【業界別】銀行員の生涯年収は？他業種と比較して徹底解説

銀行員の生涯年収、実際はどれくらい？

現代の銀行員の年収水準

銀行員の年収は、多くの人が想像するよりも高い水準を維持しています。
2024年度の国内銀行63行の平均年間給与は653万3,000円を記録し、これは過去最高を更新するものでした。
前年度から3.1%増、実に20万2,000円もの増加です。

国税庁が発表した「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、日本の給与所得者全体の平均年収は460万円。
これと比較すると、銀行員は平均より123万円も高い年収を得ていることになります。
この高い水準は、銀行が社会インフラを支える重要な役割を担う専門職であること、そして近年の人材獲得競争の激化が背景にあります。

学生採用の厳しさや、優秀な人材の流出を防ぐため、銀行は賃上げを避けて通れない状況にあります。
今後も、待遇改善の一環として賃上げの流れが続くと見られており、銀行員の平均年収はさらに上昇する可能性を秘めています。
安定した高収入を目指す方にとって、銀行業界は魅力的な選択肢の一つと言えるでしょう。

銀行業界全体の生涯賃金の平均像

銀行員として一生涯を通じて得られる賃金、いわゆる生涯賃金は、業界全体で見ると平均で2億5,000万円とされています。
この金額は、日本の平均的な生涯賃金と比較してもかなり高い水準であり、安定した生活設計を望む人々にとって大きな魅力となります。
しかし、この平均値はあくまで業界全体を包括したものであり、すべての銀行員が同等の生涯賃金を得られるわけではありません。

特に、銀行の業態によって生涯賃金には大きな差があります。
例えば、メガバンクの生涯賃金は、一部の調査結果によると大手商社の半分以下となるケースもあると指摘されています。
これは、メガバンク特有の年収モデルや、商社のボーナス体系の特色が影響していると考えられます。

また、個人のキャリアパスや出世の度合いによっても、生涯賃金は大きく変動します。
一概に「銀行員は2億5,000万円稼げる」と考えるのではなく、所属する銀行や自身のキャリア戦略が非常に重要になることを理解しておく必要があります。
生涯を通じて安定した高収入を得るためには、長期的な視点でのキャリアプランが不可欠です。

年収格差の実態と傾向

銀行業界と一括りにしても、実際には所属する銀行の規模や業態によって年収には大きな格差が存在します。
具体的には、メガバンク、地方銀行、そして第二地方銀行の間で明確な年収の違いが見られます。
あるデータでは、大手行と第二地銀の間で年間252万円もの差があると報告されており、これは決して無視できない大きな乖離です。

この年収格差は、近年縮まるどころか、むしろ広がる傾向にあると指摘されています。
大手銀行は、より高収益な事業展開や海外事業の拡大、そして優秀な人材確保のための賃上げ競争によって、平均年収を押し上げています。
一方で、地方銀行や第二地方銀行は、地域経済の状況や収益構造の課題から、賃上げの余力が限られているケースも少なくありません。

この格差は、就職活動や転職活動において非常に重要な考慮事項となります。
銀行業界を志す際は、単に「銀行員」という職種だけでなく、どのタイプの銀行でキャリアを築くかを生涯年収に直結する要素として深く検討する必要があります。
それぞれの銀行が持つ強みや事業戦略を理解し、自身のキャリアプランと照らし合わせることが賢明な選択に繋がるでしょう。

【年代別】銀行員の平均年収と生涯年収の推移

20代～30代：基礎を築く成長期

銀行員としてのキャリアをスタートさせる20代から、責任ある立場に就き始める30代は、年収が着実に増加していく時期です。
銀行業界では伝統的に年功序列型の給与体系が根強く残っており、勤続年数とともに基本給が上昇していくのが一般的です。
参考情報でも「20代の年収は比較的低い」とされていますが、これは他業種の高給取りと比べた場合であり、一般的な水準で見れば安定した収入を得られると言えます。

この時期は、業務知識やスキルの習得が中心となります。
融資、為替、資産運用など、銀行業務の多岐にわたる分野を経験し、専門性を高めていくことが求められます。
新入行員研修やOJTはもちろん、自らファイナンシャルプランナーや証券アナリストなどの資格取得に励むことで、将来的なキャリアアップの土台を築きます。

30代に入ると、主任や係長といった役職に就き始め、年収も一段階上がります。
この頃から、個人のパフォーマンスや上司からの評価が昇進・昇格に影響を与えるようになり、同期との間で徐々に差がつき始める時期でもあります。
銀行員として大きく飛躍するための基礎を固める、非常に重要な成長期と言えるでしょう。

