概要: 源泉徴収票の作成方法について、基本から応用までを網羅的に解説します。サンプルやアプリの活用方法、押印や空欄などのよくある疑問点も解消し、スムーズな作成をサポートします。
源泉徴収票は、1年間の給与や賞与から所得税などを差し引いた金額を証明する重要な書類です。年末調整や確定申告、ふるさと納税などの様々な手続きで必要不可欠となります。本記事では、源泉徴収票の作成方法から、具体的なサンプル、活用できるアプリ、そして作成・確認時の注意点まで、最新の情報を踏まえて徹底的に解説します。
源泉徴収票とは?基本と正式名称を理解しよう
給与所得者にとって年に一度受け取るおなじみの書類である源泉徴収票。しかし、その内容や重要性を深く理解している方は意外と少ないかもしれません。ここでは、源泉徴収票の基本的な役割から、その正式名称、そして受け取るタイミングまでを詳しく解説します。
源泉徴収票の概要と重要性
源泉徴収票とは、企業(給与支払者)が従業員(給与所得者)に対し、その年の1月1日から12月31日までの1年間で支払った給与や賞与の総額、そこから源泉徴収した所得税・復興特別所得税額、そして社会保険料控除額などの各種控除額を証明するために発行する書類です。年末調整が行われたかどうかにかかわらず、原則として全ての給与所得者に対して発行が義務付けられています。
この書類は、単なる給与の証明に留まらない、非常に重要な役割を担っています。具体的には、
- 確定申告の根拠書類: 年末調整で控除しきれなかった医療費控除や寄付金控除などを申告する際に必要となります。
- 住宅ローンや賃貸契約時の所得証明: 金融機関や不動産会社が個人の支払い能力を審査する際に、所得証明として提出を求められます。
- ふるさと納税の控除上限額確認: ふるさと納税の寄付限度額をシミュレーションする際に、源泉徴収票に記載された「給与所得控除後の金額」が重要な指標となります。
- 転職先への提出: 年の途中で転職した場合、前職の源泉徴収票を新しい勤務先に提出することで、新しい勤務先で年末調整をまとめて行ってもらえます。
このように、源泉徴収票は私たちの日常生活における様々な手続きにおいて、所得や納税状況を証明する公的な書類として欠かせない存在なのです。
正式名称と役割
私たちが一般的に「源泉徴収票」と呼んでいるこの書類の正式名称は、「給与所得の源泉徴収票」です。この正式名称が示す通り、給与所得に関する情報に特化しており、年金受給者が受け取る「公的年金等の源泉徴収票」などとは異なる種類であることを理解しておく必要があります。
給与所得の源泉徴収票の主な役割は以下の通りです。
- 所得の証明: 1年間にいくらの給与を得て、それが課税対象となる所得としていくらだったかを客観的に証明します。
- 納税の証明: 企業が従業員の代わりに国に納めた所得税(源泉徴収税額)の金額を証明します。これにより、従業員は確定申告などで自身の納税状況を確認できます。
- 各種控除の根拠: 社会保険料控除や扶養控除、生命保険料控除などが適用された結果、いくらが課税所得から差し引かれたかを明示します。これにより、従業員は自身の税負担が適切に計算されているかを確認できます。
給与支払者である企業にとっては、税務署への提出義務がある法定調書の一部であり、適正な税務処理を証明する書類でもあります。給与所得者にとっては、自身の所得と納税状況を把握し、必要な手続きを行うための最も基本的な情報源となります。その性質上、記載されている情報は非常にデリケートであり、取り扱いには十分な注意が必要です。
給与所得者が受け取るタイミングと再発行
給与所得者が源泉徴収票を受け取るタイミングは、主に以下の二つのケースです。
- 年末調整後: 通常、毎年12月の給与計算や年末調整が完了した後、翌年1月中に会社から発行されます。多くの場合、12月の給与明細と一緒に渡されたり、郵送されたりします。
- 退職時: 年の途中で会社を退職した場合でも、退職後1ヶ月以内など、速やかに源泉徴収票が発行されます。これは、転職先での年末調整や自身で確定申告を行う際に必要となるためです。
万が一、源泉徴収票を紛失してしまった場合でも、心配する必要はありません。勤務している会社、または以前勤めていた会社に依頼すれば、再発行してもらえます。再発行の手続きは会社によって異なりますが、一般的には人事部や経理部に連絡し、再発行申請書を提出することで対応してもらえます。すぐに必要になるケースも考えられるため、紛失に気づいたら早めに連絡することが大切です。
