概要: 本記事では、NTTやNHKをはじめとする大手企業における60歳からの再雇用制度に焦点を当てます。年収の実態や、学校の先生、外資系企業など、様々なケースを比較しながら、再雇用を検討する際に知っておきたい情報を解説します。
「再雇用」のリアル:NTT・NHK・大手企業の実情と知っておきたい年収
定年後の再雇用制度は、多くの企業で導入されていますが、その実情は必ずしも理想的なものではありません。
特に、NTTやNHKといった大手企業では、制度の変更や「役職定年」制度の導入により、年収が大幅に減少するケースも少なくありません。
本記事では、再雇用のリアルについて、NTT、NHK、および大手企業の実情を最新のデータや傾向を交えながら解説します。
NTT・NHKの再雇用事情:60歳からの働き方
NTTの新たな賃金制度と役職定年の影響
NTTでは、60歳で定年を迎えますが、希望者に対して65歳までは子会社などで働ける「再雇用制度」を設けています。しかし、この制度の実態は、現役時代とは大きく異なるものです。
NTTが2013年秋に導入した新しい賃金制度は、40~50代の現役世代の人件費上昇を抑制し、その原資を60~65歳の賃金に充てるという仕組みが取られました。これにより、60歳以降の年収は300万~400万円程度に引き上げられた一方、現役世代の賃金カーブは緩やかになる傾向が見られます。
さらに、NTTでは「役職定年」制度も導入されており、役職を離れることで年収が3割程度減少するケースも報告されています。これは、長年培ってきたキャリアや役職が定年後には評価されにくくなる現実を浮き彫りにしています。
再雇用後の働き方は、現役時代とは異なる業務内容や責任範囲になることが多く、待遇面だけでなく、モチベーション維持の観点からも事前の準備が重要だと言えるでしょう。
NHKの制度改革と早期退職の動向
NHKにおいても、近年、人事制度の大幅な改革が進められています。2022年度以降には、管理職を減らす方針のもと「役職定年制」が導入され、職員の待遇に大きな変化をもたらしています。
NHK職員は一般的に平均年収が1,000万円を超えるというデータもありますが、この制度改革は、組織のスリム化と人件費の抑制を目的としています。役職定年制により、多くの管理職が定年前であっても役職を離れることになり、それに伴い給与も減少する可能性が高まります。
また、NHKでは50~56歳の職員を対象とした早期退職制度も導入されました。これは、組織の新陳代謝を促すとともに、人事費の適正化を図る狙いがあると考えられます。高額な年収を誇ってきたNHK職員にとっても、定年後の再雇用やキャリアパスは決して楽観視できるものではなく、自身の将来設計を早期から考える必要に迫られています。
こうした制度変更は、公的な性格を持つ企業においても、少子高齢化や社会情勢の変化に対応するために避けられない流れと言えるでしょう。
大手企業における再雇用の現状と課題
NTTやNHKに限らず、多くの子持ち企業で再雇用制度は導入されています。厚生労働省のデータによると、65歳までの雇用確保措置として「継続雇用制度」を導入している企業は83.3%に上ります。
しかし、制度の普及とは裏腹に、再雇用後の待遇は決して満足のいくものではありません。パーソル総合研究所の調査では、定年後再雇用者の約9割が定年前より年収が下がり、平均で44.3%も減少するという衝撃的な結果が出ています。
再雇用後の給与は、定年前の年収の半分以下になるケースも少なくなく、現役時代の7~8割程度に設定されることが一般的です。年収の減額に加え、役職定年によって役職を解かれ実質的な降格となるケースも多く、これらが再雇用者のモチベーション維持を難しくする要因となっています。
企業側は再雇用者に対し、豊富な経験やスキルを活かした「即戦力」や「若手指導」を期待しますが、給与の減少や役割の変化、現役時代とのコミュニケーションギャップなど、多くの課題が顕在化しています。こうした現状を理解し、再雇用制度を賢く利用するための準備が不可欠です。
再雇用で変わる年収:NTTデータ・NTT西日本・nspの実例
再雇用後の年収減少の実態
定年後の再雇用における年収の減少は、多くのシニア層にとって最も大きな懸念事項の一つです。連合の調査によると、60~64歳の平均年収は、現役時代の約52.7%にまで減少するというデータが示されています。
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を見ても、この傾向は明らかです。55~59歳の平均年収が559.6万円であるのに対し、60~64歳では平均423.9万円と、約76%の水準にまで落ち込んでいます。
企業規模が大きくなるほど現役時代の年収水準は高くなる傾向がありますが、同時に再雇用後の減額率も大きくなる傾向が見られます。これは、大手企業が人件費抑制や組織のスリム化をより積極的に進めているためと考えられます。
