概要: 退職金は、勤続年数や役職、会社の制度によって金額が大きく変動します。ここでは、平均的な退職金の目安や、いつ・どこから支払われるのか、さらには退職金が出ないケースについても詳しく解説します。スムーズに退職金を受け取るための知識を身につけましょう。
退職金はいくら?もらえる時期と会社ごとの割合を徹底解説
長年の勤務を終えて退職する際、多くの人が期待するのが「退職金」です。この退職金は、老後の生活設計を考える上で非常に重要な資金源となる一方で、「一体いくらもらえるのか」「いつ支払われるのか」といった疑問を抱えている方も少なくありません。
本記事では、退職金の平均相場から支給時期、そして企業ごとの制度の種類や、いざという時にもらえないケースまで、具体的なデータや情報を交えながら徹底的に解説します。あなたの退職金に関する疑問を解消し、安心して次のステップに進むための一助となれば幸いです。
退職金はいくらもらえる?平均額と目安を知ろう
退職金の額は、勤続年数、企業規模、学歴、そして退職理由によって大きく変動します。ここでは、具体的なデータを基に、退職金がいったいどれくらいの金額になるのか、その平均相場と目安について詳しく見ていきましょう。
企業規模・勤続年数で見る退職金の相場
退職金の平均額は、企業規模が大きくなるほど高くなる傾向にあります。厚生労働省の調査などによると、具体的な相場は以下のようになっています。
- 大企業(従業員1,000人以上):
- 勤続20年以上、定年退職の場合の平均額は約1,896万円です。
- 特に、大学卒(事務・技術労働者、総合職相当)で定年退職を迎えた場合、平均支給額は約2,140万円が相場とされています。高校卒の場合は約2,020万円です。
- 勤続年数が長くなるほど退職金の額は顕著に増加し、例えば勤続10年と20年では、年数が2倍でも退職金が約3倍になるケースもあります。
- 中小企業(従業員100~999人未満):
- 定年退職時の平均相場は、大学卒で約1,092万円、高校卒で約994万円です。
- 大企業と比較すると、およそ半額程度の水準となる傾向が見られます。
これらのデータからもわかるように、企業規模や勤続年数が退職金の額に与える影響は非常に大きいと言えるでしょう。自身のキャリアプランを考える上で、これらの目安を知っておくことは重要です。
退職理由による金額差と公務員のケース
退職の理由も、退職金の額に影響を与える重要な要素です。大きく分けて「自己都合退職」と「会社都合退職」の2つがあり、会社都合退職の方が手厚い支給となるのが一般的です。
- 自己都合退職と会社都合退職:
- 例えば、勤続5年で大企業に勤務した場合、自己都合退職なら約63万円、会社都合退職なら約121万円が相場とされています。
- 大学卒で勤続20年の場合では、自己都合退職のモデル退職金が約346.8万円であるのに対し、会社都合退職では約408.1万円と、約61.3万円もの差が生じることがあります。これは、会社都合退職が、会社の経営状況の変化や事業再編など、労働者自身の意思とは関係ない理由で退職に至ったケースを指すため、より手厚い保障がなされる傾向があるためです。
- 公務員の退職金:
- 公務員の場合、退職金の計算方法が明確に定められています。勤続35年で約2,500万~3,500万円が相場とされていますが、近年は国家財政の状況を背景に減額傾向にあります。
- 公務員の退職金は、民間企業と比較しても高水準ですが、その分、厳しい人事評価や責任も伴います。
退職理由によって退職金の額が大きく変動するため、退職を検討する際には、自身の会社の就業規則や退職金規程を必ず確認し、退職理由が退職金にどう影響するかを把握しておくことが肝要です。
退職金制度がある企業の割合と現状
