欠勤はいつまで許される?体調不良でも大丈夫?ケース別解説

体調不良による欠勤が続くと、会社からの処分や解雇につながるのではないかと不安になる方もいるでしょう。しかし、正当な理由があれば、一定期間の欠勤は認められています。

本記事では、欠勤の基本的な考え方から、体調不良の場合の対応、さらに新型コロナウイルス感染症の影響なども含めて、最新の情報に基づき解説します。

【基本】欠勤できる日数に明確な上限はない?

法律上の定義と労働契約の原則

「欠勤」という言葉に、実は法律上の明確な定義はありません。一般的には、有給休暇や就業規則で定められた休暇を取得せずに、従業員側の都合で休むことを指します。

会社と従業員は労働契約を結んでおり、従業員には「出勤する義務」があります。そのため、無断欠勤や頻繁すぎる欠勤は、労働契約違反とみなされ、会社から指導や処分を受ける可能性があります。

一方で、会社には従業員の健康状態を把握し、必要に応じて配慮する義務(安全配慮義務)があります。病気や怪我など、正当な理由による欠勤は原則として認められますが、その範囲や期間は会社ごとに異なります。

就業規則が示す「許される」範囲とは

欠勤に関する具体的な取り扱いは、各企業の就業規則に詳細に定められています。法律で明確な日数が決められていないからこそ、就業規則の確認が非常に重要になります。

就業規則には、欠勤の回数や期間の上限、欠勤した場合の給与控除(ノーワーク・ノーペイの原則に基づき、欠勤した日数分給与が控除される「欠勤控除」)、一定期間以上の欠勤における診断書の提出義務などが明記されています。

また、長期にわたる療養が必要な場合に利用できる休職制度についても、就業規則に規定されています。自身の会社のルールを把握し、適切に対応することが、安心して働くための第一歩と言えるでしょう。

体調不良とコロナ禍における特別対応の終焉

病気や怪我による体調不良は、欠勤の正当な理由として認められるのが一般的です。ただし、その理由を会社に伝え、適切な手続きを踏む必要があります。

新型コロナウイルス感染症に関しては、感染症法上の位置づけが5類に移行したことにより、以前のような法的拘束力のある行動制限はなくなりました。そのため、感染した場合でも、発熱などの症状があれば、通常通り個人の体調不良による欠勤として扱われることが多くなっています。

休業手当の支払いも不要となるケースがほとんどです。また、「濃厚接触者」という概念もなくなっており、自身の体調に問題がなければ出勤が可能です。ただし、企業によっては独自の特別休暇や感染症対策方針を設けている場合があるため、自身の会社の就業規則を改めて確認することが大切です。

体調不良による欠勤:長期化する場合の対応

初期対応:速やかな連絡と情報共有の重要性

体調不良で欠勤する際、最も重要なのは「速やかな連絡」です。できるだけ早く、就業開始時間前には会社に連絡を入れましょう。基本的には電話で連絡し、緊急時ややむを得ない場合にのみメールやチャットを利用するようにしましょう。

連絡時には、休む理由を明確に伝えることも大切です。体調不良の場合も、具体的な症状を伝えられる範囲で伝えることが望ましいです。例えば、「発熱と倦怠感があり、自宅療養が必要なため」といった具合です。これにより、会社側は状況を把握し、業務調整を行うことができます。

連絡を怠ったり、曖昧な理由で頻繁に休んだりすると、会社の信頼を失い、人事評価にも影響が出かねません。体調が優れない中でも、まずは会社への連絡を最優先に行うよう心がけましょう。

有給休暇と診断書の活用術

体調不良で休む場合、まず検討したいのが有給休暇の取得です。有給休暇は労働者に認められた権利であり、取得しても給与が保障されます。自身の有給休暇残日数を確認し、積極的に利用しましょう。

また、就業規則によっては、数日以上の欠勤が続く場合に医師の診断書の提出を求められることがあります。診断書は、欠勤の正当性を証明し、会社が従業員の健康状態を把握し、安全配慮義務を履行するために必要な書類です。

診断書の発行には費用がかかることがありますが、将来的なトラブルを避けるためにも、必要な場合は速やかに医療機関を受診し、取得するようにしましょう。会社に提出する際は、コピーを取り、控えを保管しておくことをお勧めします。

