1. 試用期間中の解雇は不当?知っておきたい基本ルール
    1. 試用期間の目的と法的性質
    2. 解雇が認められる合理的な理由とは
    3. 不当解雇と判断された場合のリスク
  2. 試用期間満了前に解雇・雇い止めされたら?判例と慰謝料について
    1. 試用期間中の解雇が「不当」と判断されるケース
    2. 不当解雇と認定された場合の慰謝料の相場と判例
    3. 慰謝料以外の会社が負うリスクとは
  3. 無断欠勤や面談での退職意向、試用期間中のリスクとは?
    1. 無断欠勤が解雇につながるボーダーライン
    2. 職場環境が原因の無断欠勤と会社のリスク
    3. 面談での退職意向と円満退職への道
  4. 試用期間中に休みたい・辞めたいときはどうすればいい?
    1. 病気や私傷病による休職のルール
    2. 試用期間中の自己都合退職の伝え方
    3. 退職後の生活に影響する失業保険と転職活動
  5. 試用期間の解雇・退職で困ったら弁護士に相談を
    1. 弁護士に相談するメリットとタイミング
    2. 相談前に準備すべきこと
    3. 無料相談を活用する
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 試用期間中の解雇は、どのような場合に不当解雇となりますか?
    2. Q: 試用期間満了前に解雇された場合、慰謝料は請求できますか?
    3. Q: 試用期間中に無断欠勤をしたら、すぐに解雇されますか?
    4. Q: 試用期間中に「辞めてもいい」と言われたら、どうなりますか?
    5. Q: 試用期間中に休む場合、予告は必要ですか?

試用期間中の解雇は不当?知っておきたい基本ルール

試用期間の目的と法的性質

試用期間とは、企業が採用した従業員を本採用する前に、その業務への適格性や勤務態度、協調性などを総合的に判断するために設ける一定の期間を指します。
この期間は、会社と従業員の双方にとって、互いが求める働き方や企業文化に合致するかを見極めるための大切な期間と言えるでしょう。

しかし、試用期間中だからといって、企業が従業員を自由に解雇できるわけではありません。
労働契約法においては、試用期間中の労働者も「解雇権濫用の法理」の適用を受けます。
つまり、試用期間中の解雇であっても、「客観的に合理的な理由」が存在し、「社会通念上相当」と認められる場合にのみ有効と判断されます。

通常の解雇に比べて企業の裁量が比較的広く認められる傾向にはありますが、その判断基準は厳格です。
特に、採用選考時には判断できなかった事柄が試用期間中に明らかになり、それが業務遂行に支障をきたす、または企業秩序を著しく乱すと判断される場合に、解雇の正当性が認められやすくなります。
一方で、安易な解雇は不当解雇として争われるリスクがあるため、企業側も慎重な対応が求められます。

従業員側も、試用期間だからと気を抜かず、自身のパフォーマンスと会社の期待を擦り合わせる努力が重要です。
万が一、解雇の通告を受けた場合は、その理由を詳細に確認し、納得できない場合は専門家への相談を検討することが賢明でしょう。

解雇が認められる合理的な理由とは

試用期間中の解雇が法的に認められるには、客観的かつ合理的な理由が必要です。
参考情報によると、具体的な例として以下のようなケースが挙げられます。

  • 採用選考や内定の段階で知り得なかった事実が発覚した場合:
    これは、経歴詐称や重大な犯罪歴の隠蔽などが該当します。
    採用の前提が崩れるため、解雇が有効とされる可能性が高くなります。
  • 勤務態度や協調性の欠如:
    業務命令を繰り返し無視する、遅刻や欠勤が頻繁で改善が見られない、他の従業員との協調性が著しく欠如し、業務に支障をきたすといった場合です。
    ただし、企業側が改善の機会を与え、それでも改善されなかったという事実が重要となります。
  • 能力不足:
    与えられた業務を何度指導しても遂行できない、期待される水準に達しないといったケースです。
    ただし、新卒採用者など、当初から即戦力として期待されていない場合は、企業側が育成努力を尽くしたかどうかが問われるため、能力不足のみを理由とした解雇は難しい場合があります。

