React Routerとは?基本概念を理解しよう

React Routerの役割とSPAにおける重要性

React Routerは、Reactアプリケーションにおいて「ルーティング」、すなわち画面遷移を管理するための強力なライブラリです。今日のウェブアプリケーションの主流となっているシングルページアプリケーション(SPA)では、ページ全体を再読み込みすることなく、動的にコンテンツを切り替えることが求められます。React Routerは、このSPAの構築を劇的に容易にし、ユーザーがブラウザのアドレスバーに入力するURLと、実際に表示されているアプリケーションのコンポーネント(ページ)の状態をシームレスに同期させる役割を担います。

従来のウェブサイトでは、異なるページに移動するたびにサーバーにリクエストを送り、新しいHTMLファイルを読み込んでいました。しかしSPAでは、初期ロード時に必要なリソースをすべて読み込み、その後の画面遷移はJavaScriptによってDOMを操作することで行われます。この時、ブラウザのURLもそれに合わせて変更されなければ、ブックマーク機能や履歴機能が正しく動作しません。React Routerは、まさにこの「URLとコンポーネントの対応付け」と「URLの変更に応じたコンポーネントの描画」を抽象化し、開発者が宣言的にルーティングを記述できるようにします。これにより、ユーザーはスムーズな操作感を享受し、開発者は複雑な状態管理から解放されるのです。

特に、ユーザーがページをリロードしたり、直接URLを叩いた場合でも、そのURLに対応する適切なコンポーネントが表示されるように設定できる点が重要です。これは、よりリッチなユーザー体験と、検索エンジン最適化(SEO)の観点からもメリットがあります。

コア機能と主要コンポーネントの紹介

React Routerには、ルーティングを実装するために欠かせないいくつかの主要なコンポーネントとフックがあります。これらを理解することが、React Routerを使いこなす第一歩となります。

  • BrowserRouter: アプリケーション全体をラップし、HTML5 History APIを使ってURLを管理する基盤となるコンポーネントです。これにより、URLの変更がアプリケーションの状態に反映されるようになります。
  • Routes: 定義された複数のRouteコンポーネントの中から、現在のURLに合致するものを一つだけ選択してレンダリングする役割を担います。Routesコンポーネントが登場したv6以降では、Routeの順序に依存しない柔軟なルーティング定義が可能になりました。
  • Route: 特定のパス(URL)と、そのパスが一致したときに表示するコンポーネントを紐付けるために使用されます。pathプロパティでURLパターンを、elementプロパティでレンダリングするReactコンポーネントを指定します。
  • Link: HTMLの<a>タグに相当しますが、ページ全体を再読み込みすることなく、SPA内で別のパスにナビゲートするためのコンポーネントです。toプロパティに行き先のパスを指定します。
  • useNavigateフック: プログラム的に画面遷移を行いたい場合に使用するフックです。ボタンクリック時のリダイレクトや、フォーム送信後のページ遷移など、ユーザーのアクションに応じて動的にルーティングを変更する際に利用します。(出典: 参考情報)
  • Navigateコンポーネント: 宣言的にリダイレクトを行うためのコンポーネントです。特定の条件が満たされた場合に別のパスへ遷移させたい場合などに使用します。以前のバージョンにおけるRedirectコンポーネントの代替となります。(出典: 参考情報)

これらのコンポーネントやフックを組み合わせることで、複雑なルーティングロジックを簡潔かつ宣言的に記述することが可能になり、アプリケーションの構造を明確に保つことができます。

なぜReact Routerを選ぶのか:他の選択肢との比較

Reactでルーティングを実装する際、React Routerは事実上の標準ライブラリとして広く採用されています。しかし、ルーティングの選択肢はこれだけではありません。なぜ多くの開発者がReact Routerを選ぶのか、その理由と他の選択肢との比較を見てみましょう。

まず、React Routerを選ぶ最大の理由は、その豊富な機能と広範なコミュニティサポートにあります。複雑なネストされたルーティング、動的なルートパラメータ、プログラムによるナビゲーション、認証フローとの統合など、エンタープライズレベルのアプリケーションで必要とされるほとんどすべてのルーティング要件に対応できます。また、多くのドキュメント、チュートリアル、そしてQ&Aがインターネット上に存在するため、問題に直面した際の解決策を見つけやすいのも大きなメリットです。