定年前の年収を基準に老後の生活設計をしている場合、この大幅な年収減は予期せぬ経済的負担となりかねません。再雇用制度を利用する際には、事前に自身の年収がどの程度減少するのかを具体的に把握し、生活費の見直しや資産形成の計画を立てておくことが極めて重要です。
NTTグループにおける年収水準の変化
NTTグループ全体で見た場合、再雇用後の年収水準には一定の傾向が見られます。前述の通り、NTT本体では60歳以降の年収を300万~400万円程度に引き上げる動きがありましたが、これは現役世代の賃金カーブを緩やかにすることで捻出された原資によるものです。
NTTデータやNTT西日本といったグループ会社でも、同様の傾向が見られると考えられます。これらの企業では、子会社や関連会社での再雇用が一般的であり、本体での現役時代とは異なる職務内容や責任範囲になることが多いため、それに合わせて給与水準も再設定されます。
特に、役職定年制度の適用を受けると、管理職手当などがなくなるため、年収が3割程度減少するというケースも珍しくありません。これは、役職手当が年収に占める割合が大きい大手企業で顕著な傾向です。
NTTグループで再雇用を考える場合は、自身の現役時代の年収だけでなく、再雇用先の会社や役職、業務内容によって年収が大きく変動する可能性があることを認識しておく必要があります。具体的な年収シミュレーションを会社の人事部門と相談し、現実的な計画を立てることが賢明です。
具体的な減額率と平均年収データ
再雇用後の年収減額は、単なる給与額の減少にとどまらず、ライフプラン全体に影響を及ぼします。以下に、再雇用後の年収に関する一般的なデータと減額率の傾向をまとめました。
| 調査主体 | 対象 | 現役時との比較 | 再雇用後の平均年収/減額率 |
|---|---|---|---|
| 連合 | 60~64歳 | 現役時代の約52.7% | 約半減 |
| 厚生労働省 (賃金構造基本統計調査) | 60~64歳 | 55~59歳(559.6万円)の約76% | 平均423.9万円 |
| パーソル総合研究所 | 定年後再雇用者 | 約9割が年収減 | 平均44.3%減 |
これらのデータから、再雇用後の年収は現役時代の7~8割程度、あるいはそれ以下に設定されることが一般的であることが分かります。特に、役職定年を経験すると、その減額幅はさらに大きくなる傾向があります。
再雇用を検討する際は、これらの平均データだけでなく、自身の会社の就業規則や賃金規定を詳細に確認し、具体的な減額幅を把握することが重要です。また、減額された年収で現在の生活水準を維持できるか、不足分をどのように補うかといった経済的なシミュレーションも欠かせません。
学校の先生・外資系・大手企業に見る再雇用の多様性
公務員(学校の先生)の再雇用制度
公務員、特に学校の先生の再雇用制度は、民間企業とは異なる特徴を持っています。公務員の場合、原則として60歳が定年ですが、地方公務員法や国家公務員法に基づき、再雇用(再任用)制度が整備されています。近年は教員不足が深刻化している背景もあり、経験豊富なベテラン教師の再雇用ニーズは高まっています。
再任用された学校の先生は、常勤または非常勤として教壇に立ち続けることができます。給与水準は現役時代よりは減少しますが、公務員としての安定した身分は維持され、年金と合わせて安定した収入を得られるケースが多いです。業務内容も、現役時代と同様に授業やクラス運営を担当することが主ですが、管理職を離れることで責任の重さが軽減されることもあります。
また、公務員の再雇用は、年金支給開始年齢との兼ね合いで、65歳までの働き方として非常に有効な選択肢となります。教員としてのキャリアを継続できる喜びと、社会貢献の実感を得られる点も、再任用制度の大きな魅力と言えるでしょう。
外資系企業における再雇用の特徴
外資系企業の再雇用制度は、日系大手企業とは異なるアプローチが見られます。一般的に、外資系企業では「終身雇用」という概念が薄く、パフォーマンスや職務内容に基づいて契約が更新されるケースが多いため、定年後の「再雇用」という概念自体が曖昧な場合もあります。
しかし、特定の専門スキルやノウハウを持つ人材に対しては、年齢に関わらず契約社員やコンサルタントとして継続雇用するケースも存在します。この場合、給与はプロジェクトベースや時間単位で設定されることが多く、現役時代と比べて大幅な変動が見られることもあります。
外資系企業で長く働くためには、常に市場価値の高いスキルを維持し、自身の専門性を高め続けることが求められます。定年を迎えても、企業のニーズに合致する専門性やリーダーシップを発揮できれば、柔軟な働き方でキャリアを継続できる可能性があります。
