概要: AWSの無料利用枠は、クラウドの世界を体験する絶好の機会です。本記事では、無料枠で何ができるのか、主要なサービス、賢い使い方、そして注意点までを網羅的に解説します。AWSの基本を理解し、コストを抑えながら様々なサービスを試してみましょう。
AWS(Amazon Web Services)は、世界中で利用されているクラウドコンピューティングサービスです。その最大の魅力の一つが「無料枠」の存在。初心者から経験者まで、誰もが初期費用を抑えながらAWSの多様なサービスを体験し、スキルを磨く絶好の機会を提供します。
しかし、「無料」と聞くと「本当にお金がかからないの?」「どんなサービスが使えるの?」といった疑問が浮かぶ方も多いでしょう。本記事では、AWS無料枠の基本から、利用できる主要サービス、賢く活用するためのテクニック、そして注意点や対処法まで、詳細に解説します。
このガイドを読めば、あなたもAWS無料枠を最大限に活用し、クラウドの世界へ安心して飛び込むことができるはずです。
AWS無料枠とは?基本を理解しよう
AWS無料利用枠は、クラウドサービスの学習や検証に役立つ貴重な機会を提供します。初期費用を抑えつつ、多様なサービスを試すことが可能です。
AWS無料枠の3つの種類を解説
AWSの無料利用枠には、主に以下の3つの種類があり、それぞれ対象者や利用期間が異なります。これらの違いを理解することが、無料枠を効果的に活用する第一歩となります。
- 12ヶ月無料枠: AWSアカウント作成から12ヶ月間、特定のサービスを無料で利用できる枠です。主に新規顧客が対象となり、クラウドを学び始めたり、小規模なプロジェクトを立ち上げたりするのに最適です。この期間に、EC2やS3といった主要サービスを無料で試すことができます。
- 常時無料枠: AWSの全顧客が対象となる、期間の制限なく無料で利用できるサービス枠です。一定の使用制限内で、半永久的に利用が可能です。例えば、AWS Lambdaの月100万リクエストやAmazon DynamoDBの月25GBストレージなどがこれに該当します。長期的な学習や、非常に小規模な用途に適しています。
- トライアル枠: 特定のサービスを、利用開始から一定期間(例: 30日)無料で試せる枠です。これは、比較的新しいサービスや、通常は高額なサービスを限定的に試したい場合に役立ちます。サービスの機能や性能を評価するのに便利な仕組みです。(参考情報より)
これらの無料枠を組み合わせることで、AWSの幅広いサービスをコストをかけずに試すことが可能になります。
2025年7月15日以降の無料枠刷新について
AWS無料利用枠の制度は、時代と共に進化しています。特に注目すべきは、2025年7月15日以降に導入された新しい無料プランです。この変更により、新規アカウント向けに「クレジット制」の無料プランが導入されました。
新しいプランでは、最大6ヶ月間、合計200ドル相当のクレジットが付与されます。具体的には、サインアップ時に100ドル、さらに主要サービスを利用することで追加で100ドルが付与される仕組みです。これらのクレジットを消費して、AWSサービスを利用することになります。
このクレジット制の導入は、ユーザーがより柔軟に、必要なサービスに無料枠を適用できるメリットがある一方で、一部のサービスには制限がある場合がある点に注意が必要です。また、無料アカウントプランを選択した場合、クレジットを使い切るか6ヶ月が経過すると、アカウントが自動的に閉鎖される(90日間の猶予期間あり)ため、利用目的に応じたプラン選択がより重要になります。(参考情報より)
新しい制度は、AWSの学習や検証を始める初心者にとって、初期の学習コストをさらに抑える機会を提供します。
なぜAWS無料枠を活用すべきなのか?
