概要: 欠勤が給与に与える影響は、日割り計算によって決まります。本記事では、欠勤による減額計算方法、標準報酬月額や保険料への影響、さらに給与だけでなく評価への影響についても詳しく解説します。
欠勤は誰にでも起こりうる事態ですが、その際に給与がどのように減額されるのか、また人事評価にどのような影響があるのか、正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。
「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、働かなかった時間や日数分の給与が差し引かれるのが一般的ですが、その具体的な計算方法は会社によって異なります。
本記事では、欠勤による給与減額の仕組みから、社会保険料への影響、さらには人事評価への影響と、マイナス評価を避けるための対策まで、徹底的に解説します。
いざという時に困らないよう、正しい知識を身につけておきましょう。
欠勤による給与減額の仕組み:日割り計算とは
ノーワーク・ノーペイの原則と欠勤控除の基本
「ノーワーク・ノーペイの原則」とは、労働者が労働を提供しなかった時間や日数については、使用者は賃金を支払う義務がないという基本的な考え方です。この原則に基づき、従業員が欠勤した場合、その分の給与は差し引かれることになります。これを「欠勤控除」と呼びます。法律で詳細な計算方法が規定されているわけではありませんが、多くの企業が就業規則や給与規定に則って運用しています。
欠勤控除の対象となるのは、実際に労働が提供されなかった時間であり、病気や私用、無断欠勤など、理由のいかんにかかわらず原則として適用されます。ただし、年次有給休暇や特別休暇(慶弔休暇など)のように、会社が賃金を支払うことを認めている休暇の場合は、欠勤控除の対象とはなりません。
企業は、欠勤控除の計算方法や対象となる手当などを就業規則に明確に記載し、従業員に周知する義務があります。これにより、従業員は安心して働くことができ、労使間のトラブルを未然に防ぐことにもつながります。自身の会社の就業規則を一度確認しておくことが重要です。
日割り計算の具体的な種類と特徴
欠勤控除の計算方法は、企業によっていくつかの種類があります。参考情報で挙げられている主な方法は以下の3つです。
- 月平均の所定労働日数を用いる方法:
年間所定労働日数 ÷ 12ヶ月 = 月平均の所定労働日数
月給額 ÷ 月平均の所定労働日数 × 欠勤日数 = 欠勤控除額この方法は、月ごとの所定労働日数の変動に左右されず、常に同じ単価で欠勤控除を計算できるため、従業員間の公平性が保たれやすいというメリットがあります。給与計算の手間も比較的少ないため、多くの企業で採用されています。
- 該当月の所定労働日数を用いる方法:
月給額 ÷ 該当月の所定労働日数 × 欠勤日数 = 欠勤控除額
この方法は、その月の実際の労働日数に基づいて計算するため、より実態に即した控除額となります。しかし、月によって所定労働日数が異なるため、欠勤1日あたりの控除額が変動するという特徴があります。例えば、所定労働日数が多い月に欠勤すると控除額が少なく、少ない月に欠勤すると控除額が多くなる可能性があります。
- 暦日数を用いる方法:
月給額 ÷ 当該月の暦日数 × 欠勤日数 = 欠勤控除額
この方法は、月の暦日(30日または31日、2月は28日または29日)を分母とするため、計算が非常にシンプルで分かりやすいという特徴があります。しかし、実際に働く日ではない土日祝日も分母に含まれるため、他の方法と比較して欠勤1日あたりの控除額が少なくなる傾向があります。そのため、従業員にとって有利な計算方法となることが多いです。
遅刻や早退の場合も、同様に給与から控除されますが、計算方法は月給額を1ヶ月の労働時間で割って時間単価を算出し、それに遅刻・早退時間を乗じて算出することが一般的です。
控除対象となる手当と対象外となる手当
欠勤控除の対象となるのは基本給だけではありません。各種手当についても、欠勤控除の対象となる場合があります。しかし、すべてが対象となるわけではなく、その性質によって扱いが異なります。
一般的に、出勤状況と直接的に連動する手当は、欠勤控除の対象となることが多いです。例えば、通勤手当は実際に出勤しない日は交通費がかからないため、欠勤日数に応じて減額または不支給となることがあります。営業手当や役職手当のように、職務の遂行状況や成果に応じて支払われる手当も、欠勤によってその職務を遂行できない期間がある場合、減額の対象となる可能性があります。