また、年の途中で複数の会社から給与を受け取っていた場合(例:転職、副業など)は、それぞれの会社から個別に源泉徴収票が発行されます。確定申告を行う際は、これら全ての源泉徴収票を合算して申告する必要がありますので、忘れずに保管するようにしましょう。
源泉徴収票の作成方法:基本の流れと項目解説
源泉徴収票は、給与支払者である企業が従業員の給与所得に基づいて作成します。その作成プロセスには、毎月の給与計算から年末調整、そして最新の税制改正への対応まで、多岐にわたる要素が絡んでいます。ここでは、給与支払者側から見た作成の基本フローと、源泉徴収票に記載される主要な項目について詳しく解説します。
作成の基本フロー:給与支払者側から見た手順
源泉徴収票の作成は、主に以下のステップで進行します。給与支払者、特に経理担当者や税務担当者にとっては、正確かつ効率的な作業が求められます。
- 毎月の給与計算と源泉徴収: 従業員の給与から社会保険料、所得税(源泉徴収税額)などを差し引きます。この源泉徴収税額は、従業員から提出される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に基づいて、「源泉徴収税額表」を用いて計算されます。
- 年末調整の実施: 毎年12月頃に、その年の1月1日から12月31日までの全ての給与・賞与を確定し、年間の所得税を再計算します。この際、従業員から提出される生命保険料控除証明書やiDeCoの掛金証明書などの各種控除証明書を基に、所得控除額を確定します。年末調整によって、毎月の源泉徴収税額と年間の正しい所得税額との差額が調整されます。
- 法定調書合計表の作成: 源泉徴収票は、税務署に提出する「法定調書合計表」の一部を構成します。この合計表には、源泉徴収票の枚数や合計額などがまとめられます。
- 源泉徴収票の作成と発行: 年末調整の結果に基づき、従業員一人ひとりの源泉徴収票をデータまたは紙で作成します。作成後、年末調整の対象者には翌年1月中に、年の途中で退職した従業員には退職後速やかに発行します。
この一連の流れは、給与計算ソフトや税務申告ソフトを導入することで大幅に効率化され、計算ミスのリスクも低減できます。特に、従業員から提出される控除申告書や各種証明書の内容を正確に反映させることが、適正な源泉徴収票作成の鍵となります。
主要な記載項目とその意味
源泉徴収票には、所得税の計算に直接関わる重要な項目が多数記載されています。これらの項目を理解することは、自身の納税状況を把握するために不可欠です。
項目名 | 意味と内容 | 重要性 |
---|---|---|
支払金額 | 1年間(1月1日~12月31日)に給与支払者から支払われた給与・賞与の総支給額です。非課税通勤手当などは含まれません。 | 年収の基本的な指標となります。 |
給与所得控除後の金額 | 支払金額から「給与所得控除額」を差し引いた金額です。これは給与所得者の収入に応じた必要経費のようなもので、この金額が課税対象となる所得の基礎となります。 | 課税所得の計算の出発点となる最も重要な項目の一つ。 |
所得控除の額の合計額 | 社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除、扶養控除、基礎控除など、各種所得控除の合計額です。この金額が大きいほど、課税所得は少なくなります。 | 年末調整や確定申告でどれだけの控除が適用されたかを示します。 |
源泉徴収税額 | 年間を通じて給与から源泉徴収された所得税と復興特別所得税の合計額です。年末調整によって最終的に確定した年間の所得税額がここに表示されます。 | 実際に納税した所得税額を表します。 |
社会保険料等の金額 | 給与から差し引かれた健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料の合計額です。これは所得控除の一つです。 | 社会保険料控除の適用額を確認できます。 |
生命保険料の控除額 | 支払った生命保険料に応じて適用された所得控除額です。 | 生命保険に加入している場合、控除の適用状況を確認します。 |
扶養親族の数 | 税法上の扶養親族の人数が記載されます。 | 扶養控除の適用状況を確認できます。 |
これらの項目を理解することで、ご自身の税金がどのように計算されているか、また、どのような控除が適用されているかを把握することができます。
年末調整との連携と最新情報
