概要: AWSの無料利用枠を賢く活用し、意図しない課金を防ぐための方法を解説します。無料アカウントの削除手順や、複数アカウント利用時の注意点、無料期間終了後の対応について詳しくご紹介します。
AWS無料利用枠を賢く解約!アカウント削除・複数利用の注意点
AWSの無料利用枠は、クラウドサービスを気軽に試せる非常に便利な制度です。
しかし、その終了時期や解約方法、複数アカウントの利用には細心の注意が必要となります。
本記事では、AWS無料利用枠を最大限に活用し、さらに予期せぬ請求を防ぐための具体的な方法や、アカウント管理に関する重要なポイントを詳しく解説します。
賢くAWSを利用し、快適なクラウドジャーニーを送りましょう。
AWS無料利用枠の基本と解約のタイミング
無料利用枠の種類と注意すべき期限
AWSの無料利用枠には、主に「12ヶ月無料」、「常時無料」、「短期試用」の3種類があります。
それぞれ提供期間や条件が異なるため、利用するサービスがどのカテゴリに属するかを把握することが非常に重要です。
特に注意すべきは「12ヶ月無料」のタイプで、これは新規アカウント作成から12ヶ月間のみ利用できるものです。この期間が終了すると、利用中のサービスは自動的に有料プランへと移行します。
例えば、無料利用枠でEC2インスタンスを稼働させていた場合、12ヶ月経過後は、そのインスタンスタイプに応じた料金が請求されるようになるのです(※参考情報より)。
一方、「常時無料」サービスは、特定の制限内であれば期間の定めなく無料で利用できるため、比較的安心して利用できます。ただし、利用量が増えると有料となるため、こちらも上限の把握が不可欠です。
「短期試用」は、特定の新サービスや機能をお試しで利用できる期間が定められたもので、試用期間終了後は速やかにリソースを停止するか、有料プランへの移行を検討する必要があります。
これらの期限や条件を正しく理解し、自身の利用状況と照らし合わせながら、適切なタイミングでの解約やリソース停止を計画することが、予期せぬ課金を防ぐ第一歩となります。
請求が発生する主なケースとその回避策
AWS無料利用枠を利用中に請求が発生する主なケースはいくつかあります。最も一般的なのは、無料利用枠で定められた制限を超過した場合です。
例えば、無料利用枠のEC2では特定のインスタンスタイプを月750時間まで利用できますが、これを超過すると超過分の料金が発生します。また、無料利用枠の期限切れも大きな原因の一つです。
「12ヶ月無料」や「短期試用」の期間が終了すると、自動的に有料プランに移行し、継続して利用していたリソースに対して料金が発生します(※参考情報より)。
さらに、無料利用枠の対象外のサービスを利用したり、無料利用枠の対象内であっても、リージョンを間違えて選択したりした場合も課金の対象となります。
これらの請求を防ぐためには、いくつかの対策を講じる必要があります。まず、各サービスの無料利用枠の制限をAWS公式サイトで定期的に確認し、常に最新の情報を把握しましょう。
そして、最も効果的な対策の一つが、AWS Budgetsを活用した請求アラートの設定です。これにより、使用量が無料利用枠の制限に近づいた際に通知を受け取ることができ、事前の対策が可能になります(※参考情報より)。
また、AWS Billing and Cost ManagementダッシュボードやAWS Cost Explorerを定期的に確認し、リソースの使用状況と予測コストを常に把握することも重要です。不要なリソースはこまめに削除し、常にクリーンな状態を保つように心がけましょう。
自動課金を防ぐための日頃のチェックポイント
AWSの無料利用枠が終了した後や、制限を超過した際に自動課金されてしまうことを防ぐには、日頃からの継続的なチェックと管理が不可欠です。
最も重要なチェックポイントは、やはりAWS Budgetsを用いた請求アラートの設定です。これは無料利用枠の制限値、あるいはそれよりも少し低い閾値で設定することをおすすめします。
例えば、EC2の無料利用枠が月750時間であれば、700時間や720時間でアラートが発動するように設定しておけば、余裕を持って対応できます。
このアラートをメールやSNSに送信する設定をしておけば、異常を早期に察知することが可能です。
次に、AWS Cost ExplorerやBilling and Cost Managementダッシュボードを最低でも月に一度は確認する習慣をつけましょう。これらのツールは、各サービスごとの利用状況や請求額を詳細に可視化してくれます。
過去の利用状況から将来のコスト予測を行うこともできるため、予期せぬコスト増加の兆候を早期に発見できます。
