概要: 試用期間中の有給休暇について、発生条件、取得・消化の可否、そして「有給休暇なし」の場合の対処法を詳しく解説します。社会保険や欠勤との関連性も掘り下げ、疑問を解消します。
試用期間中の有給休暇、いつから?取得・消化の疑問を徹底解説
新しい会社での生活が始まる試用期間。期待とともに、様々な疑問が湧いてくるものです。
特に「試用期間中に有給休暇は取れるの?」「いつから発生するの?」といった疑問は、多くの方が抱える共通の悩みでしょう。この記事では、試用期間中の有給休暇について、基本的なルールから具体的な取得方法、よくある質問までを徹底解説します。
安心して業務に取り組めるよう、ぜひ最後までお読みください。
試用期間中の有給休暇:基本ルールの確認
試用期間とは何か?法的な位置づけ
試用期間とは、企業が採用した従業員の適格性を最終的に判断するために設ける期間を指します。
この期間を通じて、業務遂行能力や職場の雰囲気への適応性などを観察し、本採用の可否を決定するのが主な目的です。しかし、誤解されがちなのは、試用期間中も法的には企業と従業員の間で労働契約が結ばれているという点です。
つまり、試用期間中の従業員は「社員」として扱われ、労働基準法をはじめとする様々な労働法規が適用されます。会社が自由に採用を取り消せる期間ではないということを理解しておくことが重要です。
この法的な位置づけがあるからこそ、試用期間中の従業員も有給休暇の権利を持つことができるのです。
有給休暇が付与される基本的な条件
有給休暇が付与されるための条件は、試用期間中であるかどうかに関わらず、労働基準法によって明確に定められています。
具体的には、以下の2つの条件を両方満たすことが必要です。
- 雇入れの日から6ヶ月間継続して勤務していること
- その期間の全労働日の8割以上出勤していること
この「6ヶ月間の継続勤務」には、試用期間も当然含まれます。つまり、試用期間は有給休暇の付与要件を満たすための大切な期間としてカウントされるのです。
例えば、4月1日に入社し、試用期間を経て10月1日を迎える場合、この時点で有給休暇の付与条件を満たしていることになります。
試用期間と有給休暇に関する誤解を解く
「試用期間中は有給休暇が取れない」という誤解を抱いている方は少なくありません。
しかし、これは明確な間違いであり、法的には試用期間も「継続勤務期間」の一部として扱われます。そのため、上記の付与条件を満たしていれば、試用期間中であっても有給休暇を申請し、取得する権利があります。
企業側が「試用期間だから」という理由だけで有給休暇の取得を拒否することは、労働基準法に違反する可能性があります。もちろん、業務の都合上、時季変更権を行使される可能性はありますが、これは本採用後の従業員に対しても同様です。
試用期間だからといって、自分の権利を不当に制限されることはないと認識しておくことが大切です。</
試用期間中に有給休暇は「いつから」発生する?
有給休暇の初回付与タイミング
有給休暇の初回付与は、前述の条件を満たした直後に行われます。
具体的には、「雇入れの日から6ヶ月間継続勤務」し、「全労働日の8割以上出勤」した場合、その6ヶ月が経過した翌日に有給休暇が付与されるのが一般的です。例えば、あなたが4月1日に入社した場合、6ヶ月後の9月30日までの勤務期間が対象となります。
そして、その翌日である10月1日に、初回の有給休暇として原則10日が付与されることになります。
このプロセスにおいて、試用期間が6ヶ月の継続勤務期間にしっかりと含まれている点が重要なポイントです。</
試用期間中の勤務期間がカウントされる理由
なぜ試用期間中の勤務期間が有給休暇の継続勤務としてカウントされるのでしょうか。
その理由は、試用期間中であっても、企業と労働者の間には有効な労働契約が成立しているからです。試用期間は、あくまで本採用に至るまでの適格性を判断する期間であり、法的に見れば立派な雇用関係の中にあります。
労働基準法は、このような雇用形態の区別なく「継続勤務」という概念を適用します。そのため、試用期間の開始日を雇入れの日として計算し、この期間も有給休暇の付与要件である勤続年数に含めることが義務付けられているのです。
これは企業の裁量によるものではなく、労働者の権利を守るための法的義務なのです。
会社独自のルールと法の原則
一部の企業では、「試用期間が終わって本採用になってからでないと有給休暇は使えない」といった説明をされるケースも耳にします。
しかし、これは労働基準法の原則とは異なる可能性が高いです。法的な観点から見れば、試用期間の有無にかかわらず、上記で説明した「6ヶ月継続勤務」と「8割以上出勤」の条件を満たせば、有給休暇は付与され、取得する権利が発生します。
もしあなたの会社で、このような労働基準法の原則と異なる独自のルールが運用されている場合は、まずは就業規則を確認し、人事や労務担当者に正式な説明を求めることをお勧めします。
それでも疑問が解決しない場合は、地域の労働基準監督署に相談することも選択肢の一つです。
試用期間中に有給休暇を「取得・消化」できる?
