概要: 議事録は、会議の決定事項や議論内容を記録し、関係者間で共有するための重要な文書です。本記事では、町内会や理事会などの身近な会議から、株主総会や取締役会といった専門的な会議まで、場面に応じた議事録の具体的な書き方と例文を紹介します。さらに、英語での議事録作成における注意点や、AIを活用した効率的な議事録作成についても解説します。
議事録作成の目的と基本構成要素
議事録の役割と重要性
議事録は、単なる会議の記録に留まらず、その後の業務遂行において極めて重要な役割を担います。
会議で議論された内容、決定事項、そして次に取るべき行動を正確に記録し、関係者間で共有するための基盤となる文書だからです。
正確な議事録が存在しない場合、参加者間での認識の齟齬が生じたり、重要な決定事項が伝達漏れになったりするリスクが高まります。
これは、プロジェクトの遅延や、時には企業間のトラブルに発展する可能性も否定できません。
また、議事録は過去の経緯を振り返るための貴重な資料としても機能します。
なぜその決定が下されたのか、どのような議論があったのかを後から確認できることで、過去の経験を未来の意思決定に活かすことができます。
特に、法的拘束力を持つ会議(株主総会や取締役会など)においては、議事録そのものが証拠能力を持つため、その正確性と網羅性は非常に重要視されます。
つまり、議事録は「情報共有」「合意形成の証明」「意思決定の記録」「進捗管理の基盤」といった多角的な目的を果たす、ビジネスにおける不可欠なツールと言えるでしょう。
議事録の基本構造とフォーマット
効果的な議事録を作成するためには、その基本構造とフォーマットを理解しておくことが不可欠です。
一般的に、議事録には以下の要素が含まれます。
- 会議名:何の会議であるかを明確にします。
- 日時:会議が開催された正確な日時を記録します。
- 場所:会議が行われた場所(会議室名、オンライン会議URLなど)を明記します。
- 参加者:出席者の氏名と役職を記載します。欠席者がいる場合はその旨も記します。
- 議題:会議で話し合われたテーマやアジェンダを列挙します。
- 議論内容:各議題に対する主要な発言や意見を要約して記録します。
- 決定事項:会議で合意された結論や決定を明確に記載します。これは議事録の核となる部分です。
- 確認事項:次回の会議で確認すべき内容や、宿題となった事項をまとめます。
- 次回開催日時・場所:次回の会議が既に決定している場合は記載します。
議事録のフォーマットには大きく分けて「会話形式」と「要約形式」の2種類があります。
「会話形式」は会議での発言を時系列で詳細に記録しますが、情報量が多くなりがちで、重要なポイントが見えにくくなることがあります。
対照的に、最も一般的に利用される「要約形式」は、会議の内容を簡潔に整理し、決定事項や要点に絞ってまとめるため、後から内容を素早く把握しやすいという特徴があります。
会議の目的や性質に応じて、適切なフォーマットを選択することが、読みやすく実用的な議事録作成の鍵となります。
効率的な議事録作成のための事前準備
議事録作成の効率と質は、会議前の「事前準備」に大きく左右されます。
何も準備せずに会議に臨むと、重要な情報の聞き漏らしや、記録漏れが発生しやすくなり、結果として会議後の修正作業に膨大な時間がかかってしまうことにもなりかねません。
まず、会議の目的とアジェンダを事前に把握し、何が議論され、どのような結論が期待されているのかを明確にしておくことが重要です。
これにより、会議中にどの情報に特に注意して記録すべきかが分かり、効率的なメモ取りが可能になります。
次に、議事録のフォーマットやテンプレートを事前に準備しておきましょう。
日時、場所、参加者、議題といった基本的な項目をあらかじめ記入しておくことで、会議中は議論の内容に集中できます。
参加者の氏名や役職なども事前にリストアップし、必要に応じて敬称を統一するなど、表記のルールを決めておくことも有効です。
さらに、会議の主要な論点や、決定が必要となる項目を把握し、それらに関するキーワードや用語をメモ帳にリストアップしておくのも良い方法です。
これにより、専門用語が飛び交う会議でも、聞き漏らしや誤解を防ぎ、より正確な記録に繋げることができます。
このような周到な事前準備を行うことで、会議中の記録作業がスムーズになり、会議後の議事録作成の負担を大幅に軽減することが可能になるでしょう。
場面別!議事録の書き方と例文(町内会・理事会・会議)
一般的な会議での議事録作成のポイント
一般的な社内会議やプロジェクト会議における議事録は、業務の円滑な進行に直結する重要なツールです。
効率的かつ正確な議事録を作成するためには、会議中の記録方法と会議後の整理作業の両方にポイントがあります。