一口に「退職金」と言っても、全ての企業が退職金制度を導入しているわけではありません。近年、退職金制度を取り巻く環境は変化しており、その動向を知ることは、自身のキャリアや老後資金計画を立てる上で非常に重要です。
厚生労働省の最新の調査(令和5年)によると、退職金制度がある会社の割合は74.9%となっています。一方、退職金制度がない会社の割合は24.8%と、およそ4社に1社は退職金制度がないことが分かります。
過去のデータと比較してみると、平成27年度の調査では92.6%の企業が何らかの退職金制度を導入していました。この数字から、約8年間で制度導入率が約17ポイントも減少していることが見て取れます。この背景には、企業側の経営状況の変化や、確定拠出年金(DC)などの自己責任型年金制度の普及があります。
つまり、以前は「会社に長く勤めれば退職金がもらえる」という認識が一般的でしたが、現在は必ずしもそうとは限りません。特に中小企業や設立間もない企業では、退職金制度が導入されていないケースも少なくありません。そのため、就職・転職の際には、給与や福利厚生だけでなく、退職金制度の有無やその内容についても、しっかりと確認することが強く推奨されます。退職金だけに頼らず、iDeCoやNISAなどを活用して自分自身で老後資金を準備する意識も、現代においては非常に重要になっていると言えるでしょう。
退職金はいつ入る?会社ごとの受け取りタイミング
退職金がいつ支払われるのかは、退職後の生活設計を立てる上で非常に重要な情報です。しかし、その支払い時期は法律で明確に定められているわけではなく、企業によって異なります。ここでは、退職金の一般的な支払い時期と、確認すべきポイントについて解説します。
一般的な支払い時期と遅れるケース
退職金の支払い時期は、企業ごとの就業規則や退職金規程によって定められています。一般的には、以下のタイミングで振り込まれることが多いです。
- 退職後1〜2ヶ月以内:最も一般的なケースで、退職月の翌月または翌々月に支給されます。例えば、3月末に退職した場合、4月末または5月末に振り込まれるといった具合です。
- 最終給与と同時:企業によっては、退職月の最終給与支払い日に、給与と合算して退職金が振り込まれることもあります。
- 数ヶ月後になる場合:特に大企業や、多くの従業員が退職する年度末(3月末)や人事異動が多い時期(9月末など)は、事務手続きが混雑し、通常よりも支払いまでに時間がかかる可能性があります。この場合、退職後3ヶ月以上かかるケースも稀にあります。
退職金はまとまった金額になることが多いため、その支払い時期が遅れると、退職後の生活費や次の仕事への準備費用などに影響が出ることがあります。そのため、自身の退職金がいつ支払われるのかを事前に把握しておくことが大切です。
就業規則・規程で確認する重要性
退職金の支払い時期は、労働基準法などの法律で一律に定められているわけではありません。そのため、各企業の就業規則や退職金規程を確認することが最も確実な方法です。
- 就業規則の確認:
- ほとんどの企業で、退職金の支給に関する事項は就業規則に明記されています。「退職金規程」として独立している場合もあれば、就業規則の一部として記載されていることもあります。
- 「退職金の支給条件」「支給額の計算方法」「支払い時期」「支払い方法」などが詳しく記載されています。
- 担当部署への問い合わせ:
- 就業規則を読んでも不明な点がある場合や、具体的なスケジュールを確認したい場合は、人事部や総務部などの担当部署に直接問い合わせるのが良いでしょう。
- 問い合わせの際には、退職予定日を伝え、いつ頃支払い予定なのか、必要な手続きは何かなどを具体的に確認することをおすすめします。
退職金の支払いに関する情報は、従業員であればアクセスできる場所に保管されているはずです。不明なままにせず、積極的に情報収集を行い、自身の権利をしっかりと確認することが大切です。
受け取り時期を早めることは可能?