法的な取得権利の有無
結論として、有給休暇の付与条件(6ヶ月継続勤務と8割以上出勤)を満たしていれば、試用期間中であっても有給休暇を取得する法的な権利があります。
企業は、労働者から有給休暇の申請があった場合、原則としてこれを拒否することはできません。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社側は「時季変更権」を行使し、取得時期を変更するよう求めることができます。
これは試用期間中の従業員に限らず、すべての従業員に適用されるルールです。重要なのは、試用期間中だからといって、その権利が制限されることはないという点です。
あなたの権利をしっかり理解し、必要に応じて申請を行いましょう。
取得・消化をスムーズにするためのポイント
法的な権利があるとはいえ、試用期間中に有給休暇を取得する際には、いくつかの配慮をすることで、よりスムーズに進めることができます。
- 早めの相談と申請: 休暇を希望する際は、なるべく早めに直属の上司や人事に相談し、会社の申請手続きに沿って申請しましょう。
- 業務調整と引き継ぎ: 休暇中に業務が滞らないよう、事前に担当業務の調整や必要な引き継ぎをしっかり行いましょう。
- 就業規則の確認: 会社の就業規則には、有給休暇の申請方法や取得に関する詳細が記載されています。事前に確認しておくことで、不要なトラブルを避けることができます。
企業側も、従業員が有給休暇を取りやすい環境を作る努力が必要です。「休むこと」のメリットを提示したり、長時間労働を評価しない風土を構築したりすることが、有給取得率向上には効果的です。
日本の有給休暇取得の現状と課題
日本の有給休暇取得率は、近年上昇傾向にありますが、まだ国際的には低い水準にあります。
2023年の有給休暇取得率は65.3%で、これは1984年以降で過去最高を記録し、9年連続の上昇となっています。政府は2025年までに取得率70%を目標に掲げていますが、まだ達成には至っていません。
国際的に見ると、日本は年間の有給休暇日数が17.6日と、ドイツなどが年平均30日であることと比較しても少ない状況です。産業別に見ると、取得率が高いのは「鉱業、採石、砂利採集業」(71.5%)、「電気、ガス、熱供給、水道業」(70.7%)、「製造業」(70.4%)などです。
一方で、「宿泊、飲食サービス業」(51.0%)や「複合サービス業」(55.0%)は比較的低い傾向にあります。
| 取得率が高い産業 | 取得率 | 取得率が低い産業 | 取得率 |
|---|---|---|---|
| 鉱業、採石、砂利採集業 | 71.5% | 宿泊、飲食サービス業 | 51.0% |
| 電気、ガス、熱供給、水道業 | 70.7% | 複合サービス業 | 55.0% |
| 製造業 | 70.4% |
このような状況を改善するため、企業には計画的付与制度の導入など、従業員が休暇を取りやすい環境整備が求められています。
試用期間中に有給休暇がない場合、どうなる?