まず、会議中は5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識してメモを取ることが基本です。
特に重要なのは、「決定事項」と「意見・発言」を明確に区別して記録することです。
決定事項は会議の結論であり、その後のアクションに直結するため、発言者、内容、担当者、期限を正確に記録する必要があります。
会議後に記憶が鮮明なうちにメモを見返し、不足部分を補ったり、不明な点があれば参加者に確認を取ったりする作業も不可欠です。
議事録の本文は、長文を避け、箇条書きや記号を効果的に活用して視覚的に分かりやすく整理しましょう。
例えば、決定事項は太字にしたり、記号を変えたりすることで、一目で内容を把握しやすくなります。
また、主語・述語を明確にし、文体を統一することで、読み手にとってストレスのない文章を作成できます。
人名や部署名などの表記の揺れがないか、最終確認することも重要です。
議事録は、会議終了後24時間以内を目安に関係者へ共有することが推奨されています。
これにより、内容の確認と次のアクションへの移行が迅速に行え、業務の停滞を防ぐことができます。
町内会・自治会での議事録作成
町内会や自治会の会議は、地域住民の生活に密接に関わるため、議事録には「分かりやすさ」と「共有のしやすさ」が特に求められます。
専門用語を避け、誰が読んでも理解できる平易な言葉遣いを心がけることが重要です。
参加者は幅広い年齢層や背景を持つ住民であるため、丁寧で親しみやすい表現も有効です。
議事録の構成は、一般的な会議の要素に加え、以下のようなポイントを意識すると良いでしょう。
- 開催目的:会議の主旨を簡潔に記載します。
- 審議事項:各議題について、どのような意見が出たか、どのような点が議論の対象となったかを分かりやすくまとめます。
- 決定事項と担当:「〇〇公園の清掃活動を〇月〇日に実施することが決定しました。担当は〇〇さんです。」のように、具体的な内容と担当者を明記します。
- 連絡事項:次回の会合予定や、住民への周知事項があれば記載します。
例:
【〇〇町内会 定例会 議事録】
日時:2024年5月15日(水)19:00~20:30
場所:〇〇公民館 会議室
参加者:〇〇町内会長、〇〇副会長、他住民15名
議題:
1. 〇〇公園清掃活動について
- 〇月〇日の実施案が提示され、賛成多数で可決されました。
- 担当:〇〇さん、〇〇さん
- 持ち物:軍手、ゴミ袋(町内会で用意)
2. 夏祭り企画について
- 盆踊り、屋台の出店案が出ました。
- 詳細は次回会合で企画部会が提案します。
決定事項:
- 〇〇公園清掃活動は〇月〇日(土)午前9時より実施。
- 夏祭り企画は次回定例会で具体案を検討。
連絡事項:
- 次回定例会は〇月〇日(水)19:00より、同会場にて開催します。
議事録は、回覧板や掲示板、町内会のウェブサイトなど、住民に情報が届きやすい方法で共有することが大切です。
特に高齢の方にも配慮し、文字の大きさやレイアウトにも工夫を凝らすと、より多くの住民に情報を届けられます。
マンション理事会での議事録作成
マンション理事会の議事録は、区分所有者の財産や生活に直結する重要な決定を記録するため、その法的正確性と透明性が非常に重視されます。
マンション管理組合の運営には区分所有法や標準管理規約が適用されるため、議事録もそれに則った形で作成する必要があります。
特に、規約の改正、大規模修繕工事の実施、管理費・修繕積立金の変更など、区分所有者全体に影響を及ぼす決定事項については、議論の経緯、決議方法、賛成・反対の意思表示を詳細かつ正確に記録することが求められます。
記載すべき主な項目は以下の通りです。
- 会議名:〇〇マンション管理組合 理事会
- 日時・場所・参加者:一般的な議事録と同様に明確に記載します。
- 議題:修繕計画、管理規約改正、管理費会計報告など、具体的なテーマを挙げます。
- 審議内容:各議題に対する意見、質疑応答、論点整理などを記載します。
- 決議事項:最も重要な部分です。
- どのような決議(承認、否決、保留など)がなされたか。
- 決議の根拠となる規約や細則。
- 賛成者数、反対者数、棄権者数。
- 異議を述べた理事の氏名(必要な場合)。
- 担当者と期限。
- 報告事項:管理会社からの報告や、各担当理事からの進捗報告など。
議事録は、必要に応じて専門家(マンション管理士や弁護士)のチェックを受けることも検討すべきです。
また、作成された議事録は、区分所有者が閲覧できるように保管され、通常は管理規約に基づいて一定期間掲示板への掲示やウェブサイトへの掲載が行われます。