休職制度への移行と復職への準備

体調不良が長引き、数週間から数ヶ月にわたる療養が必要な場合は、休職制度の利用を検討することになります。休職制度は、病気や怪我などで一時的に働けない状態になった際に、会社が労働義務を免除し、籍を残したまま療養に専念できる制度です。

休職に関する規定も就業規則で確認が必要ですが、一般的には休職期間の上限が定められており、休職中の給与は支給されないことが多いです。しかし、健康保険の「傷病手当金」を利用することで、生活費を補填できる場合があります。

休職期間中は、復職に向けた準備も重要です。主治医との相談のもと、リハビリテーションや試し出勤などを通じて、徐々に職場復帰を目指しましょう。復職の可否は、医師の判断と会社の承認を経て決定されます。

試用期間、アルバイト、派遣社員の欠勤事情

試用期間中の欠勤:本採用への影響

試用期間は、会社が新入社員の能力や適性、勤務態度などを見極めるための重要な期間です。この期間中に欠勤が続くことは、本採用に大きな影響を与える可能性があります。

たとえ正当な理由(体調不良など)であっても、頻繁な欠勤や長期にわたる欠勤は、会社に「この人物は健康面で問題があるのではないか」「責任感に欠けるのではないか」といった懸念を抱かせ、マイナス評価につながりやすいです。結果として、試用期間満了時に本採用が見送られるケースも存在します。

試用期間中の解雇は厳しく制限されていますが、業務に支障をきたすほどの欠勤が続く場合、客観的に合理的な理由があると判断されれば、解雇が有効となる可能性もあります。この期間は特に、体調管理に気を配り、やむを得ない欠勤の場合は速やかに、かつ丁寧に状況を説明することが肝心です。

アルバイト・パートタイマーの欠勤と契約維持

アルバイトやパートタイマーも、会社と労働契約を結んでいる以上、欠勤に関する基本的なルールは正社員と同様です。しかし、シフト制勤務が多いため、欠勤が他の従業員や店舗運営に与える影響がより直接的で大きいという特徴があります。

特に人数の少ない店舗や職場で欠勤が続くと、他のスタッフへの負担増大や、営業に支障をきたすことにもなりかねません。このような状況は、会社との信頼関係を損ね、契約更新の際に不利な評価につながる可能性があります。

アルバイト・パートタイマーも、一定の要件を満たせば有給休暇を取得できます。例えば、「週所定労働日数が4日以下かつ、週所定労働時間が30時間未満の労働者」でも、勤続年数に応じて比例付与されます。自身の有給休暇の有無を確認し、活用することが賢明です。

派遣社員の欠勤:派遣元と派遣先の連携

派遣社員の場合、雇用契約は派遣元企業(派遣会社)と結んでおり、実際に働くのは派遣先企業という特殊な形態です。そのため、欠勤の連絡は、まず派遣元企業の人事担当者または営業担当者に行うのが基本的な流れとなります。

派遣元企業は、その情報を受けて派遣先企業に欠勤の連絡を行います。この二重の連絡体制があるため、派遣社員の欠勤は、派遣元と派遣先双方に影響を及ぼします。欠勤が続くと、派遣先からの評価が下がるだけでなく、派遣元からも契約更新や次の仕事の紹介に影響が出ることがあります。

派遣社員にとって、派遣元との信頼関係は非常に重要です。欠勤する際は、派遣元の就業規則や連絡ルールを厳守し、状況を速やかに、かつ誠実に伝えるようにしましょう。不明な点があれば、事前に派遣元の担当者に確認しておくことをお勧めします。

公務員と一般企業の欠勤ルールの違い

公務員の「病気休暇」と「休職」制度

公務員には、一般企業とは異なる独自の休暇・休職制度が設けられています。代表的なものが「病気休暇」です。病気休暇は、原則として診断書の提出により取得可能で、一定期間(多くの自治体や国家機関で90日以内など)は有給で取得できるのが一般的です。

この期間を超えても療養が必要な場合は、「休職」に移行します。休職期間中は、原則として給与は支給されませんが、共済組合から「傷病手当金」に相当する給付金が支給される場合があります。公務員の服務規律は厳格であり、欠勤にも厳しい目が向けられるため、制度を正確に理解しておくことが重要です。

病気休暇や休職制度は、公務員の身分を保障しつつ、療養に専念できる環境を提供するものです。これらの制度を適切に利用することで、安心して治療に専念し、職場復帰を目指すことができます。

