領収書の「原本」はどう扱う?迷いがちな疑問を徹底解説

経費精算や確定申告で必ず直面する「領収書の原本」の扱いは、多くの事業主や経理担当者にとって頭を悩ませる問題ではないでしょうか。
特に、2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法(電帳法)によって、そのルールは大きく変化しました。
「紙の原本は捨てていいの?」「電子データは印刷しなくていいの?」といった疑問を持つ方も多いはずです。

この記事では、最新の情報を踏まえ、領収書の「原本」に関するあらゆる疑問を徹底的に解説します。
日々の業務をスムーズに進めるためのヒントとして、ぜひご活用ください。

  1. 領収書の「原本」とは?~基本から確認~
    1. 領収書「原本」の定義と重要性
    2. 領収書の正しい保管期間を把握しよう
    3. 改正電子帳簿保存法で変わる「原本」の概念
  2. 「原本」は必要?状況別で解説
    1. 電子取引データの場合:「原本」は電子データ
    2. 紙で受け取った領収書:スキャナ保存と原本破棄の条件
    3. 税務調査への備え:原本の提示を求められたら?
  3. 「原本」だけじゃない!PDF領収書の扱い
    1. PDF領収書は電子取引データに該当
    2. 保存要件を満たしてPDFを安全に管理
    3. 過去のPDF領収書を遡って電子化する際の注意点
  4. 領収書が「ぐちゃぐちゃ」「切れた」時の対処法
    1. 破損した領収書の取り扱い:読み取れればOK
    2. 領収書を紛失した場合の代替手段
    3. 万が一に備える:予防策と日常的な管理
  5. 「領収書 在中」の正しい書き方と注意点
    1. 「領収書 在中」の基本的な記載ルール
    2. 領収書送付時の封筒の選び方と送り方
    3. 電子領収書をメールで送る際の件名と添付ファイル名
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 領収書の「原本」とは具体的に何を指しますか?
    2. Q: 領収書の「原本」は必ず保管する必要がありますか?
    3. Q: PDFで受け取った領収書はどのように扱えば良いですか?
    4. Q: 領収書が「ぐちゃぐちゃ」になったり「切れた」りした場合、どうすれば良いですか?
    5. Q: 「領収書 在中」と手書きで記載しても問題ありませんか?

領収書の「原本」とは?~基本から確認~

まずは、領収書の「原本」がなぜ重要なのか、そしてその定義について基本から確認していきましょう。
この理解が、適切な経理処理を行うための第一歩となります。

領収書「原本」の定義と重要性

領収書の「原本」とは、取引があったことを証明する最初の書類、つまり発行元から直接受け取った書類そのものを指します。
一般的には、発行者のサインや印鑑、金額、日付などが記載された紙の領収書を想像される方が多いでしょう。
この原本が持つ最大の重要性は、「証拠能力の高さ」にあります。

税務調査の際には、経費として計上した支出が本当に事業に関連するものだったのかを証明するために、領収書の提示が求められます。
その際、原本が最も確かな証拠となるのです。
しかし、近年では、電子メールで送付されるPDF形式の領収書や、Webサイトからダウンロードするデータなども増加しており、これらもまた特定の条件下では「電子取引データ」として原本と同等の扱いを受けます。
改正電帳法は、この「原本」の概念に大きな影響を与えています。

領収書の正しい保管期間を把握しよう

領収書は、受け取ったらすぐに捨てていいものではありません。
法律によって定められた期間、適切に保管する義務があります。
この保管期間は、事業形態によって異なるため、ご自身のケースに合わせて正確に把握しておくことが重要です。

保管期間の起算日は、領収書を受け取った日ではなく、「事業年度の確定申告書提出期限の翌日」からとなる点に注意が必要です。
以下の表で、それぞれの保管期間を確認しておきましょう。

事業形態 保管期間 補足
法人 原則7年間 欠損金が生じた事業年度や災害損失欠損金額が生じた場合は10年間
個人事業主 青色申告: 原則7年間 前々年の所得が300万円以下であれば5年間
白色申告: 原則5年間 帳簿の保管期間は7年間

これらの期間をしっかりと守り、必要な時にすぐに提示できるよう管理しておくことが求められます。

改正電子帳簿保存法で変わる「原本」の概念

2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法(電帳法)は、領収書の「原本」に対する考え方を大きく変えました。
特に重要なポイントは、「電子取引データの電子保存義務化」と「紙の領収書のスキャナ保存要件の緩和」です。
電子メールやECサイトの購入履歴など、電子的に受け取った領収書は、一定の保存要件を満たした上で、電子データのまま保存することが義務付けられました。
これらを印刷して紙で保存することは原則として認められません。
つまり、電子データがそのまま「原本」として扱われるようになったのです。

