概要: 欠勤が賞与(ボーナス)にどのように影響するか、給料や手当がいくら引かれるのかを解説します。さらに、損害賠償や退職金への影響、そして欠勤による減額を避けるための方法についても触れています。
欠勤は、私たちの仕事だけでなく、給与、賞与、各種手当、さらには将来の退職金といった経済的な待遇にも大きな影響を及ぼす可能性があります。予期せぬ欠勤が、思わぬ形で自身の収入に響くことは避けたいものです。
本記事では、欠勤がこれらの待遇に具体的にどのような影響を与えるのか、会社の就業規則や日本の労働法規に照らし合わせながら詳しく解説します。また、万が一の際の損害賠償請求の可能性や、退職金に関する重要な規定についても触れていきます。
最新の給与・賞与データも交えながら、従業員として知っておくべき欠勤のリスクと、それを最小限に抑えるための対策についてご紹介します。自身の権利と義務を正しく理解し、安心して働くための知識を身につけましょう。
欠勤が賞与(ボーナス)に与える影響
賞与の基本的な考え方と欠勤による評価への影響
賞与、いわゆるボーナスは、従業員のモチベーション向上や会社の業績還元を目的として支給されるものです。多くの企業では、会社の業績はもちろんのこと、従業員個人の勤務成績、貢献度、そして勤務日数や勤務態度なども評価の対象となります。
このため、欠勤が多いと所定労働日数が減少し、それが直接的に個人の評価を下げる要因となる可能性があります。評価が下がれば、結果として賞与の金額が減額されたり、場合によっては支給対象外となったりするリスクも考えられます。
特に、評価期間中に長期の欠勤があった場合、その期間の貢献が認められにくくなるため、賞与への影響は一層大きくなるでしょう。賞与は「賃金の後払い」という性質も持ちますが、基本給とは異なり、その支給は会社の裁量によるところが大きいため、欠勤は賞与算定において不利に働く可能性が高いと言えます。
自身の会社の就業規則や賃金規定には、賞与の算定基準や欠勤時の取り扱いが明記されているはずですので、一度確認しておくことが重要です。
最新の賞与データと企業における欠勤の評価実態
2024年の賞与事情を見ると、年間平均支給額は106.7万円となっており、夏・冬それぞれ約50万円前後が支給されています。年代別では、50代が123.9万円で最も高く、次いで40代が110.9万円、30代が100.3万円、20代が74.8万円と、年齢とともに増加する傾向にあります。
これらのデータはあくまで平均値ですが、多くの従業員にとって賞与は年収において大きな割合を占める重要な収入源です。企業は、限られた原資の中で賞与を配分するため、従業員の勤怠状況を重視する傾向にあります。
例えば、ある調査では、企業の約半数が賞与の評価項目に「勤怠状況」を含めているという結果も出ています。特に、無断欠勤や連絡なしの欠勤は、企業からの信頼を大きく損ね、評価において非常にマイナスに作用することは言うまでもありません。
賞与の支給は企業の業績にも左右されますが、個人の努力でコントロールできる部分として勤怠は非常に重要です。2025年夏の賞与の平均支給額は45万7000円と予測されており、今後も個人の評価が支給額に与える影響は大きいと見られます。
就業規則と賞与控除の法的な範囲
賞与の欠勤控除については、会社の就業規則や賃金規定に具体的な定めがあれば、欠勤日数に応じて控除することが法的に可能です。これは、労働を提供しなかった分の賃金を支払わないという「ノーワーク・ノーペイの原則」が賞与にも間接的に適用されると考えられているためです。
しかし、賞与の算定基準に欠勤率が明示的に含まれていない場合や、減給の限度額(労働基準法第91条)を超えるような過度な控除は認められない可能性があります。労働基準法では、制裁としての減給について「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えず、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えないこと」と定めていますが、賞与の減額がこの「制裁」に該当するかどうかは個別のケースで判断が必要です。
重要なのは、会社が賞与を減額する際には、その根拠となる規定が明確であり、かつ合理的な範囲内であることです。あいまいな規定で一方的に大幅な減額を行うことは、トラブルの原因となり得ます。
従業員としては、自身の就業規則を理解し、欠勤時の賞与の取り扱いについて疑問があれば、事前に人事担当者などに確認しておくことが賢明です。
欠勤した場合の給料・手当の計算方法
ノーワーク・ノーペイ原則と月給制の欠勤控除
