として「見えにくい」成果は評価されにくいという限界もあります。成果主義が必ずしも時短勤務者の公平な評価につながるとは限らないのが現実です。

公平な評価制度構築への提言

時短勤務者が正当な評価を受け、意欲的に働き続けられるようにするためには、評価制度の見直しが不可欠です。勤務時間数に依存しない、多面的な評価基準を導入することが求められます。

具体的には、成果だけでなく、

  • スキル向上度
  • チームへの貢献度
  • 業務プロセスの改善
  • 知識共有の取り組み

など、多様な側面から評価を行うことが重要です。また、勤務時間数ではなく、アウトプットや具体的な成果に基づいた評価制度の導入も検討すべきです。定期的な面談を通じて、目標設定や進捗確認を密に行い、時短勤務者が自身の貢献を明確にアピールできる機会を設けることも有効な手段となるでしょう。

人手不足、飲み会、配慮… 時短勤務のリアルな声

時短勤務制度の運用を巡っては、制度そのものの課題だけでなく、職場の実情や文化が深く関わっています。人手不足による周囲の負担増や、日本のビジネスシーンに根強い「飲み会」文化、そして形だけの「配慮」など、リアルな声に耳を傾けることで、見えてくる問題点があります。

周囲の社員に集中する業務負担

時短勤務者が定時で退社する分、その業務が周囲の通常勤務の社員に上乗せされるという問題は、多くの職場で顕在化しています。マンパワーグループが2022年8月に実施した調査で、人事担当者が感じている社員の時短勤務に関する課題の第1位が「周囲の社員の業務が上乗せされる」ことだったのは、その深刻さを物語っています。

これにより、通常勤務の社員は「なぜ自分だけ負担が増えるのか」という不公平感を抱き、時短勤務者に対して不満や不信感を抱くことがあります。この対立構造は、時短勤務者の孤立感を深めるだけでなく、チーム全体の士気を低下させ、生産性にも悪影響を及ぼしかねません。業務量の適正な管理と人員配置の改善は、この問題の解決に不可欠です。

「飲み会」文化とコミュニケーションの壁

日本の企業文化に深く根付いている「飲み会」も、時短勤務者にとっては大きな障壁となることがあります。時短勤務者は定時退社が基本であるため、勤務時間外に行われる非公式な交流の場である飲み会や会食に参加しにくいのが現実です。

これらの場は、業務上の重要な情報が共有されたり、人間関係が構築されたりする機会でもあります。参加できないことで、情報格差が生じたり、チーム内での孤立感が深まったりする可能性があります。企業は、飲み会以外の方法でコミュニケーションを活性化させる工夫(例:ランチミーティング、オンライン交流会など)を取り入れることで、時短勤務者も円滑に職場の人間関係を築けるよう配慮する必要があります。

誰もが働きやすい環境整備のために

短時間勤務制度は、多様な人材がその能力を最大限に発揮できる社会を実現するために不可欠な制度です。企業は、表面的な制度導入に留まらず、その運用における課題に真摯に向き合う必要があります。

具体的には、以下の取り組みが求められます。

  • 公平な評価制度の構築:勤務時間だけでなく、成果や貢献度を多角的に評価する。
  • 業務量の適正な管理と人員配置:時短勤務者の業務量を適正にし、周囲の負担も考慮した配置を行う。
  • コミュニケーションの活性化:定期的な面談やITツール活用で、情報共有と相互理解を促進する。
  • ハラスメント対策の徹底:「時短ハラスメント」の撲滅に向けた意識改革と相談窓口の設置。
  • 制度の明確化と周知:就業規則への明記と全従業員への徹底した説明。

これらの対策を通じて、誰もが安心して時短勤務を利用し、自身の能力を発揮できるような、真に働きやすい環境を整備していくことが、これからの企業に強く求められています。