労働保険料の領収書・領収済通知書とは?

労働保険の年度更新とは?

労働者を一人でも雇用している事業主には、労働保険(労災保険と雇用保険)への加入が義務付けられています。
この労働保険料の申告と納付は「年度更新」という重要な手続きで行われます。

年度更新は毎年6月1日から7月10日までの期間に実施され、この期間中に前年度の確定保険料の精算と、当年度の概算保険料の申告・納付を済ませる必要があります。
これは事業主にとって、労働者の安全と雇用安定を支えるための大切な義務となります。

期限を過ぎると延滞金が発生するなど、様々な不利益を被る可能性があるため、正確かつ期日内の手続きが求められます。
労働保険の制度を正しく理解し、適切な対応を行うことが事業運営の基本と言えるでしょう。

領収書・領収済通知書の基本的な役割

労働保険料の納付において、「領収済通知書」と「領収書」はそれぞれ異なる役割を果たします。
領収済通知書(いわゆる納付書)は、金融機関や郵便局などで労働保険料を納付する際に必要となる書類です。

この納付書を使って実際に納付すると、金融機関が発行する控えが、正式な領収書として機能します。
つまり、領収済通知書が「納付するための書類」であり、納付後に受け取る控えが「納付したことを証明する領収書」となるわけです。

さらに、2025年度からは領収済通知書にPay-easy(ペイジー)での納付に必要な納付番号、確認番号、収納機関番号が記載されるようになり、書面での申告であっても電子納付が可能になるなど、利便性が向上しています。

なぜこの書類が重要なのか

労働保険料の領収書や領収済通知書は、単なる支払いの証明に留まらず、年度更新手続きにおいて極めて重要な証憑となります。
これらの書類は、事業主が適正に労働保険料を納付したことを公的に示すための不可欠な記録です。

特に、労働基準監督署や労働局からの照会があった場合や、各種助成金申請、金融機関からの融資、公共事業への入札参加などの際に、労働保険料の納付状況を証明する書類として提示を求められることがあります。

もしこれらの書類が手元になかったり、納付が遅れたりすると、延滞金(年14.6%)追徴金(決定保険料の10%)が課される可能性があり、事業運営に大きな影響を及ぼしかねません。
そのため、受け取った書類は慎重に保管し、期限内の納付を徹底することが何よりも重要です。

領収書・領収済通知書の「見方」と「いつ届く」か

領収済通知書に記載されている情報

労働保険料の領収済通知書には、納付をスムーズに行うための様々な情報が記載されています。
主要な項目として、以下の内容が挙げられます。

  • 事業主情報: 会社名や所在地など、納付義務者の情報。
  • 保険料の種類: 労災保険料、雇用保険料、一般拠出金など。
  • 保険料額: 納付すべき概算保険料や確定保険料の金額。
  • 納付期限: 通常は7月10日までの日付。
  • 金融機関情報: 納付可能な金融機関の記載。
  • 電子納付情報: 2025年度からはPay-easy(ペイジー)で必要な納付番号、確認番号、収納機関番号が記載されます。これにより、インターネットバンキングやATMでの電子納付が可能になります。

これらの情報は、納付手続きを正確に行う上で不可欠です。
特に電子納付番号は、誤った情報を入力すると正しく納付できない可能性があるため、入力時には十分注意しましょう。

いつ、どのように届くのか

労働保険料の領収済通知書(納付書)は、通常、労働保険の年度更新期間が始まる毎年5月下旬から6月上旬にかけて、事業主のもとへ郵送されます。
これは、事業主が年度更新手続きを円滑に進められるようにするための配慮です。

しかし、近年では行政手続きのデジタル化が進んでおり、電子申請を利用している事業主や、将来的に2026年度からの義務化が予定されている企業規模によっては、書面での申告書の送付がなくなる予定です。

この場合、領収済通知書も送付されず、電子申請システム内で納付情報を確認したり、電子納付を行ったりすることになります。
そのため、毎年届く書類がないからといって手続きを忘れないよう、最新の情報を厚生労働省のウェブサイトなどで確認することが重要です。