有給休暇がない期間の休み方
試用期間が始まってすぐの時期など、まだ有給休暇が付与されていない期間に急な体調不良や家庭の事情などで休む必要が出てくることもあります。
この場合、残念ながら有給休暇としてではなく、「欠勤」扱いとなるのが一般的です。欠勤の場合、その日の分の給与は支払われず、月給制であっても日割りで減額されることがあります。
会社によっては、有給休暇とは別に「特別休暇」や「慶弔休暇」といった独自の休暇制度を設けている場合もありますので、万が一の際には、まず会社の就業規則を確認するか、人事担当者に相談してみましょう。
事前に相談することで、最善の選択肢を見つけられるかもしれません。
欠勤扱いになった場合の注意点
有給休暇がない期間の欠勤は、いくつか注意すべき点があります。
まず、欠勤は給与の減額につながるだけでなく、人事評価に影響を与える可能性も考えられます。試用期間中という重要な時期に欠勤が多いと、本採用の判断に影響を及ぼすこともゼロではありません。
もちろん、やむを得ない体調不良などで休むのは仕方のないことですが、その場合は速やかに会社に連絡し、必要に応じて医師の診断書などを提出するなど、誠実な対応を心がけましょう。
また、有給休暇が付与されてからの年間有給休暇取得義務にも影響がないわけではありませんので、計画的な休暇取得を心がけましょう。
有給休暇の義務化と企業の責任
2019年4月1日より、労働基準法が改正され、年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、企業は年5日以上の有給休暇を取得させることが義務付けられました。
これは有給休暇が付与された後の話ですが、企業が従業員の心身の健康維持とワークライフバランスの実現のために、積極的に有給休暇の取得を促進する責任があることを示しています。この義務に違反した場合、企業には罰金(違反者1人につき最大30万円)が科される可能性があります。
企業は、従業員の有給休暇の付与日数、取得日数、残日数などを正確に管理し、従業員に定期的に残日数を通知するなど、適切な管理体制を構築する必要があります。
これは、試用期間を終えた従業員にも等しく適用される企業の重要な責務です。
試用期間と有給休暇に関するよくある質問(Q&A)
Q1: 試用期間中に病気になったらどうすればいい?
A: まだ有給休暇が付与されていない期間であれば、原則として欠勤扱いとなります。この場合、その日の給与は発生しません。
会社によっては、有給休暇とは別に「特別休暇」や「病気休暇」などの独自の制度を設けている場合もありますので、まずは会社の就業規則を確認するか、上司や人事担当者に相談しましょう。
連絡は必ず行い、指示に従ってください。場合によっては、診断書の提出を求められることもあります。
Q2: 試用期間中に有給休暇を申請したら拒否された。これは違法?
A: 有給休暇の付与要件(6ヶ月継続勤務、8割以上出勤)を満たしていれば、会社が正当な理由なく有給休暇の申請を拒否することは原則として違法です。
ただし、会社には「時季変更権」があり、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、取得時期の変更を求めることができます。この時季変更権が正当な理由に基づいているかどうかがポイントになります。
もし正当な理由なく拒否されたと感じる場合は、まずは人事部門に再度確認し、それでも改善が見られない場合は、地域の労働基準監督署に相談することを検討してみてください。
Q3: 試用期間中の有給休暇、何日もらえるの?
A: 試用期間を経て、雇入れの日から6ヶ月間継続勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤という条件を満たした場合、原則として10日の有給休暇が付与されます。
この日数は、週5日勤務などの一般的なフルタイム労働者の場合です。パートタイムやアルバイトの方で、週の所定労働日数が少ない場合は、その日数に応じて比例的に付与される日数が決まります。
付与された有給休暇は、原則として2年間保有できますが、2年を過ぎると権利は消滅しますので、計画的に消化することが重要です。
まとめ
よくある質問
Q: 試用期間中に有給休暇は発生しますか?
A: 原則として、試用期間中でも労働基準法に基づき、入社から6ヶ月経過し、かつ全労働日の8割以上出勤していれば有給休暇が発生します。ただし、会社によっては就業規則で異なる定めをしている場合もあります。
Q: 試用期間中に有給休暇を消化(取得)することはできますか?
A: 発生した有給休暇は、試用期間中であっても取得・消化することが可能です。ただし、業務への影響を考慮し、事前に上司に相談・申請する必要があるでしょう。
Q: 試用期間中に有給休暇がないと書かれていますが、本当ですか?
A: 「有給休暇なし」と明記されている場合でも、労働基準法が定める最低限の権利は守られます。入社から6ヶ月経過して条件を満たせば、有給休暇は発生するのが原則です。就業規則をよく確認しましょう。
Q: 試用期間中に欠勤が5日、または3日・4日休んだ場合、有給休暇の発生に影響しますか?
A: 欠勤日数が多いと、全労働日の8割以上出勤するという有給休暇発生の条件を満たせない可能性があります。欠勤日数が多い場合は、有給休暇の発生が遅れるか、発生しないことも考えられます。
Q: 試用期間が3ヶ月ですが、有給休暇の計算やカウントはどのように行われますか?
A: 試用期間が3ヶ月であっても、有給休暇の発生条件(入社から6ヶ月経過、全労働日の8割以上出勤)は同じです。有給休暇の計算やカウントは、入社日を起点に6ヶ月経過した時点で行われます。
