概要: 出勤簿は、従業員の労働時間を正確に記録するための重要な書類です。この記事では、手書きやPC入力での出勤簿の作り方から、毎日の正しい付け方、月別・年間管理のポイントまでを解説します。見やすい記入方法や、よくある記入ミスについても触れています。
【初心者必見】出勤簿の作り方と正しい付け方
「出勤簿」という言葉を聞いたことはありますか? 事業をされている方なら馴染み深いかもしれません。これは、従業員の労働時間を記録する重要な書類であり、実は法律で作成・保存が義務付けられています。
「うちはまだ小さい会社だから…」「従業員が少ないから手書きで十分」と思っている方もいるかもしれませんが、従業員を一人でも雇用しているなら、出勤簿の管理は必須です。給与計算の根拠になるだけでなく、労働トラブルを防ぎ、従業員の健康を守る上でも非常に大切な役割を担っています。
この記事では、出勤簿の基本的な役割から、手書きやPC入力、最新の勤怠管理システムを使った作り方、そして法改正に対応した正しい付け方まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。適切な出勤簿の管理は、健全な企業運営の第一歩。ぜひ最後まで読んで、今日から実践してみてください。
出勤簿とは?基本の役割を知ろう
労働基準法に基づく重要性
出勤簿は、従業員の正確な労働時間を記録するための重要な帳簿です。労働基準法で定められた「法定三帳簿」の一つであり、企業は従業員を一人でも雇用している場合、その作成と保存が義務付けられています。
この記録は単なる義務ではなく、企業の健全な運営に不可欠な役割を担っています。例えば、毎月の給与計算の根拠となるだけでなく、従業員の適切な労働時間管理や残業代の正確な支払いを保証します。
さらに、長時間労働による過重労働を未然に防ぎ、従業員の健康と安全を守る上でも極めて重要です。万が一、労働トラブルが発生した際には、客観的な証拠資料としても機能するため、日々の正確な記録が強く求められます。
勤怠管理の基本として、出勤簿は従業員と企業双方を守るための土台となることを理解しておく必要があります。
記載すべき必須項目とは?
出勤簿には、労働基準法で定められた必須項目を漏れなく記載する必要があります。これらの情報が欠けていると、法令違反とみなされるだけでなく、給与計算や労働時間の証明が困難になる恐れがあります。
具体的には、以下の項目を正確に記録することが求められます。
- 従業員の氏名
- 出勤日および出勤日数
- 日ごとの始業時刻、終業時刻、休憩時間
- 日ごとの労働時間数
- 時間外労働を行った日付、時刻、時間数
- 休日労働を行った日付、時刻、時間数
- 深夜労働(22時から翌5時)を行った日付、時刻、時間数
これらの項目を詳細に記録することで、従業員の労働実態を明確にし、適正な労働条件の確保と法令遵守を実現します。特に、時間外・休日・深夜労働は割増賃金の対象となるため、正確な記録が不可欠です。
これらの項目は、後述する勤怠管理システムを導入することで自動的に集計され、管理の手間を大幅に削減することが可能です。
対象となる従業員とその範囲
出勤簿の作成対象者は、企業のすべての労働者に及びます。雇用形態による例外は原則としてありません。
正社員はもちろんのこと、契約社員、パートタイマー、アルバイトといった雇用形態に関わらず、一人ひとりの労働時間を正確に記録する義務があります。
また、労働時間管理の対象外と思われがちな「管理監督者」や「裁量労働制適用者」であっても、労働時間の把握は義務付けられています。これには、健康管理や過重労働防止の観点から、企業が労働実態を把握する必要があるためです。
さらに、派遣社員の場合も、派遣元企業が出勤簿を作成・管理する義務があります。自社で雇用している従業員だけでなく、様々な働き方をする全ての労働者が対象となる点を理解し、適切な勤怠管理体制を構築することが重要です。
誰一人として見落とすことなく、全ての従業員の労働時間を把握することが、法令遵守の第一歩となります。
出勤簿の作り方:手書きとPC入力のメリット・デメリット
手書き・Excelの作成と注意点
出勤簿の作成方法として、古くから行われているのが手書きやExcelなどの表計算ソフトを活用する方法です。これらの方法は、特別な設備投資が不要で、すぐに始められるという大きなメリットがあります。
特にExcelであれば、インターネット上で配布されている無料テンプレートを利用することで、パソコンが苦手な方でも比較的簡単に作成を開始できます。基本的な関数を使えば、労働時間の集計も自動化できるため、小規模な事業所や従業員数が少ない場合に有効な手段と言えるでしょう。