40代：キャリアのピークと年収の飛躍

銀行員にとって40代は、まさにキャリアのピークを迎える時期と言えます。
この年代では、支店長や部長、チームリーダーといった要職に就く行員が増え、それに伴い年収も大きく飛躍します。
参考情報にもあるように、「出世競争に勝ち抜いた層は年収2,000万円を超えることもある」という具体的な数字は、銀行業界の40代がいかに高収入を得られる可能性を秘めているかを示しています。

この高収入は、長年にわたる経験と培った専門知識、そしてマネジメント能力の高さが評価された結果です。
企業の資金調達支援やM&Aアドバイザリー、富裕層向けの資産運用コンサルティングなど、高度な専門性を要する業務を担当する機会も増え、銀行の中核を担う存在となります。

しかし、この「ピーク」はすべての行員に訪れるわけではありません。
昇進・昇格は限られたポストを巡る競争であり、ここでは個人の実績やリーダーシップ、社内外での人脈構築が極めて重要になります。
メガバンクに顕著な「ジェットコースター型」の年収モデルでは、この40代のピークが最も輝く時期であり、その後の年収変動に備える必要性も示唆されます。

50代以降：キャリアパスと年収の変動

銀行員のキャリアにおいて、50代以降は年収モデルが大きく変動する時期として知られています。
特にメガバンクでは、「ジェットコースター型」の年収モデルが指摘されており、52歳頃を境に年収が半減する傾向が見られます。
これは、役職定年制度や、早期退職・関連会社への出向といったキャリアパスの変化が主な要因です。

もちろん、すべての行員が年収半減の憂き目に遭うわけではありません。
経営幹部として残る者や、特定の専門性を活かして高い報酬を維持する者もいます。
しかし、多くの行員にとっては、これまでのキャリアで培った知識や経験を活かし、銀行グループ内の別会社や取引先企業、あるいは全く異なる業界へと活躍の場を移す時期となります。

この時期に、いかに自身の市場価値を高めておくかが、50代以降のセカンドキャリアの充実度を左右します。
若手のうちから特定の分野での専門性を磨いたり、社外でも通用するスキルを身につけたりすることが重要です。
銀行業界の平均年齢が40.3歳という点も踏まえると、長く安定して活躍するためには、早期からのキャリア戦略が不可欠だと言えるでしょう。

銀行員の生涯年収を他業界と比較！上場企業や電力会社との差は？

「平均」を上回るも、「トップ層」との差

銀行員の平均年収653万3,000円は、国税庁の平均年収460万円を大きく上回る高水準です。
この事実は、銀行業界が安定した高収入を得られる魅力的な選択肢であることを明確に示しています。
多くの企業と比較しても、銀行は恵まれた給与体系を持つと言えるでしょう。

しかし、日本には銀行員の平均をはるかに凌駕する高年収企業も存在します。
例えば、一部の専門職やIT業界、特にキーエンスのような超高収益企業では、生涯賃金が6億円を超えることもあります。
このようなトップ層の企業と比較すると、銀行業の平均生涯賃金2億5,000万円は、必ずしも最高峰とは言えないかもしれません。

この比較からわかるのは、銀行員は「日本の平均よりはるかに高い」が、「日本で最も稼げる」わけではないということです。
高収入を目指す際の選択肢として、銀行業界は非常に有力ですが、特定の業界や企業では、さらに高い収入を得られる可能性があることを理解しておくことが重要です。
自身のキャリアゴールに合わせて、業界・企業選びを慎重に行う必要があります。

商社・IT・コンサルなど高収益業界との比較

銀行業界と比較されやすい高収益業界として、総合商社、IT業界、そしてコンサルティング業界が挙げられます。
これらの業界は、その事業特性から高額な報酬を支払う傾向にあります。
特に総合商社は、国内外での大規模な取引や投資を通じて高い収益を上げており、メガバンクの生涯賃金が大手商社の半分以下という調査結果もあるように、年収水準では銀行を上回ることが少なくありません。

IT業界も、テクノロジーの進化と共に急速に成長し、高い専門性を持つエンジニアやデータサイエンティストなどは高待遇です。
成果主義が浸透しているコンサルティング業界も、プロジェクトの成功に応じたインセンティブやベース給の高さから、非常に高い年収を得られる可能性があります。
これらの業界は、特定のスキルや実績が直接報酬に結びつきやすいという特徴があります。