一方で、労働そのものに直接関係しない手当、あるいは生活保障の側面が強い手当は、欠勤控除の対象外とされることが一般的です。代表的なものとしては、住宅手当や扶養手当などが挙げられます。これらは、従業員の住居費や家族の生活を補助する目的で支給されるため、欠勤したからといってすぐに減額されることは少ないでしょう。
これらの手当が欠勤控除の対象となるか否かは、会社の就業規則や給与規定に明確に記載されている必要があります。規定があいまいな場合や、従業員に周知されていない場合はトラブルの原因となるため、企業は明確なルールを設けるべきです。従業員側も、自身の受給している手当が欠勤控除の対象となるのかどうかを事前に確認しておくことが大切です。
欠勤で引かれる金額の具体的な計算方法
月給額からの控除額計算シミュレーション
欠勤による給与減額は、具体的な計算式に当てはめてシミュレーションすることで、より明確に理解できます。ここでは、月給30万円の従業員が1日欠勤した場合を想定し、参考情報で提示された3つの計算方法で比較してみましょう。
前提条件:
- 月給額:300,000円
- 欠勤日数:1日
- 年間の所定労働日数:240日
- 該当月の所定労働日数:22日
- 当該月の暦日数:30日
計算シミュレーション:
- 月平均の所定労働日数を用いる方法:
月平均の所定労働日数 = 240日 ÷ 12ヶ月 = 20日
欠勤控除額 = 300,000円 ÷ 20日 × 1日 = 15,000円この場合、1日欠勤すると15,000円が減額されます。
- 該当月の所定労働日数を用いる方法:
欠勤控除額 = 300,000円 ÷ 22日 × 1日 = 約13,636円
この場合、1日欠勤すると約13,636円が減額されます。月によって分母が変わるため、月の所定労働日数によって控除額は変動します。
- 暦日数を用いる方法:
欠勤控除額 = 300,000円 ÷ 30日 × 1日 = 10,000円
この場合、1日欠勤すると10,000円が減額されます。暦日数で計算するため、他の方法と比較して控除額が少なくなる傾向があります。
このように、同じ月給と欠勤日数であっても、計算方法によって控除される金額に差が生じることがわかります。ご自身の会社の就業規則でどの計算方法が採用されているかを確認しておくことが重要です。
遅刻・早退による時間単位の控除額
欠勤と同様に、遅刻や早退も「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき給与から控除されることがあります。これらの時間単位の控除額は、月給を1ヶ月の所定労働時間で割って時間単価を算出し、それに遅刻・早退時間を乗じて計算するのが一般的です。
計算例:
- 月給額:300,000円
- 1ヶ月の所定労働時間:160時間(例:1日8時間労働 × 月20日)
- 遅刻時間:1時間
時間単価 = 月給額 ÷ 1ヶ月の所定労働時間
時間単価 = 300,000円 ÷ 160時間 = 1,875円/時間
遅刻控除額 = 時間単価 × 遅刻時間
遅刻控除額 = 1,875円 × 1時間 = 1,875円
この例では、1時間の遅刻で1,875円が給与から差し引かれることになります。早退の場合も同様の計算方法が適用されます。会社によっては、15分単位や30分単位で切り上げて計算するところもありますので、就業規則を確認しましょう。
また、遅刻や早退が頻繁に発生すると、時間単位の控除額は小さくても、積み重なることで月々の給与に無視できない影響を与える可能性があります。従業員としては、可能な限り定時出社・退社を心がけ、やむを得ない場合は速やかに会社に連絡し、指示に従うことが求められます。
みなし残業代(固定残業代)の扱いの注意点
みなし残業代(固定残業代)制度を導入している企業の場合、欠勤控除の際に特別な注意が必要です。みなし残業代とは、実際の残業時間の長短にかかわらず、一定時間分の残業代を毎月固定で支払う制度のことです。このみなし残業代が、欠勤によってどう扱われるかについては、会社の就業規則等の定めが非常に重要になります。
一般的に、みなし残業代は基本給とは別に、労働時間に対する対価の一部として支払われます。そのため、欠勤によって「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用される場合、その月の労働時間がみなし残業時間を下回ったとしても、欠勤した時間に応じた控除をみなし残業代から行うことができるとされています。ただし、これは就業規則等にその旨が明確に定められている場合に限られます。