また、業務上の負傷や疾病による欠勤の場合は、労働基準法第19条により一定期間解雇が制限されるため、試用期間中であっても解雇は原則として認められません。
これらの理由が複合的に絡み合うこともありますが、いずれの場合も企業側は具体的な事実に基づいた客観的な証拠を用意し、解雇に至るまでの経緯を明確にする必要があります。
従業員側も、自身の行動や会社の評価を客観的に把握し、不当な解雇と感じた場合は証拠を集めることが重要です。

不当解雇と判断された場合のリスク

もし試用期間中の解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」と判断され、不当解雇と認定された場合、企業は重大なリスクを負うことになります。
最も大きなリスクの一つは、「解雇期間中の賃金(バックペイ)」を支払う義務が生じることです。
これは、従業員が解雇された日から、解雇が無効と判断されて職場復帰するまでの間の賃金を全額支払わなければならないというものです。
期間が長引けば長引くほど、企業にとって多額の経済的負担となります。

さらに、状況によっては、解雇によって従業員が被った精神的苦痛に対する慰謝料や、その他損害賠償の支払いを命じられる可能性もあります。
慰謝料の金額は個別の事案によって大きく異なりますが、数十万円から数百万円に及ぶケースも存在します。

不当解雇と認定されることは、企業の社会的な信用やイメージにも大きな打撃を与えます。
従業員からの信頼を失い、採用活動にも悪影響を及ぼす可能性も否定できません。
こうしたリスクを避けるためにも、企業は試用期間中の従業員の評価を適正に行い、解雇の判断は慎重に進める必要があります。
また、従業員側も、不当な解雇だと感じた場合は、泣き寝入りせず弁護士などの専門家に相談し、適切な対応を取ることが肝要です。
証拠保全や事実関係の整理が、その後の交渉や法的措置において非常に重要になります。

試用期間満了前に解雇・雇い止めされたら?判例と慰謝料について

試用期間中の解雇が「不当」と判断されるケース

試用期間中であっても、解雇が法的に無効とされるケースは少なくありません。
不当解雇と判断される主な要因は、会社が主張する解雇理由が客観的な合理性を欠いていたり、社会通念上の相当性が認められない場合です。
例えば、以下のような状況が考えられます。

  • 解雇理由が曖昧・不明確:
    「社風に合わない」「なんとなく合わない」といった抽象的な理由では、解雇の正当性は認められません。
    具体的な業務遂行能力の不足や勤務態度に関する問題行動など、客観的な事実に基づいた理由が必要です。
  • 改善の機会を与えなかった場合:
    能力不足や勤務態度に問題があったとしても、会社が従業員に対して具体的な指導や改善の機会を十分に与えず、いきなり解雇を通告した場合は不当解雇と判断されることがあります。
    特に新卒や未経験者に対しては、より丁寧な指導が求められます。
  • 採用選考時に知り得た事実に基づく解雇:
    履歴書や面接で確認できた事項を後から問題視し、解雇理由とすることは原則として認められません。
    これは、会社が採用段階で十分な調査を怠ったとみなされるためです。
  • 不当な動機に基づく解雇:
    従業員が正当な権利(例えば、有給休暇の取得やハラスメントの相談など)を行使したことへの報復として解雇した場合や、特定の思想・信条を理由とした解雇は、明白に不当解雇となります。

これらのケースでは、裁判所が従業員側の主張を認め、解雇を無効とする判決を下す可能性が高くなります。
不当解雇と判断された場合、企業は多大なリスクを負うことになるため、解雇の判断は極めて慎重に行うべきです。
従業員側も、これらの点を踏まえて自身の解雇が不当ではないか検討し、専門家へ相談する際の参考にしましょう。

不当解雇と認定された場合の慰謝料の相場と判例

不当解雇と認定された場合、企業は解雇期間中の賃金(バックペイ)の支払いに加えて、従業員が受けた精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを命じられることがあります。
慰謝料の金額は、一律に定められているものではなく、個別の事案における解雇の悪質性、従業員が被った精神的・経済的損害の程度、解雇後の生活状況など、様々な要素を考慮して裁判所が判断します。