欠勤した場合の給料計算の基本は、「ノーワーク・ノーペイの原則」です。これは「働いていない時間に対しては賃金を支払わない」という民法の原則で、労働基準法にも関連する考え方です。つまり、欠勤によって労働を提供しなかった分の給料は、原則として支払われません。
多くの企業で採用されている月給制の場合、欠勤が発生すると、その月の月給から欠勤日数に応じた金額が差し引かれる「欠勤控除」が適用されるのが一般的です。具体的な控除額の計算方法は会社によって異なりますが、一般的には「月給を所定労働日数(または月平均労働日数や年間平均労働日数)で割り、欠勤日数を乗じる」という方法が用いられます。
例えば、月給30万円、その月の所定労働日数が20日だった場合、1日あたりの賃金は1万5千円(30万円 ÷ 20日)となります。もし2日欠勤すれば、3万円(1万5千円 × 2日)が月給から控除されることになります。
この原則は、労働者が傷病手当金や休業補償給付を受けている場合など、特別な事情がない限り適用されるため、自身の給与体系と欠勤控除のルールを理解しておくことは非常に重要です。
各種手当への影響と対象外となるケース
給料だけでなく、各種手当についても欠勤が影響を及ぼすことがあります。通勤手当、役職手当、職務手当、精勤手当など、会社が独自に設けている手当は多岐にわたりますが、これらの手当が欠勤控除の対象となるかどうかは、会社の規定によって異なります。
例えば、精勤手当は、文字通り「真面目に勤務した」ことに対して支給される手当であるため、欠勤があればその支給条件を満たさなくなり、手当が支給されない、あるいは減額される可能性が高いでしょう。また、役職手当や職務手当についても、欠勤によって職務を遂行できない期間がある場合、その分の手当が控除されるケースがあります。
一方で、家族手当や住宅手当のように、従業員の生活保障を目的としており、出勤日数とは直接関係のない手当は、欠勤控除の対象外となることが多いです。これらの手当は、従業員の個人的な状況に対して支給される性格が強いためです。
自身の会社の手当が欠勤控除の対象となるか否かは、就業規則や賃金規定に明記されていますので、必ず確認しておくようにしましょう。
給与減額の法的制限と注意点
欠勤による給与減額は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づけば適法ですが、会社が従業員に対して「制裁」として減給処分を行う場合には、労働基準法による厳格な制限があります。
労働基準法第91条では、就業規則で減給の制裁を定める場合、その金額について「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えず、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えないこと」と定めています。これは、従業員の生活を保障するための重要な規定です。
ただし、この制限は「制裁」としての減給に適用されるものであり、欠勤控除は「労働の対価を支払わない」という性質であるため、この限度額の対象外となることが一般的です。しかし、会社が無断欠勤を理由に「違約金」や「罰金」を課すことは、労働基準法第16条で明確に禁止されています。
もし会社から不当な給与減額や違約金の請求があった場合は、労働基準監督署や弁護士に相談することを検討すべきでしょう。自身の権利を守るためにも、労働基準法の基本的な知識は身につけておくことが大切です。
欠勤が通勤手当や定期代に与える影響
通勤手当の基本的な性質と欠勤の影響
通勤手当は、従業員が通勤にかかる費用の一部または全額を会社が負担するものであり、その性質は「実費弁償」であることが一般的です。つまり、実際に通勤に要した費用を補填するという意味合いが強い手当と言えます。
この性質から、欠勤によって通勤の実態がなかった日や期間については、通勤手当が支給されない、あるいは減額される可能性があります。例えば、日割りで通勤手当を支給している会社では、欠勤日数に応じてその月の通勤手当が減額されるケースが考えられます。
特に、リモートワークが普及した現代においては、出社頻度に応じて通勤手当を実費精算する制度を導入している企業も増えています。このような制度の場合、欠勤は当然ながら出社にカウントされないため、その分の通勤手当は支給されません。
自身の会社の通勤手当規定を確認し、欠勤時の取り扱いを正確に把握しておくことが、予期せぬ収入減を避けるために重要です。
定期代支給の場合の注意点
多くの企業では、従業員が通勤用の定期券を購入できるよう、数ヶ月分の定期代をまとめて支給しています。この場合、支給時にすでに通勤費用が支払われている形になるため、欠勤が数日あった程度では、直接的な定期代の控除が行われないことが多いです。
