React状態管理の最新動向とおすすめライブラリ

Reactの状態管理とは？基本を理解しよう

なぜ状態管理が必要なのか？基本的な課題

Reactアプリケーションが成長し複雑化するにつれて、状態管理は開発者にとって避けて通れない課題となります。
Reactの標準機能であるuseStateやuseReducerは便利ですが、これだけでは対応しきれない状況が頻繁に発生します。

特に顕著なのが「Prop Drilling（プロップスの穴掘り作業）」です。これは、コンポーネントツリーの深い階層にある子コンポーネントにデータを渡すため、途中の関係ないコンポーネントを経由して何度もプロップスを渡さなければならない状況を指します。
これにより、コードの可読性や保守性が著しく低下し、状態の変更がどこでどのように行われているのか追跡しづらくなるため、バグの原因にもなりかねません。

さらに、不必要なコンポーネントの再レンダリングが発生し、アプリケーションのパフォーマンスに悪影響を与えることもあります。
状態管理ライブラリは、これらの課題を解決するために、状態を一元的に管理し、コンポーネント間での効率的なデータ共有を可能にする重要なツールなのです。（参考情報より）

最新トレンド：軽量化とアトミック化

2025年現在、Reactの状態管理は新たなトレンドに移行しつつあります。
中でも注目されているのが、軽量・ミニマルなライブラリの人気と、アトミックな状態管理のアプローチです。（参考情報より）

ZustandやJotaiといったライブラリは、その学習コストの低さ、シンプルなAPI、そして高速な動作で開発者から高い評価を得ています。
これらは小〜中規模のアプリケーション開発や、特定の状態管理に特化したい場合に非常に適しています。

また、JotaiやRecoil（ただしRecoilは2025年1月にリポジトリがアーカイブされたとの情報があり、新規採用は減少傾向です）に代表される「アトミックな状態管理」も注目を集めています。
これは状態を「アトム」と呼ばれる独立した小さな単位に分割し、コンポーネントが必要な状態のみを購読することで、不要な再レンダリングを削減し、パフォーマンスを最適化する手法です。（参考情報より）

さらに、React Server Components (RSC) の普及に伴い、サーバーサイドとクライアントサイドの状態管理連携も重要視されており、ライブラリ選定においてはパフォーマンス最適化と持続可能な開発がより重視される傾向にあります。

主要な状態管理ライブラリの比較概観

現在のReactエコシステムには多種多様な状態管理ライブラリが存在し、プロジェクトの特性に合わせて最適な選択をすることが求められます。
以下に、主要なライブラリとその特徴をまとめました。（参考情報より）

• Redux (Redux Toolkit): 長年の実績と安定性が魅力。大規模なアプリケーションや厳格な状態管理が必要な場合に最適ですが、学習コストはやや高めです。Redux Toolkit (RTK) によってボイラープレートコードは大幅に削減されました。
• Zustand: 軽量・高速・スケーラブルが特徴。シンプルなAPIとHooksベースのアプローチで、小〜中規模のアプリケーションやパフォーマンスを重視するプロジェクトにおすすめです。
• Jotai: アトミックな状態管理を採用し、状態をアトムとして扱います。Recoilの上位互換とも言われ、柔軟な状態管理とパフォーマンス最適化を両立させます。
• MobX: リアクティブなアプローチを取り、状態変更を自動追跡してUIを更新します。宣言的で直感的なコードが書けるのが魅力ですが、イミュータブルな更新には注意が必要です。
• Context API: Reactに標準で組み込まれており、外部ライブラリ不要で状態を共有できます。小規模なアプリケーションや限定的な状態共有には有効ですが、大規模化するとパフォーマンス問題やProviderのネストが課題となることがあります。

これらのライブラリ選定は、プロジェクトの規模、チームのスキルセット、そして必要な機能を総合的に考慮して行うことが成功への鍵となります。

Zustandの基本と特徴：シンプルさが魅力

Zustandとは？そのコンセプトとメリット

Zustandは、Reactの状態管理に革命をもたらす軽量、高速、スケーラブルなライブラリです。
その最大の特徴は、驚くほどシンプルなAPIとHooksベースのアプローチにあります。
まるでReactのuseStateをグローバル化したかのように直感的に扱えるため、多くの開発者がその学習コストの低さに魅了されています。（参考情報より）

Zustandは、Fluxアーキテクチャのような複雑な概念を学習することなく、すぐに状態管理を実装できる点が大きなメリットです。
Reduxのように多くのボイラープレートコードを記述する必要がなく、必要な状態を必要な時にシンプルに定義し、コンポーネントから直接アクセスできます。