銀行員は安定性や手厚い福利厚生が魅力ですが、純粋な年収額だけで比較すると、これらの業界のトップ企業には及ばない場合もあります。
キャリア選択においては、年収だけでなく、仕事内容、ワークライフバランス、将来性など、多角的な視点から比較検討することが重要です。
どの業界が自身の価値観やキャリアプランに合致するかを見極める必要があります。

安定性と福利厚生の価値

年収額だけで仕事の価値を判断するのは早計です。
銀行業界は、他の高収益業界と比較して純粋な年収額では劣る部分があるかもしれませんが、その「安定性」と「手厚い福利厚生」は大きな魅力です。
電力会社や一部の伝統的な上場企業も同様に、高い安定性と充実した福利厚生が特徴であり、これらは生涯を通じて安心して働ける環境を提供します。

銀行では、住宅手当、家族手当、財形貯蓄制度、企業年金制度、社員食堂、保養施設の利用など、多岐にわたる福利厚生が整備されていることが一般的です。
これらの目に見えない経済的メリットは、年収に上乗せされる形で、従業員の生活を豊かにします。
また、景気の変動に比較的強く、解雇のリスクが低い点も、長期的なキャリアを考える上で大きな安心材料となります。

特に、50代以降のキャリアパスが変動しやすい銀行業界において、退職金制度や関連会社への再就職支援といったサポート体制は、従業員のセカンドキャリアを支える重要な要素となります。
年収額だけでなく、これらの安定性や福利厚生を「トータルパッケージ」として評価することで、銀行員の生涯年収の真の価値が見えてきます。

ゼネコン、全農、群馬銀行…具体的な生涯年収の傾向

地方銀行の生涯年収の実態（群馬銀行の例から）

日本の金融業界を支える地方銀行は、地域経済に深く根ざした事業展開が特徴です。
参考情報では特定の銀行名は挙げられていませんが、地方銀行を代表する一例として「群馬銀行」を挙げてその傾向を見てみましょう。
地方銀行の年収は、メガバンクに比べて平均的に低い傾向にあり、前述の「大手行と第二地銀で252万円の年収差」というデータは、まさにこの実態を物語っています。

しかし、地方銀行にも独自の魅力があります。
地域に密着したサービスを展開するため、転勤が広範囲に及ぶことが少なく、地元で腰を据えて働きたい人には適しています。
また、地域の中小企業や個人事業主との緊密な関係を築き、地域の発展に直接貢献できるというやりがいも大きいでしょう。
年収額だけでは測れない、地域への貢献という側面が強くあります。

生涯年収で見ても、メガバンクには及ばないかもしれませんが、地方銀行も安定した給与と手厚い福利厚生を提供しています。
地方銀行のキャリアでは、地域経済のエキスパートとして、中小企業の経営支援や個人のライフプランニングなど、幅広い分野で専門性を磨くことができます。
自身のキャリアパスと地域への貢献意欲を天秤にかけ、選択することが重要になります。

ゼネコン業界との比較：プロジェクト型報酬と安定性

ゼネコン（総合建設業）業界は、大規模な建設プロジェクトを手掛け、社会インフラを形成する重要な役割を担っています。
この業界の年収モデルは、銀行業界とは異なり、プロジェクトの規模や成果、そして個人の技術力や役職に大きく左右される傾向があります。
特にプロジェクトマネージャーや特定の専門技術を持つ技術者は、高額な報酬を得ることが可能です。

しかし、ゼネコン業界は景気の波や公共事業の動向、そして資材価格の変動などによって、業績が不安定になるリスクも持ち合わせています。
プロジェクトが終了すれば異動や配置転換も多く、安定した環境を求める人には必ずしも向かないかもしれません。
銀行業界が比較的安定した給与体系と長期的な雇用を提供するのに対し、ゼネコンはより成果主義的でダイナミックな報酬体系と言えるでしょう。

銀行員は、景気に左右されにくい金融サービスを提供することで、比較的安定した収入を確保できます。
一方、ゼネコンの社員は、完成した建造物が形として残り、社会に貢献する達成感を味わえるという、銀行とは異なる種類のやりがいがあります。
両業界の年収を比較する際は、単なる金額だけでなく、業界の特性、安定性、仕事の性質といった要素も考慮に入れる必要があります。

全農（JA）との比較：準公務員的安定と地域貢献

全農（全国農業協同組合連合会）やJAグループは、農業と地域社会を支える協同組合組織であり、その給与体系には準公務員的な安定性という特徴が見られます。
銀行員と同様に、地域社会への貢献度が高く、安定した雇用環境が魅力です。
年収水準は、一般的には都市部のメガバンクと比較するとやや低い傾向にあるかもしれませんが、福利厚生の充実度やワークライフバランスの取りやすさには定評があります。