例えば、月20時間分の固定残業代が支払われている場合でも、欠勤によって労働時間が短縮されれば、その欠勤時間分の基本給に加えて、固定残業代からも一定額が控除される可能性があります。この際、控除される金額が最低賃金を下回らないように注意が必要です。
また、みなし残業代から欠勤控除を行うことは、従業員にとっては不利益と感じられる場合があるため、企業は制度の内容を丁寧に説明し、従業員の理解を得ることが求められます。特に、固定残業代から控除を行う場合は、その計算根拠や計算方法を就業規則に詳細に明記し、従業員に周知徹底することがトラブル回避のために不可欠です。
欠勤が標準報酬月額や保険料に与える影響
標準報酬月額の決定と欠勤の影響
標準報酬月額とは、健康保険や厚生年金保険の保険料を計算する際の基礎となる金額のことです。これは、毎年4月から6月の3ヶ月間の給与平均額を「報酬月額」とし、それを厚生労働大臣が定めた「標準報酬月額表」に当てはめて決定されます。この標準報酬月額は、一度決定されると、原則として翌年8月まで(9月支給の給与から)適用されます。
欠勤によって給与が減額された場合、それが一時的なものであれば、すぐに標準報酬月額が変動することはありません。なぜなら、標準報酬月額の算定期間(4月から6月)の給与が通常よりも低くなるか、あるいは欠勤が続くことで固定的賃金(基本給など)の変動があった場合に、標準報酬月額が見直される「随時改定」の対象となる可能性があるからです。
もし、欠勤が4月から6月の間に集中し、その結果として月々の給与が大幅に減少し、その減額が継続すると見込まれる場合は、標準報酬月額が下がる可能性があります。標準報酬月額が下がると、連動して社会保険料も安くなりますが、将来受け取る年金額にも影響を与えることになります。自身の健康保険証に記載されている標準報酬月額を時折確認するのも良いでしょう。
社会保険料・雇用保険料への具体的な影響
欠勤による給与減額は、社会保険料(健康保険、厚生年金保険)と雇用保険料にそれぞれ異なる影響を与えます。
まず、社会保険料についてです。健康保険料と厚生年金保険料は、前述の「標準報酬月額」に基づいて計算されます。そのため、欠勤によって一時的に給与が減額されたとしても、標準報酬月額がすぐに変更されるわけではないため、直ちに社会保険料が安くなることはありません。もし、継続的な欠勤で標準報酬月額が随時改定された場合は、保険料が減額されます。しかし、社会保険料は労使折半であるため、従業員個人の負担だけでなく会社負担分も変動します。
次に、雇用保険料についてです。雇用保険料は、給与総額(税引き前の賃金総額)に保険料率を乗じて算出されます。したがって、欠勤によってその月の給与が減額されれば、その月の雇用保険料は直接的に安くなります。雇用保険料は、失業給付金などの財源となるため、給与が減れば徴収額も減るという仕組みです。
また、給与が減額されれば、所得税や住民税の源泉徴収額も変動します。所得税は毎月の給与額に応じて計算されるため、給与が減れば源泉徴収額も減少します。住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、欠勤による当年の給与減額が直接的にその月の住民税額に影響することはありませんが、翌年の住民税額には影響を与える可能性があります。
賞与算定期間中の欠勤と保険料
賞与(ボーナス)も、社会保険料の算定対象となります。具体的には、「標準賞与額」というものが設定され、これに基づいて健康保険料と厚生年金保険料が計算されます。
賞与の金額は、企業の業績や個人の人事評価、そして算定期間中の勤務状況によって決定されるのが一般的です。もし、賞与の算定期間中に欠勤が多い場合、そのことが人事評価に影響し、結果として賞与額が減額される可能性があります。
仮に賞与額が減額された場合、それに連動して徴収される社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)も少なくなります。賞与からの社会保険料は、月々の給与から徴収される保険料とは別の枠で計算されますが、総額としての保険料負担は減少することになります。