具体的な金額は、過去の判例から見ると数十万円から、悪質なケースでは数百万円に及ぶこともあります。
例えば、解雇理由が全くなく、会社側が一方的に解雇を通告した場合や、解雇がハラスメントなどの違法行為と関連している場合、または従業員が解雇によって職を失い、長期にわたって生活困窮に陥った場合などは、慰謝料が高額になる傾向にあります。

判例においても、試用期間中の解雇であっても、その理由が不明確であったり、企業側の誠実な対応が見られなかったりする場合には、解雇無効と慰謝料支払いを命じるケースが増えています。
これは、試用期間中の労働者も法的に保護されるべき存在であるという認識が広まっているためです。
従業員側が解雇の不当性を主張する際には、解雇に至る経緯、会社からの説明内容、自身の労働状況、そして解雇によって被った損害を具体的に示す証拠を集めることが重要です。
これらの情報が、慰謝料額の算定にも大きく影響します。

慰謝料以外の会社が負うリスクとは

不当解雇と判断された場合、会社が負うリスクは慰謝料の支払いだけに留まりません。
最も大きな経済的負担となるのは、前述の通り「解雇期間中の賃金(バックペイ)」の支払義務です。
これは、解雇から裁判が終了し、解雇が無効と確定して従業員が職場復帰するまでの期間の給与を、遡って支払わなければならないというものです。
訴訟が長引けば、その金額は数百万円、場合によっては数千万円に達する可能性もあります。

さらに、会社は以下のようなリスクも負うことになります。

  • 訴訟費用・弁護士費用の負担:
    訴訟を提起された場合、会社側も弁護士を雇う必要があり、高額な弁護士費用や裁判費用が発生します。
    敗訴すれば、相手方の弁護士費用の一部を負担する可能性もあります。
  • 企業イメージの低下:
    不当解雇問題が公になると、企業の社会的な信用やブランドイメージが著しく損なわれます。
    これは、新規採用活動に悪影響を及ぼしたり、既存顧客からの信頼を失ったりする原因にもなりかねません。
  • 既存従業員の士気低下:
    会社が不当な解雇を行ったという事実は、既存の従業員の間に不信感や不安を生み出し、士気の低下につながることがあります。
    結果として離職率の上昇や生産性の低下を招く可能性も考えられます。
  • 監督官庁からの指導・勧告:
    労働基準監督署などから指導や勧告を受ける可能性があり、最悪の場合、企業名の公表や罰則の対象となることもあります。

これらのリスクを総合的に考慮すると、試用期間中の解雇であっても、企業は非常に慎重かつ公正な判断を行う必要があります。
不当解雇のリスクを最小限に抑えるためにも、疑義が生じた場合は速やかに弁護士などの専門家に相談し、適切な対応策を講じることが賢明です。

無断欠勤や面談での退職意向、試用期間中のリスクとは?

無断欠勤が解雇につながるボーダーライン

試用期間中であっても、無断欠勤は企業にとって重大な規律違反行為とみなされ、解雇の正当な理由となる可能性があります。
参考情報によれば、法律上で明確な日数の定めはないものの、一般的に14日以上の無断欠勤が続くと、懲戒解雇の有効性が認められやすくなるとされています。
これは、従業員が企業との連絡を絶ち、労働契約上の義務を著しく怠っている状態が長期間にわたるためです。

ただし、この「14日」という日数はあくまで目安であり、単に日数を満たせば直ちに解雇が有効になるわけではありません。
裁判所は、無断欠勤の理由、頻度、会社からの注意指導に対する態度、そして会社が従業員と連絡を取ろうと努力したかなど、様々な要素を総合的に考慮して判断します。
例えば、以下のような場合は、14日以上の無断欠勤であっても解雇が難しいケースとなり得ます。

  • 従業員が病気や事故で意識不明の重体となり、連絡が取れなかった場合。
  • 家族の緊急事態など、やむを得ない事情で連絡が遅れた場合。
  • 会社側が一切連絡を試みず、すぐに解雇を通告した場合。

会社側は、無断欠勤の事実確認と証拠保全(出勤簿、タイムカード、連絡履歴など)を徹底し、書面やメールなどで出勤を促す注意指導を複数回行うことが重要です。
従業員側も、万が一欠勤せざるを得ない場合は、必ず会社に連絡を入れることが、自身を守るための最低限のルールとなります。
連絡なしの欠勤は、試用期間の継続や本採用に大きな影響を与えるだけでなく、法的なトラブルにも発展しかねないため、注意が必要です。