また、使用していないEC2インスタンスやEBSボリューム、S3バケットなどのリソースは、アイドル状態であっても料金が発生する可能性があります。これらの不要なリソースは、定期的に棚卸しを行い、終了または削除する習慣をつけましょう。
特に、チュートリアルなどで作成したリソースをそのまま放置してしまい、後から高額な請求が発生するケースは少なくありません。
このように、監視と定期的なクリーンアップを組み合わせることで、無料利用枠終了後の自動課金リスクを大幅に軽減できます。
AWS無料アカウントを削除する方法
アカウント削除の基本的なステップ
AWSアカウントの削除は、比較的シンプルな手順で実行できますが、細心の注意を払う必要があります。
基本的なステップとしては、まずAWSマネジメントコンソールにルートユーザーとしてサインインします。IAMユーザーではアカウントを削除できませんので、必ずルートユーザーの認証情報を使用してください。
サインイン後、右上のアカウント名をクリックし、ドロップダウンメニューから「アカウント」または「My Account」を選択します。
アカウント設定ページが表示されたら、一番下の方にスクロールしていくと、「アカウントを閉鎖」または「Close Account」というオプションが見つかります。
このオプションをクリックし、表示される指示に従って削除を進めます。アカウントの種類(スタンドアロンアカウント、AWS Organizationsのメンバーアカウント、管理アカウントなど)によっては、追加の手順や確認が必要になる場合があります。
特にOrganizationsに属している場合は、まず組織からアカウントを離脱させる必要があることを覚えておきましょう。
削除プロセス中には、アカウントに関連するすべてのリソースが終了するわけではないことや、データのバックアップの重要性など、いくつかの警告が表示されます。これらの警告をよく読み、理解した上で最終的な承認を行うようにしてください。
一度削除手続きを開始すると、後戻りできないプロセスとなるため、事前の準備が非常に重要です。
削除前に必ず確認すべき重要事項
AWSアカウントを削除する前に、必ず確認し実行すべきいくつかの重要事項があります。これを怠ると、データの消失や削除後の予期せぬ請求につながる可能性があります。
まず、最も重要なのは、すべてのアクティブなリソースを終了させることです。アカウントを閉鎖しても、EC2インスタンス、RDSデータベース、S3バケット、EBSボリュームなどが自動的に終了するわけではありません(※参考情報より)。
これらが残っていると、アカウント閉鎖後90日間の復旧期間中にコストが発生し、請求される可能性があります。
次に、保持したい重要なデータは、アカウント削除前に必ずバックアップを取得してください(※参考情報より)。S3バケットに保存されたデータやRDSのスナップショットなど、必要な情報は別のストレージやアカウントに移行するか、ローカルにダウンロードしておきましょう。
アカウントが削除されると、これらのデータは完全にアクセスできなくなります。
また、ルートユーザーのメールアドレスを別のAWSアカウントで使用したい場合は、閉鎖前にメールアドレスを更新しておくことを推奨します(※参考情報より)。
これにより、メールアドレスの重複による問題を防ぎ、スムーズなアカウント作成が可能になります。
さらに、ルートユーザーやIAMユーザーで多要素認証(MFA)を有効にしている場合、アカウントを閉鎖してもMFAは自動的に削除されません。閉鎖後90日間の復旧期間中にアカウントを復旧させる必要がある場合は、MFAデバイスをアクティブにしておく必要があります(※参考情報より)。
これらの事前確認と準備を徹底することで、安全かつスムーズなアカウント削除が可能になります。
アカウント削除後の復旧期間と最終的な抹消
AWSアカウントを削除しても、すぐに完全に消滅するわけではありません。アカウント削除の手続きを行った後には、90日間の復旧期間が設けられています。
この期間中であれば、なんらかの理由でアカウントを復旧させたい場合に、AWSサポートに連絡することで再開することが可能です(※参考情報より)。
この復旧期間の最も重要な注意点は、アカウント閉鎖前に停止しなかったリソースが存在する場合、この90日間の間にもコストが発生し続ける可能性があるという点です。
もし復旧期間中に費用が発生した場合は、AWSから請求が行われることになります。そのため、前述の通り、アカウント削除前にはすべてのリソースを停止・削除しておくことが極めて重要です。