源泉徴収票は、年末調整の結果を反映した最終的な所得と税額の証明書です。年末調整は、従業員が提出した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や各種控除証明書に基づいて行われ、正確な所得税額を確定させる重要な手続きとなります。
近年、この年末調整のプロセスはデジタル化が進んでいます。特に注目すべきは、マイナポータル連携の活用です。マイナンバーカードと連携することで、生命保険料控除証明書やiDeCoの掛金証明書などのデータを自動で取得し、年末調整の手続きに反映させることが可能になりました。これにより、従業員は紙の書類を集める手間が省け、企業側もデータ入力作業を大幅に削減できるため、効率化とミスの防止に大きく貢献しています。
また、2025年度の税制改正では「年収の壁」に関する制度が見直され、基礎控除や配偶者控除の対象となる所得金額の基準が変更されました。これにより、年末調整の対象となる従業員の範囲や、所得控除額の計算方法に影響が出る可能性があります。給与支払者側は、これらの最新の税制改正に常に対応し、適切な給与計算および源泉徴収票の作成を行う義務があります。給与計算ソフトや税務申告ソフトも、こうした法改正に迅速に対応する機能が備わっているため、常に最新バージョンを利用することが推奨されます。
源泉徴収票サンプルで理解を深める
実際に源泉徴収票を見ることで、その記載内容や各項目の位置、そして自身の所得状況との関連性をより深く理解することができます。ここでは、国税庁が提供する公式サンプルを参考にしながら、具体的な記載例や確認すべきポイントを解説します。
国税庁提供の公式サンプル
源泉徴収票の正確な書式や記載内容は、国税庁のウェブサイトで公開されている「給与所得の源泉徴収票」の様式と記載例で確認することができます。これらの公式サンプルは、税法に基づいた正しい形式が示されており、給与支払者だけでなく、給与所得者にとっても自身の源泉徴収票を理解する上で非常に役立ちます。
公式サンプルを確認することのメリットは以下の通りです。
- 正しい書式の把握: 各項目がどこに配置され、どのような形式で記載されるべきかを確認できます。
- 記入例の確認: 各項目にどのような情報が記入されるのか、具体的な数値例を通じて理解を深めることができます。
- 税務署への提出様式の理解: 税務署提出用、受給者交付用などの種類があることも確認できます。
例えば、国税庁のサイトで公開されている様式では、上部に「支払を受ける者」(従業員)の情報、中央部に「収入金額」や「所得控除」に関する情報、下部に「支払者」(会社)の情報が記載されていることが分かります。具体的な数値が入った記入例を見ることで、自分の源泉徴収票のどの項目が何を示すのかを照らし合わせやすくなります。
インターネット上で「国税庁 源泉徴収票 サンプル」と検索すれば、最新の様式と記載例にアクセスできるでしょう。
記載例から読み解く各項目
具体的なサンプルを通して、主要な記載項目がどのように表示されるかを見ていきましょう。ここでは、架空の源泉徴収票を想定して、各項目が持つ意味を掘り下げます。
例えば、ある従業員の源泉徴収票に以下のような情報が記載されているとします。
- 支払金額: 4,500,000円
- 給与所得控除後の金額: 3,120,000円
- 所得控除の額の合計額: 1,100,000円(内訳:社会保険料控除500,000円、生命保険料控除50,000円、基礎控除480,000円、その他70,000円)
- 源泉徴収税額: 200,000円
この記載から読み取れることは以下の通りです。
- この従業員の年収は450万円ですが、給与所得控除が適用され、課税所得の基礎となるのは312万円です。
- さらに、社会保険料や生命保険料、基礎控除など、合計110万円の所得控除が適用されています。
- 結果として、課税所得は「3,120,000円(給与所得控除後の金額)-1,100,000円(所得控除の合計額)=2,020,000円」となり、この金額に対して所得税率が適用され、最終的な所得税額が計算されています。
- 最終的に会社が納税した所得税は20万円であったことが分かります。
このように、各項目は単独で存在するのではなく、所得税計算の論理的な流れの中で相互に関連し合っています。自身の源泉徴収票と照らし合わせながら、各数字がどのような計算過程を経て導き出されたのかを理解しようと努めることが、税金に対する理解を深める第一歩となります。
また、ふるさと納税サイト(ふるなび、さとふる等)では、自身の源泉徴収票の情報を入力することで、控除限度額をシミュレーションする機能が提供されています。これらのサイトでも、源泉徴収票の入力例が図解入りで紹介されており、より視覚的に理解を深めることができます。