透明性の高い議事録作成は、区分所有者間の信頼関係を築き、管理組合の健全な運営に不可欠です。
株主総会・取締役会における議事録作成のポイント
株主総会議事録の法的要件と記載事項
株主総会議事録は、会社法によって作成が義務付けられており、その記載内容や保管については厳格な規定が存在します。
単なる記録ではなく、会社経営の重要な意思決定を証明する「法的な文書」としての性格が非常に強いのが特徴です。
会社法第318条により、以下の事項を正確に記載することが求められます。
- 日時及び場所:総会が開催された年月日、時間、場所。
- 議事の経過の要領及びその結果:議論の内容の概略、そして採決の結果(可決、否決、承認など)。
- 株主総会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の概要:重要な意見や質問、それに対する回答などを簡潔に記録します。
- 出席した取締役、監査役、会計参与、職務執行者、会計監査人の氏名または名称:役員の出席状況も重要です。
- 議長の氏名:議事進行を務めた者の氏名。
- 議事録作成に係る職務を行った取締役の氏名:議事録の作成責任者を明確にします。
特に、役員選任、定款変更、剰余金の配当、合併・分割などの重要決議については、議案の内容、決議方法(書面投票、電子投票の有無)、賛成・反対の株主数や議決権数などを具体的に記録し、誤解が生じないようにする必要があります。
議事録は、総会終了後から10年間、本店に備え置かなければならず、株主は営業時間内であれば閲覧または謄写の請求ができます。
そのため、第三者によるチェックが入る可能性も考慮し、極めて高い正確性が求められます。
取締役会議事録の重要性と記録の注意点
取締役会議事録も株主総会議事録と同様に、会社法によって作成が義務付けられており、会社の業務執行に関する重要な決定を記録する法的文書です。
会社法第369条により、以下の事項を議事録に記載しなければなりません。
- 日時及び場所:会議が開催された年月日、時間、場所。
- 議事の経過の要領及びその結果:議論の概要と決議の結果。
- 特別利害関係取締役の氏名:特定の議題に対して利害関係を持つ取締役がいる場合、その氏名を記載します。
- 出席した取締役及び監査役の氏名:出席者と、議長を務めた取締役の氏名も記載します。
- 当該取締役会が書面決議(取締役会設置会社が書面決議をすることができる旨の定款の定めがある場合)により行われたときは、その旨:書面決議の場合の記載事項も重要です。
取締役会で決議される事項は、重要な業務執行の決定(多額の借入、重要な財産の処分・譲受けなど)、代表取締役の選定・解職、支店の設置・移転・廃止など、会社の経営に大きな影響を与えるものが多いため、その記録には細心の注意が必要です。
特に決議事項に関しては、議案の正確な内容、決議の賛成・反対の意思表示、異議を述べた取締役の氏名を明確に記載することが求められます。
これは、後日、取締役の責任問題が発生した場合などに、その判断の根拠となる重要な証拠となるためです。
取締役会議事録も、本店に10年間備え置く義務があり、株主や債権者からの閲覧請求に応じなければならない場合があります。
そのため、高い透明性と正確性を持って作成されることが不可欠です。
専門性と正確性を担保するための工夫
株主総会や取締役会といった経営層の会議では、専門性の高い議論が交わされ、会社の運命を左右する重要な決定が下されます。
したがって、これらの議事録には極めて高い正確性と、法的な要件を満たす専門性が求められます。
これを担保するための工夫は多岐にわたります。
まず、議事録作成者は、議題となる会社法や関連法規、定款の内容を事前にしっかりと把握しておく必要があります。
特に、決議の要件や記載事項が法令で定められている場合は、その規定を忠実に守って記録しなければなりません。
会議中には、専門用語や複雑な論点に対して、不明な点があればその場で確認し、正確な言葉遣いでメモを取るように心がけます。
また、ICレコーダーなどによる音声記録は、あくまで補助的なツールと位置づけ、会議中に要点をしっかりメモする姿勢が重要です。
会議後の作成段階では、以下の点に注意を払いましょう。
- ダブルチェック体制の確立:作成者だけでなく、議長や関係者による複数人でのチェック体制を構築し、誤記や漏れがないかを徹底的に確認します。
- 弁護士や公認会計士など専門家との連携:特に重要な決議事項や、法的な解釈が必要となる内容については、外部の専門家の意見を求めることで、法的な正確性を担保できます。
- 過去の議事録や関連資料の参照:同様の議題が過去にあった場合、その記録を参照することで、継続性や一貫性を保ちながら議事録を作成できます。