しかし、デメリットも存在します。手書きの場合、記入ミスや集計ミスが発生しやすく、チェックに手間がかかります。Excelの場合も、従業員自身が入力する自己申告制では、「客観的な労働時間の把握」が不十分とみなされるリスクがあります。
また、データ改ざんのリスクや、打刻忘れの頻発、管理者による集計作業の負担増大も課題となります。従業員数が増えるにつれて、これらのデメリットは顕著になるため、将来的な管理方法の見直しも視野に入れる必要があります。
勤怠管理システムの導入メリット
近年、テレワークの普及など働き方が多様化する中で、勤怠管理システムの導入が急速に進んでいます。システムを導入する最大のメリットは、労働時間の客観的かつ正確な把握が可能になることです。
従業員がシステム上で打刻することで、出勤・退勤時刻が自動で記録され、打刻忘れや入力ミスを大幅に削減できます。さらに、労働時間の自動集計機能は、手作業での集計にかかる膨大な時間を削減し、給与計算ソフトとの連携により、経理業務の効率化も期待できます。
実際の導入率も増加傾向にあり、参考情報によれば大企業では約8~9割、中堅企業で約6~8割が導入済みです。中小企業においても約4~6割が導入しており、働き方改革への対応や業務効率化の意識の高まりから、活発な導入が進んでいます。
人気システムとしては、「マネーフォワード クラウド勤怠」「ジョブカン勤怠管理」「KING OF TIME」などが挙げられます。これらのシステムは、複雑な労働時間ルールにも対応し、法令遵守を強力にサポートしてくれます。
多様な打刻方法とセキュリティ
勤怠管理システムでは、働き方や場所に合わせて多様な打刻方法が提供されています。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあり、自社の運用に合わせた選択が重要です。
従来型の「タイムカード」は、導入コストが低い一方で、本人の代わりに他の人が打刻する不正打刻のリスクが指摘されます。オフィス出勤者向けには、よりセキュリティの高い「ICカード」や「生体認証(指紋、顔認証)」があり、なりすましを防ぐのに有効です。
一方、テレワークやリモートワークが普及した現代においては、「スマートフォン」や「PC打刻」が主流になりつつあります。特にスマートフォン打刻は、GPS機能と連携して打刻場所を記録できるため、自宅や外出先からの勤務でも労働場所の確認が可能です。
各打刻方法の特性を理解し、従業員の働き方に合わせて最適なものを導入することで、正確性とセキュリティを両立した勤怠管理を実現できます。不正打刻防止策を講じながら、従業員がストレスなく利用できるシステムを選ぶことが成功の鍵となるでしょう。
出勤簿の正しい付け方:毎日の記録でミスを防ぐ
客観的な労働時間把握の重要性
出勤簿の正しい付け方で最も重要なのは、「客観的な労働時間の把握」です。これは、2019年4月の労働安全衛生法改正により、企業に義務付けられた事項であり、全ての従業員が対象となります。
単に自己申告に任せるだけでは、客観的な把握とは言えません。例えば、従業員が「残業していない」と申告しても、PCのログや入退室記録から長時間労働が確認された場合、企業側がその実態を把握できていなかったと判断される可能性があります。
そのため、自己申告制を採用する場合でも、企業は定期的に実態調査を行い、必要に応じて申告された労働時間を補正するなどの対応が求められます。具体的には、事業場への入退場記録、パソコンの使用時間の記録、勤怠管理システムでの打刻記録など、客観的な記録と照合することが不可欠です。
これにより、サービス残業の防止や過重労働の早期発見につながり、従業員の健康を守るとともに、労働基準監督署からの指導や罰則のリスクを低減することができます。
労働時間の上限規制と割増賃金
日本の労働法制は、従業員の健康と福祉を守るために、労働時間に関する厳しい規制を設けています。出勤簿は、これらの規制を遵守しているかを証明する唯一の公式記録となります。
特に重要なのが、2024年4月より適用される時間外労働の上限規制です。原則として、時間外労働は「月45時間・年間360時間」を超えることができません。これを超過すると、企業は罰則の対象となる可能性があります。
また、残業代の計算においても、出勤簿の記録は非常に重要です。2023年4月からは、中小企業においても月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引き上げが適用されています。これまでは大企業のみでしたが、中小企業も同様に50%以上の割増賃金を支払う義務があります。