自身の源泉徴収票を確認する際のポイント
会社から源泉徴収票を受け取ったら、必ず内容を確認するようにしましょう。以下のポイントに沿ってチェックすることで、記載ミスや認識とのずれがないかを確認できます。
- 氏名・住所: 自身の氏名と住所が正しく記載されているかを確認します。
- 支払金額: 1年間の給与・賞与の総額が、自身の認識(給与明細の合計など)と合致しているかを確認します。特に、非課税の手当などが含まれていないか注意しましょう。
- 社会保険料等の金額: 1年間で支払った社会保険料の合計額が正しく計上されているかを確認します。
- 生命保険料控除額・地震保険料控除額など: 自身が年末調整で申告した各種控除(生命保険、地震保険、iDeCoなど)が適切に反映され、控除額が計上されているかを確認します。
- 扶養親族の数: 扶養している家族の人数が正しく記載されているかを確認します。
- 源泉徴収税額: 最終的に確定した所得税額が記載されています。特に、年末調整で還付金があった場合は、この税額と毎月の源泉徴収税額の合計との差額が還付されているはずです。
もし記載内容に誤りや疑問点がある場合は、速やかに勤務先の人事部や経理部に問い合わせましょう。誤った情報が記載されたままでは、確定申告などで不利益を被る可能性もあります。特に、転職先での年末調整に提出する場合や、住宅ローンなどの手続きで提出する場合には、記載内容が正確であることが非常に重要です。
源泉徴収票は、個人の税務処理の起点となる書類です。受け取ったら放置せず、必ず内容を確認する習慣をつけましょう。
源泉徴収票作成を助けるアプリ活用術
源泉徴収票の作成は、給与支払者側にとっては非常に手間のかかる作業であり、給与所得者にとっても、年末調整や確定申告に活用する上で理解が必要です。しかし、現代では様々なアプリやソフトウェアが開発されており、これらのツールを活用することで、作業の効率化やミスの削減、さらには納税意識の向上に役立てることができます。
給与計算・年末調整ソフトの導入メリット
給与支払者である企業にとって、源泉徴収票の作成を含む給与計算や年末調整は、複雑で間違いが許されない重要な業務です。これらの作業を効率化し、正確性を高めるために、給与計算・年末調整ソフトの導入は非常に有効です。
代表的なクラウド給与計算ソフトには、「マネーフォワード クラウド給与」や「給与ねっと」などがあります。これらのソフトを導入する主なメリットは以下の通りです。
- 計算ミスの大幅削減: 税法や社会保険料率の変更に自動で対応し、複雑な計算を正確に行います。手計算によるヒューマンエラーのリスクを限りなくゼロに近づけられます。
- 法改正への自動対応: 所得税法や社会保険料率など、毎年変わる各種税制・制度改正に自動でアップデート対応するため、担当者が常に最新の情報を追う必要がなくなります。
- 年末調整業務の効率化: 従業員からの申告書や控除証明書の情報をスムーズに取り込み、年末調整の計算から源泉徴収票の作成、税務署への提出書類の作成まで一貫して行えます。特に、マイナポータル連携機能を持つソフトは、従業員の負担も軽減します。
- ペーパーレス化の促進: 給与明細や源泉徴収票の電子発行機能により、印刷・封入・郵送の手間とコストを削減し、従業員へのスムーズな交付を実現します。
- 他システムとの連携: 会計ソフトや勤怠管理ソフトと連携することで、より一貫したデータ管理と業務効率化が可能です。
これらのソフトは、特に中小企業やスタートアップにとって、経理業務の負担を軽減し、本来の事業活動に集中するための強力なツールとなります。
確定申告・ふるさと納税連携アプリの活用
給与所得者や個人事業主が確定申告を行う際にも、アプリやソフトは大きな助けとなります。また、ふるさと納税の控除額をシミュレーションする際にも活用できます。
- 確定申告ソフト: 「やよいの青色申告 オンライン」や「freee会計」などの会計ソフトは、確定申告書類の作成を強力にサポートします。特に給与所得者で医療費控除や住宅ローン控除などを受ける方は、源泉徴収票の情報を入力することで、簡単に確定申告書を作成できます。また、「年調・法定調書の達人」のような税務申告ソフトは、給与支払者側が年末調整や法定調書の作成にかかる手間を大幅に削減できます。