一般企業の多様な就業規則と裁量

一般企業の場合、労働基準法を遵守することはもちろんですが、欠勤に関する詳細なルールは、各企業の就業規則に委ねられています。そのため、企業によって欠勤控除の有無、診断書の提出基準、休職制度の内容などが大きく異なるという特徴があります。

例えば、欠勤控除が一切ない企業もあれば、特別な有給の病気休暇を設けている企業、さらには感染症対策として独自の特別休暇を設けている企業もあります。福利厚生の一環として、従業員の健康を支援する手厚い制度を持つ企業も少なくありません。

企業規模や業種によっても、欠勤に対する考え方や対応は様々です。大企業では制度が整っている一方、中小企業では個別の事情を考慮した柔軟な対応が見られることもあります。自身の会社の就業規則を理解し、不明な点は人事部に確認することが不可欠です。

欠勤が評価・昇進に与える影響

欠勤は、公務員、一般企業を問わず、人事評価や昇進に影響を与える可能性があります。特に評価制度に「勤務態度」「職務遂行能力」「責任感」などの項目がある場合、頻繁な欠勤はマイナス評価につながりやすい傾向があります。

公務員の場合、欠勤日数が一定以上になると、昇給停止や勤勉手当の減額、さらには懲戒処分の対象となることもあります。服務規律違反とみなされるリスクもゼロではありません。

一般企業でも、欠勤によって業務に支障が出れば、その分評価が下がるのは避けられません。また、重要なプロジェクトや責任あるポジションへの抜擢を検討する際、欠勤が多い従業員は敬遠される傾向にあります。自身のキャリア形成を考える上でも、適切な欠勤対応と体調管理は非常に重要です。

欠勤する前に確認すべきことと代替案

自身の就業規則を再確認するチェックリスト

欠勤が必要になった際、何よりも先に確認すべきは、自身の会社の就業規則です。慌てて行動する前に、以下の項目をチェックリストとして活用し、状況を整理しましょう。

  • 欠勤の定義と連絡方法(誰に、いつまでに、どのような手段で連絡するか)
  • 欠勤控除の有無と計算方法
  • 診断書提出の要件(何日以上の欠勤で必要か、どのタイミングで提出するか)
  • 有給休暇の残日数と取得方法
  • 休職制度の有無と利用条件
  • 慶弔休暇や特別休暇(感染症休暇など)の有無と利用条件
  • 会社独自の福利厚生(病気休暇など)の有無

就業規則が手元にない場合は、社内イントラネットや人事部に問い合わせて確認しましょう。事前の確認が、トラブルを避け、安心して休むことにつながります。

有給休暇以外の選択肢:振替休日と特別休暇

有給休暇を使い切ってしまった、あるいは温存したい場合でも、欠勤以外の選択肢がないか確認しましょう。例えば、休日出勤をした際に取得できる「振替休日」が残っていないか、また、会社独自の「特別休暇」がないかを確認します。

特別休暇には、慶弔休暇やリフレッシュ休暇のほか、最近では新型コロナウイルス感染症に対応するための「感染症休暇」を設けている企業もあります。これらの休暇は、有給で取得できる場合が多く、欠勤控除の心配がありません。

フレックスタイム制や裁量労働制の従業員は、柔軟な働き方が認められているため、午前中だけ病院に行くために時間を調整するなど、通常の欠勤とは異なる対応が可能な場合もあります。自身の契約形態と会社の制度を把握し、最も適切な方法を選択しましょう。

休む前にできる準備と仕事への影響軽減策

やむを得ず休む場合でも、仕事への影響を最小限に抑えるための準備は非常に重要です。これにより、自分自身も安心して療養に専念できますし、職場への迷惑も軽減できます。

  1. 業務の進捗状況を共有する:現在担当している業務や、緊急で対応が必要なタスクについて、同僚や上司に伝えておきましょう。
  2. 緊急連絡先を設定する:自分がいなくても対応できる緊急連絡先(顧客や取引先など)を明確に伝えておきます。
  3. 代理人への引き継ぎ:可能であれば、自分の業務を代行してくれる同僚に、必要な情報や資料を事前に引き継いでおきましょう。
  4. メールの自動返信設定:不在期間中にメールを受信した場合、自動返信で状況と復帰予定日を知らせる設定をしておくと丁寧です。

これらの準備を行うことで、復帰後の業務再開もスムーズになります。備えあれば憂いなしの精神で、事前にできることは済ませておきましょう。