AWS無料枠は、単にコストがかからないというだけでなく、多くのメリットをもたらします。クラウド技術への理解を深め、実践的なスキルを習得するための最適なツールと言えるでしょう。
まず、最大のメリットは「コストを気にせず試せる」点です。クラウドサービスは従量課金制が基本ですが、無料枠があることで、課金を気にせず様々なサービスを触り、その挙動や機能を実際に体験できます。これにより、学習のハードルが大幅に下がります。
次に、多様なサービスに触れる機会が得られます。EC2(仮想サーバー)やS3(オブジェクトストレージ)といった基本的なサービスはもちろん、Lambda(サーバーレスコンピューティング)やDynamoDB(NoSQLデータベース)など、多岐にわたるサービスを無料で利用できます。これにより、クラウドアーキテクチャの設計思想や、異なるサービス間の連携方法を実践的に学ぶことが可能です。
さらに、個人プロジェクトや小規模な検証環境の構築にも最適です。例えば、簡単なWebサイトのホスティング、データ分析の初期段階、新しい技術の概念検証(PoC)など、アイデアを形にするためのインフラを無料で手に入れることができます。これらの経験は、将来のキャリア形成においても非常に価値のあるものとなるでしょう。
AWS無料枠で利用できる主要サービス
AWS無料枠では、非常に多くのサービスを利用することができます。ここでは、特に利用頻度が高く、クラウドの学習や実践において重要な役割を果たす主要サービスに焦点を当てて解説します。
仮想サーバー (EC2) とデータベース (RDS, DynamoDB)
クラウド上でアプリケーションを動かす上で、最も基本的なコンポーネントとなるのが仮想サーバーとデータベースです。AWS無料枠では、これらを十分に試せる環境が提供されています。
-
Amazon EC2 (仮想サーバー):
AWSの仮想サーバーサービスであるEC2は、無料枠で最も頻繁に利用されるサービスの一つです。無料枠では、t2.microまたはt3.microインスタンスを月750時間まで利用できます。この750時間という枠は、例えば、1台のインスタンスを24時間365日フル稼働させても約31日分に相当するため、丸々1ヶ月間利用できる計算になります。
ただし、注意が必要です。複数インスタンスを同時に稼働させたり、異なるインスタンスタイプ(例: t2.small)を利用したりすると、すぐに無料枠を超過し課金が発生する可能性があります。学習目的で使う場合は、不要なインスタンスは停止することを徹底しましょう。
-
Amazon RDS (リレーショナルデータベース):
リレーショナルデータベースサービスであるRDSも、無料枠で利用可能です。MySQL、PostgreSQL、MariaDBなどの一般的なデータベースエンジンを、db.t2.microインスタンスで月750時間まで利用できます。
さらに、20GBの汎用SSDストレージと20GBのバックアップストレージも無料で提供されます。Webアプリケーションのバックエンドデータベースとして、手軽に利用開始できる点が魅力です。
-
Amazon DynamoDB (NoSQLデータベース):
サーバーレスアプリケーションで人気の高いNoSQLデータベース、DynamoDBも無料枠の対象です。最大25GBのストレージと、月200万件のGETリクエスト、200万件のPUT/DELETEリクエストまで無料で利用できます。
非常に高速でスケーラブルなデータベースであり、シンプルなデータ構造のアプリケーションやIoTプロジェクトなどで活躍します。(参考情報より)
これらのサービスを組み合わせることで、簡単なWebアプリケーションの構築からデータベースの操作まで、クラウドの基礎を実践的に学ぶことができます。
ストレージ (S3, EBS) とコンテンツ配信 (CloudFront)
AWSのストレージサービスは、データの保存、バックアップ、そして世界中への配信において不可欠な役割を果たします。無料枠でも、これら主要なストレージおよびコンテンツ配信サービスを利用できます。
-
Amazon S3 (オブジェクトストレージ):
Amazon S3は、無限に拡張可能なオブジェクトストレージサービスです。静的ウェブサイトのホスティング、バックアップ、データレイクなど、幅広い用途で利用されます。無料枠では、5GBの標準ストレージ、20,000件のGETリクエスト、2,000件のPUTリクエストが毎月無料で提供されます。