また、欠勤が継続的に続き、それが人事評価を通じて賞与や昇給に影響を及ぼし、結果的に生涯賃金が減少するような事態になれば、将来的に受け取る厚生年金の額にも間接的に影響が出てくる可能性も考慮しておくべきでしょう。厚生年金は、加入期間中の標準報酬月額と標準賞与額の合計に基づいて計算されるため、これらの金額が低くなれば、将来の年金額も少なくなることに繋がります。短期的な給与減額だけでなく、長期的な視点も持って欠勤の影響を理解することが大切です。
欠勤が評価に与える影響とマイナス評価を避けるために
人事評価項目における欠勤の影響範囲
欠勤は、単に給与が減るだけでなく、従業員の人事評価に多大な影響を与える可能性があります。企業は、労働者に対して労働を提供する義務があると考えており、欠勤はその義務を果たしていないとみなされるためです。人事評価における欠勤の影響範囲は広範に及びます。
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勤務態度・行動評価:
無断欠勤や頻繁な欠勤は、当然のことながら勤務態度や行動評価の項目で減点対象となります。責任感の欠如、業務への支障、周囲の従業員への負担増加などが評価に響きます。特に、事前の連絡なく欠勤する「無断欠勤」は最も重い評価となり、懲戒処分の対象となることもあります。
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賞与・昇給:
人事考課の結果は、賞与額の決定や昇給の有無に直結します。欠勤が多い場合、総合的な評価が下がり、結果として賞与の減額や昇給の見送りに繋がることがあります。特に、個人の目標達成度評価に加えて、勤務態度や勤怠状況も賞与の評価項目に含まれる企業は少なくありません。
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昇格・降格:
より高い役職への昇格を検討する際には、単に実績だけでなく、日頃の勤務態度や責任感も重要な判断基準となります。欠勤が多い従業員は、安定した業務遂行能力に疑問符が付けられ、昇格対象から外れる可能性があります。また、就業規則に定めがある場合、特定の欠勤回数を超えると降格の対象となることもあり得ます。
ただし、病気や怪我、家族の介護など、正当な理由による欠勤の場合は、直ちにペナルティや低評価に繋がるとは限りません。企業は、従業員の状況を考慮し、休職制度の利用や、状況に応じたサポートを提供することが求められています。重要なのは、欠勤の理由や連絡の有無、業務への影響度合いを総合的に判断されるという点です。
マイナス評価を避けるための対応策
欠勤が避けられない状況になったとしても、適切な対応をとることでマイナス評価を最小限に抑えることが可能です。以下のポイントを心がけましょう。
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会社への事前連絡・報告の徹底:
欠勤することが分かった時点で、できるだけ早く、直属の上司に連絡を入れることが最も重要です。電話で直接伝えるのが基本であり、状況によってはメールやビジネスチャットでも構いませんが、連絡が確実に伝わったか確認しましょう。連絡の際には、欠勤の理由と、いつからいつまで休むのか、またおおよその復帰予定日を具体的に伝えます。業務の引き継ぎが必要な場合は、その旨も合わせて報告することが望ましいです。
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診断書などの証拠提出の推奨:
病気や怪我などによる欠勤の場合、医療機関からの診断書や受診証明書を提出することで、欠勤に正当な理由があったことを証明できます。これにより、会社側も状況を理解しやすくなり、不当な評価を受けるリスクを軽減できます。会社によっては、一定期間以上の病欠の場合に診断書の提出を義務付けている場合もあります。
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有給休暇や休職制度の活用:
欠勤控除による給与減額や評価への影響を避けるためにも、残っている有給休暇を活用しましょう。有給休暇は、従業員に与えられた正当な権利です。また、長期の療養が必要な場合は、会社の休職制度(傷病休職など)の利用を検討します。これらの制度を活用することで、一時的に仕事を離れても雇用関係を維持し、給与の一部が保障される場合もあります。