一方、紙で受け取った領収書については、従来通り紙で保存することも可能ですが、スキャナやスマートフォンで読み取り、電子化して保存する「スキャナ保存」も認められています。
このスキャナ保存の要件を満たしていれば、なんとスキャンした後の紙の原本は破棄しても問題ありません。
ただし、タイムスタンプの有無や定期検査の結果など、厳密な運用が求められるため、破棄の判断は慎重に行う必要があります。
電帳法の要件に沿った運用をすることで、ペーパーレス化と業務効率化を同時に実現できるでしょう。

「原本」は必要?状況別で解説

改正電帳法により、領収書の「原本」に対する考え方は柔軟になりましたが、具体的な状況によってその扱いは異なります。
どのような場合に紙の原本が必要で、どのような場合に不要となるのか、詳しく見ていきましょう。

電子取引データの場合:「原本」は電子データ

近年、Amazonや楽天などのECサイトでの購入、クラウドサービス利用料、公共料金のWeb明細など、電子的に領収書を受け取る機会が増えました。
これらはすべて電子帳簿保存法における「電子取引データ」に該当します。
電子取引データとして受け取った領収書は、その電子データ自体が「原本」となります。
したがって、これを印刷して紙で保存することは原則として認められていません。

電子データのまま、特定の保存要件を満たして保存する義務があります。
具体的には、真実性(データの改ざん防止)と可視性(データの検索性)を確保するための措置が必要です。
例えば、タイムスタンプを付与する、訂正・削除履歴が残るシステムを利用する、そして取引年月日、金額、取引先で検索できる機能を用意する、といった要件が挙げられます。
これらの要件を満たし適切に保存することで、税務調査の際にも問題なく対応できます。

紙で受け取った領収書:スキャナ保存と原本破棄の条件

飲食店や小売店で受け取る紙の領収書は、従来通り紙のまま保管することも可能です。
しかし、オフィスのペーパーレス化を進めたい、書類の管理を効率化したいという場合は、スキャナ保存が非常に有効な選択肢となります。
改正電帳法では、スキャナ保存の要件が大幅に緩和され、スキャンした後の紙の原本を破棄できるケースが増えました。

紙の原本を破棄するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
例えば、スキャン画像の解像度や階調の確保、タイムスタンプの付与、入力者情報の記録、検索機能の確保などが挙げられます。
これらの要件をクリアし、税務署への届出(初めてスキャナ保存を導入する場合)を適切に行っていれば、安心して原本を破棄することができます。
ただし、すべての要件を完璧に満たしているか不安な場合は、税理士などの専門家と相談し、運用体制を整えてから破棄の判断をすることをおすすめします。
定期的な運用チェックも重要です。

税務調査への備え:原本の提示を求められたら?

税務調査が行われた際、税務署から領収書の提示を求められることがあります。
この時、「紙の原本がないと困るのでは?」と心配になる方もいるかもしれません。
しかし、電子帳簿保存法の要件に従って適切に電子保存されている場合は、電子データそのものが原本として認められます。
つまり、スキャナ保存後に紙の原本を破棄していたとしても、適切に電子化されたデータを提供すれば問題ありません。

税務調査官は、保存された電子データが電帳法の要件を満たしているか、改ざんなどの不正がないかを確認します。
そのため、データの真実性(タイムスタンプや訂正・削除履歴の確保)と可視性(検索機能)が非常に重要になります。
日頃から電帳法に対応したシステムで適切に管理し、いつでも必要なデータを提示できる状態にしておくことが、税務調査への最善の備えとなります。
不安な場合は、事前に税理士に相談し、自社の運用が適切か確認してもらうと良いでしょう。

「原本」だけじゃない!PDF領収書の扱い

デジタル化が進む現代において、PDF形式で送られてくる領収書は非常に一般的になりました。
しかし、「PDFは印刷して保存するべき?」「どう扱えばいいの?」と疑問に思う方も少なくありません。
ここでは、PDF領収書の適切な扱い方について詳しく解説します。

PDF領収書は電子取引データに該当

PDF形式でメールに添付されて送られてくる領収書や、ウェブサイトからダウンロードする領収書は、すべて電子帳簿保存法上の「電子取引データ」に該当します。
これは、紙媒体ではなく、最初から電子的に授受された取引情報だからです。
電子取引データは、原則として電子データのまま保存することが義務付けられており、印刷して紙で保存することは認められていません。
この点は、紙で受け取った領収書をスキャナ保存するケースとは根本的に異なります。