代替案としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 手動でのルーティング実装: window.location.pathnameを監視し、条件分岐でコンポーネントを切り替える方法です。小規模なアプリケーションや、非常にシンプルな要件であれば実装可能ですが、履歴管理、URLパラメータの解析、ネストされたルートなど、複雑な機能を追加する際に多くの手間がかかり、バグの温床となりやすいです。
  • 他のルーティングライブラリ: 例えば、歴史のあるReach Routerなどがありますが、React Router v5以降で多くの機能が統合され、現在はReact Routerが主流となっています。
  • フレームワーク組み込みのルーティング機能: Next.jsやRemixなどのフレームワークを使用する場合、それぞれのフレームワークが提供するルーティング機能(ファイルシステムベースルーティングなど)が推奨されます。これらはReact Routerとは異なる思想で設計されており、より高いパフォーマンスや開発体験を提供しますが、React Routerは純粋なSPAのルーティングに特化しています。

結論として、汎用性と柔軟性、そして安定性を求めるのであれば、React Routerは強力な選択肢であり続けるでしょう。

React Router DOMの導入と基本的な使い方

インストールと初期設定

Reactアプリケーションにルーティング機能を追加するためには、まずreact-router-domパッケージをプロジェクトにインストールする必要があります。このパッケージは、ウェブブラウザ環境での利用に特化しており、DOM操作に関連する機能を提供します。

インストールは、以下のnpmまたはyarnコマンドで行います。

npm install react-router-dom
# または
yarn add react-router-dom

インストールが完了したら、アプリケーションのルートコンポーネント(通常はApp.jsまたはindex.js)でBrowserRouterをインポートし、アプリケーション全体をこのコンポーネントでラップします。これは、React RouterがURLの変更を検知し、適切なコンポーネントをレンダリングするために必要不可欠な初期設定です。

import React from 'react';
import ReactDOM from 'react-dom/client';
import { BrowserRouter } from 'react-router-dom';
import App from './App';

const root = ReactDOM.createRoot(document.getElementById('root'));
root.render(
  <React.StrictMode>
    <BrowserRouter>
      <App />
    </BrowserRouter>
  </React.StrictMode>
);

BrowserRouterでラップすることで、アプリケーションのコンポーネントツリー全体でルーティングコンテキストが利用可能になります。これにより、子コンポーネント内でLinkRouteuseNavigateなどのReact Routerの機能が使えるようになります。この設定は一度行えば、それ以降はルーティングの定義に集中できます。

RoutesとRouteコンポーネントによるルーティング定義

React Routerにおけるルーティングの核心は、RoutesRouteコンポーネントにあります。これらを使って、どのURLパスがどのReactコンポーネントに対応するかを宣言的に定義します。

まず、Routesコンポーネントは、その中に記述された複数のRouteコンポーネントの中から、現在のURLに最も適したものを一つだけレンダリングします。これは、以前のバージョン(v5以前)のSwitchコンポーネントに相当しますが、v6以降ではRoutesに置き換えられ、より直感的なパス設定と、ルートの順序依存性の解消が実現されました。(出典: 参考情報)

Routeコンポーネントは、具体的なURLパスと、そのパスが一致したときに表示するコンポーネントを結びつけます。主要なプロパティは以下の通りです。

  • path: URLのパスを指定します。例えば、"/"はルートパス、"/about"は「/about」パスを意味します。動的な値を受け取る場合は、"/users/:id"のようにコロン(:)を使ってパラメータを定義できます。
  • element: pathプロパティで指定されたURLに一致したときにレンダリングするReactコンポーネントをJSX形式で指定します。

さらに、React Router v6以降では、ネストされたルーティングの概念が強化されました。親ルートのelement内で子ルートを定義することで、共通のレイアウトを持ちながら、URLに応じて異なるコンテンツを表示するような構造を簡単に構築できます。これは、アプリケーションのUIが階層構造を持つ場合に非常に有効です。

<Routes>
  <Route path="/" element={<Layout />}> // 親ルート(共通レイアウトなど)
    <Route index element={<Home />} /> // / にアクセスした場合
    <Route path="about" element={<About />} /> // /about にアクセスした場合
    <Route path="dashboard" element={<Dashboard />} /> // /dashboard にアクセスした場合
    <Route path="*" element={<NotFound />} /> // マッチしないすべてのパス
  </Route>
</Routes>