90日間の復旧期間が経過すると、AWSアカウントとその環境は完全に削除され、復旧することはできなくなります。
この段階に至ると、アカウントに関連付けられていたすべてのデータ、リソース、設定などが永久に失われます。つまり、この90日間が、アカウントに関連する最終的な確認と後処理を行うための猶予期間となるわけです。
特に、法的な要件や企業ポリシーで特定のデータの保存期間が定められている場合は、アカウントを削除する前にそれらの要件を満たしているか、データのバックアップが適切に完了しているかを最終確認することが必須となります。
安易なアカウント削除は、後々の大きなトラブルに繋がりかねないため、慎重な対応を心がけましょう。
AWS無料アカウントを複数利用する際の注意点
複数アカウント利用が推奨されるケース
AWSでは、利用規約上、複数アカウントの作成自体は禁止されていません。むしろ、いくつかの状況では、複数アカウントを利用することが推奨される場合があります。
主な理由としては、まず「リソース制限の回避」が挙げられます。例えば、特定のS3バケット数やネットワーク帯域など、AWSサービスにはアカウントごとの制限が設けられていることがあります。これらの上限に達しそうな場合に、アカウントを分割することで制限を回避し、システムの拡張性を確保できます。
次に、「環境分離」の目的があります。本番環境、開発環境、ステージング環境などをそれぞれ別のアカウントで運用することで、IAMポリシーの管理を簡素化し、誤操作による本番環境への影響リスクを大幅に低減できます。これにより、セキュリティレベルの向上にも寄与します。
また、「請求情報の分離」も重要な理由です。企業内で複数の部署がAWSを利用している場合、課金配分タグだけでは分離が難しいネットワーク通信料などの請求情報を厳密に分離したい場合に、アカウントを分けることが有効です。
さらに、「リソースの完全な分離」を目的とする場合もあります。IAMやタグ設定だけでは不十分な、リソースレベルでの厳密なアクセス制御を行いたい場合、アカウントを分けることでその実現が可能となります(※参考情報より)。
これらのケースでは、AWS Organizationsを利用して複数のアカウントを一元的に管理することが推奨されており、セキュリティと運用効率の両面でメリットを享受できます。
無料利用枠目的での複数アカウント作成はNG
AWSは複数アカウントの利用を許容していますが、無料利用枠を再度取得する目的での複数アカウント作成は、明確な利用規約違反となります。
AWSの利用規約には、「サービスの制限やポリシーを回避する目的で複数アカウントを作成することは禁止されている」と明記されています(※参考情報より)。
これには、無料利用枠を一度使い切った後に、新しいメールアドレスやクレジットカード情報を使って別のアカウントを作成し、再び無料利用枠を利用しようとする行為も含まれます。
このような行為は、AWS側で検知される可能性があり、アカウントの停止や、これまでに利用した無料枠の料金が遡及して請求されるなどのペナルティが課されるリスクがあります。
AWSの無料利用枠は、新規ユーザーがAWSのサービスを「試す」ためのものであり、継続的な無料利用を保証するものではありません。
そのため、無料期間が終了した場合は、料金を支払ってサービスを継続利用するか、利用を停止するかの判断を適切に行う必要があります。
もし無料利用枠が終了しても、低コストでAWSサービスを利用したい場合は、既存アカウント内でコスト最適化戦略を検討するべきです。
例えば、より安価なインスタンスタイプへの移行、リザーブドインスタンスやSavings Plansの活用、スポットインスタンスの利用、不要なリソースの削除など、様々な方法があります。
不正な方法で無料利用枠を継続しようとするのではなく、正当な手段でコストを管理する姿勢が重要です。
複数アカウント管理のベストプラクティス:AWS Organizations
複数のAWSアカウントを効果的かつ安全に管理するためのベストプラクティスとして、AWS Organizationsの活用が挙げられます。
AWS Organizationsは、複数のAWSアカウントをグループ化し、一元的に管理するためのサービスです。これにより、アカウントの管理負荷を大幅に軽減し、ガバナンスを強化することができます(※参考情報より)。
主なメリットとしては、まず「一括請求」があります。すべてのメンバーアカウントの請求が管理アカウントに集約されるため、支払いプロセスが簡素化され、ボリュームディスカウントなどの割引が適用されやすくなります。