この「シンプルさ」が、特に小〜中規模のアプリケーション開発においてZustandが選ばれる理由の一つです。
しかし、そのシンプルさにもかかわらず、ミドルウェアによる拡張性も持ち合わせており、大規模なプロジェクトにも十分対応できるポテンシャルを秘めています。

簡単な実装例で見るZustand

Zustandの導入は非常に簡単です。まず、状態を保持するストアを作成します。
ここでは、カウンターアプリを例に見てみましょう。

import { create } from 'zustand';

// ストアの作成
const useCounterStore = create((set) => ({
  count: 0,
  increment: () => set((state) => ({ count: state.count + 1 })),
  decrement: () => set((state) => ({ count: state.count - 1 })),
}));

次に、このストアをReactコンポーネントで利用します。
useCounterStoreフックを使って、必要な状態とアクションを選択的に取り出します。

import React from 'react';
import { useCounterStore } from './store'; // 上記で作成したストア

function CounterApp() {
  const count = useCounterStore((state) => state.count);
  const increment = useCounterStore((state) => state.increment);
  const decrement = useCounterStore((state) => state.decrement);

  return (
    <div>
      <p>Count: {count}</p>
      <button onClick={increment}>Increment</button>
      <button onClick={decrement}>Decrement</button>
    </div>
  );
}

export default CounterApp;

このように、set関数を使って直接状態を更新できるのがZustandの特徴です。
この直接更新は非常に直感的ですが、より複雑なオブジェクトや配列を扱う際には、Immerなどのライブラリと組み合わせてイミュータブルな更新を保証することが推奨されます。（参考情報より）

Zustandが選ばれる理由：パフォーマンスと開発体験

Zustandが多くの開発者から支持される理由は、その優れたパフォーマンスと開発体験にあります。
Zustandは、コンポーネントが購読している状態が変更されたときにのみ再レンダリングをトリガーするように設計されています。

この最適化により、アプリケーション全体の不要な再レンダリングが大幅に削減され、非常にスムーズなユーザー体験を提供できます。
特に、React Context APIだけでは解決が難しい大規模な状態ツリーにおけるパフォーマンス課題に対しても、Zustandは強力なソリューションとなります。

さらに、そのミニマルなAPI設計は、開発者が状態管理の複雑さに煩わされることなく、アプリケーションのビジネスロジックに集中できる環境を提供します。
テストのしやすさやTypeScriptとの高い親和性も、開発体験を向上させる重要な要素です。
これらのメリットにより、Zustandは小〜中規模だけでなく、より大規模なプロジェクトにおいてもパフォーマンスと使いやすさを重視する場合に最適な選択肢として注目されています。（参考情報より）

Jotaiとの比較：Atomicな状態管理の選択肢

Jotaiの「アトム」とは？

Jotaiは、Zustandとは異なるアプローチでReactの状態管理を解決するライブラリです。
その特徴は、状態を「アトム」と呼ばれる独立した小さな単位で管理するアトミックな状態管理にあります。
アトムは、ReactのuseStateが提供するローカルステートのように、それぞれが独立した状態のピースとして機能します。

このアプローチの最大のメリットは、アプリケーション全体の状態を細分化し、それぞれのコンポーネントが必要なアトムのみを購読することで、無駄な再レンダリングを徹底的に削減できる点です。
たとえば、特定のアトムの値だけが変更された場合、そのアトムを購読しているコンポーネントだけが再レンダリングされ、他のコンポーネントは影響を受けません。

Jotaiは、Facebook（現Meta）が開発したRecoilにインスパイアされており、しばしばRecoilの「上位互換」とも評されます。（参考情報より）
Recoilがアーカイブされた現在、アトミックな状態管理を求める開発者にとって、Jotaiは有力な選択肢となっています。

ZustandとJotai、それぞれの使い分け

ZustandとJotaiはどちらも軽量で高性能な状態管理ライブラリですが、その設計思想と使いどころには明確な違いがあります。
Zustandは、単一のグローバルストアにアプリケーションの状態を集約し、useStoreフックを使って必要な状態を選択的に取り出すアプローチを取ります。

これは、特定のドメインや機能に関連する状態をまとめて管理したい場合に非常に有効です。
一方、Jotaiは、状態を個々のアトムに分解し、それぞれのコンポーネントが直接必要なアトムを「消費」する分散管理のアプローチを採用します。