画像や動画ファイル、ドキュメントなど、様々な形式のデータを保存するのに最適です。非常に堅牢で可用性が高いのが特徴です。(参考情報より)
-
Amazon EBS (ブロックストレージ):
Amazon EBSは、EC2インスタンスにアタッチして使用するブロックストレージです。まるで物理サーバーのハードディスクのように利用でき、OSやアプリケーションのデータを格納します。無料枠では、30GBの汎用SSD (gp2またはgp3) ストレージが無料で利用できます。
これはEC2インスタンスのルートボリュームとして利用したり、データボリュームとして追加したりするのに十分な容量です。高性能なストレージが必要なアプリケーションに適しています。(参考情報より)
-
Amazon CloudFront (CDN):
Amazon CloudFrontは、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)サービスです。ウェブサイトのコンテンツ(画像、動画、HTMLなど)をユーザーに高速かつ安全に配信するために利用されます。無料枠では、毎月50GBのデータ転送(送信)と、2,000,000件のHTTP/HTTPSリクエストが無料で利用可能です。
S3に保存した静的ウェブサイトのパフォーマンスを向上させたり、グローバルに展開するアプリケーションのユーザーエクスペリエンスを改善したりするのに役立ちます。(参考情報より)
これらのサービスを組み合わせることで、堅牢なデータストレージ基盤を構築し、ユーザーに高速なコンテンツ配信を提供することができます。
サーバーレス (Lambda) とモニタリング (CloudWatch) など
AWS無料枠は、仮想サーバーやストレージといった基本的なサービスだけでなく、サーバーレスコンピューティングやシステムの監視・運用に役立つサービスも幅広くカバーしています。
-
AWS Lambda (サーバーレスコンピューティング):
AWS Lambdaは、サーバーのプロビジョニングや管理をすることなくコードを実行できる、イベント駆動型のサーバーレスコンピューティングサービスです。無料枠では、月100万リクエストと、400,000GB秒のコンピューティング時間が無料で利用可能です。
これにより、データ処理、APIバックエンド、IoTバックエンドなど、様々な用途でサーバーレスアーキテクチャを体験できます。コスト効率が高く、小規模な処理を自動化するのに非常に強力なツールです。(参考情報より)
-
Amazon CloudWatch (モニタリング):
Amazon CloudWatchは、AWSリソースとアプリケーションのモニタリングサービスです。無料枠では、10個のカスタムメトリクス、3つのダッシュボード、10個のアラームが無料で利用できます。
これにより、EC2インスタンスのCPU使用率やS3のデータ転送量などを監視し、異常を検知した際にアラートを受け取る設定が可能です。システムの安定稼働には欠かせないサービスです。(参考情報より)
-
その他の無料枠対象サービス:
上記の主要サービス以外にも、多くのAWSサービスが無料枠の対象となっています。
- Elastic Load Balancing (ELB): アプリケーションのトラフィックを分散するロードバランサーで、月750時間まで利用可能です。(参考情報より)
- AWS Glue Data Catalog: データレイクのメタデータを管理するサービスで、1,000テーブル、100万オブジェクトまで無料です。(参考情報より)
- Amazon SNS / Amazon SQS: メッセージングサービスで、それぞれ月100万メッセージまで無料で利用できます。サーバーレスアプリケーション間の連携などに活用されます。(参考情報より)
これらのサービスを効果的に活用することで、単なるアプリケーションの実行だけでなく、運用やスケーリング、イベント駆動型アーキテクチャの構築まで、クラウドの幅広い側面を無料で体験することができます。
無料枠を最大限に活用するテクニック
AWS無料枠は大変便利ですが、その恩恵を最大限に受けるためには、いくつかのテクニックと心構えが必要です。漫然と利用するだけでは、思わぬ課金が発生してしまう可能性もあります。
利用状況を常に監視する重要性
AWS無料枠を賢く利用する上で最も重要なのが、自身の利用状況を常に把握し、監視することです。各サービスには明確な利用上限が設定されており、この上限を超過すると、すぐに課金が発生します。
