概要: 「欠勤」の定義から、早退・遅刻との違い、正社員が欠勤した場合の影響まで、働く上で知っておきたい基本を解説します。また、英語での表現や、休む際の適切な対応についても触れています。
「欠勤」とは?定義と基本を理解しよう
欠勤の基本的な定義と「ノーワーク・ノーペイの原則」
「欠勤」とは、労働義務がある日に、労働者が労働しなかった状態を指します。
これは、正当な理由の有無にかかわらず、定められた労働日に会社に出勤しないことを意味します。
欠勤は、労働基準法において直接的な定義があるわけではありませんが、賃金に関する重要な原則として「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されます。
この原則は、「働かなかった時間分の賃金は支払われない」という考え方です。
つまり、従業員が欠勤した場合、その分の賃金は会社から控除されるのが一般的であり、これを「欠勤控除」または「不就労控除」と呼びます。
ただし、この控除は実際に働かなかった時間分のみに留める必要があり、これを超えて控除することは違法となる可能性があるため、企業側は細心の注意を払う必要があります。
企業は、従業員の労働契約や就業規則に基づいて、欠勤に関するルールを明確に定めておくことが求められます。
労働者も自身の権利と義務を理解し、適切に対応することが大切です。
法改正と勤怠管理の義務拡大
近年、日本の労働環境は法改正により大きく変化しており、企業の勤怠管理における義務も拡大しています。
特に2019年の働き方改革関連法以降は、労働時間の客観的な把握が企業に義務付けられました。
これは、タイムカード、ICカード、PCログなどの客観的な記録に基づき、従業員の労働時間を正確に把握することを指します。
この義務は、一般の従業員だけでなく、管理監督者やみなし労働時間制で働く従業員にも適用されます。
さらに、2024年4月からは、これまで猶予されていた業種(建設業、運送業など)にも時間外労働の上限規制が適用されるなど、企業が法を遵守することの重要性は一層高まっています。
また、2023年4月からは中小企業においても、時間外労働が60時間を超えた場合の割増賃金率が引き上げられました。
これらの法改正は、企業がより正確かつ公正な勤怠管理システムを構築し、従業員の健康と労働条件を守るためのものであり、欠勤・早退・遅刻の取り扱いにおいても、法的要件に則った厳格な管理が求められています。
有給休暇との違いと取得義務
欠勤と混同されやすいものに「年次有給休暇(有給休暇)」がありますが、両者には決定的な違いがあります。
有給休暇は、労働基準法に基づいて付与される、賃金が保障された休暇です。
労働者が有給休暇を取得した場合、賃金が控除されることはありません。
一方、欠勤は賃金が控除される「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されます。
近年では、企業の有給休暇に対する義務も強化されています。
働き方改革関連法により、企業は従業員に有給休暇を付与するだけでなく、年5日の有給休暇を確実に取得させる義務が追加されました。
この取得義務化により、有給休暇の取得率は向上傾向にあります。
厚生労働省のデータによると、2023年度の年次有給休暇取得率は65.3%と過去最高を記録しました。
しかし、政府目標の70%にはまだ届いておらず、産業別では複合サービス業(72.4%)や電気・ガス・熱供給・水道業(71.4%)が高い一方で、宿泊業・飲食サービス業(44.3%)や卸売業・小売業(49.5%)など低い業種も存在します。
企業は、これらの状況を踏まえ、従業員が有給休暇を適切に取得できる環境を整備することが重要です。
欠勤・早退・遅刻、それぞれの違いと使い分け
それぞれの明確な定義と区別
従業員の勤怠を管理する上で、「欠勤」「早退」「遅刻」はそれぞれ異なる意味を持ちます。
これらの違いを正しく理解し、区別することは、企業にとっても従業員にとっても非常に重要です。
- 欠勤(Absence):
労働義務がある1日全体を休むことを指します。病気や私用など、理由のいかんを問わず、所定労働日の全てを労働しなかった場合に適用されます。賃金は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき控除されます。
- 早退(Early Leave):
所定の労働時間の途中で、仕事を切り上げて退勤することを指します。午前中から出勤し、午後に退勤する場合などがこれに当たります。働かなかった時間分の賃金が控除の対象となります。
- 遅刻(Late Arrival / Tardiness):
所定の労働開始時刻に間に合わず、遅れて出勤することを指します。交通機関の遅延、寝坊、私用などが理由となることが多いです。早退と同様に、働かなかった時間分の賃金が控除の対象となります。
これらを混同して不適切な勤怠管理を行うと、労務トラブルの原因となるため、それぞれの定義を明確にし、就業規則に記載することが不可欠です。
控除の原則と計算方法の注意点
欠勤・早退・遅刻があった場合、原則として「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、実際に働かなかった時間分の賃金のみを控除することができます。