つまり、PDF領収書を受け取った場合は、そのPDFファイルを適切に保存管理することが求められます。
セキュリティ上の観点からも、PDF形式での保存は推奨されています。
ファイルが破損したり、意図せず改ざんされたりするリスクを軽減するため、信頼できるストレージサービスやシステムを利用することが重要です。
紙での保存に慣れている方は特に注意が必要なポイントです。

保存要件を満たしてPDFを安全に管理

PDF領収書を電子データのまま保存する際には、電子帳簿保存法が定める「真実性の確保」と「可視性の確保」という二つの要件を満たす必要があります。
真実性の確保とは、データが改ざんされていないことを証明するもので、具体的には以下のいずれかの措置が必要です。

  • タイムスタンプを付与する
  • 訂正・削除の履歴が残る、または訂正・削除ができないシステムを利用する
  • 改ざん防止のための事務処理規定を設けて運用する

一方、可視性の確保とは、データの内容をいつでも確認できる状態にするもので、以下の要件を満たす必要があります。

  • ディスプレイやプリンターを設置し、速やかに出力・表示できること
  • 「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できる機能があること

これらの要件を満たすためには、電子帳簿保存法に対応したシステムを導入することが最も効率的で確実な方法です。
これにより、安全かつ法的に問題のない形でPDF領収書を管理できます。

過去のPDF領収書を遡って電子化する際の注意点

電子帳簿保存法の改正に伴い、これまでの紙媒体での保存から電子保存へと移行を検討している企業や個人事業主も多いでしょう。
しかし、スキャナ保存を始めた日よりも前の期間に受け取った紙の領収書を遡って電子化する場合には、注意が必要です。
「過去分の電子化」については、税務署への事前の届出が必要な場合があります。
具体的な手続きや要件は、国税庁のウェブサイトや税理士などの専門家から最新情報を入手し、確認するようにしてください。

また、過去の領収書を大量に電子化する際には、作業量が多くなるだけでなく、適切にスキャン保存の要件を満たしているか、一つ一つ確認する必要があります。
例えば、タイムスタンプが付与されていない、解像度が低い、といった不備があると、せっかく電子化しても法的に認められない可能性も出てきます。
そのため、無理に過去分すべてを電子化しようとせず、まずは直近の取引から電子化を始めるなど、段階的な導入を検討することも賢明な選択です。
計画的な移行が、トラブルを避ける鍵となります。

領収書が「ぐちゃぐちゃ」「切れた」時の対処法

どんなに注意していても、領収書が破損してしまったり、うっかり紛失してしまったりすることは起こりえます。
そんな時でも慌てずに対応できるよう、具体的な対処法を知っておきましょう。

破損した領収書の取り扱い:読み取れればOK

ポケットに入れたまま洗濯してしまったり、カバンの中で折れ曲がってしまったりと、領収書が破損することは珍しくありません。
しかし、多少ぐちゃぐちゃになっていたり、一部が切れてしまっていたりしても、記載されている情報が判読できれば問題なく経費として認められるケースがほとんどです。
具体的には、以下の情報が読み取れるかどうかが重要になります。

  • 発行元の名称
  • 発行日
  • 金額
  • 但し書き(取引内容)

スキャナ保存する場合でも、これらの情報が鮮明に読み取れるかを確認しましょう。
もし、一部が不鮮明で読み取れない場合は、余白にその旨をメモしたり、関連する資料(例えば、商品のパンフレットや取引先の情報など)を添付して補完したりすると良いでしょう。
ただし、あまりにも破損がひどく、重要な情報が全く判読できない場合は、次に説明する「紛失時の対処法」を参考にしてください。

領収書を紛失した場合の代替手段

領収書を紛失してしまった場合でも、経費として計上を諦める必要はありません。
いくつかの代替手段がありますので、状況に応じて適切な方法を選びましょう。

  1. 発行元に再発行を依頼する: 最も確実な方法ですが、発行元には領収書を再発行する法的な義務はありません。丁寧にお願いし、再発行が可能か確認しましょう。
  2. レシートで代用する: レシートには通常、支払いの日時、場所、購入品目、金額などが記載されています。これらが揃っていれば、領収書の代わりとして十分利用できます。
  3. 出金伝票に記録する: どうしても領収書やレシートがない場合、自分で出金伝票を作成し、そこに「支払先」「日付」「支払金額」「但し書き(購入品目やサービス内容)」「領収書紛失」と明記して残すことができます。これは最終手段ですが、経費計上の根拠となります。
  4. クレジットカードの明細を利用する: クレジットカードで支払った場合は、利用明細が支払いの証明となります。利用明細と、必要であれば購入履歴などの資料を合わせて保存しておきましょう。

