Tera Term活用術：ディレクトリ表示からファイル転送まで

Tera Termで現在のディレクトリを確認・変更する方法

lsコマンドによる現在のディレクトリ確認

リモートサーバーに接続した後、まず最初に行うべきは「自分が今どこにいるのか」「どのようなファイルがあるのか」を確認することです。Tera Term上で最も頻繁に使われるのがlsコマンドです。単に ls と入力するだけで、現在のディレクトリ（カレントディレクトリ）内にあるファイルやフォルダの一覧が表示されます。

より詳細な情報を知りたい場合は、オプションを活用しましょう。例えば ls -l を使用すると、ファイルサイズや更新日時、権限情報（パーミッション）が表示されます。また、ドットから始まる隠しファイルを確認するには ls -a を使います。これらを組み合わせた ls -la は、エンジニアにとっての必須コマンドと言えるでしょう。ディレクトリ構造を把握することは、誤操作を防ぐための第一歩です。

cdコマンドを使ったディレクトリ移動の基本

目的のファイルが別の場所にある場合、cd（change directory）コマンドを使用してディレクトリを移動します。移動方法には大きく分けて「絶対パス」と「相対パス」の2種類があります。絶対パスは cd /var/www/html のようにルートディレクトリから全ての階層を指定する方法で、どの階層にいても確実に目的地へ移動できます。

一方で相対パスは、現在の位置を基準にします。例えば一つ上の階層に戻りたいときは cd .. と入力します。ホームディレクトリへ一気に戻るには cd ~ または単に cd とだけ入力すればOKです。Tera Term上で作業効率を上げるためには、タブキーによる「補完機能」を併用するのがコツです。フォルダ名の最初の数文字を入力してタブキーを押すと、残りの名称が自動入力されるため、入力ミスを大幅に減らすことができます。

ここがポイント： 複雑な階層を移動する際は、常に pwd コマンドで現在のフルパスを確認する習慣をつけると、作業ミスを未然に防ぐことができます。

changedirによるローカル側の作業ディレクトリ変更

Tera Termには、接続先のサーバー内ではなく、操作しているWindows側（ローカル側）の作業ディレクトリを変更するchangedirという仕組みがあります。これは主に、Tera Term経由でファイルを送受信する際に非常に重要な役割を果たします。デフォルトではTera Termのインストールフォルダやマイドキュメントが設定されていますが、これをプロジェクト専用のフォルダに変更しておくことで、ファイル転送がスムーズになります。

設定は、メニューの「File」から「Change directory」を選択することで簡単に行えます。ここで設定したディレクトリは、後述するファイルの送信（Send file）や受信（Receive）時のデフォルト参照先となります。あらかじめデスクトップや特定の作業用フォルダにパスを通しておけば、ファイルを探す手間が省け、業務効率が劇的に向上します。

Tera Termでファイルやフォルダを効率的に管理・転送する

多彩なプロトコルを利用したファイル転送の仕組み

Tera Termは単なる文字入力端末ではなく、強力なファイル転送機能を備えています。サポートしているプロトコルは多岐にわたり、ZMODEM、XMODEM、YMODEM、Kermit、B-PLUS、Quick-VANなどが利用可能です。特に現代のサーバー管理において便利なのは、SSHの仕組みを利用した「SCP」や「SFTP」による転送です。

例えば、古いシステムとのやり取りで信頼性が高いZMODEMを利用すれば、コマンドラインから直接ファイルの送受信を開始できます。また、最新のTera Term 5系では内部処理の最適化が進んでおり、大容量のログファイルやバイナリデータを転送する際も安定した動作が期待できます。環境に合わせて最適なプロトコルを選択できる柔軟性が、長年愛され続けている理由の一つです。

mvとcpコマンドによるサーバー内ファイル管理

ファイル転送だけでなく、サーバー内での整理整頓も重要です。ファイルの移動や名前の変更には mv（move）コマンドを使用し、コピーを作成するには cp（copy）コマンドを使用します。例えば、設定ファイルを編集する前に cp config.conf config.conf.bak と実行してバックアップを取っておくのは、インフラ運用の鉄則です。

ディレクトリごとコピーしたい場合は、cp -r オプションを使用します。また、複数のファイルをまとめて移動させる際にワイルドカード（*）を使うと、作業時間を大幅に短縮できます。Tera Termの画面上でこれらのコマンドを駆使することで、わざわざFTPソフトを立ち上げることなく、スピーディーなサーバー管理が可能になります。管理のしやすさは、コマンドの習熟度に比例すると言っても過言ではありません。