原則として、退職金の受け取り時期を早めることは難しいと考えられます。退職金の支払い時期は、企業の資金計画や事務処理の都合に合わせて定められているため、個別の事情で変更することは稀です。
- 規程による支払い:
- 企業は、就業規則や退職金規程に則って退職金を支払う義務があります。規程にない支払い時期の変更は、他の従業員との公平性を保つ上でも困難な場合が多いです。
- 例外的なケース:
- ただし、非常に特別な事情がある場合や、企業側が柔軟な対応を検討してくれるケースもゼロではありません。例えば、緊急の医療費が必要になった、住宅ローンの繰り上げ返済に充てたいなど、やむを得ない理由がある場合は、まずは人事担当者に相談してみる価値はあります。
- しかし、あくまで企業の判断に委ねられるため、確実な保証はありません。
基本的には、就業規則に定められた支払い時期を前提に、退職後の資金計画を立てるのが賢明です。退職金はまとまった金額であるため、計画的に活用することで、老後の生活や新たな挑戦への大きな支えとなるでしょう。
退職金はどこから出る?制度の種類と仕組み
退職金は、企業から従業員に対して支払われる長年の貢献に対する報償ですが、その原資や仕組みは多様です。ここでは、退職金制度の主な種類と、企業がどのように退職金を準備しているのかについて解説します。
退職金制度の種類と特徴
日本の企業が導入している退職金制度には、主に以下のような種類があります。企業はこれらの制度を単独で、あるいは組み合わせて導入しています。
- 退職一時金制度:
- 最も伝統的な制度で、退職時に一度にまとまった金額が支払われます。
- 計算方法は、基本給と勤続年数、退職理由を基に算出されるのが一般的です。
- 従業員にとっては、退職時にまとまった資金を一度に受け取れるメリットがありますが、企業の業績によって支給額が変動するリスクもあります。
- 企業年金制度:
- 退職金を一時金として受け取るだけでなく、年金形式で複数回にわたって受け取れる制度です。主に以下の2種類があります。
- 確定給付企業年金(DB):従業員が受け取る年金額が事前に約束(確定)されている制度です。運用リスクは企業が負います。
- 確定拠出年金(DC):企業が掛け金を拠出し、従業員自身が運用を行います。将来受け取る額は運用実績によって変動し、運用リスクは従業員が負います。(iDeCoや企業型DCがこれにあたります。)
- 中小企業退職金共済制度(中退共):
- 国が運営する中小企業向けの退職金制度です。中小企業が従業員の退職金を確保するためのもので、企業が掛け金を拠出し、従業員が退職時に中退共から直接退職金を受け取ります。
- 特に中小企業で導入されており、企業側の負担軽減や従業員の退職金確保に役立っています。
これらの制度はそれぞれ特徴が異なり、従業員にとってのメリット・デメリットも様々です。自身の会社がどのような制度を導入しているかを知ることは、将来の資金計画を立てる上で非常に重要です。
企業が退職金を準備する方法
企業が従業員に退職金を支払うためには、事前にその資金を準備しておく必要があります。企業が退職金を準備する方法は、導入している制度によって異なります。
- 内部留保・積立金:
- 退職一時金制度の場合、企業は毎年の利益の一部を退職金として内部に積み立てておくことが一般的です。これを「退職給付引当金」などと呼び、将来の退職金支払いに備えます。
- この方法は企業の財務状況に左右されるため、業績が悪化した場合には、予定通りの退職金支払いが困難になるリスクも考えられます。
- 外部積立・保険の活用:
- 確定給付企業年金や中小企業退職金共済制度の場合、企業は毎月、金融機関や信託銀行、共済団体などに掛け金を拠出します。これらの機関が資金を運用し、将来の年金給付や一時金支払いに充てます。
- 生命保険会社が提供する「退職金共済制度」のような保険商品を利用して、企業が退職金を積み立てるケースもあります。これにより、企業は安定的に退職金原資を確保することができます。
- 確定拠出年金(DC)の掛け金拠出:
- 確定拠出年金の場合、企業は従業員ごとに毎月一定額の掛け金を拠出します。この掛け金は、従業員個人の口座に積み立てられ、従業員自身が金融商品を選んで運用します。
- 企業は掛け金を拠出するまでが責任範囲であり、運用成績による将来の給付額変動リスクは従業員が負います。
企業がどのような方法で退職金を準備しているかを知ることで、その制度の安定性やリスクについてより深く理解することができます。自分の会社の退職金制度について不明な点があれば、人事担当者に確認してみましょう。