次に、「一元的なポリシー管理」が可能です。SCP(サービスコントロールポリシー)を使用することで、組織単位(OU)や特定のアカウントに対して、利用できるAWSサービスやアクションを制限することができます。これにより、組織全体のセキュリティとコンプライアンスを維持しやすくなります。
さらに、「アカウントの作成と管理の自動化」もメリットです。AWS Organizationsを通じて新しいアカウントをプログラムで作成できるため、スケーラブルな環境構築が容易になります。また、管理アカウントから各メンバーアカウントへのシングルサインオン設定も可能です。
例えば、開発、テスト、本番といった環境ごとにアカウントを分け、それぞれに適切な権限とリソース割り当てを行う際に、Organizationsは非常に強力なツールとなります。
アカウント間の依存関係を減らし、セキュリティを高め、運用の効率化を図るためにも、複数アカウントを運用する際にはAWS Organizationsの導入を強く検討すべきです。
AWS無料利用枠終了後の自動課金を防ぐには
請求アラートの設定と閾値管理
AWS無料利用枠終了後の自動課金を未然に防ぐ上で、最も効果的かつ重要な手段の一つが、AWS Budgetsを活用した請求アラートの設定です。
AWS Budgetsでは、予算(コストまたは使用量)を設定し、その予算が実際に消費される前に、あるいは超過した場合に通知を受け取ることができます。
無料利用枠の終了による自動課金を防ぐためには、この機能を積極的に利用すべきです。具体的な設定方法としては、まずAWS Budgetsのコンソールから新しい予算を作成します。
予算のタイプは「コスト予算」または「使用量予算」を選択し、無料利用枠の上限値を考慮した金額や使用量を設定します。
例えば、無料利用枠でEC2のt2.microインスタンスが月750時間無料である場合、使用量予算として700時間や720時間といった閾値を設定し、この閾値を超過しそうになった際にアラートが送信されるように構成します。
これにより、無料利用枠を使い切る前に、リソースの停止や削除を検討する時間を確保できます。
また、予期せぬ請求に備えて、無料利用枠の制限とは別に、非常に低い金額(例えば数ドル)でコスト予算を設定し、わずかな課金でもすぐに通知が来るようにしておくことも有効です。
アラートの通知先は、メールアドレスだけでなく、AWS Chatbotを介してSlackやMicrosoft Teamsに送ることも可能です。これにより、チーム全体でコスト状況を共有し、迅速な対応を促すことができます。
定期的に予算の見直しと更新を行い、常に最新の利用状況に合わせたアラート設定を維持することが、効果的なコスト管理につながります。
定期的なリソース棚卸しと不要なリソースの削除
AWS無料利用枠終了後の自動課金を防ぐためには、請求アラートの設定だけでなく、定期的なリソースの棚卸しと、不要なリソースの積極的な削除が不可欠です。
AWSのサービスは非常に多岐にわたり、一度作成したリソースがいつの間にか放置され、課金の原因となるケースが少なくありません。特に、無料利用枠で試したサービスを終了し忘れてしまうことはよくあります。
これを防ぐためには、AWS Cost ExplorerやBilling and Cost Managementダッシュボードを定期的に確認し、現在稼働しているリソースやそれにかかっているコストを把握する習慣をつけましょう。
Cost Explorerでは、サービス別、リージョン別、タグ別など、様々な切り口でコストの内訳を分析できます。これにより、どのサービスがコストを発生させているのか、どのリソースがアクティブなまま放置されているのかを特定しやすくなります。
棚卸しの際には、以下の点に注目してください。
- EC2インスタンス: 停止または終了し忘れたインスタンスはないか。特に、無料利用枠を超過したインスタンスタイプを使用していないか。
- EBSボリューム: EC2インスタンスを終了しても、EBSボリュームが残っている場合があるため、使用していないボリュームは削除する。
- S3バケット: 不要なファイルが大量に保存されていないか。また、古いバージョンが自動的に保存される設定になっていないか。
- RDSデータベース: 試用目的で作成したデータベースが稼働したままになっていないか。
- その他のサービス: Lambda関数、DynamoDBテーブル、CloudWatch Logsなど、利用状況が少ないのにコストが発生しているサービスがないか確認する。