注意： mv や cp で既存のファイルを上書きする場合、警告が出ない設定になっていることが多いです。上書き前に確認したい場合は -i オプションを付けることを推奨します。

ドラッグ＆ドロップによる直感的なファイル送信

Tera Termの最も便利な隠れ機能の一つが、「ファイルのドラッグ＆ドロップ」による転送です。Windows上のファイルをTera Termのウィンドウに直接放り込むだけで、ファイル転送のダイアログが表示されます。ここで「SCP」を選択すれば、複雑なコマンドを打つことなく、現在開いているディレクトリにファイルを即座にアップロードできます。

この機能の素晴らしい点は、バイナリファイルでもテキストファイルでも、形式を問わず直感的に扱える点です。特に急ぎで設定ファイルを反映させたいときや、ログファイルをローカルに持ち帰りたいときに重宝します。最新のTera Term 5.0以降では、Unicode対応により日本語を含むファイル名でも文字化けせずに転送できるため、よりストレスフリーな操作が実現しています。

Tera Termの隠れた便利機能：diffコマンドと属性変更

diffコマンドで見つけるファイル差分の確認方法

システムの設定変更を行った際、「変更前と変更後でどこが変わったのか」を正確に把握することは非常に重要です。そこで活躍するのが diffコマンドです。Tera Term上で diff file1 file2 と入力すれば、2つのファイル間の差異が瞬時に表示されます。行単位での追加、削除、変更が記号で示されるため、予期せぬ書き換えがないかを確認できます。

特に設定ファイルのデバッグ時には、diff -u オプションを使って「ユニファイド形式」で出力するのがおすすめです。どの行がどのように変化したのかが視覚的に分かりやすくなり、ミスを早期に発見できます。複数の環境で設定を同期させている場合や、チームでファイルを共有している現場において、diffによる整合性チェックは欠かせない工程となります。

chmodとchownによるパーミッションと所有者管理

サーバー上のファイルが正しく動作しない原因の多くは、「権限（パーミッション）」や「所有者」の設定ミスにあります。Tera Term上でこれを解決するのが chmod と chown です。例えば、Webサーバーがファイルを読み込めるようにするには chmod 644 filename と設定し、プログラムを実行可能にするには chmod +x script.sh と設定します。

また、ファイルの所有ユーザーを変更する場合は chown user:group filename のように指定します。これらの属性変更を怠ると、セキュリティリスクが高まったり、アプリケーションがエラーを吐いたりする原因となります。Tera Termで ls -l を実行して現在の属性を細かく確認しながら、適切な権限を付与する習慣をつけましょう。以下の表は、よく使われる権限設定の例です。

catコマンドを使った素早いファイル内容のチェック

ファイルの中身をサッと確認したいとき、わざわざエディタ（viやnano）を起動するのは手間です。そんな時は catコマンドが便利です。cat filename と打つだけで、ファイルの内容がターミナル上に一括表示されます。設定ファイルの一節を確認したり、短いスクリプトの内容をチェックしたりする際に最適です。

もしファイルが非常に長く、画面が流れてしまう場合は、less や more コマンドを使いましょう。これらを使えば、スペースキーでページを送りながら内容をじっくり確認できます。また、grep コマンドと組み合わせて cat logfile | grep "Error" のように実行すれば、膨大なデータの中から必要な情報だけを抽出することも可能です。Tera Termの標準的なコマンド操作を組み合わせることで、情報の検索スピードは飛躍的に向上します。

Tera Termの接続・設定に関する疑問を解消

Tera Term 5.0以降のUnicode対応と文字化け対策

長年Tera Termを利用してきたユーザーにとって、最大のトピックはTera Term 5.0によるUnicodeへの全面対応でしょう。これにより、UTF-8環境のサーバーに接続した際に発生しがちだった「日本語の文字化け」が劇的に解消されました。絵文字や多言語が混在するログファイルも、最新版であれば正確に表示することが可能です。

もし最新版を使っているのに文字化けが発生する場合は、設定の「Terminal」項目で漢字コードが「UTF-8」になっているか確認してください。また、フォント設定も重要です。Unicodeに対応した等幅フォント（「MS ゴシック」や「Consolas」など）を選択することで、罫線のズレや文字の重なりを防ぐことができます。18年ぶりのメジャーアップデートによって、Tera Termは現代の多言語環境に完全に適応しました。