これらの法改正に対応し、正確な労働時間を記録し続けることは、単に給与を支払うだけでなく、企業が法令を遵守し、健全な経営を行う上で不可欠な要素です。出勤簿を通じて、従業員の労働時間を適切に管理し、過重労働を未然に防ぎましょう。
年次有給休暇の管理と記録
出勤簿は、労働時間の記録だけでなく、従業員の年次有給休暇(有給)の取得状況を管理する上でも重要な役割を担います。
労働基準法では、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対し、年5日以上の有給休暇を取得させることが企業に義務付けられています。これは、従業員のリフレッシュを促進し、健康維持を図るための重要な制度です。
企業は、この「年5日取得義務」を適切に履行しているかを管理し、その記録を出勤簿、または別途作成する年次有給休暇管理簿に正確に残す必要があります。もし義務を怠った場合、従業員一人につき30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
出勤簿に有給休暇の取得日を明確に記載することで、誰がいつ、何日取得したかを一目で確認でき、計画的な取得促進や未取得者への働きかけに役立ちます。有給休暇の管理も、出勤簿と連携させることで、より効率的かつ確実に法令遵守を進めることができます。
出勤簿の月別・年間管理と年末年始の注意点
保存期間のルールと法改正
作成した出勤簿は、法律で定められた期間、適切に保存することが義務付けられています。労働基準法により、出勤簿の保存期間は原則として5年と定められています。ただし、当分の間は経過措置として3年間の保存で良いとされています。
この保存期間は、労働基準監督署の監査が入った際や、従業員との間で賃金や労働時間に関するトラブルが発生した際に、企業が適切に労働時間を管理していたことを証明するための重要な証拠となります。
万が一、必要な期間の出勤簿が保存されていなかった場合、企業は法令違反とみなされ、罰則の対象となる可能性があります。また、過去の労働実態が不明確となり、従業員との信頼関係にも影響を及しかねません。
電子データで管理している場合も、紙媒体と同様に、必要な時にすぐに閲覧・出力できる状態での保存が求められます。保存期間を意識し、定期的なバックアップやデータの整理を行うことが不可欠です。
継続的な記録とデータ活用のポイント
出勤簿は、ただ記録して保存するだけでなく、そのデータを継続的に活用することで、企業の経営改善や従業員の労働環境向上に役立てることができます。
毎日の打刻データは、月別や年間で集計することで、従業員ごとの労働時間、残業時間、有給休暇の取得状況などを詳細に把握する貴重な情報源となります。これにより、特定の従業員に過度な負担がかかっていないか、部署全体の労働時間に偏りがないかなどを分析できます。
勤怠管理システムを導入していれば、これらの集計や分析は自動で行われ、視覚的に分かりやすいレポートとして出力することも可能です。例えば、長時間労働が常態化している部署を早期に特定し、業務改善や人員配置の見直しを行うことで、過重労働を未然に防ぐことができます。
データ活用は、法令遵守はもちろんのこと、生産性向上や従業員満足度の向上にもつながるため、積極的に取り組むべき重要なポイントです。
年末年始・繁忙期の特殊な対応
年末年始やお盆、決算期などの繁忙期は、通常の勤務体制と異なるケースが多いため、出勤簿の管理においても特別な注意が必要です。休日出勤や変則勤務が増える時期だからこそ、正確な記録が求められます。
例えば、年末年始に休日出勤が発生した場合、通常の労働時間とは異なる割増賃金の適用があるため、休日労働として明確に区別して記録する必要があります。また、有給休暇の消化を促すために、年末に計画的付与を行う企業もありますが、その記録も正確に行わなければなりません。
このような時期にこそ、勤怠管理システムの柔軟性が発揮されます。複雑なシフトや変則勤務にも対応できるシステムであれば、管理者側の負担を軽減しつつ、正確な勤怠記録を維持できます。
さらに、将来的な法改正の動向にも注意が必要です。例えば、2026年には「連続勤務の上限規制(14日以上連続勤務の禁止)」や「勤務間インターバル制度の義務化」などが議論されており、これらの制度が導入されれば、年末年始のシフト作成や勤怠管理に大きな影響を与える可能性があります。常に最新情報を把握し、適切な対応を準備しておきましょう。
複数人やまとめて管理する際のポイントと見本
複数従業員の効率的な管理方法