この原則を逸脱した不適切な控除は、労働基準法違反となる可能性があります。
特に注意が必要なのは、遅刻や早退をまとめて1日分の欠勤として扱ったり、「3回遅刻したら1日欠勤」とするような規定です。
これらは原則として違法であり、従業員が労働しなかった時間以上の賃金を控除することは認められません。
控除額の計算方法については、法的な具体的な決まりはありませんが、1分単位で正確に計算することが求められます。
例えば、時給制の従業員であれば、遅刻・早退した時間分の時給を控除します。
月給制の従業員の場合でも、月給を所定労働時間で割り、1時間あたりの賃金を算出するなどして、不就労時間に応じた賃金を控除する必要があります。
これらの計算方法は、就業規則に明確に規定し、従業員に周知しておくことで、不要な誤解やトラブルを防ぐことができます。
不適切な勤怠管理が招くリスク
欠勤・早退・遅刻に関する不適切な勤怠管理は、企業に様々なリスクをもたらします。
最も代表的な例として、遅刻・早退時間と残業時間を相殺することが挙げられます。
これは「ノーワーク・ノーペイの原則」と「労働時間の客観的把握義務」の両方に反する行為であり、原則として認められません。
例えば、「朝30分遅刻したが、その分夜30分残業したからチャラ」とするのは不適切です。
遅刻した30分は賃金控除の対象となり、残業した30分は残業手当の対象として別途計算されるべきです。
このような不適切な相殺は、賃金未払い問題や残業代の計算間違いに繋がり、労働基準監督署からの是正勧告や、従業員からの訴訟リスクを高めることになります。
また、就業規則に明確なルールがないまま運用されたり、従業員への周知が不足している場合も、従業員との間に不信感を生じさせ、労務トラブルに発展する可能性が高まります。
企業は、最新の労働法規に基づき、勤怠管理システムや就業規則を定期的に見直し、適正な運用を徹底することで、これらのリスクを回避し、従業員が安心して働ける環境を整備する必要があります。
正社員が欠勤するとどうなる?影響と確認事項
給与への直接的な影響:欠勤控除
正社員が欠勤した場合、最も直接的な影響は給与です。
先述の通り、「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、欠勤した時間分の賃金は支払われません。
これを欠勤控除と呼び、月の給与から該当額が差し引かれます。
欠勤控除の計算方法は、会社の就業規則に明記されているはずです。
一般的には、月の所定労働時間や日数に基づいて、1日あたりの賃金や1時間あたりの賃金を算出し、それに欠勤した日数や時間を乗じて控除額を決定します。
例えば、月給30万円、所定労働日数が20日の会社で1日欠勤した場合、およそ1万5千円が控除されることになります。
基本給だけでなく、通勤手当や役職手当など、欠勤によって発生しない費用や手当についても控除の対象となる場合があります。
ただし、住宅手当や扶養手当など、労働の対価ではない性格の手当は控除の対象とならないのが一般的です。
自身の給与明細を確認し、不明な点があれば人事部に確認することが重要です。
評価・昇進への間接的な影響
欠勤は、給与だけでなく、従業員の人事評価や昇進にも間接的に影響を及ぼす可能性があります。
特に、頻繁な欠勤や無断欠勤は、会社の規律を乱す行為として、評価にマイナスに作用することが少なくありません。
人事評価項目には「規律性」や「責任感」などが含まれることが多く、欠勤が多いとこれらの項目で低評価を受ける可能性があります。
その結果、賞与の査定や昇給、昇進の機会に影響が出ることも考えられます。
ただし、病気や慶弔など、正当な理由による欠勤や、事前に会社に連絡し適切な手続きを踏んだ欠勤の場合は、評価に与える影響が軽減されるのが一般的です。
一方、無断欠勤は最も重い問題とされ、悪質な場合には懲戒処分の対象となることがあります。
懲戒処分には、戒告、減給、出勤停止、そして最悪の場合には懲戒解雇といった重い処分が含まれます。
会社への連絡と適切な手続きは、自身の評価とキャリアを守る上で極めて重要です。
社会保険料・賞与・退職金への影響
正社員の欠勤は、社会保険料、賞与、退職金といった長期的な経済的要素にも影響を与えることがあります。
社会保険料に関して、短期間の欠勤であれば、通常は直ちに社会保険料(健康保険、厚生年金保険)の金額に影響はありません。
社会保険料は、原則として4月から6月の平均給与(標準報酬月額)に基づいて決定されるため、この期間以外の一時的な欠勤が直接影響することは稀です。
しかし、長期にわたる欠勤(休職など)で給与額が大幅に減少した場合には、標準報酬月額の見直しが行われ、保険料が変動する可能性もあります。
賞与(ボーナス)については、多くの企業で賞与の算定に個人の評価や勤務実績が考慮されます。
欠勤日数が多い場合、評価が下がり、結果として支給額が減額されることがあります。
就業規則や賃金規定で欠勤による賞与減額の基準が定められていることが一般的ですので、確認が必要です。
退職金制度がある場合、退職金の計算には勤続年数や基本給などが影響します。
長期の欠勤や休職期間は、勤続年数に算入されない場合や、その期間の評価が退職金の算定に影響を与える可能性があります。
これらの影響は会社の規定によって異なるため、不明な場合は人事部や就業規則で確認するようにしましょう。
欠勤・早退・遅刻、英語でどう表現する?