最新版で強化されたSSHセキュリティとホスト鍵方式

近年のOS、例えばAmazon Linux 2023などでは、セキュリティの観点から古いRSA署名（SHA-1）がデフォルトで無効化されています。古いTera Term（4系）を使用していると、「接続が拒否される」「鍵が合わない」といったトラブルに見舞われることがありますが、Tera Term 5.0以降ではこれらが解決されています。

具体的には、rsa-sha2-256 や rsa-sha2-512 といった強力なホスト鍵方式がサポートされました。これにより、最新のセキュリティ要件を満たすサーバーへもスムーズに接続できるようになっています。安全な通信を維持するためには、クライアント側のアップデートが不可欠です。Tera Term 5.5.1（2025年最新版）では、さらに細かな脆弱性への対策も施されているため、常に最新の状態を保つことが推奨されます。

セキュリティのヒント： 新しいサーバーに接続する際、「The server’s host key is not registered」と表示された場合は、必ずホスト鍵のフィンガープリントが正しいか確認してから保存するようにしましょう。

TERATERM.INIを活用した環境設定のカスタマイズ

Tera Termの動作を自分好みに細かく調整したいなら、設定ファイルである TERATERM.INI の編集が欠かせません。このファイルには、ウィンドウのサイズ、背景色、文字色、ログの保存先、さらには接続時のタイムアウト時間まで、あらゆる設定が記述されています。通常は設定メニューから変更可能ですが、直接ファイルを編集することで、より高度なカスタマイズが可能です。

例えば、業務で複数のサーバーに接続する場合、ログインと同時に自動でログ取得を開始する設定（LogAutoStart=on）にしておけば、作業証跡の取り忘れを防げます。また、コマンドライン引数で別のINIファイルを指定して起動することもできるため、「本番環境用（背景赤）」と「開発環境用（背景青）」で使い分けるといった運用も可能です。自分専用の最適な環境を構築することが、プロフェッショナルな作業への近道です。

Tera Termでよくあるトラブルシューティング

接続できない・タイムアウトする場合のチェックリスト

Tera Termでサーバーに接続しようとして「Connection refused」や「Connection timed out」と表示される場合、まずは原因を切り分ける必要があります。最も多いのは、ネットワーク経路の問題や、接続先IPアドレスの入力ミスです。以下のチェックリストを確認してみましょう。

• ポート番号は正しいか： SSHなら通常22番ですが、セキュリティのために変更されている場合があります。
• ファイアウォールの設定： 自身のIPアドレスからの接続が、サーバー側や社内ルーターで許可されているか確認してください。
• サービスの状態： サーバー側で sshd などのサービスが起動しているか、別の手段で確認が必要です。

また、最新のWindows環境ではウイルス対策ソフトが通信を遮断しているケースもあります。一度ソフトを無効にして試すなど、階層的に原因を探ることが解決の鍵となります。

受信ファイルの上書きを防ぐAutoFileRename設定

ファイル転送を行っている際、誤って同名のファイルを上書きしてしまい、古いデータを消失させてしまうトラブルは珍しくありません。Tera Termにはこれを未然に防ぐ AutoFileRename という便利な設定項目があります。この機能を有効に（onに）しておくと、ローカル側に同名のファイルが存在する場合、自動的にファイル名の末尾に数字を付与して保存してくれます。

設定は設定ファイル（TERATERM.INI）の AutoFileRename=on を書き換えるか、メニューの設定から変更可能です。特に、日付ごとに異なるログファイルをダウンロードする場合や、バックアップファイルを繰り返し取得する作業では、この設定一つでデータの安全性が大幅に高まります。地味な機能ですが、リスク管理の観点からは非常に強力な味方となります。

推奨設定： 重要なファイルを扱う場合は、手動でリネームするよりも、この自動リネーム機能を常にONにしておくことでヒューマンエラーを排除できます。

脆弱性「Terrapin Attack」への対応と最新版への更新方法

2023年末に公表されたSSHの脆弱性 Terrapin Attack (CVE-2023-48795) は、通信の一部が攻撃者によって改ざんされる恐れがある深刻なものでした。Tera Termはこの問題に対して迅速に対応し、最新バージョンで修正が行われています。もし、あなたがまだ古いバージョン（4系など）を使い続けているのであれば、直ちにアップデートを行うべきです。

アップデートは、公式サイト（TeraTerm ProjectのGitHubリポジトリ）からインストーラーをダウンロードし、実行するだけです。古い設定を引き継ぎたい場合は、あらかじめ TERATERM.INI をバックアップしておきましょう。最新のTera Term 5.x系は、機能面だけでなくセキュリティ面でも大きな進化を遂げています。「動いているから古いのでいい」ではなく、「安全のために最新を使う」という意識が、安定した運用を支える基盤となります。