上記のように、<Layout />コンポーネント内で<Outlet />コンポーネントを使用することで、子ルートの要素を親レイアウトの中にレンダリングできます。

簡単なルーティング例と動作確認

それでは、具体的なコード例を通して、React Routerの基本的な使い方を確認しましょう。ここでは、ホームページとアバウトページを持つシンプルなアプリケーションを構築します。

import { BrowserRouter, Routes, Route, Link } from 'react-router-dom';

function App() {
  return (
    <BrowserRouter>
      <nav style={{ padding: '10px', borderBottom: '1px solid #ccc' }}>
        <Link to="/" style={{ marginRight: '15px', textDecoration: 'none', color: 'blue' }}>Home</Link>
        <Link to="/about" style={{ textDecoration: 'none', color: 'blue' }}>About</Link>
      </nav>
      <div style={{ padding: '20px' }}>
        <Routes>
          <Route path="/" element={<Home />} />
          <Route path="/about" element={<About />} />
          <Route path="*" element={<NotFound />} /> {/* どのパスにもマッチしない場合 */}
        </Routes>
      </div>
    </BrowserRouter>
  );
}

function Home() {
  return (
    <div>
      <h1>Home Page</h1>
      <p>これはホームページです。React Routerの基本を確認しています。</p>
    </div>
  );
}

function About() {
  return (
    <div>
      <h1>About Page</h1>
      <p>このページでは、アプリケーションの概要について説明します。</p>
    </div>
  );
}

function NotFound() {
  return (
    <div>
      <h1>404 Not Found</h1>
      <p>お探しのページは見つかりませんでした。</p>
    </div>
  );
}

export default App;

上記の例では、AppコンポーネントがBrowserRouterでラップされています。ナビゲーションリンクはLinkコンポーネントを使用して作成されており、toプロパティで遷移先のパスを指定します。Routesコンポーネントの中では、Routeコンポーネントを使って、それぞれのパス(//about)に対応するHomeAboutコンポーネントを定義しています。

ブラウザでこのアプリケーションを実行すると、以下の動作を確認できます。

  • ブラウザのアドレスバーに/と入力すると「Home Page」が表示される。
  • 「About」リンクをクリックすると、URLが/aboutに変わり「About Page」が表示される。
  • ブラウザの戻る/進むボタンが正常に機能し、URLと表示ページが同期する。
  • 定義されていないパス(例: /hoge)にアクセスすると「404 Not Found」ページが表示される(これはpath="*"でキャッチしています)。

このように、ごくわずかなコードで、本格的なSPAのルーティング機能を実装できるのがReact Routerの大きな魅力です。

React Router v7の注目ポイントと移行

v6からv7への変更点と非破壊的アップデートのメリット

React Routerは活発に開発されており、最新バージョンは2024年12月現在、v7.10.1がリリースされています。(出典: 参考情報)
特にv5からv6への移行は大きな変更がありましたが、v6からv7へのアップグレードは、開発者にとって非常に喜ばしい特性を持っています。それは「非破壊的アップデート」であるという点です。

非破壊的アップデートとは、既存のコードベースに大きな変更を加えることなく、新しいバージョンへ移行できることを意味します。つまり、v6で記述したコードは、v7でも引き続き同じように利用できるというわけです。これは、大規模なアプリケーションを運用している開発チームにとって、移行コストを大幅に削減できる大きなメリットとなります。

従来のメジャーバージョンアップでは、APIの変更や廃止によって既存コードを書き直す必要があり、これが開発者の負担となっていました。v7では、v6の最新バージョンにアップデートし、将来的なフラグを有効にすることで、段階的にv7の機能を取り入れることが推奨されています。(出典: 参考情報)
これにより、新しい機能を試しながら、プロジェクトの準備ができた段階で完全にv7へ移行するという柔軟なアプローチが可能になります。このような配慮は、ライブラリの持続可能性とコミュニティへの配慮を示すものであり、React Routerの安定したエコシステムを構築する上で非常に重要です。

この非破壊的アップデートにより、開発者は安心して最新の機能やパフォーマンス改善を取り入れつつ、同時に既存の安定したアプリケーションの運用を続けることができるのです。