ただし、日本企業のような手厚い再雇用制度が確立されていない場合も多いため、自身のキャリアプランを主体的に設計し、常に外部の市場動向にも目を光らせておくことが、外資系で働くシニア層には特に重要だと言えるでしょう。
大手企業の再雇用制度の傾向と選択肢
大手企業の多くは、「継続雇用制度」を導入し、65歳までの雇用を確保しています。しかし、その実態は企業によって多種多様であり、再雇用後の選択肢もいくつか存在します。
一般的なのは、現役時代の職務を継続する「嘱託社員」や「契約社員」としての再雇用です。この場合、給与水準は大きく下がりますが、長年慣れ親しんだ環境で働き続けることができます。また、専門性を活かして別の部署や子会社へ異動するケースや、若手社員の指導・育成といった役割を担うこともあります。
近年では、高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会確保が努力義務化されており、これに対応する企業が増加しています。これにより、再雇用期間が延長されたり、再雇用後のキャリアパスが多様化したりする可能性も出てきています。
大手企業の再雇用制度を最大限に活用するためには、定年前から人事部門と密に連携し、自身の希望する働き方や業務内容、待遇について積極的にコミュニケーションをとることが重要です。自身のキャリアプランと会社の制度を照らし合わせ、最適な選択肢を見つける努力が求められます。
中国人社員の再雇用とグローバルな視点
在日中国人社員の再雇用ニーズ
近年、日本国内で就労し、定年を迎える外国人社員、特に中国人社員が増加しています。彼らにとって、日本の再雇用制度は、定年後の生活設計やキャリア継続の重要な選択肢となります。多くの場合、日本での生活基盤を築いているため、定年後も日本での就労を希望するケースが少なくありません。
中国人社員の再雇用ニーズは、経済的な側面だけでなく、日本で培ったスキルや経験を活かしたいという意欲、そして日本社会とのつながりを維持したいという思いに根ざしています。特に、日中間のビジネスに精通している人材は、通訳・翻訳、貿易、ビジネスコンサルティングなど、再雇用後も多様な分野で重宝される可能性があります。
しかし、言葉の壁や文化の違い、年金制度の違いなど、日本人社員とは異なる課題も存在します。企業側も、外国人社員の再雇用に際しては、これらの特殊性を理解し、より柔軟な対応やサポート体制を構築する必要があります。彼らの多様な背景を考慮した制度設計が、企業の国際競争力強化にも繋がるでしょう。
グローバル企業における再雇用の視点
グローバル企業における再雇用制度は、多様な国籍の社員に対応するため、より柔軟で多角的な視点が必要です。日本の労働慣行に基づいた再雇用制度が、必ずしも他国の社員の期待や文化に合致するとは限りません。
例えば、欧米の企業では、年齢よりも個人のスキルやパフォーマンスを重視する傾向が強く、特定のプロジェクトや職務に特化した契約社員としての雇用が一般的です。国によっては、定年という概念自体が日本ほど明確ではない場合もあります。
グローバル企業が多様な人材を活かすためには、画一的な再雇用制度ではなく、国籍や文化背景、個人のキャリアプランに応じた選択肢を用意することが求められます。具体的には、リモートワークや短時間勤務の導入、あるいは海外のグループ会社での再雇用といった、柔軟な働き方の提案が有効でしょう。
これは、単に制度を設けるだけでなく、異文化理解やダイバーシティ&インクルージョンを推進する企業文化を醸成することにも繋がります。シニア層のグローバル人材の経験と知見は、企業にとって大きな財産となるはずです。
多文化共生社会での再雇用制度のあり方
日本社会が多文化共生へと移行する中で、再雇用制度もその変化に対応していく必要があります。日本人社員だけでなく、日本で長年働き、定年を迎える外国人社員の増加は、今後の再雇用制度設計における重要な課題です。
既存の再雇用制度が、外国人社員の言語や文化、家族背景、年金制度への理解を欠いている場合、彼らの再就職の機会を狭めてしまう可能性があります。例えば、日本の労働慣行に不慣れな外国人社員に対して、再雇用に関する情報提供や相談体制を強化することが求められます。
また、彼らの持つ独自のスキルやネットワークは、企業のグローバル展開において貴重な資源となり得ます。例えば、母国語能力や異文化コミュニケーション能力は、新たな市場開拓や海外事業の円滑な運営に大きく貢献するでしょう。
再雇用制度を単なる雇用継続の手段としてだけでなく、多様な人材の知識と経験を最大限に引き出すための戦略的なツールとして捉えることが、多文化共生社会における企業の持続的成長には不可欠です。文化や国籍を超えて、全ての社員が安心して働き続けられる環境を整備する視点が、これからの企業には求められています。
知っておきたい!再雇用を成功させるためのポイント
早期からのキャリアプランニングの重要性