これらのリソースを定期的に確認し、使用していないものは速やかに削除することで、予期せぬ課金を大幅に削減し、アカウントをクリーンな状態に保つことができます。
サービス利用状況の可視化とコスト分析
AWSの請求を適切に管理し、自動課金を防ぐためには、自身のサービス利用状況を常に可視化し、詳細なコスト分析を行うことが極めて重要です。
この目的のためにAWSが提供する強力なツールが、AWS Cost Explorerです。
Cost Explorerは、過去13ヶ月間のAWSコストデータを分析し、将来のコストを最大12ヶ月先まで予測することができます。これにより、サービスの利用トレンドを把握し、潜在的なコスト増加のリスクを早期に特定できます。
具体的には、Cost Explorerを使用して、日別、月別、サービス別、リージョン別、さらには特定のリソースタグ別にコストをブレイクダウンして表示することが可能です。
例えば、特定のEC2インスタンスやS3バケットがどれだけのコストを発生させているのかを具体的に把握できます。
効果的なコスト分析のためには、リソースに対する適切なタグ付け戦略も欠かせません。プロジェクト名、環境(開発・本番)、部署名など、識別しやすいタグをリソースに付与することで、Cost Explorerでタグごとのコストを簡単に集計し、責任の所在を明確にしたり、特定のコスト要因を特定したりできます。
また、Cost ExplorerはRI (Reserved Instance) や Savings Plans の推奨も提供します。これにより、コスト削減の機会を自動的に見つけ出し、より効率的なリソース利用へと導いてくれます。
定期的にCost Explorerをチェックし、自身のAWSアカウントで何がどのくらいのコストを発生させているのかを正確に理解することは、無料利用枠終了後の自動課金を防ぎ、全体的なクラウド費用を最適化するための不可欠なプロセスと言えるでしょう。
AWS無料アカウントの作り直しと注意点
アカウント再作成が認められるケースと制限
AWSアカウントの再作成、特に無料利用枠のリセットを目的とした行為は、基本的には推奨されませんし、利用規約違反となる可能性があります。
AWSの無料利用枠は、「新規アカウント作成から12ヶ月間」など、あくまで初回ユーザーの試用期間として提供されるものであり、これを永続的に利用するための仕組みではないからです。
しかし、何らかの事情で過去に閉鎖したアカウントを「作り直す」という状況は考えられます。例えば、完全に個人利用を停止し、数年後に全く別の目的で新規にAWSを利用したい場合などです。
この場合でも、過去に紐付けられていた個人情報(メールアドレス、クレジットカード情報、電話番号など)がAWSのシステムに残っている可能性があり、その情報から「以前のアカウント」と関連付けられることがあります。
そのため、たとえ新規アカウントを作成したとしても、以前に無料利用枠を使い切っている場合は、再度無料利用枠の対象とならない可能性が高いです。
仮に、個人情報を完全に刷新して新たなアカウントを作成できたとしても、それがAWSの利用規約(特に、サービスの制限やポリシーを回避する目的での複数アカウント作成禁止)に抵触するリスクを常に伴います。
最悪の場合、アカウントの停止や、これまでの利用料金の遡及請求といったペナルティが課される可能性もゼロではありません。
したがって、AWSアカウントを再作成する際には、無料利用枠のリセットを目的とせず、正当なビジネス上の理由や個人情報の完全なリフレッシュが必要な場合に限定し、かつリスクを十分に理解した上で慎重に行うべきです。
新規アカウント作成時の注意点
AWSで新規アカウントを作成する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを理解しておくことで、スムーズな利用開始と将来的なトラブルの回避につながります。
まず、登録に使用するメールアドレスと支払い情報(クレジットカード)は、過去のAWSアカウントで利用したものと重複しないように注意することが推奨されます。
特に、無料利用枠のリセットを目的とした再作成を考えている場合、これらの情報が過去のアカウントと関連付けられると、再度無料利用枠が適用されない可能性が高まります。
個人の利用であれば、新しいメールアドレスを用意し、異なる支払い方法(異なるクレジットカードなど)を使用することで、以前のアカウントとの関連付けを極力避けることができます。
ただし、これが利用規約違反とみなされるリスクは常に念頭に置いておくべきです。