「欠勤」の英語表現:Absence, absent from work
「欠勤」は英語で様々な表現方法がありますが、最も一般的なのは「absence」です。
これは名詞形で、「会社を休むこと」や「不在」を意味します。
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Absence / Absent from work:
「He has an absence from work today.」(彼は今日、会社を欠勤しています。)
「She was absent from work yesterday.」(彼女は昨日、会社を欠勤しました。)
欠勤の理由によって、より具体的な表現を用いることができます。
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Sick leave / Medical leave:
病気による欠勤。「He’s on sick leave for a week.」(彼は1週間病気休暇を取っています。)
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Personal leave:
個人的な理由による欠勤。「I need to take a personal leave tomorrow.」(明日、個人的な理由で休暇を取る必要があります。)
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Vacation / Annual leave:
有給休暇。「She’s taking a vacation next week.」(彼女は来週、休暇を取ります。)
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Unauthorized absence / No-call, no-show:
無断欠勤。連絡なしに休むことを指す非常に深刻な表現です。
「His no-call, no-show today is a serious issue.」(彼の今日の無断欠勤は深刻な問題です。)
状況に応じて適切な表現を選ぶことが、ビジネスコミュニケーションにおいて重要です。
「早退」の英語表現:Leave early
「早退」を英語で表現する際、最もシンプルで広く使われるのは「leave early」です。
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Leave early:
「I need to leave early today due to a dentist appointment.」(歯医者の予約があるので、今日は早退する必要があります。)
「She had to leave work early yesterday.」(彼女は昨日、仕事を早退しなければなりませんでした。)
この表現は、許可を得て早退する場合、あるいは個人的な事情で早退する場合など、幅広い状況で使用できます。
よりフォーマルな文脈や、許可を得ていることを強調したい場合は、「be excused from work early」や「get permission to leave early」といった表現も使えます。
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Be excused from work early:
「He was excused from work early for a family matter.」(彼は家族の事情で早めに仕事を切り上げることが許されました。)
また、具体的な理由を付け加えることで、より丁寧な印象を与えることができます。
例えば、「I need to leave early for personal reasons.」(個人的な理由で早退する必要があります)のように表現します。
「遅刻」の英語表現:Tardiness, be late for work
「遅刻」を表す英語表現もいくつかありますが、主に名詞形の「tardiness」と動詞句の「be late for work」が使われます。
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Tardiness:
これは「遅刻」という行為や状態を指す名詞で、特に会社の規律や規則の文脈で用いられます。
「Frequent tardiness can affect your performance review.」(頻繁な遅刻はあなたの業績評価に影響を与える可能性があります。)
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Be late for work/meeting:
こちらは「仕事や会議に遅れる」という直接的な行動を表す動詞句です。
「I’m sorry, I’m going to be late for work today because of a train delay.」(申し訳ありません、電車の遅延で今日仕事に遅刻します。)
「He was late for the morning meeting again.」(彼はまた朝の会議に遅刻しました。)