- ふるさと納税サイトのシミュレーター: 「ふるなび」や「さとふる」など主要なふるさと納税サイトには、源泉徴収票の内容(支払金額、給与所得控除後の金額など)を入力するだけで、寄付控除限度額を試算してくれるシミュレーター機能が搭載されています。これにより、自分の所得に応じた適切な寄付金額を知ることができ、限度額を超えて寄付してしまうリスクを避けられます。
活用例:
源泉徴収票の「支払金額」と「給与所得控除後の金額」をサイトに入力。
→家族構成(扶養親族の有無)やその他控除情報を入力。
→最適な寄付金額が提示される。
これらのアプリや機能を利用することで、税務に関する知識が少ない方でも、より正確かつスムーズに手続きを進めることができ、節税のチャンスを逃すことも少なくなります。
マイナポータル連携とデータ活用の未来
政府が推進するデジタル化の波は、源泉徴収票の取り扱いにも大きな影響を与えています。その最たる例が、マイナンバーカードを活用した「マイナポータル連携」です。
マイナポータル連携は、給与所得者、特に年末調整や確定申告を行う際に、以下のような大きなメリットをもたらします。
- 控除証明書等の自動取得: 生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、iDeCoの掛金証明書、医療費通知情報など、これまで紙で提出が必要だった各種証明書の情報を、マイナポータル経由で電子データとして取得し、年末調整ソフトや確定申告ソフトに自動で連携させることが可能になります。これにより、従業員は書類の収集・提出の手間が省け、企業側もデータ入力作業を大幅に削減できます。
- 入力ミスの防止: 電子データでの連携により、手入力による転記ミスや誤入力のリスクが根本的に解消されます。
- 手続きの簡素化・迅速化: 年末調整や確定申告の手続きが、よりスムーズかつ迅速に進められるようになります。
企業側も、従業員からの控除証明書データを一元的に管理し、年末調整の計算に自動反映させることで、業務効率が飛躍的に向上します。これにより、源泉徴収票の作成もより正確かつ迅速に行えるようになります。
今後、税務行政のデジタル化はさらに進み、源泉徴収票をはじめとする法定調書の提出も、より電子化された形が主流となるでしょう。マイナポータル連携の活用は、単なる利便性の向上に留まらず、税務情報の正確性と透明性を高め、社会全体のデジタル化を推進する重要な一歩と言えます。給与支払者も給与所得者も、この変化に適応し、積極的にデジタルツールを活用していくことが求められます。
源泉徴収票でよくある疑問:押印・空欄・区分・黒塗りについて
源泉徴収票は重要な書類ですが、その取り扱いに関して様々な疑問を抱く方も少なくありません。特に、押印の有無、空欄の項目、記載されている区分、そしてマイナンバーの取り扱いについては、よく質問が寄せられます。ここでは、これらの疑問点について詳しく解説し、適切な対応方法を理解していきましょう。
押印の要否と電子化の流れ
源泉徴収票には、かつては会社代表者の印鑑(角印や代表者印)が押されているのが一般的でした。しかし、税法改正により、現在では源泉徴収票への押印は原則として不要となっています。
国税庁は2021年の税制改正により、税務署に提出する法定調書(源泉徴収票を含む)への押印義務を廃止しました。これに伴い、受給者交付用の源泉徴収票についても押印は不要とされています。この改正は、企業の行政手続きにおける負担軽減と、電子化の推進を目的としています。
そのため、もしお手元に押印のない源泉徴収票が届いたとしても、それは法的に問題のない、正式な書類として有効です。一部の企業では、慣習的に押印を続けているところもありますが、押印の有無で書類の効力に差はありません。
むしろ、近年では源泉徴収票の電子交付が推進されています。従業員が同意すれば、紙媒体ではなくPDFなどの電子データで源泉徴収票を受け取ることが可能です。電子データで受け取った場合も、その有効性は紙媒体と同等であり、確定申告などで利用できます。電子交付された源泉徴収票は、紛失のリスクが低減され、保管も容易になるというメリットがあります。この電子化の流れは、行政手続き全体の効率化とペーパーレス化を加速させるものとして注目されています。
空欄や区分の意味と確認ポイント
源泉徴収票には様々な項目がありますが、中には空欄になっている部分や、「区分」という欄に特定の文字が記載されていることがあります。これらの意味を理解しておきましょう。
空欄になっている項目:
- 特定の控除項目: 例えば、生命保険に加入していない人や、iDeCoに加入していない人の場合、それぞれの控除額の欄は空欄になります。扶養親族がいない場合は、扶養親族の人数欄が「0」または空欄となることがあります。これらは、その控除が適用されていないことを示すため、問題ありません。