しかし、長期にわたる欠勤(例えば1ヶ月以上など)の場合には、注意が必要です。会社によっては、長期欠勤によって定期券の利用実態がなくなったと判断し、残りの期間の定期代について返還を求める規定を設けている場合があります。これは、会社が本来支払うべき実費を超えて従業員に費用を負担している状態になるため、その過払い分を精算するという考え方に基づきます。
また、定期券の更新時期において、過去の欠勤状況や今後の出社見込みを考慮し、定期代の支給額や支給方法が見直される可能性もゼロではありません。特に、私傷病による休職などで長期間通勤ができない状況になった場合は、人事担当者と定期代の取り扱いについて相談することが不可欠です。
会社の規定確認の重要性
通勤手当や定期代に関する規定は、法律で一律に定められているものではなく、会社ごとにその内容が大きく異なります。そのため、欠勤が通勤手当にどのような影響を与えるかを正確に知るためには、自身の会社の就業規則や賃金規定を徹底的に確認することが最も重要です。
確認すべきポイントとしては、以下のような点が挙げられます。
- 通勤手当の支給形態(月額固定、日割り計算、定期代実費支給など)
- 欠勤時の控除に関する明確な規定の有無
- 長期欠勤や休職時における定期代の取り扱い(返還義務の有無など)
これらの情報が就業規則などに明確に記載されていない場合や、解釈が難しいと感じる場合は、遠慮なく人事部や経理担当者に問い合わせるべきです。あいまいなままにしておくと、後々予期せぬトラブルや収入減につながる可能性があります。正確な情報を得ることで、安心して通勤を続け、自身の給与を守ることができます。
欠勤が損害賠償や退職金に与える影響
損害賠償請求の可能性と現実
無断欠勤が続いた場合、会社に損害を与えたとして、従業員に対して損害賠償請求をされる可能性はゼロではありません。例えば、重要な会議に出席できなかった、緊急の業務対応ができず顧客に迷惑をかけた、代替人員の手配に余分なコストがかかった、といったケースが考えられます。
しかし、実際に会社が従業員に損害賠償請求を行い、それが認められるケースは非常に稀です。なぜなら、会社側が「損害の発生」「損害額の具体的な算定」「損害と無断欠勤との間の明確な因果関係」を具体的に立証する必要があるからです。この立証責任は非常に重く、例えば「会議に出られなかったために商談が失敗した」という因果関係を客観的に証明することは極めて困難です。
また、日本の労働法では、労働者を保護する観点から、会社が従業員に不当に重い責任を負わせることを抑制する傾向にあります。そのため、軽微な無断欠勤で損害賠償が認められることはほとんどなく、通常はよほど悪質で甚大な損害が発生しない限り、現実的なリスクとしては低いと言えるでしょう。
退職金の基本的な考え方と欠勤の影響
退職金は、法律で支給が義務付けられているものではありません。しかし、多くの企業では就業規則や退職金規程において、支給条件や計算方法が定められています。これらの規程がある場合、退職金は賃金の一部とみなされ、会社は規程に基づいて支給する義務を負います。
欠勤が退職金に影響を与えるかどうかは、この退職金規程の内容に完全に依存します。具体的には、規程の中に「欠勤日数に応じて退職金を減額する」「特定の欠勤理由で退職金を不支給とする」といった明確な定めが明記されていなければ、欠勤を理由に会社が一方的に退職金を減額したり、不支給としたりすることはできません。
また、退職所得控除額の計算において、長期の欠勤期間が含まれる場合でも、原則としてその期間は勤続期間に含まれ、控除額の計算から除外されることはありません。これは、退職金が勤続年数に応じて支給される性格が強いためです。
したがって、退職金の取り扱いについて不安がある場合は、自身の会社の退職金規程を必ず確認し、不明な点があれば人事担当者に問い合わせるべきです。
労働基準法が定める減給と罰則の禁止
会社が従業員に対して、無断欠勤を理由に「違約金」や「罰金」を課すことは、労働基準法第16条により明確に禁止されています。この規定は、労働者が使用者との間で労働契約を締結する際に、経済的に優位な立場にある使用者が不当な契約を押し付け、労働者を縛り付けることを防ぐために設けられています。
したがって、会社が就業規則などで「無断欠勤1回につき〇万円の罰金を徴収する」といった規定を設けていたとしても、それは法的に無効となります。
ただし、前述の通り、「制裁」としての減給処分は認められる可能性がありますが、これにも労働基準法第91条に基づく限度額が設定されています(「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えず、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えないこと」)。