これらの工夫を通じて、専門的かつ正確な議事録を作成することは、会社の健全なガバナンスを維持し、将来的な法的リスクを回避するために不可欠なプロセスです。
英語での議事録作成:表現とフォーマットの基本
英語議事録の標準的な構成要素
国際的なビジネスシーンでは、英語での会議やその議事録作成が日常的に行われます。
英語議事録も日本語と同様に、会議の情報を正確に伝えるための標準的な構成要素が存在します。
以下に主な構成要素とそれに対応する英語表現を示します。
- Meeting Title: 会議のタイトル(例: Marketing Strategy Meeting)
- Date & Time: 会議開催日時(例: May 15, 2024, 10:00 AM – 12:00 PM)
- Location: 会議開催場所(例: Conference Room A / Online via Zoom)
- Attendees: 出席者リスト(例: John Smith (Chair), Jane Doe, Mark Johnson)
- Chairperson (Chair): 議長
- Secretary (Minute Taker): 書記
- Absentees (Apologies): 欠席者(例: Sarah White (On leave))
- Agenda Items: 議題リスト
- Discussion Points: 各議題に関する議論の内容の要約。
- 簡潔な文章で、発言者と内容を関連付けて記述します。
- Decisions / Resolutions: 決定事項、決議内容。
- It was decided that…(~が決定された)
- The proposal was approved/rejected.(提案は承認/却下された)
- Action Items (Tasks): 決定事項に基づき、誰が何をいつまでに実行するか。
Item Action Assigned To Due Date 1 Review Q2 sales report Jane Doe May 20, 2024 2 Draft new marketing campaign proposal Mark Johnson May 25, 2024 - Next Meeting: 次回会議の日時と場所
これらの要素を網羅したテンプレートを事前に用意しておくことで、効率的かつ抜けのない英語議事録を作成することができます。
会議で役立つ英語表現とフレーズ
英語での議事録作成において、議論の内容や決定事項を正確かつ簡潔に記述するための特定の表現やフレーズを知っておくことは非常に役立ちます。
ここでは、議事録で頻繁に用いられる表現をいくつか紹介します。
【発言内容や議論の動詞】
- Mr. Smith suggested that…(スミス氏が~を提案した)
- Ms. Doe proposed to…(ドゥ氏が~することを提案した)
- It was discussed that…(~について議論された)
- The team confirmed…(チームは~を確認した)
- Mr. Johnson clarified that…(ジョンソン氏が~を明確にした)
- Concerns were raised regarding…(~に関して懸念が提起された)
- Members agreed on…(メンバーは~に同意した)
【決定事項やアクションを示す表現】
- It was decided to…(~することが決定された)
- The committee resolved to…(委員会は~を採択した)
- Action: [Task] will be done by [Person] by [Date].(アクション:[タスク]は[担当者]が[期日]までに実施する)
- Next Steps:(次のステップ:)
- Key decisions included:(主な決定事項は以下の通り:)
【意見の相違や保留事項】
- There was a dissenting opinion from…(~から異議があった)
- The matter was tabled until the next meeting.(その件は次回会議まで保留された)
- Further discussion is required on…(~についてさらなる議論が必要である)
これらの表現を適切に使いこなすことで、曖昧さを排除し、読み手がスムーズに内容を理解できる議事録を作成することが可能になります。