確定拠出年金(DC)の役割と自己責任
近年、退職金制度の主流の一つとなりつつあるのが、確定拠出年金(DC)です。これは、企業型DC(企業が導入)とiDeCo(個人で加入)の二種類があり、これまでの退職金制度とは大きく異なる特徴を持っています。
確定拠出年金が注目される背景には、退職金制度のない企業が増加していることや、企業が退職金の運用リスクを負う確定給付型年金からの移行を進めている実情があります。
- 従業員自身が運用:
- 確定拠出年金では、企業が拠出した掛け金(または個人が拠出した掛け金)を、従業員自身が金融商品(投資信託、預貯金、保険商品など)を選んで運用します。
- 運用実績によって、将来受け取る給付額が変動するため、運用責任は従業員自身にあります。
- 税制優遇:
- 確定拠出年金の掛け金は、全額所得控除の対象となり、運用益も非課税です。受け取り時にも退職所得控除や公的年金等控除が適用されるなど、大きな税制優遇が設けられています。
- 老後資金の形成:
- 確定拠出年金は、原則として60歳まで引き出すことができません。これは、老後資金を確実に形成するための仕組みです。
この制度の普及は、「退職金は会社が用意してくれるもの」という従来の考え方から、「退職金は自分で準備するもの」という意識への変化を促しています。企業型DCを導入している企業に勤めている場合は、積極的に資産運用に取り組むことで、将来受け取る退職金の額を増やすチャンスがあります。iDeCoも活用することで、より多くの老後資金を非課税で準備することが可能です。資産形成について学び、主体的に行動することが、これからの時代における退職金準備の鍵となるでしょう。
退職金がもらえない?出ないケースとその理由
多くの人が「退職すれば退職金がもらえる」と考えていますが、実際には退職金が支給されないケースも存在します。ここでは、退職金が支給されない主な理由や、その際の注意点について解説します。
退職金制度がない企業の存在
最も根本的な理由として、そもそも退職金制度を導入していない企業に勤務しているケースが挙げられます。
- 法律上の義務ではない:
- 日本の労働基準法では、使用者から労働者への退職金の支払いを義務化していません。退職金は、企業が任意で設ける福利厚生制度の一つという位置づけです。
- そのため、企業には退職金制度を導入する義務がなく、制度がない企業で働いている場合、退職金は一切支給されません。
- 制度導入率の減少:
- 前述の通り、退職金制度がある会社の割合は74.9%であり、約25%の企業には制度がありません。特に設立間もない企業やベンチャー企業、小規模な企業では制度がないことも珍しくありません。
- 入社前の確認が必須:
- 就職や転職の際には、給与や待遇だけでなく、退職金制度の有無や内容についても事前に確認することが非常に重要です。採用面接時や入社前の労働条件通知書などで、しっかり確認するようにしましょう。
- もし制度がない場合でも、それを理解した上で働き始めるのであれば問題ありませんが、「もらえると思っていたのに…」という後悔を避けるためにも、事前の情報収集は不可欠です。
退職金制度がない企業で働く場合、老後資金や退職後の生活資金は、給与からの貯蓄やiDeCo、NISAなどの自己資産形成に完全に依存することになります。この点を十分に認識し、計画的な資金準備を進める必要があります。
自己都合退職や懲戒解雇の場合
退職理由によって、退職金が減額されたり、全く支給されなかったりするケースがあります。
- 自己都合退職による減額・不支給:
- 自己都合退職の場合、会社都合退職に比べて退職金が減額されるのが一般的です。これは、会社都合退職が会社の都合で従業員を解雇する場合であるのに対し、自己都合退職は従業員自身の意思で退職するため、会社側がそこまで手厚い補償をする必要がないという考え方に基づいています。
- 企業の退職金規程によっては、勤続年数が一定期間に満たない自己都合退職の場合、退職金が全く支給されない、という規定を設けていることもあります。
- 懲戒解雇による不支給:
- 従業員が重大な非違行為(横領、情報漏洩、無断欠勤の長期化など)を行い、懲戒解雇となった場合、退職金は全額不支給となる可能性が非常に高いです。
- これは、退職金が長年の功労に対する報償であるという性質上、会社に著しい損害を与えたり、会社の名誉を著しく傷つけたりした場合には、その功労が認められないと判断されるためです。