次に、アカウント作成時に多要素認証(MFA)を必ず有効にしてください。ルートユーザーの認証情報はAWSアカウント全体を管理する最も強力な権限を持つため、MFAなしでの運用はセキュリティ上の大きなリスクとなります。
仮想MFAデバイス(スマートフォンアプリなど)を導入することで、不正アクセスからアカウントを保護できます。
また、最初から必要最小限のアクセス権限を持つIAMユーザーを作成し、日常の作業にはルートユーザーではなくIAMユーザーを使用する習慣をつけましょう。
ルートユーザーは、アカウント作成時や特定のアカウント管理タスク以外では使用しないのがベストプラクティスとされています。
さらに、無料利用枠の対象サービスと制限を改めて確認し、AWS Budgetsで請求アラートを設定しておくことで、意図しない課金を未然に防ぐ準備を整えておくことも重要です。
これらの注意点を踏まえることで、安全かつ効率的に新しいAWSアカウントを運用することができます。
既存アカウントの活用とコスト最適化の重要性
AWS無料利用枠が終了した後、「もうこのアカウントは使えない」と諦めてしまうのは早計です。
実は、無料利用枠が終了した既存のアカウントでも、適切なコスト最適化戦略を講じれば、非常に低コストでAWSサービスを継続して利用することが十分に可能です。
無料利用枠に固執してアカウントの作り直しを試みるよりも、既存アカウントでのコスト効率の良い運用を目指すべきであると言えます。
AWSには、様々なコスト最適化の手段が用意されています。代表的なものとしては、以下の点が挙げられます。
- リザーブドインスタンス (RI) / Savings Plans: EC2やRDSなどのサービスで、1年または3年の利用を確約することで、オンデマンド料金から大幅な割引が適用されます。特定のワークロードを継続的に利用する場合に非常に効果的です。
- スポットインスタンス: EC2インスタンスを非常に安価に利用できるオプションです。ただし、AWSのキャパシティ状況に応じてインスタンスが中断される可能性があるため、耐障害性のあるアプリケーションに適しています。
- 適切なインスタンスタイプの選択: ワークロードに合った最小限のインスタンスタイプを選ぶことで、無駄なコストを削減できます。
- 不要なリソースの削除: 定期的な棚卸しは、無料利用枠期間中だけでなく、有料期間に入ってからも継続的に行うべきです。使用していないEBSボリュームやS3バケット、RDSスナップショットなどは削除しましょう。
- S3ライフサイクルポリシーの活用: アクセス頻度の低いS3オブジェクトをGlacierなどの安価なストレージクラスに自動的に移行させることで、ストレージコストを削減できます。
- AWS BudgetsとCost Explorerの活用: 定期的な監視と分析を継続し、コスト増加の兆候を早期に捉え、対策を講じます。
これらの手法を組み合わせることで、月々の請求額を大幅に削減し、無料利用枠が終了した後もAWSを賢く、経済的に利用し続けることが可能です。
無料期間はあくまで「お試し」であることを理解し、その後の「本運用」を見据えたコスト最適化の知識と実践が、長期的なクラウド利用には不可欠となります。
まとめ
よくある質問
Q: AWS無料利用枠の解約はいつ行えば良いですか?
A: 無料利用枠の期間が終了する前に、不要なサービスを停止または削除することで、意図しない課金を防げます。また、無料期間中にアカウント自体を削除することも可能です。
Q: AWS無料アカウントを削除する手順を教えてください。
A: AWSマネジメントコンソールから、まずアカウント内の全サービスを停止・削除します。その後、AWSサポートに連絡してアカウント削除を申請する、または一定期間経過後に自動削除されるのを待つ方法があります。
Q: AWS無料アカウントを複数作成しても問題ありませんか?
A: 無料利用枠の対象となるのは、原則として一人につき一つのアカウントです。複数アカウントを作成し、無料利用枠を不正に利用しようとすると、アカウント停止などの措置を受ける可能性があります。
Q: AWS無料利用枠の12ヶ月無料期間が終了したらどうなりますか?
A: 無料利用枠の期間が終了すると、利用していたサービスは自動的に有料プランに移行し、課金が発生します。不要なサービスは期間終了前に必ず停止・削除してください。
Q: AWS無料アカウントを削除した後、作り直すことはできますか?
A: 基本的には、同一人物または同一組織で再度無料アカウントを作成することは推奨されていません。過去に利用履歴がある場合、新規アカウント作成時に制限がかかる場合があります。