このように、労働基準法は従業員の権利を保護し、会社が不当な不利益処分を行うことを厳しく制限しています。万が一、不当な罰則や減給を言い渡された場合は、労働基準監督署や弁護士に相談し、適切な対応を取ることが重要です。
欠勤による給与減額を避けるために
事前連絡と適切な手続きの重要性
やむを得ない事情で欠勤せざるを得ない場合でも、必ず事前に会社に連絡し、承認を得ることが最も重要です。連絡を怠る「無断欠勤」は、会社からの信頼を大きく損ねるだけでなく、懲戒処分の対象となる可能性も高まります。
連絡の際には、欠勤の理由、期間、そして業務への影響などを簡潔に伝えるように心がけましょう。また、病気や怪我による欠勤であれば、医師の診断書を提出するなど、会社が求める手続きを速やかに行うことも大切です。
欠勤には、有給休暇の取得や、会社独自の特別休暇制度(慶弔休暇、リフレッシュ休暇など)を活用できる場合があります。自身の有給休暇の残日数や、会社の休暇制度について事前に確認しておけば、給与減額を伴わない形で休暇を取得できる可能性も広がります。
突然の欠勤でも、適切な手続きを踏むことで、不必要なトラブルや不利益を避けることができます。
就業規則と賃金規定の確認
自身の給与や手当、賞与、退職金などへの欠勤の影響を正確に知るためには、会社の就業規則と賃金規定を熟読することが不可欠です。これらの規定には、欠勤時の給与控除の計算方法、各種手当の取り扱い、賞与や退職金の算定基準、そして欠勤に対する懲戒処分に関する事項などが詳細に記載されています。
特に、以下の点を確認しておきましょう。
- 欠勤控除の計算方法
- 欠勤によって減額・不支給となる手当の種類
- 賞与の査定における欠勤の評価基準
- 退職金規程における欠勤の取り扱い
- 懲戒処分の種類と、欠勤がその対象となる条件
これらの規定は、会社と従業員の間で交わされる労働契約の重要な一部です。不明な点があれば、一人で抱え込まず、人事部や上司に質問して正確な情報を得るようにしましょう。自身の権利と義務を正しく理解することが、安心して働く上での基盤となります。
勤怠管理の徹底と健康管理
給与減額を避けるための最も基本的な対策は、自身の勤怠状況を徹底的に管理し、不必要な欠勤を減らすことです。計画的な休暇取得を心がけ、有給休暇を有効活用することで、体調不良などによる突発的な欠勤のリスクを軽減できます。
また、何よりも重要なのは、日頃からの健康管理です。十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、ストレスを適切に解消することで、病気による欠勤を未然に防ぐことができます。定期的な健康診断の受診も、自身の健康状態を把握し、早期に不調を発見するために役立ちます。
2023年度の国税庁の調査によると、給与所得者1人あたりの平均年収は460万円、日本企業は2024年に平均5.3%の給与増額を実施するなど、賃金水準は上昇傾向にあります。自身の努力と適切な勤怠管理が、これらの恩恵を最大限に享受し、安定した収入を維持することにつながるでしょう。
勤怠は個人の責任だけでなく、チーム全体の生産性にも影響します。良好な勤怠状況を維持することは、自身のキャリアアップにも繋がる重要な要素と言えます。
まとめ
よくある質問
Q: 欠勤すると、賞与(ボーナス)は減額されますか?
A: 多くの企業では、賞与は勤務成績や出勤率によって評価されるため、欠勤が多いと減額される可能性があります。ただし、減額の基準や度合いは企業によって異なります。
Q: 欠勤すると、給料はいくら引かれますか?
A: 欠勤した日数分の給料が差し引かれます。計算方法は「1日あたりの給与額」を算出し、それに欠勤日数を掛けるのが一般的です。1日あたりの給与額は、月給をその月の所定労働日数で割るなどして算出されます。
Q: 早退した場合も欠勤と同様に給料は引かれますか?
A: 早退した場合も、原則として勤務すべき時間帯に勤務しなかった時間に応じて、給与から控除されます。通常、就業規則で「〇時間以上の欠勤・早退で1日欠勤扱い」などの規定があります。
Q: 欠勤が原因で会社に損害を与えた場合、損害賠償を請求されることはありますか?
A: 原則として、単なる欠勤で損害賠償請求されることは稀です。ただし、意図的に、あるいは重大な過失によって会社に損害を与えた場合は、損害賠償請求の対象となる可能性はあります。
Q: 欠勤すると、退職金に影響はありますか?
A: 退職金の算定において、出勤率や勤務年数が考慮される場合があります。そのため、長期にわたる頻繁な欠勤は、退職金の金額に影響を与える可能性があります。これも企業の規定によります。