例えば、Amazon EC2のt2.microインスタンスは月750時間まで無料ですが、誤って2台のインスタンスを起動しっぱなしにすると、合計で月1500時間となり、単純計算で750時間分が課金の対象となります。これは決して珍しいケースではありません。
そのため、定期的にAWSマネジメントコンソールにログインし、利用しているリソース一覧を確認する習慣をつけましょう。特に、学習や検証で一時的に作成したリソースは、用が済んだら必ず停止または削除することを忘れないでください。EC2インスタンスを停止するだけでなく、EBSボリュームも不要であれば削除しないと、ストレージ費用が発生し続けることがあります。AWS BudgetsやCloudWatchを活用して、自動で通知を受け取る設定も非常に有効です。(参考情報より)
コスト管理ツールの活用法
AWSが提供する豊富なコスト管理ツールを使いこなすことで、無料枠の範囲内で安全にサービスを利用し、万が一の課金発生時にも迅速に対応できるようになります。
-
AWS Budgets:
AWS Budgetsは、設定した予算額や無料利用枠の使用量を超過した場合に、メール通知などでアラートを受け取ることができる非常に便利なサービスです。無料利用枠を有効活用する上で、これは必須のツールと言えるでしょう。
例えば、「EC2の無料枠利用量が80%に達したら通知する」「月の総コストが$5を超えたら通知する」といった具体的な予算を設定できます。これにより、意図しない課金を未然に防ぎ、安心してAWSを利用することが可能になります。設定は簡単で、AWSマネジメントコンソールから数ステップで完了できます。(参考情報より)
-
Amazon CloudWatch:
Amazon CloudWatchは、AWSリソースの使用状況を詳細にモニタリングし、異常な使用を検知して自動通知する設定が可能です。例えば、EC2インスタンスのCPU使用率が長時間100%になっている場合や、特定のログパターンが出現した場合にアラートを発生させることができます。
無料枠の範囲内で使えるダッシュボードやアラームも提供されており、リソースの健全性を確認したり、予期せぬアクティビティを早期に発見したりするのに役立ちます。AWS Budgetsと組み合わせて、多角的な監視体制を構築するのがおすすめです。(参考情報より)
-
AWS Cost Explorer:
AWS Cost Explorerは、過去のコストと利用状況を詳細に分析できるツールです。どのサービスでどれくらいの費用がかかったか、日別・月別にグラフで視覚的に確認できます。無料枠を超過して課金が発生した場合、Cost Explorerを使えば、どのサービスが原因だったのかを特定しやすくなります。
これらのツールを積極的に活用し、自身のAWS利用状況を「見える化」することが、無料枠を最大限に活用し、予期せぬ費用を避けるための鍵となります。
リージョンとプラン選択の賢い戦略
AWS無料枠の利用には、リージョン(データセンターの地理的拠点)の選択と、アカウントプランの理解も深く関わってきます。これらの要素を賢く選択することで、より安全かつ効率的に無料枠を利用できます。
まず、リージョンの確認は非常に重要です。無料利用枠の対象となるサービスや利用量の上限は、リージョンによって異なる場合があります。例えば、特定の新しいインスタンスタイプやサービスが、一部のリージョンでは無料枠の対象外となっているケースも考えられます。
一般的には、東京リージョンやオレゴンリージョンなど、主要なリージョンで無料枠の提供が手厚い傾向にありますが、利用を開始する前に必ず公式ドキュメントで確認することが推奨されます。また、誤って異なるリージョンでリソースを起動してしまうと、無料枠を超過する可能性もあるため、注意が必要です。
次に、プランの選択です。2025年7月15日以降の新しい無料プランでは、「無料アカウントプラン」と「有料アカウントプラン」の2つを選択できます。無料アカウントプランは、新規アカウント向けに提供されるクレジット制のプランで、最大6ヶ月間、合計200ドル相当のクレジットが付与されます。このプランの大きな注意点は、クレジットを使い切るか6ヶ月が経過すると、アカウントが自動的に閉鎖される(90日間の猶予期間あり)点です。
一方、有料アカウントプランは従来の無料枠に加え、必要に応じてサービスに課金しながら利用する標準的なプランです。長期的にAWSを利用する予定がある場合や、アカウント閉鎖のリスクを避けたい場合は、有料アカウントプランを選択し、AWS Budgetsなどを活用してコストを管理する方が賢明でしょう。利用目的に応じて最適なプランを選択し、AWS無料枠を最大限に活用しましょう。(参考情報より)