Tera Termでの作業効率を劇的に向上させるAIアシスタント活用術

Tera Termは、サーバーとのやり取りをスムーズにする強力なツールですが、その多機能ゆえに、どこから手をつければ良いか迷うこともあるかもしれません。そんな時、AIをあなたの「秘書」や「優秀なアシスタント」のように活用することで、日々の作業を格段に効率化できます。AIは、複雑なコマンドの理解を助けたり、作業手順の整理をサポートしたりと、まるで長年の経験を持つベテランのように、あなたを陰ながら支えてくれます。

AIは万能ではありませんが、あなたの思考を整理し、作業の「たたき台」を作る手助けをしてくれる強力なパートナーです。例えば、Tera Termで「ディレクトリ表示」から「ファイル転送」まで、様々な作業をこなす中で、「このコマンドはどういう意味だったかな？」「もっと効率的な方法はないかな？」と疑問に思ったとき、AIに相談すれば、的確な情報やヒントを得られるでしょう。AIを上手に活用することで、Tera Termのポテンシャルを最大限に引き出し、より高度な作業にも自信を持って取り組めるようになります。

【思考の整理】記事のテーマをAIで整理・優先順位付けするコツ

Tera Termの活用範囲は広く、ディレクトリ表示、ファイル転送、コマンド実行、さらにはdiffコマンドや属性変更といった応用的な使い方まで、多岐にわたります。これらの情報を前に、何から覚え、どのように実践していくべきか、迷うこともあるでしょう。ここでAIアシスタントの出番です。AIに「Tera Termの主要な機能とその活用シーンを、初心者向けと中級者向けに分けてリストアップしてほしい」と指示することで、自身のスキルレベルや目的に合わせた学習計画の「たたき台」を得ることができます。

AIは、与えられた情報から論理的な整理や優先順位付けを支援してくれます。「この機能は、まず最初に押さえるべき」「これは応用編として後で学ぶと良い」といった、あなた自身の思考を深めるための視点を提供してくれるのです。このように、AIに「整理の支援」を依頼することで、Tera Termの学習ロードマップを明確にし、効率的なスキルアップにつなげることができます。

【実践の下書き】そのまま使えるプロンプト例（ を使用）

Tera Termで特定のディレクトリ内のファイルを、別のサーバーへ効率的に転送したい場合を想定しましょう。AIに相談することで、適切なコマンドや手順の「下書き」を得ることができます。例えば、SCPコマンドを使ったファイル転送について、具体的な指示をAIに与えてみましょう。これにより、コマンドの構文やオプションについて、すぐに役立つ情報を得られます。

「SCPコマンドを使って、ローカルの '~/documents' ディレクトリにある 'report.txt' ファイルを、リモートサーバー 'user@example.com' の '/home/user/data' ディレクトリに転送するためのコマンドを教えてください。また、ディレクトリごと転送する場合のコマンドも例示してください。」

このプロンプト例のように、具体的なファイル名、ディレクトリ、サーバー情報を明記してAIに指示を出すことで、より的確で実用的なコマンド例を提示してもらえます。AIが生成したコマンドは、そのままコピー＆ペーストするのではなく、必ずご自身の環境に合わせてパスやファイル名などを確認・修正してから実行してください。これにより、予期せぬエラーを防ぎ、安全に作業を進めることができます。

【品質の担保】AIの限界を伝え、人がどう微調整すべきかの知恵

AIは、既存の情報を元に「たたき台」となる回答を生成することに長けていますが、実際のサーバー環境や、その時々の状況を完全に理解しているわけではありません。そのため、AIが提示したコマンドや手順をそのまま適用してしまうと、意図しない結果になったり、セキュリティ上のリスクが生じたりする可能性も否定できません。AIはあくまで「アシスタント」であり、最終的な判断と責任は、あなた自身が負うことを忘れてはなりません。

AIから得られた情報を元に、ご自身の知識や経験、そして何よりも「現在の状況」を照らし合わせながら、慎重に確認・修正を行うことが不可欠です。例えば、AIが提示したファイル転送コマンドにしても、ファイルパーミッションや所有権、ネットワーク帯域幅など、考慮すべき要素は多岐にわたります。AIの出力を鵜呑みにせず、疑問点があればさらに深掘りしたり、他の情報源と照らし合わせたりしながら、ご自身の判断で「微調整」を加えていくことが、Tera Termを安全かつ効果的に活用するための鍵となります。