日頃から上司や同僚と良好なコミュニケーションを築き、いざという時に相談しやすい関係性を構築しておくことも、マイナス評価を避ける上で非常に有効です。業務の状況を共有し、協力体制を築いておくことで、自分の欠勤が業務に与える影響を最小限に抑えることができます。
正当な理由と不当な理由による欠勤の区別
欠勤が評価に与える影響は、その理由によって大きく異なります。企業は、欠勤の背景にある事情を考慮し、正当な理由がある場合は柔軟な対応を求められる一方、不当な理由による欠勤には厳しく対応するのが一般的です。
【正当な理由とされる欠勤の例】
- 病気・怪我: 医師の診断を受けた病気や怪我による療養のための欠勤。
- 慶弔事由: 親族の不幸(忌引き)や結婚式などの慶事による欠勤(会社の慶弔休暇制度に準じる)。
- 災害・公共交通機関の遅延: 自然災害(地震、台風、大雪など)による出社困難、大規模な公共交通機関の遅延や運休による出社困難。
- 法定伝染病: 感染症法に基づき、出社が制限されるような感染症に罹患した場合。
- 子の看護・家族介護: 会社に制度がある場合、子の急病や家族の介護による欠勤。
これらの正当な理由による欠勤は、適切に連絡し、必要に応じて証明書類を提出することで、懲戒処分や極端な低評価に直結することは少ないでしょう。会社側も、従業員の健康や家庭の事情を尊重し、休職制度や特別休暇の適用、あるいは有給休暇の取得を促すなど、サポート体制を整えることが求められます。
【不当な理由とされる欠勤の例】
- 無断欠勤: 会社に一切連絡を入れずに欠勤すること。最も重い評価を受け、懲戒解雇を含む厳しい処分に繋がる可能性があります。
- 虚偽の理由による欠勤: 病気や怪我と偽って休むなど、詐欺行為に該当する可能性のある欠勤。
- 連絡をしない欠勤: 連絡を入れることができる状況にもかかわらず、意図的に連絡を怠って休むこと。
- 飲酒など自己責任による体調不良: 前日の過度な飲酒など、自身の不注意による体調不良で出社できない場合。
これらの不当な理由による欠勤は、勤務規律違反とみなされ、減給、出勤停止、懲戒解雇といった懲戒処分の対象となる可能性が非常に高くなります。企業は、公正かつ客観的な事実に基づいて判断し、就業規則に則って適切に処分を行う必要があります。従業員は、どのような理由であっても、欠勤の際は速やかに会社に連絡し、誠実に対応することが何よりも重要です。
欠勤時のよくある疑問と回答
有給休暇と欠勤控除の関連性
「欠勤すると給与が減る」という認識はあっても、「有給休暇を使えばどうなるの?」という疑問を持つ方は少なくありません。結論から言うと、有給休暇(年次有給休暇)を取得した日は、労働したものとみなされるため、給与から欠勤控除されることはありません。通常通り賃金が支払われます。
有給休暇は、労働基準法で定められた労働者の権利であり、心身のリフレッシュや私的な用事のために、賃金が保障された上で労働を免除されるものです。したがって、体調不良や家庭の事情などでどうしても休まなければならない場合、まずは有給休暇の残日数を確認し、それを充当することが最善の選択肢となります。
企業によっては、従業員が欠勤した場合、自動的に有給休暇を充当するルールを設けているところもあります。これは、従業員の給与が減ることを防ぎ、生活への影響を軽減するための配慮と言えます。しかし、本来、有給休暇の取得は労働者の意思によるものであるため、事後に会社が勝手に有給休暇に振り替えることは原則としてできません。従業員本人の申請があって初めて有効となります。
計画的に有給休暇を取得することで、突発的な欠勤時にも備えることができます。有給休暇の残日数を把握し、会社の休暇申請ルールに従って、適切に活用しましょう。これにより、給与減額の心配なく安心して休むことができ、結果としてワークライフバランスの向上にも繋がります。
産休・育休中の給与・手当について
妊娠・出産や育児を理由とした休みは、一般的な欠勤とは全く異なる扱いとなります。日本では、労働基準法や育児・介護休業法に基づき、産前産後休業(産休)や育児休業(育休)の制度が整備されており、これらは労働者の権利として保障されています。
まず、産前産後休業についてです。産前休業は出産予定日の6週間前(多胎妊娠の場合は14週間前)から、産後休業は出産日の翌日から8週間取得できます。この期間中、会社から給与が支払われるかどうかは、会社の規定によりますが、法的な支払い義務はありません。しかし、健康保険から「出産手当金」が支給されます。これは、出産のために会社を休んで賃金を受けられない場合に、健康保険組合から支給される手当で、概ね休業1日につき、賃金の3分の2相当額が支給されます。