再雇用を成功させるための最初の、そして最も重要なポイントは、何よりも「早期からのキャリアプランニング」です。多くの人が定年が近づいてから慌てて準備を始めがちですが、それでは選択肢が限られてしまう可能性があります。
自身のキャリアプランやライフプランを踏まえ、30代、遅くとも40代からは将来設計を具体的に検討し始めることが理想的です。どのような働き方をしたいのか、どれくらいの収入が必要なのか、どんなスキルを身につけたいのか、といった問いに真剣に向き合いましょう。
会社の再雇用制度の内容を早めに把握し、定年後の業務内容や待遇について人事部や上司と情報交換することも有効です。また、社外でのキャリアも視野に入れ、必要であれば資格取得や語学習得など、新たなスキルを磨くための準備も始めることができます。
早期からの準備は、将来に対する不安を軽減し、より主体的に自身のキャリアを選択する力を与えてくれます。定年後も充実したセカンドキャリアを送るためには、計画的な行動が不可欠です。
経験とスキルの棚卸しと再学習
再雇用を成功させるためには、これまでに培ってきた「経験」と「スキル」を客観的に棚卸しし、それを再雇用後のキャリアにどう活かすかを考えることが重要です。企業側は再雇用者に対し、「即戦力としての経験・スキル」や「若手指導」に期待を寄せています。
まずは、自身の強みや得意な分野をリストアップしてみましょう。特定の専門知識、長年のプロジェクトマネジメント経験、チームをまとめるリーダーシップ、顧客との関係構築力など、多岐にわたるはずです。それを活かして、再雇用後にどのような貢献ができるのかを具体的にイメージします。
同時に、現在の職場で求められるスキルや、将来的に需要が高まるスキルについてもアンテナを張り、必要であれば「再学習」に積極的に取り組みましょう。デジタルリテラシーの向上、データ分析能力、新しいテクノロジーの習得などは、年齢に関わらず市場価値を高める上で不可欠です。
自身の経験とスキルを常にアップデートし続ける姿勢は、再雇用後も高いモチベーションを維持し、企業から必要とされる人材であり続けるための鍵となります。
企業との積極的なコミュニケーション
再雇用制度を利用する上で、企業との「積極的なコミュニケーション」は非常に重要です。定年前の早い段階から、自身の再雇用に対する希望や期待、あるいは懸念事項について、人事部門や直属の上司とオープンに話し合う機会を設けるべきです。
具体的な対話を通じて、再雇用後の業務内容、勤務時間、給与水準、役割分担などを確認し、自身のキャリアプランとの整合性を図りましょう。特に、年収減や役職定年による「モチベーション維持」は再雇用後の大きな課題となりがちです。待遇だけでなく、やりがいを感じられる業務内容や、これまでの経験が活かせる役割を明確に伝えることが大切です。
また、再雇用後も「コミュニケーションギャップ」が生じやすいという調査結果もあります。現役時代とは異なる立場や役割になった際に、若手社員との円滑な連携を図るためにも、日頃から周囲とのコミュニケーションを密に取るよう心がけましょう。
企業側も再雇用者の意向を尊重し、可能な範囲で柔軟な対応をすることが、双方にとってWin-Winの関係を築く上で不可欠です。自ら積極的に情報を求め、対話を通じて理想の働き方を追求する姿勢が、再雇用成功の大きな要因となります。
まとめ
よくある質問
Q: NTTやNHKの再雇用制度はどのようなものですか?
A: NTTやNHKでは、定年後も希望者を対象に再雇用制度を設けている場合が多く、これまでの職務経験やスキルを活かして継続して勤務できる可能性があります。具体的な条件や職種は企業によって異なります。
Q: NTTデータやNTT西日本の再雇用後の年収はどのくらいですか?
A: NTTデータやNTT西日本における再雇用後の年収は、一般的に現役時代よりも下がることが多いですが、役職や担当業務、勤務時間などによって変動します。具体的な金額は、就業規則や個別の契約内容によります。
Q: 60歳からの再雇用で年収が大幅に下がることはありますか?
A: 多くの場合、60歳以降の再雇用では、給与体系が変更され、年収が下がる傾向にあります。しかし、専門性の高いスキルを持つ人材や、役職に就く場合は、比較的高い年収を維持できる可能性もあります。
Q: 学校の先生や外資系企業でも再雇用はありますか?
A: 学校の先生も、再任用制度などがある場合があります。外資系企業の場合も、企業によっては再雇用制度を設けていることがありますが、日系企業とは制度内容が異なることもあります。
Q: 再雇用を成功させるためには、どのような準備が必要ですか?
A: 自身のスキルや経験を棚卸し、どのような職務で貢献できるかを明確にすること、そして、希望する働き方や条件を整理しておくことが重要です。また、企業の再雇用制度について事前に情報収集しておくことも有効です。