職場環境が原因の無断欠勤と会社のリスク

無断欠勤の背後には、従業員個人の問題だけでなく、職場環境に起因する深刻な問題が隠されている場合があります。
参考情報でも指摘されている通り、「無断欠勤の原因が職場環境(ハラスメント等)にある場合、解雇は無効とされる可能性が高くなります」
これは、従業員が会社に安心して働くことができない状況に追い込まれた結果として欠勤に至った場合、その責任は会社側にもあると判断されるためです。

具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • パワハラ・セクハラ:
    上司や同僚からの継続的な嫌がらせやいじめが原因で、精神的に追い詰められ出社できなくなった場合。
  • 長時間労働・過重労働:
    健康を害するほどの過度な労働を強いられ、心身の不調により欠勤に至った場合。
  • 会社の安全配慮義務違反:
    適切な労働環境が提供されず、それが原因で従業員が欠勤せざるを得なくなった場合。

このような場合、従業員は、会社に対して労働環境の改善や、ハラスメント行為の停止、損害賠償などを求めることができます。
会社が従業員を解雇しようとしても、その解雇は不当解雇と判断され、解雇無効の判決や、バックペイ、慰謝料などの支払いを命じられるリスクを負うことになります。
特に、ハラスメントが原因の場合は、企業のレピュテーション(評判)にも深刻な悪影響を及ぼし、従業員の士気低下や採用難にもつながりかねません。
企業は、日頃から従業員の労働環境に配慮し、ハラスメント対策や相談窓口の設置など、適切な措置を講じることが重要です。

面談での退職意向と円満退職への道

試用期間中であっても、労働者には「退職の自由」が保障されています。
民法第627条第1項によれば、期間の定めのない雇用契約の場合、退職日の2週間前までに申し入れをすれば、退職が可能です。
試用期間中の従業員もこれに該当するため、いつでも退職の意思を表明することができます。
ただし、円満退職を目指すためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。

まず、退職の意思はできるだけ早く、直属の上司に直接伝えるのが一般的です。
口頭で伝えた後、正式な退職届を書面で提出することで、後々のトラブルを防ぐことができます。
会社によっては、就業規則で退職の申し出期間が1ヶ月や2ヶ月と定められている場合もありますが、民法の規定が優先されるため、2週間前であれば法的には問題ありません。
しかし、円満な関係を維持し、引き継ぎなどを考慮すると、なるべく早めに意思表示をするのが望ましいでしょう。

退職理由を明確に伝えることも、円満退職には欠かせません。
無理に具体的な理由を話す必要はありませんが、「自己都合」「一身上の都合」だけでなく、例えば「別のキャリアパスを追求したい」「スキルアップのため」といった前向きな理由を伝えることで、会社側も理解を示しやすくなります。
一方で、会社の不満や批判を直接的な退職理由とすることは、感情的な対立を生む可能性があるため、避けた方が賢明です。

また、自身の業務の引き継ぎを責任持って行う姿勢を見せることも大切です。
後任者への丁寧な引き継ぎや、関係者への挨拶などを行うことで、会社に迷惑をかけずに退職することができます。
試用期間中の退職は、その後の転職活動に影響する可能性もありますが、誠実な対応を心がけることで、次のステップへとスムーズに進むことができるでしょう。

試用期間中に休みたい・辞めたいときはどうすればいい?

病気や私傷病による休職のルール

試用期間中であっても、病気や私傷病(業務外の傷病)によって出社できない状況になることは十分にあり得ます。
参考情報にもある通り、業務上の負傷や疾病による欠勤の場合は、労働基準法第19条により一定期間解雇が制限されます
これは試用期間中の労働者にも適用されます。
しかし、私傷病による欠勤の場合は、会社の就業規則に定められた休職制度の対象となるかどうかがポイントになります。

多くの企業では、私傷病による欠勤が一定期間続く場合、休職制度が適用されますが、試用期間中の従業員については、休職制度の適用外とされているケースも少なくありません。
これは、休職期間中に給与が発生したり、復職後のポジションが保証されたりする制度は、長期雇用を前提としていることが多いためです。
まずは、自身の雇用契約書や会社の就業規則を確認し、私傷病時の対応についてどのような規定があるかを把握することが重要です。