次に、育児休業についてです。原則として子が1歳になるまで(特別な事情があれば最大2歳まで)取得できます。育児休業中も、会社からの給与支給は法的義務ではありません。しかし、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。これは、休業開始時賃金日額の67%(休業開始から6ヶ月経過後は50%)相当額が支給され、育児中の生活を支援する重要な制度です。
これらの休業期間中は、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除される特例もあります。これは、経済的な負担を軽減し、出産や育児を支援するための制度です。産休・育休は、労働者の権利であり、欠勤とは区別される制度であることを理解し、会社の人事担当者や社会保険労務士に相談して、自身の状況に合った適切な制度を活用することが大切です。
災害や交通機関の遅延による欠勤の扱い
地震、台風、大雪といった自然災害や、大規模な交通機関の遅延・運休など、予期せぬ不可抗力によって出社できない場合の欠勤は、通常の私的な理由による欠勤とは異なる扱いとなることがあります。この場合、「ノーワーク・ノーペイの原則」が基本となりますが、状況によって様々な判断がされます。
まず、会社側に原因がある場合です。例えば、災害によって会社施設が損壊し、営業ができないため休業するようなケースでは、労働基準法第26条に基づき、会社は平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります。これは労働者の責任ではないため、給与が全額控除されることはありません。
次に、労働者側に原因がある場合です。交通機関の遅延があっても、他の交通手段で出社可能だったにもかかわらず、それを怠った場合などは、通常の欠勤として扱われる可能性があります。
そして、どちらにも原因がない「不可抗力」の場合です。公共交通機関が完全に麻痺し、出社が物理的に不可能な状況などがこれに当たります。この場合、法的には会社に賃金支払いの義務はありませんが、企業は従業員への配慮から以下のような対応を取ることが多いです。
- 有給休暇の消化: 従業員が申請し、有給休暇を充当する。
- 特別休暇の付与: 会社が独自に「災害休暇」や「特別有給休暇」などを設けている場合に適用する。この場合、賃金が支払われることもあります。
- 欠勤扱いとする: 給与から控除される。ただし、企業によっては、その日の欠勤を評価に含めないなどの配慮を行うこともあります。
重要なのは、このような事態が発生した際に、速やかに会社に連絡し、状況を報告することです。会社からの指示を仰ぎ、勝手な判断で出社を断念しないようにしましょう。多くの企業は、災害時における従業員の安全を最優先とし、柔軟な対応を取る方針を定めているはずです。日頃から、会社の災害時の対応マニュアルなどを確認しておくことをおすすめします。
まとめ
よくある質問
Q: 欠勤で引かれる金額はどのように計算されますか?
A: 欠勤で引かれる金額は、一般的に「基本給 ÷ 所定労働日数 × 欠勤日数」で計算されます。ただし、会社や就業規則によって計算方法が異なる場合があります。
Q: 欠勤が標準報酬月額に影響しますか?
A: はい、欠勤が長期にわたる場合、標準報酬月額が下がり、結果として健康保険料や厚生年金保険料が減額されることがあります。ただし、一時的な欠勤では影響がない場合が多いです。
Q: 欠勤すると給与がマイナスになることはありますか?
A: 欠勤によって給与がマイナスになる(支給額が0円未満になる)ことは、通常ありません。減額されたとしても、支給額が0円になるか、それ以上減額されることはありません。
Q: 欠勤は仕事の評価に響きますか?
A: 頻繁な欠勤や、事前の連絡なしの欠勤は、仕事への意欲や責任感を疑われる要因となり、評価に響く可能性があります。ただし、正当な理由(病気など)や適切な手続きを踏んだ欠勤は、必ずしも評価を下げるものではありません。
Q: 欠勤した分の給与を返金する必要はありますか?
A: 欠勤によって給与が減額されるのは、働いていない分の対価が支払われないためであり、返金という形ではありません。すでに支払われた給与を返金する必要は、通常ありません。