注意点と無料枠超過時の対処法
AWS無料枠は学習や検証に非常に有用ですが、「無料」という言葉に安易に誘われて、意図しない課金が発生するケースも少なくありません。ここでは、無料枠利用時の注意点と、万が一課金されてしまった場合の対処法について解説します。
無料枠超過のリスクと課金メカニズム
AWS無料枠を超過すると、利用した分だけ自動的に課金が発生します。これは、AWSが提供する従量課金制というクラウドサービスの特性によるものです。無料枠はあくまで「一定の範囲内でのみ無料」ということを理解しておく必要があります。
よくある超過パターンとしては、以下のようなものがあります。
- EC2インスタンスの停止忘れ: t2.microなどの無料枠インスタンスを停止し忘れて稼働させ続けると、月750時間を超過した分が課金対象となります。特に、複数のインスタンスを起動している場合は、あっという間に無料枠を超過します。
- EBSボリュームの削除忘れ: EC2インスタンスを停止しても、それにアタッチされていたEBSボリュームは削除されない限り存在し続け、ストレージ費用が発生し続けます。
- S3への大量データアップロードや頻繁なアクセス: 無料枠の5GBを超過するデータをS3に保存したり、PUT/GETリクエスト数が上限を超えたりすると課金されます。
- 異なるインスタンスタイプやサービスの使用: 無料枠の対象外のEC2インスタンスタイプ(例: t2.small)を使用したり、無料枠対象外のサービスを利用したりすると、当然ながら最初から課金対象となります。
これらの「微課金」であっても、積み重なると予想外の金額になる可能性があります。常に自身の利用状況を意識し、不要なリソースはこまめに停止・削除することが鉄則です。(参考情報より)
コスト超過アラートの設定方法
予期せぬ課金を防ぐためには、コスト超過アラートを事前に設定しておくことが最も効果的です。AWS BudgetsとAmazon CloudWatchを組み合わせることで、強固な監視体制を構築できます。
-
AWS Budgetsの設定:
AWS Budgetsは、最も基本的なコストアラートツールです。AWSマネジメントコンソールの「コスト管理」セクションからアクセスし、「予算を作成」を選択します。
予算タイプとして「コスト予算」を選び、「月額予算」や「しきい値(例: $5)」を設定します。さらに、「無料利用枠の使用量」に基づいてアラートを発動させることも可能です。例えば、EC2の無料枠利用量が80%に達したらメールで通知するといった設定ができます。
通知先として自身のメールアドレスを設定すれば、設定した条件を満たした際に自動的にアラートが届きます。
-
Amazon CloudWatchアラームの設定:
より詳細な監視が必要な場合は、Amazon CloudWatchアラームも活用しましょう。CloudWatchでは、EC2のCPU使用率やネットワークI/O、S3のデータ転送量など、個々のリソースのメトリクス(指標)に基づいてアラームを設定できます。
例えば、「EC2インスタンスのCPU使用率が過去5分間、継続して90%を超えたらアラート」といった設定が可能です。これにより、リソースが過剰に利用されている状態を早期に検知し、無料枠の超過を防ぐことができます。
これらのアラート設定は、一度設定すればその後は自動で監視してくれるため、安心してAWSを利用するための必須ステップです。
課金されてしまった場合の対処法
万が一、AWS無料枠を超過して課金されてしまった場合でも、慌てる必要はありません。適切な手順を踏むことで、原因を特定し、今後の対策を講じることができます。
-
原因の特定:
まず、AWS Cost Explorerを使用して、どのサービスで、いつ、どれくらいの費用が発生したのかを確認します。Cost Explorerは、日別、月別、サービス別にコストを可視化してくれるため、課金の原因を特定するのに非常に役立ちます。具体的にどのEC2インスタンスやS3バケットが課金されたのかを突き止めましょう。
-
不要リソースの停止・削除:
課金原因が特定できたら、そのリソースが不要であれば、直ちに停止または削除します。EC2インスタンスは「Terminate(終了)」、EBSボリュームは「Delete Volume(ボリュームの削除)」、S3バケットは「Empty(空にする)」後「Delete(削除)」します。