特に、「Action Items」セクションでは、動詞+具体的な内容+担当者+期日を明確に記載することが、後のタスク実行を促す上で非常に重要です。
国際的なビジネスシーンでの注意点
国際的なビジネスシーンにおける英語議事録作成は、単に言語を英語に変換するだけでなく、文化的な背景やビジネス慣習の違いを理解することが重要になります。
まず、明確さと簡潔さが最も重視されます。
日本語のように行間を読む文化ではないため、曖昧な表現や遠回しな言い回しは避け、要点をストレートに記述することが求められます。
特に、決定事項やアクションアイテムは、誰が(Who)、何を(What)、いつまでに(When)行うのかを具体的に明記し、責任の所在と期限を明確にしましょう。
また、国際会議では、様々な国の参加者がおり、それぞれのアクセントや発音の違い、あるいは専門用語の使用によって、聞き取りが難しくなる場合があります。
このような状況では、会議中に不明な点を適宜確認する勇気が必要です。
「Could you please clarify that point?」や「Could you spell that out for me?」といった表現を使って、積極的に確認を取りましょう。
オンライン会議が主流となる中で、時差の問題も考慮に入れる必要があります。
議事録の共有は、参加者の就業時間に合わせて行うなど、配慮が求められます。
さらに、近年ではAIを活用した議事録作成ツールが非常に進化しており、多言語対応やリアルタイム翻訳機能を備えたものも増えています。
これらのツールを補助的に活用することで、聞き取りの負担を軽減し、より正確で効率的な英語議事録作成が可能になります。
ただし、AIによる自動生成であっても、最終的な内容のチェックは人間が行うことが不可欠です。
AIを活用した議事録作成のメリット・デメリットと選び方
AI議事録ツールの進化とメリット
近年、AI技術の目覚ましい進展により、議事録作成のあり方は大きく変革しています。
AI議事録作成ツールは、単なる音声の文字起こし機能に留まらず、会議をより生産的にするための多機能ツールへと進化を遂げています。
主な機能として、まず「高精度な自動文字起こし」が挙げられます。
人間の耳では聞き取りにくい発言や、複数の発言が重なった場合でも、AIが音声を正確にテキスト化します。
さらに、「話者識別機能」により、誰が何を話したかを自動で判別し、議事録の整理を容易にします。
特筆すべきは、「自動要約・要点抽出機能」です。
AIが会議全体の流れを理解し、重要な決定事項やアクションアイテム、主要な議論のポイントを自動的に抽出・要約することで、議事録作成者の負担を大幅に軽減します。
中には、音声だけでなく、共有された資料や画面操作も記録できる「マルチモーダル対応」のツールも登場しています。
これらの機能により、AI議事録ツールは以下のような大きなメリットをもたらします。
- 時間と手間の大幅削減:議事録作成にかかっていた数時間もの作業を数分に短縮できます。
- 業務効率の向上:担当者は記録作業から解放され、会議中の議論に集中できるようになります。
- 正確性の向上:聞き漏らしや誤解による人的ミスを減らし、客観的で正確な議事録作成が可能になります。
- 会議内容の活用促進:自動要約やアクション抽出により、会議内容の把握が迅速になり、次の意思決定や行動への移行がスムーズになります。
導入状況も急速に変化しており、2023年2月の調査ではAIを使った議事録作成支援ツールの導入割合は1.4%に過ぎませんでしたが、2025年の市場予測ではAI議事録ツール市場は278億ドル規模に成長するとされており、多くの企業が導入を進めていることが分かります。
実際に、2025年現在、企業の78%がAIを業務に活用しており、71%が生成AI技術を定期的に使用しているというデータもあります。
これらのデータは、AI議事録ツールが今後のビジネスにおいて不可欠な存在となることを示唆しています。
AI議事録ツールのデメリットと注意点
AI議事録ツールは多くのメリットをもたらしますが、同時にいくつかのデメリットや注意点も存在します。
まず、「音声認識の精度」は、ツールの性能や利用環境に大きく左右されます。
複数人が同時に発言する、発言者がマイクから遠い、周囲が騒がしい、あるいは方言や専門用語が多い会議では、文字起こしの精度が低下する可能性があります。
完璧な文字起こしは難しく、結局人間による修正作業が必要になる場合も少なくありません。
次に、「プライバシーとセキュリティ」の問題です。
会議の内容は企業の機密情報や個人情報を含むことが多いため、音声データやテキストデータがどのように処理・保管されるのか、セキュリティ対策が十分に講じられているかを確認する必要があります。