- 懲戒解雇の要件や退職金の不支給規定は、就業規則に具体的に定められています。
これらのケースは、退職金の支給額に大きな影響を与えるため、退職を検討する際や、職場での行動には十分な注意が必要です。自身の会社の就業規則を理解し、どのような場合に退職金が減額・不支給となるのかを把握しておくことが重要です。
勤続年数が短い場合の注意点
退職金制度がある企業であっても、勤続年数が短い場合には退職金が支給されない、あるいはごく少額しか支給されないことがあります。
- 支給対象となる最低勤続年数:
- 多くの企業の退職金規程には、退職金の支給対象となる最低勤続年数が定められています。一般的には「勤続3年以上」「勤続5年以上」としている企業が多いですが、中には「勤続10年以上」といった長い期間を設けているケースもあります。
- この最低勤続年数を満たさないうちに退職した場合、退職金は一切支給されません。
- 早期退職を検討する際の考慮事項:
- キャリアアップや転職のために比較的短期間で会社を辞めることを検討している場合、退職金はほとんど期待できないものとして計画を立てるべきです。
- 例えば、3年で転職を繰り返した場合、それぞれの会社で退職金を受け取ることは難しいでしょう。この場合、iDeCoやNISAなど、個人で積み立てる資産形成手段の重要性がさらに高まります。
退職金は、あくまで長年の貢献に対して支払われるものです。短い期間で会社を離れる場合、その恩恵にあずかることは難しいという現実を理解し、自身のキャリアプランと資金計画を慎重に立てることが大切です。就業規則で支給要件を必ず確認し、不明な点があれば人事担当者に相談しましょう。
退職金をもらうための手続きと注意点
退職金は、会社からの重要な支給であり、適切に受け取るためにはいくつかの手続きと注意点があります。ここでは、退職金を受け取るための一般的な流れと、税金に関する重要な知識、そして老後資金計画について解説します。
退職金の申請手続きと必要書類
退職金を受け取るためには、会社が定める所定の手続きを行う必要があります。会社によって具体的な流れは異なりますが、一般的なステップと必要書類は以下の通りです。
- 退職届の提出と意向確認:
- まず、会社に退職の意思を伝え、退職届を提出します。この際、退職金に関する説明がある場合もあれば、後日改めて案内されることもあります。
- 会社側から、退職金の希望受け取り方法(一時金か年金か)や、受け取り口座の確認などが行われるのが一般的です。
- 退職金申請書の提出:
- 会社の指定する「退職金請求書」や「退職一時金申請書」などの書類に、必要事項を記入して提出します。
- この書類には、氏名、住所、退職年月日、振込先口座情報などを記載します。
- 必要書類の提出:
- 会社によっては、以下のような追加書類の提出を求められることがあります。
- 印鑑証明書(実印で申請する場合)
- 住民票(住所確認のため)
- 身分証明書のコピー(本人確認のため)
- 源泉徴収票(その年の途中退職の場合、確定申告に必要となるため、退職金とは別に会社から発行されます)
- これらの書類は、特に個人情報保護や税務処理の観点から必要となるものです。事前に何が必要かを確認し、期日までに準備・提出するようにしましょう。
- 会社によっては、以下のような追加書類の提出を求められることがあります。
手続きに不明な点があれば、必ず人事部や総務部の担当者に確認し、滞りなく手続きを進めることが大切です。
退職金にかかる税金と控除について
退職金は、まとまった金額が支給されるため、税金がかかることに注意が必要です。しかし、退職金には優遇された税制が適用され、「退職所得」として他の所得とは分離して計算されます。
- 退職所得控除の活用:
- 退職金には、長年の勤労への報償という性格から、「退職所得控除」という大きな非課税枠が設けられています。これにより、一定額までの退職金には税金がかからず、控除額を超えた部分にのみ税金がかかります。
- 退職所得控除額は、勤続年数によって以下のように計算されます。
- 勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(80万円未満の場合は80万円)
- 勤続20年超:800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)
- 例えば、勤続30年の場合、控除額は 800万円 + 70万円 × (30年 − 20年) = 800万円 + 700万円 = 1,500万円 となります。