病気や怪我で出勤が難しい場合は、速やかに会社に連絡し、状況を伝えることが最優先です。
医師の診断書を提出し、病状や療養期間について会社と密に連携を取るようにしましょう。
もし、休職制度の対象外であったり、会社側から解雇を示唆されたりした場合は、不当解雇にあたる可能性も考慮し、労働基準監督署や弁護士に相談することを検討してください。
自身の権利を守るためにも、誠実な対応と情報収集が不可欠です。
会社とのコミュニケーションを怠らず、適切な手続きを踏むことで、不必要なトラブルを避けることができます。

試用期間中の自己都合退職の伝え方

試用期間中に、会社や仕事内容が合わないと感じ、自己都合で退職したいと考えることもあります。
繰り返しになりますが、労働者には退職の自由が保障されており、期間の定めのない雇用契約であれば、民法第627条第1項により、退職日の2週間前までに会社に申し出れば退職することが可能です。
試用期間中であっても、この原則は変わりません。

退職の意思を伝える際は、まず直属の上司に面談を申し入れ、口頭で直接伝えるのが最も丁寧な方法です。
その際、退職希望日や退職理由を簡潔に伝えましょう。
理由については、必ずしも詳細に説明する必要はありませんが、「一身上の都合」や「キャリアプランの変更」など、前向きなニュアンスで伝えることで、円満な退職につながりやすくなります。
会社への不満を直接的な理由とすることは、感情的な対立を招く可能性があるため、避けるのが賢明です。

口頭で伝えた後は、正式な退職届を提出しましょう。
会社の就業規則に退職届のフォーマットが定められている場合があるので、事前に確認しておくとスムーズです。
提出後は、業務の引き継ぎを丁寧に行い、会社に迷惑をかけないよう努める姿勢が大切です。
短期間での退職は、今後の転職活動に影響を与える可能性もゼロではありませんが、誠実な対応を心がけることで、不必要な悪評やトラブルを防ぎ、次のステップへと円滑に進むことができるでしょう。

退職後の生活に影響する失業保険と転職活動

試用期間中に自己都合で退職した場合、その後の生活で特に懸念されるのが、失業保険(雇用保険の基本手当)の受給と転職活動への影響です。
参考情報にもある通り、「失業保険(雇用保険の基本手当)を受給できない場合がある」という点は、退職を決断する上で重要な考慮事項となります。

失業保険を受給するためには、原則として「離職日以前2年間に、被保険者期間が12ヶ月以上あること」という条件を満たす必要があります。
試用期間中の退職は、この条件を満たさないケースが多いため、失業保険の受給が難しい場合が多いでしょう。
ただし、会社都合での解雇や、正当な理由のある自己都合退職(特定理由離職者や特定受給資格者)と認められれば、条件が緩和される場合もありますので、ハローワークで確認が必要です。

また、試用期間中の短期間での離職は、今後の転職活動において採用担当者から「すぐに辞めてしまうのではないか」という懸念を抱かれる可能性があります。
面接の際には、なぜ前職を短期間で辞めることになったのか、そして新しい会社では長く働きたいと考えている理由を、具体的に、かつポジティブに説明できるよう準備しておくことが重要です。
例えば、「当初想定していた業務内容とのギャップがあり、自身のスキルやキャリアパスを再考した結果、御社であれば長期的に貢献できると感じた」といった建設的な説明を心がけましょう。

試用期間中の退職は、確かに一定のリスクを伴いますが、自身のキャリアプランや心身の健康を考慮した上で賢明な選択をすることが何よりも大切です。
退職後の生活設計をしっかりと立て、計画的に次のステップへと進むための準備を怠らないようにしましょう。

試用期間の解雇・退職で困ったら弁護士に相談を

弁護士に相談するメリットとタイミング

試用期間中に解雇されたり、退職を巡るトラブルに直面したりした場合、法的な知識がないと会社との交渉で不利になることが少なくありません。
そんな時、弁護士に相談することには大きなメリットがあります。
弁護士は労働法に関する専門知識を持っているため、自身の解雇が不当であるかどうかの判断を正確に行うことができます。
また、会社との交渉を代行してくれるため、感情的にならず冷静に、かつ有利な条件で話し合いを進めることが可能になります。