全農の職員は、農業生産者の支援、農産物の流通、地域住民への金融サービス（JAバンク）や共済サービス（JA共済）など、多岐にわたる業務に携わります。
これにより、地域経済全体を支えるという、銀行員とは異なる形での社会貢献を実感できます。
年功序列の給与体系が基本であり、長期的なキャリアプランを立てやすいという点も共通しています。

銀行員と全農職員のキャリア選択は、個人の価値観によって大きく異なります。
よりビジネスライクな金融市場で活躍したいのか、それとも地域に密着して農業や生活全般をサポートする仕事に魅力を感じるのか、という視点が重要になります。
どちらも社会貢献性の高い仕事ですが、年収水準や働き方の特性には違いがあり、自身のキャリアプランに合った選択が求められます。

銀行員の生涯年収を左右する要因とキャリアアップのヒント

所属する銀行の業態と規模

銀行員の生涯年収に最も大きな影響を与える要因の一つは、「どの銀行に所属するか」です。
既に述べたように、大手銀行（メガバンク）、地方銀行、第二地方銀行の間には明確な年収格差が存在します。
「大手行と第二地銀では252万円の差」というデータは、この事実を端的に示しています。

メガバンクは、国内外に広がる広範な事業展開と高い収益力により、高水準の給与を提供します。
一方、地方銀行や第二地方銀行は、地域密着型のビジネスモデルであり、地域経済の規模や収益状況が年収に直結しやすい傾向があります。
キャリアの初期段階でどの業態を選ぶかは、生涯年収を大きく左右する重要な決断となります。

自身のキャリアプランを考える際には、単に平均年収の数字だけでなく、それぞれの銀行が持つ企業文化、事業戦略、そして将来性を総合的に判断することが重要です。
高収入を目指すのであればメガバンク、地域貢献や安定性を重視するなら地方銀行、というように、自身の価値観に合った選択をすることが、充実したキャリアに繋がります。

個人の成果とキャリアパス

銀行業界では年功序列の側面が強いとはいえ、個人の成果や能力が年収アップに直結する要素も多分にあります。
特に40代で年収2,000万円を超えるようなケースは、単に勤続年数が長いだけでなく、出世競争を勝ち抜き、要職に就いた結果です。
昇進・昇格は、営業成績、プロジェクトの成功、チームマネジメント能力、そして組織への貢献度によって決まります。

また、金融市場の多様化やデジタル化の進展に伴い、特定の専門スキルを持つ人材の価値は高まっています。
例えば、M&Aや事業承継に関する専門知識、デリバティブなどの金融商品に関する深い理解、データサイエンスやAIを活用した分析能力、語学力などが挙げられます。
これらのスキルは、高難易度の資格取得（証券アナリスト、FP、MBAなど）を通じて身につけることができます。

近年、銀行は専門性の高い分野での中途採用を積極化しており、これは「個人の成果と専門性」がより重視される傾向にあることを示しています。
キャリアアップを目指す銀行員は、自身の強みを明確にし、それを高めるための自己投資を惜しまないことが、生涯年収を最大化するための鍵となります。

将来を見据えたキャリア戦略

銀行員として長く活躍し、生涯年収を最大化するためには、将来を見据えた綿密なキャリア戦略が不可欠です。
特に、50代以降の年収半減リスクを考慮すると、若いうちからセカンドキャリアの可能性を模索し、準備を進めることが賢明です。
例えば、銀行外でも通用するような専門スキル（例：中小企業診断士、公認会計士、弁護士など）の習得や、異業種の人脈形成などが挙げられます。

銀行業界全体が賃上げ傾向にあるのは喜ばしいことですが、業態間の年収格差が広がっているという現実も忘れてはなりません。
自身がどの領域で専門性を高め、どのような貢献をしたいのかを明確にし、その目標達成に最も適した環境を選ぶことが重要です。
例えば、フィンテック分野への参画、サステナブルファイナンスの専門家になるなど、成長分野を見極める目も必要です。

「金融プロフェッショナル」としての市場価値を高めるためには、常に学び続ける姿勢が不可欠です。
激変する金融環境の中で、新しい知識やスキルを積極的に習得し、変化に対応できる柔軟性を持つこと。
それが、銀行員としてのキャリアを豊かにし、安定した高い生涯年収を実現するための最も確かな道と言えるでしょう。