React 18/19への対応と新機能の活用

React Router v7のもう一つの重要な注目ポイントは、Reactの最新バージョンであるReact 18およびReact 19へのスムーズな移行をサポートしている点です。React 18以降では、Suspense、Transitionといった新しい並行レンダリング機能が導入され、ユーザー体験とアプリケーションのパフォーマンスが大きく向上しました。v7はこれらのモダンなReactの機能との連携を強化しています。

具体的には、新しいバンドル、サーバーレンダリング(SSR)、プリレンダリング、そしてストリーミング機能への対応が含まれます。(出典: 参考情報)
これらの機能は、特に大規模なアプリケーションやパフォーマンスが重視される場面で非常に有効です。

  • サーバーレンダリング (SSR): クライアント側だけでなく、サーバー側で初期のHTMLを生成することで、ページの初回表示速度を向上させ、SEOにも貢献します。React Router v7は、このSSR環境でのルーティングをより効率的に処理できるよう設計されています。
  • プリレンダリング: ビルド時に静的なHTMLファイルを生成することで、さらに高速なコンテンツ提供を可能にします。React Router v7は、このような静的サイト生成 (SSG) のユースケースにも対応しやすい構造を提供します。
  • ストリーミング機能: サーバーレンダリングにおいて、HTMLを段階的にクライアントに送信し、準備ができた部分から表示していく技術です。これにより、ユーザーはページ全体がロードされるのを待つことなく、インタラクションを開始できます。v7は、このストリーミングによるサーバーコンポーネントのレンダリングをサポートし、よりリッチなユーザー体験を実現します。

これらの機能の活用により、開発者はより現代的で高性能なWebアプリケーションを構築するための基盤をReact Router v7と共に手に入れることができます。

型安全性とData APIによる開発体験の向上

React Router v7は、開発体験の向上にも注力しており、特に型安全性とData APIの強化が大きな特徴です。(出典: 参考情報)
TypeScriptを使用する開発者にとって、これらの改善はコードの信頼性と保守性を大幅に高めることに貢献します。

まず、型安全性についてです。v7では、ルートパラメータ、ローダーデータ、アクションなどに対して、より強力な型安全性が提供されます。これにより、開発者は型推論の恩恵を受けながら、ルーティングに関連するデータが期待通りの型であることをTypeScriptが保証してくれるため、実行時エラーのリスクを低減できます。例えば、ルートパラメータとして期待される型が文字列なのに数値が渡されるといった潜在的なバグを、コンパイル時に検出できるようになります。これは、大規模なチーム開発において、コードの一貫性を保ち、デバッグ時間を短縮する上で非常に価値があります。

次に、Data APIの強化です。これは、データ取得や操作のためのAPIが強化されており、Remixのようなフレームワークの思想が取り込まれています。(出典: 参考情報)
Remixは、ルーティングとデータ処理を密接に連携させることで、サーバーとクライアント間のデータフローを簡素化し、開発者がより宣言的にデータ処理を記述できるようにするフレームワークです。React Router v7は、このデータ中心のアプローチをライブラリレベルで提供し、特定のルートがレンダリングされる前にデータをロードしたり、フォーム送信時にデータを処理したりといった一般的なパターンを、より効率的に記述できるようになります。

具体的には、loaderactionといった機能が導入され、コンポーネントがマウントされる前に必要なデータを取得したり、フォーム送信後にサーバーアクションを実行したりすることが、ルーティング定義の中で可能になります。これにより、データフェッチロジックがコンポーネントから分離され、よりクリーンで再利用可能なコードベースを構築できます。これらの機能は、特にデータ駆動型のアプリケーションにおいて、開発者の生産性を大きく向上させるでしょう。

React Router LinkとNavigateによる画面遷移

Linkコンポーネントによる宣言的ナビゲーション

ウェブアプリケーションにおける画面遷移の最も基本的な方法は、ユーザーがリンクをクリックすることです。React Routerでは、この目的のために<Link>コンポーネントを提供しています。これはHTMLの<a>タグに似ていますが、大きな違いがあります。通常の<a>タグがクリックされると、ブラウザはページ全体を再読み込みしようとしますが、<Link>はJavaScriptを使ってDOMの一部だけを更新し、ページ全体の再読み込みを防ぎます。これにより、SPA特有のスムーズな画面遷移と高速なユーザー体験が実現されます。