クラウドベースのツールを利用する場合、データが外部サーバーに保存されるため、情報漏洩のリスクをゼロにすることはできません。
ツールの選定にあたっては、GDPRや国内のデータ保護に関する規制に準拠しているかなど、セキュリティポリシーを詳細に確認することが重要です。
また、多くの場合、高機能なAI議事録ツールは有料プランで提供されます。
無料プランでは機能が制限されていたり、利用時間が短かったりすることが一般的です。
コスト対効果を慎重に評価し、自社の予算とニーズに合ったツールを選ぶ必要があります。
さらに、株主総会や取締役会のように法的拘束力を持つ会議の議事録においては、AIによる自動生成だけでは不十分な場合があります。
最終的な法的な正確性や表現のニュアンスは、人間の目と判断で確認し、必要に応じて専門家のレビューを受けることが不可欠です。
AIはあくまで補助ツールであり、人間の最終チェックを代替するものではないという認識が重要になります。
貴社に最適なAI議事録ツールの選び方
市場には多様なAI議事録ツールが存在するため、自社の会議スタイルや目的に合わせて最適なツールを選ぶことが重要です。
選定の際に考慮すべきポイントは以下の通りです。
- 音声認識精度:最も重要な要素です。多人数での発言、専門用語、アクセントなど、自社の会議環境で高い精度を発揮できるか、無料トライアルなどで実際に試すことを推奨します。特に日本語に特化した「RIMO Voice」のようなツールは高精度が期待できます。
- 編集・共有機能:AIが生成した議事録をどれだけ簡単に編集・修正・追加できるか、また関係者へスムーズに共有できるかも重要です。「スマート書記」のように、AIによる要約や専門用語の認識精度を向上させつつ、編集のしやすさも考慮されているツールもあります。
- 料金設定:無料プランの有無、有料プランの料金体系(月額、年額、従量課金など)、利用できる機能や時間の制限を確認します。初期投資を抑えたい場合は、無料で試せる「Google ドキュメント (ChatGPT連携)」や「Microsoft Teams」のリアルタイム文字起こし機能から始めるのも良いでしょう。
- セキュリティ:データ管理体制、暗号化、アクセス制限など、セキュリティ対策が万全であるかを確認します。企業の機密情報を扱う場合は、特に慎重な検討が必要です。
- 連携機能:ZoomやMicrosoft Teams、Google MeetなどのWeb会議ツールとの連携が可能かどうかも、日々の業務効率を左右します。API連携や専用コネクタの有無を確認しましょう。
- 使いやすさ:直感的に操作できるインターフェースや、簡単な設定機能を持つツールは、導入後のスムーズな運用に繋がります。
その他、「AI議事録取れる君」「Notta」「AI GIJIROKU」「YOMEL」など、様々な特徴を持つツールがあります。
多くのツールが無料トライアル期間を提供しているので、実際にいくつかのツールを試用し、それぞれの機能や操作感を比較検討することが、貴社に最適なAI議事録ツールを見つけるための最善の方法です。
導入後は、単なる議事録作成の効率化だけでなく、会議の質向上や情報活用促進にも繋がるよう、ツールの機能を最大限に活用していくことが求められます。
まとめ
よくある質問
Q: 議事録を作成する上で最も重要なことは何ですか?
A: 正確性、網羅性、そして分かりやすさです。決定事項や重要な議論内容が正確に記録されているか、参加者全員が理解できる言葉で書かれているかが重要となります。
Q: 町内会や理事会の議事録で特に注意すべき点はありますか?
A: 決議事項や、次回の会議で確認すべき事項などを明確に記載し、参加者の理解を得やすいように、専門用語を避け、平易な言葉で記述することが大切です。
Q: 株主総会や取締役会の議事録に記載すべき必須事項は何ですか?
A: 開催日時、場所、出席者、議長、議題、決議事項、決議結果、そして役員の選任や報酬に関する事項など、会社法で定められた記載事項を遵守する必要があります。
Q: 英語での議事録作成でよく使われる単語やフレーズを教えてください。
A: 「Minutes of the Meeting」(議事録)、「Agenda」(議題)、「Resolution」(決議)、「Motion」(動議)、「Adjournment」(閉会)などが一般的です。フォーマルなビジネスシーンでは、より丁寧な表現が求められます。
Q: AIによる議事録作成ツールを選ぶ際の注意点は?
A: AIの精度、対応言語、セキュリティ対策、そして利用料金などを比較検討することが重要です。特に機密性の高い会議の場合は、AIのセキュリティ体制を十分に確認しましょう。