- 税額の計算方法:
- 退職所得 = (退職金 − 退職所得控除額) × 1/2
- この「退職所得」に所得税と住民税がかかります。課税対象額が半分になるため、税負担が軽減される仕組みです。
- 受け取り方による違い:
- 退職金を「一時金」として受け取るか、「年金」として受け取るかによって、税金の計算方法が異なります。一時金は上記退職所得として扱われますが、年金として受け取る場合は、公的年金等控除の対象となり、雑所得として課税されます。
- どちらが有利かは個人の状況によって異なるため、税理士などの専門家や会社の担当部署に相談することをおすすめします。
会社が発行する「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、会社が退職金から所得税・住民税を源泉徴収してくれるため、基本的に確定申告は不要です。しかし、複数の会社から退職金を受け取る場合などは、確定申告が必要になることもありますので注意しましょう。
退職金に頼らない老後資金の準備
退職金は老後資金の大きな柱となり得ますが、前述の通り、その平均相場は減少傾向にあり、制度自体がない企業も増えています。そのため、退職金だけに頼らず、自分自身で老後資金を準備することの重要性がますます高まっています。
- 積極的な資産形成:
- 退職金が期待できない、あるいは少額である場合でも、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)などの国の優遇制度を積極的に活用することで、効率的に資産形成を進めることができます。
- iDeCoは、掛け金が全額所得控除、運用益が非課税、受け取り時にも控除が適用されるという、非常に大きな税制優遇が魅力です。
- NISAも、投資で得た利益が非課税となる制度で、将来に向けた資産形成に非常に有効です。
- 長期・積立・分散投資:
- 資産形成においては、長期にわたってコツコツと積み立てを行い、複数の金融商品に分散して投資する「長期・積立・分散投資」が基本戦略となります。これにより、リスクを抑えながら安定的なリターンを目指すことができます。
- 専門家への相談:
- どのように資産形成を始めれば良いか分からない場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも一つの方法です。個人のライフプランやリスク許容度に合わせて、最適な資産運用のアドバイスを受けることができます。
退職金は、あくまで老後資金の一部と捉え、早いうちから計画的に自己資産形成に取り組むことが、安心してセカンドライフを送るための鍵となります。会社の制度を理解しつつ、自分自身の未来を自分で守る意識を持つことが大切です。
まとめ
よくある質問
Q: 退職金は月々いくらくらいもらえるのでしょうか?
A: 退職金は月々支給されるものではなく、退職時に一括または分割で支払われるのが一般的です。月額の金額ではなく、退職時に支払われる総額として考えます。平均額は勤続年数や役職、会社の規定によって大きく異なりますが、一般的には数百万円から数千万円程度となることもあります。
Q: 退職金はどれくらい、どのくらいの期間でもらえるのでしょうか?
A: 退職金の総額は、勤続年数、役職、退職理由、会社の退職金規定によって大きく変動します。一般的には、勤続年数が長ければ長いほど、また役職が高ければ高いほど、金額は増える傾向にあります。分割で受け取る場合でも、その期間や金額は会社ごとに定められています。
Q: 退職金はいつ頃入金されるのでしょうか?
A: 退職金の入金タイミングは、会社の就業規則や退職金規定によって定められています。退職後1ヶ月以内に入金される場合もあれば、数ヶ月後、あるいは年単位で分割される場合もあります。正確な時期については、在職中に人事部門などに確認することをおすすめします。
Q: 退職金はどこから支払われるのでしょうか?
A: 退職金は、原則として勤務していた会社から支払われます。会社によっては、自社で退職金制度を設けている場合や、中小企業退職金共済制度などの外部機関を利用している場合があります。いずれにしても、直接的な支払元は勤務先となります。
Q: 退職金が出ない会社や、出ない場合があるのでしょうか?
A: はい、退職金制度を設けていない会社もあります。また、試用期間中の退職、懲戒解雇、自己都合退職でも勤続年数が短い場合など、会社の規定によっては退職金が支払われないケースも存在します。退職金制度の有無や適用条件は、入社前に確認しておくことが重要です。