遅刻の理由を伝える際には、「due to traffic congestion」(交通渋滞のため)や「because of a personal emergency」(個人的な緊急事態のため)などと具体的に伝えるのが一般的です。
ビジネスシーンでは、遅刻することが分かった時点で、できるだけ早く上司や同僚に連絡を入れることがマナーとされています。
その際、「I will be about 15 minutes late.」(15分ほど遅れます)のように、具体的な遅延時間を伝えることも大切です。
休む前に確認!欠勤する際の適切な対応
会社のルール(就業規則)の確認
病気や私用で会社を休む必要が生じた際、まず最初に行うべきは、会社の就業規則を確認することです。
就業規則には、欠勤・早退・遅刻に関する詳細なルールが明記されています。
具体的には、連絡方法、連絡のタイミング、必要な書類(診断書など)、賃金の控除方法、そして長期欠勤の場合の取り扱いなどが記載されています。
参考情報にもあるように、「遅刻・早退の定義、連絡方法、控除の計算方法などは、就業規則に明確に規定し、従業員に周知することが重要です。」とされており、これは労働者側にとっても自身の権利と義務を理解するための最も重要な情報源となります。
もし就業規則の内容が不明確であったり、手元にない場合は、人事部や上司に確認を求めましょう。
適切な手続きを踏まない欠勤は、無断欠勤とみなされ、懲戒処分の対象となる可能性もあります。
トラブルを避けるためにも、事前に会社のルールを把握し、それに従うことが基本中の基本です。
連絡方法とタイミングの重要性
会社を休むと決めたら、可能な限り早く、そして適切な方法で会社に連絡を入れることが極めて重要です。
一般的には、直属の上司に直接電話で連絡するのが最も望ましいとされています。
メールやビジネスチャットツールは補助的な連絡手段として利用されることはありますが、緊急時や連絡が難しい場合を除き、まずは口頭での連絡を心がけましょう。
連絡のタイミングは、始業時刻前、できれば会社の営業時間開始直後が理想です。
これにより、会社は業務の調整や引き継ぎを速やかに行うことができ、業務への影響を最小限に抑えることができます。
無断欠勤は、会社に大きな迷惑をかけるだけでなく、自身の信用を失う行為であり、懲戒処分の対象となり得る最も避けるべき事態です。
連絡の際には、以下の点を簡潔に伝えるようにしましょう。
- 休む(遅刻する、早退する)旨
- 休む理由(詳細は簡潔に)
- いつまで休むのか(具体的な日数や期間)
- 緊急時の連絡先
- 業務の引き継ぎ状況や、代理を立てているか否か
これにより、会社側も安心して対応することができます。
診断書や代替策の準備
欠勤の理由や期間によっては、会社から診断書などの提出を求められる場合があります。
特に、数日以上の長期にわたる欠勤の場合や、傷病手当金などの申請が必要な場合には、医療機関が発行した診断書が必須となることが多いです。
就業規則にその旨が明記されているか確認し、必要に応じて準備しましょう。
また、自身が担当している業務の状況も考慮し、会社への影響を最小限に抑えるための代替策を講じることも、責任ある社会人としての対応です。
- 業務の引き継ぎ:
可能であれば、休む前に同僚や上司に業務の状況を伝え、引き継ぎを行います。難しい場合は、緊急連絡先や最低限必要な情報だけでも共有しましょう。
- 連絡体制の確保:
休んでいる間も、必要に応じて会社からの連絡に対応できる体制を整えましょう。ただし、無理な対応は避け、療養に専念することも大切です。
近年、テレワークの普及により、勤怠管理の重要性が一層増しています。
参考情報にもある通り、労働時間の客観的な把握や従業員の健康管理が課題となる中で、休む際の適切な対応は、個人の責任感を示すだけでなく、組織全体の円滑な運営に貢献するものです。
まとめ
よくある質問
Q: 「欠勤」とは具体的にどのような状態を指しますか?
A: 「欠勤」とは、労働契約に基づき定められた労働日に、正当な理由なく労働義務を免除されることを指します。単に職場に来ないだけでなく、会社への事前連絡や承認がない場合も含まれます。
Q: 欠勤、早退、遅刻の主な違いは何ですか?
A: 「欠勤」は所定労働時間すべてを休むこと、「早退」は所定労働時間の一部を終業時刻より早く退社すること、「遅刻」は所定労働開始時刻より遅れて出社することを指します。
Q: 正社員が欠勤すると、どのような影響がありますか?
A: 正社員が欠勤すると、基本的にはその日の給与が控除されます。また、欠勤理由によっては、人事評価に影響したり、就業規則に基づき注意や処分を受ける可能性もあります。
Q: 「欠勤」を英語で表現する場合、どのような言葉がありますか?
A: 「欠勤」は、状況に応じて “absence”(欠席)、”absenteeism”(頻繁な欠勤)、”taking a day off”(一日休みを取る)などが使われます。
Q: 欠勤や早退・遅刻をする場合、どのような連絡をすれば良いですか?
A: 原則として、始業時刻前(または事前に決められた時間内)に、直属の上司や担当者へ電話などで連絡し、理由を簡潔に伝えるのが一般的です。会社の就業規則で定められた連絡方法を確認しましょう。