Linkコンポーネントは、toプロパティを使って遷移先のパスを指定します。

<Link to="/products">製品一覧へ</Link>
<Link to="/contact">お問い合わせ</Link>

toプロパティには、文字列だけでなく、オブジェクトを渡して、遷移先のpathname、search(クエリパラメータ)、hash、state(コンポーネント間で渡したい状態)などを詳細に指定することも可能です。

<Link to={{
  pathname: "/dashboard",
  search: "?sort=name",
  hash: "#settings",
  state: { fromDashboard: true }
}}>
  ダッシュボードへ
</Link>

さらに、React Routerには<NavLink>という特別なリンクコンポーネントも存在します。これはLinkとほぼ同じ機能を提供しますが、現在のURLがリンク先のURLと一致する場合に、自動的にアクティブなスタイルを適用できる点が異なります。これは、ナビゲーションメニューで現在表示しているページをハイライト表示する際などに非常に便利です。activeClassNameactiveStyleといったプロパティ(v5以前)や、v6からはclassNamestyleプロパティに関数を渡すことで、より柔軟なアクティブ状態の表現が可能になりました。

宣言的にリンクを記述することで、コードはより読みやすく、意図が明確になります。

useNavigateフックとNavigateコンポーネントによるプログラム的遷移

ユーザーがリンクをクリックするだけでなく、特定のイベントやロジックに基づいてプログラム的に画面遷移を行いたい場合があります。例えば、フォーム送信後に成功ページへリダイレクトしたり、認証失敗時にログインページに戻したりする場合などです。React Routerでは、この目的のためにuseNavigateフック<Navigate>コンポーネントが提供されています。

useNavigateフックは、Reactコンポーネント内でプログラム的にナビゲーションを行うための主要なツールです。これはReact Router v6で導入され、v5以前のuseHistoryフックに代わるものです。(出典: 参考情報)
コンポーネントの内部でuseNavigate()を呼び出すと、ナビゲーション関数が返されます。この関数を引数に遷移先のパス(またはパスオブジェクト)を渡すことで、任意のタイミングで画面遷移を実行できます。

import { useNavigate } from 'react-router-dom';

function LoginForm() {
  const navigate = useNavigate();

  const handleSubmit = (event) => {
    event.preventDefault();
    // ログイン処理...
    const loginSuccessful = true; // 仮の成功フラグ

    if (loginSuccessful) {
      navigate('/dashboard'); // ログイン成功後、ダッシュボードへ遷移
    } else {
      alert('ログインに失敗しました。');
    }
  };

  return (
    <form onSubmit={handleSubmit}>
      <input type="text" placeholder="ユーザー名" />
      <button type="submit">ログイン</button>
    </form>
  );
}

<Navigate>コンポーネントは、条件に基づいて宣言的にリダイレクトを行いたい場合に便利です。これはv5以前の<Redirect>コンポーネントに相当します。(出典: 参考情報)
例えば、ユーザーがログインしていない場合に特定のページへのアクセスを拒否し、ログインページへ強制的にリダイレクトするなどのシナリオで利用できます。

import { Navigate } from 'react-router-dom';

function ProtectedRoute({ children }) {
  const isAuthenticated = false; // 仮の認証状態

  if (!isAuthenticated) {
    // 認証されていない場合はログインページへリダイレクト
    return <Navigate to="/login" replace />;
  }
  return children;
}

// Routes内で使用:
// <Route path="/profile" element={<ProtectedRoute><Profile /></ProtectedRoute>} />

replaceプロパティを<Navigate>に設定すると、現在のエントリを履歴スタックから置き換え、ブラウザの「戻る」ボタンでリダイレクト前のページに戻れなくなります。これらの機能により、アプリケーションのフロー制御を柔軟に、かつ堅牢に実装することができます。

相対パスの利用とナビゲーションの柔軟性

React Router v6以降の大きな改善点の一つに、LinkRouteコンポーネントでの相対パスのサポートがあります。(出典: 参考情報)
これにより、ルーティングの定義やナビゲーションの記述がより柔軟になり、特にネストされたルーティングにおいてコードの保守性が向上しました。