- 住宅ローン控除など: 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、原則として初年度は自身で確定申告を行うため、源泉徴収票には反映されません。2年目以降は年末調整で適用されるため、その情報が記載されます。
「区分」欄の記載:
源泉徴収票の「区分」欄には、以下のような情報が記載されることがあります。
- 「中途退職」: 年の途中で退職した従業員に発行された源泉徴収票に記載されます。
- 「災害減免」: 災害による減免措置が適用された場合に記載されます。
- 「乙欄適用」: 2ヶ所以上の会社から給与を受け取っており、この会社が2社目の給与支払者である場合などに記載されることがあります。
これらの記載は、その従業員の所得状況や会社の処理状況を示唆するものです。自身の状況と合致しているか確認し、もし不自然な空欄や、自身の状況と異なる区分が記載されている場合は、勤務先の人事・経理担当者に確認を求めることが重要です。特に、確定申告で複数の源泉徴収票を合算する際には、これらの情報が重要となる場合があります。
マイナンバーの記載と黒塗り、取り扱い注意点
源泉徴収票には、原則として受給者(従業員)と支払者(会社)双方のマイナンバーが記載されます。これは、税務署が個人を特定し、税務情報を管理するために必要な情報だからです。
しかし、マイナンバーは非常に重要な個人情報であり、その取り扱いには細心の注意が必要です。源泉徴収票を第三者に提出する際、マイナンバーの記載が不要、あるいは情報漏洩のリスクを懸念して、マイナンバー部分を黒塗りにして提出することが容認されるケースがあります。
具体的なケース例:
- 保育園・学童保育の入所申請: 自治体によっては、所得証明として源泉徴収票の提出を求められることがありますが、マイナンバー部分の黒塗りが認められることが多いです。提出先の指示に従いましょう。
- 住宅ローンの申し込み: 金融機関によっては、マイナンバーの提出を求められることもありますが、源泉徴収票をコピーして提出する際は、マイナンバー部分の取り扱いについて金融機関に確認することが賢明です。
取り扱いにおける注意点:
- 提出先の指示に従う: マイナンバーの取り扱いは提出先によって異なるため、必ず事前に確認し、その指示に従いましょう。
- 安易なコピー・共有の禁止: マイナンバーが記載された源泉徴収票を安易にコピーしたり、不特定多数の目に触れる場所に放置したりすることは厳禁です。
- 厳重な保管: 自宅で保管する際も、鍵のかかる場所など、安全な方法で保管しましょう。
企業側も、従業員のマイナンバーを含む源泉徴収票を扱う際は、特定個人情報の保護に関する法律に基づき、厳重な管理体制を構築する必要があります。情報漏洩は個人のみならず、企業にとっても信用失墜につながる重大な問題となるため、マイナンバーの取り扱いには細心の注意を払うことが求められます。
源泉徴収票は、個人の所得税額を確定させる上で極めて重要な書類です。正確な記載と適切な手続きのために、本記事の内容を参考にし、疑問点があれば積極的に確認するようにしてください。
まとめ
よくある質問
Q: 源泉徴収票の正式名称は何ですか?
A: 源泉徴収票の正式名称は「支払通知書」です。ただし、一般的には「源泉徴収票」として広く認識されています。
Q: 源泉徴収票の作成は誰が行うのですか?
A: 源泉徴収票の作成は、給与などの支払いを行う事業者(会社など)が行います。従業員は、事業者から発行された源泉徴収票を受け取ることになります。
Q: 源泉徴収票に押印は必要ですか?
A: 原則として、源泉徴収票に事業者の押印は不要です。ただし、社内規定などで押印が定められている場合もあります。
Q: 源泉徴収票の「区分」とは何ですか?
A: 源泉徴収票の「区分」とは、給与所得者の扶養親族などの有無や、年末調整の対象となるかどうかなどを識別するための記号や番号のことです。例えば、「1」は配偶者控除等申告書を提出した居住者、「2」は同申告書を提出していない居住者などを示します。
Q: 源泉徴収票の項目で空欄や黒塗りになる箇所はありますか?
A: 源泉徴収票の項目によっては、該当する情報がない場合に空欄となることがあります。また、個人情報保護などの観点から、一部の情報が意図的に黒塗りされることはありませんが、必要に応じてマスキング処理を行う場合があります。