この違いから、以下のような使い分けが考えられます。

• Zustand: グローバルな設定、ユーザー情報、テーマ設定など、アプリケーション全体で共有される一般的な状態や、関連性の高い複数の状態をまとめて管理するのに適しています。シンプルで直感的なため、状態管理の全体像を把握しやすいです。
• Jotai: 特定のUIコンポーネントの内部状態、フォーム入力の値、詳細なフィルタリングオプションなど、より細粒度で局所的な状態管理に強みを発揮します。useStateの代替として、コンポーネントのロジックから状態を分離したい場合にも有効です。

プロジェクトの規模やチームの好み、状態管理に対する要件によって最適なライブラリは異なりますが、どちらも優れた開発体験を提供してくれます。

アトミックな状態管理のメリットと注意点

Jotaiが採用するアトミックな状態管理には、いくつかの強力なメリットがあります。
まず、パフォーマンスの最適化です。状態の変更が最小限の範囲に限定されるため、不要な再レンダリングを削減し、アプリケーションの応答性を高めます。

次に、高い柔軟性です。状態が独立したアトムとして存在するため、コンポーネントの再利用性が向上し、アプリケーションの異なる部分で同じアトムを共有したり、独自のアトムを派生させたりすることが容易になります。
これにより、より宣言的で再利用可能なコードの記述が可能になります。

しかし、注意点も存在します。
アトムが細かく分散しているため、アプリケーション全体の状態の全体像を把握するのが難しくなる可能性があります。
特に大規模なプロジェクトでは、アトム間の依存関係が複雑になり、予期せぬ挙動を引き起こすリスクも考慮する必要があります。（参考情報より）

このため、Jotaiを導入する際には、アトムの適切な命名規則や構成を検討し、ドキュメント化を怠らないことが重要です。
アトミックな状態管理は強力なツールですが、その特性を理解した上で活用することが求められます。

Zustandの応用：PersistやImmer、Axiosとの連携

Persistミドルウェアで状態を永続化

Zustandは、コアライブラリ自体がミニマルである一方で、強力なミドルウェアを通じてその機能を拡張できます。
その中でも特に便利なのがpersistミドルウェアです。
このミドルウェアを使うと、Zustandストアの状態をローカルストレージやセッションストレージなどのクライアント側のストレージに自動的に永続化し、アプリケーションのリロード後も状態を維持することができます。

例えば、ユーザーの認証情報、カートの中身、UIテーマ設定、ユーザーごとのパーソナライズされた設定など、セッションをまたいで保持したい状態にはpersistが非常に有効です。
実装も非常にシンプルで、create関数をpersistでラップするだけで実現できます。

import { create } from 'zustand';
import { persist } from 'zustand/middleware';

const useAuthStore = create(
  persist(
    (set) => ({
      token: null,
      user: null,
      login: (token, user) => set({ token, user }),
      logout: () => set({ token: null, user: null }),
    }),
    {
      name: 'auth-storage', // ストレージに保存されるキー名
    }
  )
);

このように、最小限のコードで強力な永続化機能を手に入れることができ、ユーザー体験の向上に大きく貢献します。

Immerとの連携でイミュータブルな状態更新

Zustandは、set関数を通じて状態を直接変更できるため、非常に直感的に扱えます。
しかし、JavaScriptのオブジェクトや配列を扱う際、意図しないミューテーション（破壊的変更）が発生するリスクがあります。
Reactの世界では、状態はイミュータブル（不変）に扱うことが推奨されており、これにより予期せぬバグを防ぎ、デバッグを容易にします。

そこでZustandとImmerを組み合わせることで、この課題を解決できます。
Immerは、ミュータブルな書き方でイミュータブルな更新を可能にするライブラリです。
ZustandにはImmerを統合するためのミドルウェアも提供されており、これにより大規模なオブジェクトや配列の状態更新がより安全かつ簡潔になります。（参考情報より）

import { create } from 'zustand';
import { immer } from 'zustand/middleware/immer';

const useComplexStore = create(
  immer((set) => ({
    todos: [
      { id: 1, text: 'Learn Zustand', completed: false },
      { id: 2, text: 'Integrate Immer', completed: false },
    ],
    toggleTodo: (id) =>
      set((state) => {
        const todo = state.todos.find((t) => t.id === id);
        if (todo) {
          todo.completed = !todo.completed; // Immerのおかげで直接変更しても大丈夫
        }
      }),
  }))
);

この連携により、開発者はイミュータブルな原則を守りつつ、直感的なコードで状態を更新できるようになります。

Axiosを使った非同期処理との連携パターン

Reactアプリケーションでは、APIからのデータ取得といった非同期処理が頻繁に発生します。
Zustandストア内でこれらの非同期処理を管理することも、非常に簡単に行えます。
ここでは、一般的なHTTPクライアントであるAxiosを使ったデータフェッチの連携パターンを見てみましょう。