弁護士に相談する最適なタイミングは、解雇を言い渡された直後、または会社との交渉がうまくいかないと感じた時です。
早い段階で相談することで、証拠の収集方法や今後の対応について具体的なアドバイスを得ることができ、より適切な戦略を立てることができます。
例えば、解雇理由が不明確な場合や、ハラスメントが原因で退職せざるを得ない場合などは、弁護士が介入することで会社側も真剣に問題に向き合うようになることが多いです。

弁護士は、単に法律論を主張するだけでなく、あなたの状況を理解し、精神的なサポートも提供してくれます。
不当な扱いに悩んでいる時、専門家が味方になってくれることは、大きな心の支えとなるでしょう。
一人で抱え込まず、少しでも不安や疑問を感じたら、速やかに弁護士への相談を検討することをお勧めします。

相談前に準備すべきこと

弁護士に相談する際、事前にいくつかの情報を整理し、資料を準備しておくことで、よりスムーズかつ的確なアドバイスを受けることができます。
以下のリストを参考に、可能な限り準備を進めておきましょう。

  • 雇用契約書・労働条件通知書:
    自身の雇用形態、試用期間の長さ、給与、就業場所などの基本的な労働条件が記載されています。
  • 就業規則:
    解雇に関する規定や退職手続き、休職制度などが記載されています。会社から配布されていない場合は、開示を求めましょう。
  • 解雇通知書、退職勧奨に関する資料:
    解雇理由や退職勧奨の内容が書面で伝えられている場合は、重要な証拠となります。
  • 業務日報、出勤簿、タイムカードの記録:
    自身の勤務実態や、無断欠勤の有無、残業時間などを客観的に証明する資料です。
  • メール、LINE、チャットの記録:
    上司や同僚とのやり取り、業務指示、ハラスメントの証拠など、重要なやり取りが残されている場合があります。
  • 診断書、医療記録:
    私傷病による休職や退職の場合、病状を証明する資料となります。
  • 出来事を時系列でまとめたメモ:
    いつ、どこで、誰が、何を話したかなど、具体的な状況を詳細に記録しておくと、事実関係を正確に伝えることができます。
  • 自身の希望:
    復職を希望するのか、金銭的な解決を望むのかなど、最終的にどのような結果を求めているのかを明確にしておきましょう。

これらの資料は、弁護士が状況を正確に把握し、具体的な法的主張を組み立てる上で不可欠な証拠となります。
準備が難しいものもあるかもしれませんが、できる範囲で集めておくことが、あなた自身の権利を守る第一歩となります。

無料相談を活用する

弁護士への相談と聞くと、費用が高額になるのではないかと心配される方もいるかもしれません。
しかし、多くの弁護士事務所では、初回相談を無料で行っています。
この無料相談を積極的に活用することは、自身の状況を専門家に評価してもらい、今後の選択肢について具体的なアドバイスを得る上で非常に有効です。

無料相談では、まず自身の状況を簡潔に説明し、抱えている問題や疑問点を伝えます。
弁護士はそれに対して、法的な観点から解雇の有効性や退職手続きの適切性、そして取りうる対応策について概略を説明してくれます。
この段階で、問題解決の見込みや、弁護士に依頼した場合の費用(着手金、報酬金など)についても確認することができます。

弁護士選びは、信頼できるパートナーを見つけることが重要です。
複数の事務所で無料相談を利用し、弁護士との相性や専門性、費用の妥当性などを比較検討することをお勧めします。
インターネットで「労働問題 弁護士 無料相談」などのキーワードで検索すれば、多くの事務所が見つかるでしょう。
2025年9月時点の日本の完全失業率は2.6%と、依然として一定の失業者数が存在し、非正規雇用で働く人の割合も36.8%(2024年)と高い水準にある中で、試用期間中の雇用問題は多くの人が直面しうる現実です。
専門家のサポートを受けることで、不利益を被ることなく、自身の労働権を守り、安心して次のステップへ進むことができるようになります。
一人で悩まず、まずは一歩踏み出して無料相談を活用してみましょう。