従業員が増えれば増えるほど、手書きやExcelでの出勤簿管理は煩雑になり、時間と労力がかかるようになります。数人程度の小規模な事業所であれば対応可能でも、数十人、数百人規模になると現実的ではありません。
複数人の出勤簿を効率的に管理するためには、勤怠管理システムの導入が最も効果的です。システムを導入することで、全従業員の勤怠データを一元的に管理でき、集計作業が自動化されます。
例えば、部署別やプロジェクト別の労働時間集計、残業時間の多い従業員の特定、有給休暇の取得状況の一覧表示など、手作業では困難な多角的なデータ分析も容易に行えます。これにより、管理工数を大幅に削減し、人事担当者はより戦略的な業務に集中できるようになります。
また、システムによっては、従業員自身が自分の勤怠状況を確認できる機能も備わっており、打刻忘れの防止や、自身の労働時間を意識するきっかけにもなります。効率化だけでなく、透明性の確保にも繋がるため、複数人管理においてはシステム導入を強く推奨します。
テレワーク環境での勤怠管理
新型コロナウイルスの影響で一気に普及したテレワークは、場所や時間に縛られない柔軟な働き方を実現しましたが、同時に勤怠管理の課題も浮き彫りにしました。オフィス外で働く従業員の労働状況を正確に把握することは、法令遵守と健全な労働環境維持のために不可欠です。
テレワーク環境下での勤怠管理には、クラウド型の勤怠管理システムが非常に有効です。従業員は自宅や外出先から、スマートフォンやPCを使って簡単に打刻ができ、GPS機能と連携させれば、どこで打刻したかの位置情報も記録できます。
これにより、管理者側は従業員のリアルタイムな出退勤状況や労働時間を正確に把握でき、サービス残業やサボりの防止にも繋がります。また、チャットツールやビデオ会議システムと連携させることで、より総合的な労働状況の把握が可能になります。
クラウドシステムは、常に最新の法改正に対応しており、テレワークにおける労働時間に関する新たなガイドラインなどにも柔軟に対応できます。多様な働き方に対応した勤怠管理は、企業の競争力を高める上でも重要な要素と言えるでしょう。
見本とテンプレートの活用
出勤簿の作成にあたり、具体的なイメージを持つことは非常に重要です。市販されている様々な出勤簿のテンプレートや、勤怠管理システムで提供されている集計レポートの見本を活用することで、自社に最適なフォーマットを見つけることができます。
一般的な出勤簿の見本には、従業員氏名、日付、曜日、出勤時刻、退勤時刻、休憩時間、実労働時間、時間外労働時間、休日労働時間、深夜労働時間、備考欄などが設けられています。これらの項目は、前述した労働基準法で定められた必須項目を網羅していることを確認してください。
勤怠管理システムを導入する際には、システムが提供するレポート機能や集計表のカスタマイズ性も確認するポイントです。例えば、「マネーフォワード クラウド勤怠」や「ジョブカン勤怠管理」といった人気システムは、多様な集計レポート機能を備えており、月次集計表や年間の労働時間推移グラフなど、様々な形でデータを可視化できます。
これらの見本を参考に、自社の勤務形態や従業員の特性に合わせた出勤簿を作成し、正確な勤怠管理を実現しましょう。テンプレートの活用は、手軽に始められるだけでなく、法令遵守の第一歩ともなります。
まとめ
よくある質問
Q: 出勤簿はなぜ必要なのでしょうか?
A: 出勤簿は、従業員の労働時間を把握し、残業代の計算や労働基準法遵守のために必要不可欠です。また、個人の勤怠状況を証明する証拠としても機能します。
Q: 手書きとPC入力、どちらが良いですか?
A: 手書きは初期費用がかからず、手軽に始められますが、集計や管理に手間がかかります。PC入力は効率的で集計もしやすいですが、システム導入のコストがかかる場合があります。それぞれのメリット・デメリットを比較検討しましょう。
Q: 出勤簿の記入ミスを防ぐにはどうすればいいですか?
A: 毎日決まった時間に記入する習慣をつける、記入例を参考に正確に書く、ダブルチェック体制を設ける、などの対策が有効です。間違いに気づいたら、速やかに訂正しましょう。
Q: 複数人の出勤簿をまとめて管理する方法はありますか?
A: 勤怠管理システムを導入するのが最も効率的です。クラウド型のシステムであれば、初期費用を抑えつつ、複数人のデータを一元管理できます。手書きの場合は、表計算ソフトで集計するなどの工夫が必要です。
Q: 年末年始の出勤簿で特に注意することはありますか?
A: 年末年始休暇期間中の出勤や、代休の取得状況などを正確に記録することが重要です。年をまたぐ勤務時間が発生する場合は、その区別を明確にする必要があります。