Zustandストアに、データ、ローディング状態、エラー情報を保持し、APIリクエストをトリガーするアクションを定義します。
これにより、APIの状態を一元的に管理し、複数のコンポーネントで共有できるようになります。

import { create } from 'zustand';
import axios from 'axios';

const useFetchStore = create((set) => ({
  data: null,
  loading: false,
  error: null,
  fetchPosts: async () => {
    set({ loading: true, error: null });
    try {
      const response = await axios.get('https://jsonplaceholder.typicode.com/posts');
      set({ data: response.data, loading: false });
    } catch (error) {
      set({ error: 'Failed to fetch posts', loading: false });
    }
  },
}));

コンポーネントではfetchPostsアクションを呼び出すだけで、データの取得からローディング状態の更新、エラーハンドリングまでを一貫してZustandストアが管理してくれます。
これにより、コンポーネントはUIの描画に集中でき、よりクリーンなコードベースを維持することが可能になります。

ZustandのGitHubとSubscribe機能：開発を加速

GitHubリポジトリから学ぶZustandの進化

オープンソースプロジェクトであるZustandは、GitHub上で活発に開発が進められています。
そのGitHubリポジトリ（daisy/zustand）は、ライブラリの最新情報、将来のロードマップ、そして何よりもコミュニティの活発さを知るための貴重な情報源です。

issueトラックでは、他の開発者が直面している課題や、提案されている新機能について議論が交わされており、そこからZustandのベストプラクティスや潜在的な利用シナリオを学ぶことができます。
また、Pull Request (PR) を追うことで、ライブラリがどのように改善され、進化しているかをリアルタイムで把握することが可能です。

活発なGitHubリポジトリは、そのライブラリがメンテナンスされ続けている証拠であり、長期的なプロジェクトでの採用を検討する上で非常に重要な信頼の指標となります。
公式ドキュメントと合わせて、GitHubリポジトリを定期的にチェックすることで、Zustandをより深く理解し、その恩恵を最大限に享受できるでしょう。

subscribe機能で状態の変化を監視

Zustandのストアは、コンポーネント内からuseStoreフックを使って状態を購読するだけでなく、subscribeメソッドを使ってコンポーネント外から状態の変化を監視することも可能です。
この機能は、特定の状態変更に基づいてサイドエフェクトを実行したい場合や、デバッグ目的で状態のログを取りたい場合に非常に便利です。

例えば、認証トークンが変更されたらローカルストレージに保存する、あるいは、ある条件が満たされたら別の外部サービスに通知するといったシナリオで活用できます。
subscribeメソッドは、状態の変更があった際にコールバック関数を実行し、現在の状態と以前の状態を引数として受け取ります。

import { useAuthStore } from './authStore'; // 認証ストアの例

const unsubscribe = useAuthStore.subscribe(
  (state, prevState) => {
    console.log('認証状態が変更されました:', { current: state.token, previous: prevState.token });
    if (state.token !== prevState.token && state.token !== null) {
      localStorage.setItem('jwtToken', state.token);
    }
  },
  // 比較関数を渡して、特定の状態の変化のみを購読することも可能
  (state) => state.token
);

// 不要になったら購読を解除
// unsubscribe();

この機能は、Zustandストアが単なるデータコンテナではなく、アプリケーション全体のイベントバスのような役割も果たせることを示しています。

開発を加速させるZustandの多様な機能とエコシステム

Zustandが提供する多様なミドルウェア（persist、immer、devtoolsなど）は、開発者が直面する様々な課題に対して、すぐに利用できる強力なソリューションを提供します。
例えば、devtoolsミドルウェアを導入すれば、Redux DevToolsのようなツールを使ってストアの状態変化を視覚的に追跡・デバッグでき、開発効率を大幅に向上させます。

Zustandはまた、Reactのテストライブラリとの統合もスムーズであり、ユニットテストや統合テストを容易に記述できます。
これにより、コードの品質と信頼性を高め、長期的な保守を容易にします。
TypeScriptとの親和性も高く、型安全な状態管理を少ない記述で実現できるため、大規模なチーム開発においてもその恩恵は計り知れません。

さらに、Zustandはサーバー状態管理ライブラリ（React QueryやSWRなど）とも非常に相性が良く、これらを組み合わせることで、クライアント状態とサーバー状態の両方を効率的に管理する強力なアーキテクチャを構築できます。（参考情報より）
シンプルでありながらパワフルなZustandのエコシステムは、React開発を確実に加速させるでしょう。

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