以前のバージョンでは、すべてのパスをルート(/)からの絶対パスで記述する必要がありましたが、相対パスが利用できるようになったことで、親ルートからの相対的な位置でパスを指定できるようになりました。これにより、親ルートのURLが変更されても、その子孫コンポーネント内のリンクやルート定義を修正する必要がなくなるため、ルーティングの修正が容易になります。

例えば、以下のようなネストされたルーティング構造があるとします。

<Routes>
  <Route path="/users/:userId" element={<UserProfile />}>
    <Route path="posts" element={<UserPosts />} />
    <Route path="settings" element={<UserSettings />} />
  </Route>
</Routes>

UserProfileコンポーネント内で、現在表示しているユーザーの投稿ページへリンクしたい場合、v5以前では/users/:userId/postsのようにフルパスを指定する必要がありました。しかし、v6以降では相対パスが使えるため、以下のように簡潔に記述できます。

// UserProfileコンポーネント内
import { Link, useParams } from 'react-router-dom';

function UserProfile() {
  const { userId } = useParams();

  return (
    <div>
      <h2>ユーザープロフィール: {userId}</h2>
      <nav>
        <Link to="posts">投稿</Link> {/* 相対パス: /users/:userId/posts へ遷移 */}
        <Link to="settings">設定</Link> {/* 相対パス: /users/:userId/settings へ遷移 */}
        <Link to="..">ユーザー一覧へ戻る</Link> {/* 親ルートへ戻る */}
      </nav>
      {/* ... <Outlet /> で子ルートのコンテンツを表示 */}
    </div>
  );
}

to="posts"のように記述することで、現在のURL(例: /users/123)を基準として/postsが追加されたパス(/users/123/posts)へ遷移します。また、to=".."とすることで、現在のルートの親ルートに移動できます。これは、ファイルシステムでのディレクトリ移動と似た感覚で、非常に直感的です。

この相対パスのサポートにより、コンポーネントの再利用性が高まり、アプリケーションの構造が変更された場合でも、影響範囲を最小限に抑えることができるため、大規模なアプリケーション開発において大きなメリットをもたらします。

React Routerを使わない選択肢と代替案

なぜReact Routerが不要なケースがあるのか

React RouterはReactアプリケーションのルーティングにおいて非常に強力で広く使われているライブラリですが、すべてのReactプロジェクトで必須というわけではありません。特定の状況下では、React Routerを使わない方が適切である、あるいは他の代替手段の方が適している場合があります。

まず、アプリケーションの規模が非常に小さい場合です。もしアプリケーションが単一の画面しか持たない、あるいはごく少数の固定的なコンポーネントの切り替えだけで事足りるような場合、React Routerを導入すること自体がオーバーヘッドとなる可能性があります。複雑なルーティング機能が必要ないのにライブラリを追加すると、バンドルサイズが増加し、学習コストも発生します。このようなケースでは、シンプルなJavaScriptの条件分岐や、コンポーネントのstate管理だけで画面表示を切り替える方が、より軽量で効率的な実装となるでしょう。

次に、特定のフレームワークを使用している場合です。例えば、Next.jsやRemixといったReactベースのフレームワークは、それぞれ独自のルーティングシステムを内蔵しています。これらのフレームワークのルーティングは、ファイルシステムベースのルーティングを採用しており、ディレクトリ構造がそのままURLパスに対応するため、非常に直感的で強力です。Next.jsはReact Routerとは全く異なるルーティングの思想を持っており、両者を併用することは通常ありません。これらのフレームワークを使用する場合は、フレームワークが提供するルーティング機能を活用するのが最善の選択となります。

また、バックエンドフレームワークが提供するサーバーサイドレンダリング(SSR)機能と密接に連携させたい場合や、特定のSEO要件が厳しく、クライアントサイドルーティングが不向きな場合なども、React Routerを導入しない選択肢を検討する理由となり得ます。

Next.jsやRemixのルーティング機能

React RouterがSPAのクライアントサイドルーティングの標準である一方で、Next.jsやRemixのようなモダンなReactフレームワークは、より統合された開発体験を提供するために独自のルーティング機能を組み込んでいます。これらのフレームワークのルーティングは、React Routerとは異なるアプローチを取り、特にサーバーサイドレンダリングや静的サイト生成といった機能との連携に優れています。