特に、EBSボリュームやスナップショット、ロードバランサー、IPアドレス(Elastic IPで未関連付けの場合)などは、インスタンスを停止しても費用が発生し続ける場合があるので注意が必要です。
-
AWSサポートへの問い合わせ:
不明な点が多い場合や、初めての課金で不安な場合は、AWSサポートに問い合わせることも検討しましょう。アカウントと請求に関する基本的なサポートは、AWSの全てのお客様に提供されています。課金内容の確認や、今後の対策についてアドバイスを受けることができます。ただし、問い合わせは英語での対応が主体となる場合が多い点に留意してください。
-
今後の対策:
再発防止のために、AWS BudgetsやCloudWatchアラートの設定を見直し、より厳しく設定します。また、定期的にAWSマネジメントコンソールで利用リソースを確認する習慣を身につけることが重要です。
これらの対処法を知っていれば、万が一課金されても冷静に対応し、再び安心してAWSを利用できるようになります。
AWS無料枠で始める実践プロジェクト例
AWS無料枠は、単なる学習ツールに留まらず、実際に使えるアプリケーションやシステムの構築を試みる「実践の場」としても非常に優れています。ここでは、無料枠内で実現可能な具体的なプロジェクト例をいくつか紹介します。
静的ウェブサイトを公開する
AWS無料枠を活用して、自分だけの静的ウェブサイトを公開することは、クラウドの基本を学ぶ上で非常に優れたプロジェクトです。コーディングの知識があれば、HTML、CSS、JavaScriptだけで構成されるポートフォリオサイトやブログ、イベント告知サイトなどを手軽に公開できます。
このプロジェクトでは、主に以下のAWSサービスを利用します。
-
Amazon S3 (オブジェクトストレージ):
S3は静的ウェブサイトのホスティング機能を備えており、ウェブサイトのファイルを格納するのに最適です。無料枠では5GBの標準ストレージと十分なリクエスト数が提供されるため、多くの静的サイトに対応できます。
S3バケットを作成し、ウェブサイトファイルをアップロードするだけで、簡単なウェブサイトがオンラインになります。
-
Amazon CloudFront (CDN):
S3でホスティングしたウェブサイトにCloudFrontを組み合わせることで、コンテンツを世界中のユーザーに高速に配信できるようになります。無料枠で50GBのデータ転送と200万リクエストが利用できるため、パフォーマンスとユーザーエクスペリエンスを向上させながら、コストを抑えられます。
HTTPS対応も容易で、セキュリティも強化されます。
-
Amazon Route 53 (DNSサービス):
独自のドメイン名(例: my-blog.com)を使用したい場合は、Route 53を利用します。Route 53自体は無料枠の対象外ですが、非常に安価に利用できます(月額約$0.5/ホストゾーン)。
これらのサービスを組み合わせることで、高可用性でスケーラブルな静的ウェブサイトを、ほぼ無料で構築・運用することが可能です。これは、クラウドの基本概念であるストレージ、コンテンツ配信、DNSを実践的に学ぶ絶好の機会となるでしょう。
簡単なWebアプリケーションを構築する
静的ウェブサイトから一歩進んで、バックエンド処理を伴う簡単なWebアプリケーションの構築も、AWS無料枠で十分に可能です。これにより、動的なウェブサイトの仕組みや、データベースとの連携などを実践的に学ぶことができます。
いくつかのアプローチが考えられます。
-
EC2 + RDS の伝統的な構成 (LAMPスタック、WordPressなど):
最も一般的なのは、Amazon EC2インスタンス上でWebサーバーとアプリケーションサーバー(例: Apache/Nginx + PHP/Python/Node.js)を動かし、Amazon RDSでデータベース(例: MySQL/PostgreSQL)を構築する構成です。
無料枠のt2.micro/t3.microインスタンスとdb.t2.microインスタンスをそれぞれ月750時間ずつ利用できます。これに、静的コンテンツをS3に置くことで、Webサイト全体を構築できます。WordPressなどのCMSをインストールして、自分だけのブログや情報サイトを運営するのも良いでしょう。
-
Lambda + DynamoDB のサーバーレス構成:
よりモダンなアプローチとして、AWS LambdaとAmazon DynamoDBを組み合わせたサーバーレスなWebアプリケーションも構築できます。ユーザーからのリクエストをAPI Gatewayで受け付け、Lambda関数で処理し、データをDynamoDBに保存する、といった構成です。
Lambdaは月100万リクエスト、DynamoDBは25GBのストレージと月200万リクエストまで無料枠で利用できるため、小規模なAPIやバックエンド処理に最適です。サーバー管理の手間が不要なため、開発に集中できます。
これらのプロジェクトを通じて、仮想サーバーの構築、データベースの操作、アプリケーションのデプロイ、そしてサーバーレスアーキテクチャの基本を深く理解することができます。
データ分析・学習環境を構築する
AWS無料枠は、データサイエンスや機械学習の学習環境を構築するためにも非常に役立ちます。大量のデータを扱う初期段階や、小規模な実験を行う際には、コストをかけずにクラウドの強力なコンピューティングリソースを利用できます。
具体的なプロジェクト例としては、以下のようなものが挙げられます。
-
データレイクの構築と簡単な分析:
Amazon S3をデータレイクとして活用し、様々な形式のデータを保存します。無料枠の5GBストレージは、小規模なデータセットには十分です。
保存したデータに対して、AWS Lambda関数で簡単なETL処理(データの抽出、変換、ロード)を実行したり、Athena(S3上のデータに対するクエリサービス、無料枠あり)でSQLクエリを実行して分析の基礎を学んだりできます。
-
Jupyter Notebook環境の構築:
Amazon EC2のt2.micro/t3.microインスタンス上に、Jupyter Notebookをインストールしてデータ分析の学習環境を構築できます。PythonやRなどの言語を使い、データの可視化や簡単な機械学習モデルの構築を試すことができます。
必要なときにインスタンスを起動し、不要なときは停止することで、無料枠の750時間を効率的に利用しましょう。
-
IoTデータの収集と可視化の初歩:
AWS IoT Core(無料枠あり)を利用してIoTデバイスからのデータを収集し、Lambdaで処理、DynamoDBに保存するといった一連の流れを構築できます。その後、Amazon QuickSight(BIツール、無料枠あり)で簡単なダッシュボードを作成し、データを可視化することも可能です。
これらのプロジェクトを通じて、データストレージ、データ処理、データ分析、そしてモニタリングといった、データ関連のクラウドサービスと概念を実践的に学ぶことができます。特に、CloudWatchを活用してログやメトリクスを監視することで、システムの動作状況を把握するスキルも養えます。
まとめ
よくある質問
Q: AWS無料枠で何ができますか?
A: AWS無料枠では、EC2(仮想マシン)、S3(ストレージ)、Lambda(サーバーレスコンピューティング)など、様々な主要サービスを一定量まで無料で利用できます。これにより、実際にクラウドサービスを試したり、小規模なアプリケーションを開発したりすることが可能です。
Q: AWS無料枠の対象となるサービスにはどのようなものがありますか?
A: EC2、S3、Lambda、RDS、DynamoDB、ECS、Fargate、CloudFront、Certificate Managerなど、多岐にわたるサービスが無料枠の対象となっています。具体的な利用量制限はサービスごとに異なります。
Q: AWS無料枠の利用期間はどのくらいですか?
A: AWS無料枠には、主に「12ヶ月無料」と「常に無料」の2種類があります。12ヶ月無料は、AWSアカウント作成から12ヶ月間、特定のサービスに対して利用量制限内で無料利用できるものです。「常に無料」は、期間の制限なく、利用量上限内であれば無料で利用できるサービスです。
Q: AWS無料枠を超過した場合、どうなりますか?
A: 無料枠を超過した利用分は、従量課金制となり、料金が発生します。超過前に通知を受け取る設定をしたり、利用状況を常に監視することが重要です。不要なリソースは削除するなどの対策も有効です。
Q: AWS無料枠でWindows Serverは利用できますか?
A: はい、EC2の無料枠でWindows Serverを利用できる場合があります。ただし、無料利用枠の対象となるOSやインスタンスタイプ、利用時間には制限がありますので、AWSの公式ドキュメントで最新の情報を確認することをおすすめします。