いずれの場合も、なぜ領収書がないのか、という理由を明確にし、可能な限り客観的な証拠を補完することが重要です。

万が一に備える:予防策と日常的な管理

領収書の破損や紛失は、経理業務の負担増だけでなく、最悪の場合、経費として認められないリスクにもつながります。
そのため、日頃からの予防策と適切な管理が非常に重要です。
まず、受け取った領収書は、すぐに財布やポケットにしまい込まず、専用のファイルやボックスに保管する習慣をつけましょう。
これにより、紛失や破損のリスクを大幅に減らすことができます。

さらに効果的なのは、「電子化システムの導入」です。
スマートフォンアプリやスキャナを使って、受け取ったその日のうちに領収書をスキャンし、電子データとして保存してしまえば、紙の紛失や破損の心配はなくなります。
電子帳簿保存法に対応したシステムであれば、タイムスタンプ付与などの要件も自動的に満たしてくれるため、安心して管理を任せられます。
また、複数人で経費処理を行う場合は、定期的なチェック体制を確立し、誰かが誤って領収書を破棄したり紛失したりしないよう注意喚起を徹底することも大切です。

「領収書 在中」の正しい書き方と注意点

領収書を郵送する際、封筒に「領収書 在中」と記載するのを目にしたことがある方は多いでしょう。
これは単なる習慣ではなく、重要な意味合いを持っています。
ここでは、その正しい書き方と、郵送時の注意点について解説します。

「領収書 在中」の基本的な記載ルール

「領収書 在中」という記載は、受取人に対して封筒の中に重要書類である領収書が入っていることを知らせるためのものです。
これにより、誤って破棄されたり、他の書類と混同されたりするのを防ぐ目的があります。
基本的な記載ルールは以下の通りです。

  • 記載場所: 封筒の表面、宛名の左下あたりに記載するのが一般的です。
  • 記載方法: 赤色のペンではっきりと書くか、スタンプを使用するとより目立ち、重要性が伝わりやすくなります。
  • 文字の大きさ: 他の文字よりも少し大きめに書くと良いでしょう。

特に、取引先に送る場合、経理担当者の手元に確実に届くよう、視覚的な配慮は欠かせません。
また、領収書以外に請求書や納品書なども同封する場合は、「領収書・請求書 在中」といったように、内容物をすべて明記すると、より丁寧な印象を与えられます。

領収書送付時の封筒の選び方と送り方

領収書を郵送する際には、いくつかの注意点があります。
まず、封筒の選び方ですが、領収書を折らずに入れられるA4サイズの角形2号封筒などが推奨されます。
領収書が折れてしまうと、見た目が悪くなるだけでなく、スキャン保存する際に折り目が邪魔になる可能性もあります。
封筒の色は、白や薄い青色など、一般的なビジネスシーンに適した色を選ぶと良いでしょう。

送り方については、領収書は「信書」に該当するため、日本郵便のサービス(定形郵便、特定記録郵便、簡易書留など)を利用して送る必要があります。
宅配便やメール便で送ることは、信書便法に違反する可能性があるため避けてください。
特に、重要な領収書や高額な領収書を送る場合は、追跡サービスのある特定記録郵便や、万一の補償も付く簡易書留などを検討すると安心です。
受取人側の利便性も考慮し、配達日や時間帯を指定できるサービスを利用するのも一つの手です。

電子領収書をメールで送る際の件名と添付ファイル名

電子領収書をメールで送る際も、紙の「領収書 在中」と同様に、受取人が内容をすぐに理解し、適切に処理できるよう配慮が必要です。
まず、メールの件名には、「【重要】〇月度領収書のご送付(株式会社〇〇)」のように、送付元と内容が明確に分かるように記載しましょう。
これにより、他のメールと混同されることなく、受信トレイで埋もれてしまうのを防げます。

次に、添付ファイル名も重要です。
単に「receipt.pdf」とするのではなく、「2023年10月度_株式会社〇〇_領収書.pdf」のように、日付、会社名、内容を具体的に含めることで、受取人がファイルをダウンロードした後も管理しやすくなります。
さらに、セキュリティ対策として、パスワード付きZipファイルに添付して送付したり、ダウンロードURLを別途送付するなどの対応も検討すると良いでしょう。
これらの配慮は、相手への心遣いだけでなく、誤送信や情報漏洩のリスクを軽減する上でも非常に重要となります。