Next.jsのルーティング: Next.jsは「ファイルシステムベースルーティング」を採用しています。これは、プロジェクトのpagesディレクトリ(またはApp Routerの場合はappディレクトリ)内のファイルやフォルダ構造が、そのままアプリケーションのURLパスになるというものです。例えば、pages/about.jsというファイルを作成すれば、自動的に/aboutというURLでアクセスできるようになります。動的なルートも、pages/posts/[id].jsのようにファイル名にブラケット([])を使用することで簡単に定義できます。Next.jsは、クライアントサイドでのナビゲーションのために<Link>コンポーネントも提供していますが、その裏側ではReact Routerとは異なる仕組みが動作しています。Next.jsのルーティングは、データフェッチ、SSR、SSGなどの機能と密接に連携しており、高いパフォーマンスと開発効率を実現します。

Remixのルーティング: Remixも同様にファイルシステムベースのルーティングを採用していますが、Next.jsとは異なる哲学に基づいています。RemixはWeb標準を重視し、Webの基本的な機能(フォーム、HTTPキャッシュなど)を最大限に活用することを推奨しています。Remixのルーティングは、ネストされたルーティング、データローダー(loader関数)、アクション(action関数)をサポートしており、ルーティングとデータフェッチ・データミューテーションを非常に密接に結合しています。これにより、クライアントサイドでのJavaScriptバンドルサイズを最小限に抑えつつ、堅牢で高性能なアプリケーションを構築できます。React Router v7のData APIは、Remixのルーティング思想からインスピレーションを受けていることが明言されています。(出典: 参考情報)

これらのフレームワークは、SPAの体験とSSRのメリットを両立させる「ユニバーサルアプリケーション」の構築に特化しており、React Routerがカバーする範囲を超えたソリューションを提供します。

カスタムルーティングの実装:メリットとデメリット

非常に稀なケースではありますが、React Routerのようなライブラリを使用せず、独自のカスタムルーティングを実装するという選択肢も理論的には存在します。これは、ブラウザのHistory API(pushState, replaceState, popstateイベント)とwindow.location.pathnameを直接操作・監視することで実現できます。

メリット:

  • 完全な制御: ライブラリの抽象化レイヤーを介さないため、ルーティングのあらゆる側面を細かく制御できます。特定のニッチな要件や、極めて特殊な動作が必要な場合に有利です。
  • 最小限のバンドルサイズ: 外部ライブラリに依存しないため、アプリケーションのバンドルサイズを最小限に抑えることができます。これは、パフォーマンスが極めて重要な小規模なアプリケーションで検討されるかもしれません。
  • 学習コストの低減(理論上): 既存のライブラリのAPIを学ぶ代わりに、Web標準のHistory APIを直接学ぶことになります。しかし、これは諸刃の剣です。

デメリット:

  • 実装の複雑性: ルートの解析、URLパラメータの抽出、ネストされたルーティング、履歴の管理、リダイレクト、404エラーページの処理など、ルーティングには多くの複雑な側面があります。これらすべてをゼロから実装するのは非常に手間がかかり、多くのバグを生む可能性が高いです。
  • 保守コストの増大: カスタム実装は、時間の経過とともにアプリケーションの要件が変化するにつれて、メンテナンスと拡張が困難になる傾向があります。ライブラリが提供する堅牢なテストとコミュニティサポートがないため、潜在的な問題の発見と修正が困難になります。
  • 車輪の再発明: 多くの一般的なルーティングパターンは、React Routerのような成熟したライブラリによってすでに解決されています。これらを再実装することは、開発時間とリソースの無駄になることがほとんどです。
  • 機能の不足: NavLinkのようなアクティブ状態の管理や、loader/actionのようなデータ管理機能など、ライブラリが提供する便利な機能はすべて自分で実装する必要があります。

結論として、ほとんどのReactアプリケーションにおいて、カスタムルーティングの実装は推奨されません。React Routerは、これらの複雑な課題を解決し、開発者がアプリケーションのビジネスロジックに集中できるように設計されています。カスタムルーティングは、極めて特殊な制約や要件が存在し、かつ開発チームがWebのルーティングメカニズムについて深い専門知識を持っている場合にのみ、検討されるべき最終手段と言えるでしょう。