各種納付方法と書類の関連性

労働保険料の納付方法には、主に以下の種類があり、それぞれ領収済通知書の扱いに違いがあります。

  • 現金納付: 領収済通知書を金融機関や郵便局の窓口に持参し、現金で納付します。納付後、領収印が押された控えが領収書となります。
  • 口座振替: 事前に申請を行い、指定した口座から自動的に引き落としが行われる方法です。この場合、領収済通知書による納付は行いません。振替の通知や通帳記帳で納付を確認します。
  • 電子納付(Pay-easyなど): 領収済通知書に記載された番号を用いて、インターネットバンキングやATMから納付する方法です。金融機関が発行する電子取引の控えが領収書の代わりとなります。
  • 労働保険事務組合への委託: 労働保険事務組合に手続きを委託している場合、事務組合が保険料の徴収から納付までを代行します。詳細は委託先の事務組合にご確認ください。

申告書のみを提出する場合(例: 口座振替で納付が不要な場合や、精算の結果納付額がない場合)は、金融機関では受付できませんので、注意が必要です。

領収済通知書の「記入例」と「書き方」をマスター

納付書記入の基本ルール

労働保険料の領収済通知書を金融機関の窓口で現金納付する場合、正確な情報記入が不可欠です。
記入の基本ルールとして、以下の点に留意しましょう。

  • 正確な情報記入: 事業主の名称、所在地、保険料の種類、年度、そして最も重要な納付金額は、誤りなく正確に記入する必要があります。特に金額は、一円単位まで間違いがないか、複数回確認しましょう。
  • 数字の明確化: 金額や数字は、判読しやすいように丁寧にはっきりと記入します。数字の「1」と「7」、「3」と「5」など、見間違いやすい数字には特に注意が必要です。
  • 訂正方法: 万が一、記入を間違えてしまった場合は、二重線で抹消し、その上から訂正印を押して正しい内容を記入します。修正液や修正テープの使用は避けるべきです。

これらの基本ルールを守ることで、納付手続きがスムーズに進み、後々のトラブルを防ぐことができます。

具体的な記入項目と注意点

領収済通知書には、主に以下の記入項目があります。

  • 事業主の名称: 登記されている正式名称を記入します。個人事業主の場合は屋号と氏名。
  • 所在地: 事業所の郵便番号、住所を正確に記入します。
  • 年度: 納付対象となる労働保険の年度を記入します。
  • 保険料額: 申告書に記載されている確定保険料と概算保険料の合計額(または分割額)を記入します。数字の書き間違えは厳禁です。

特に注意すべきは、保険料額の記入です。
誤った金額を記入すると、過少納付や過大納付となり、後日修正手続きが必要になったり、延滞金が発生したりする可能性があります。

記入前に、必ず労働保険料申告書で最終確認を行い、記入する金額と照合しましょう。
また、金融機関によっては、納付書が複写式になっていることがありますので、力を入れて記入し、すべての控えに内容が転記されているかを確認してください。

電子納付(Pay-easy)利用時のメリットと手順

2025年度からの対応により、領収済通知書に記載されるPay-easy(ペイジー)情報を活用することで、より手軽に労働保険料の納付が可能になります。
電子納付の最大のメリットは、以下の点にあります。

  • 24時間いつでも納付可能: 金融機関の窓口営業時間にとらわれず、都合の良い時間に手続きができます。
  • 自宅やオフィスから手続き: インターネット環境があれば、場所を選ばずに納付できます。
  • 印鑑や現金の準備が不要: ATMやインターネットバンキングを利用するため、手間が省けます。

具体的な手順は以下の通りです。

  1. 領収済通知書に記載された納付番号、確認番号、収納機関番号を準備します。
  2. ご自身の利用しているインターネットバンキングにログインするか、対応しているATMへ行きます。
  3. メニューから「税金・料金払込み」や「Pay-easy」を選択します。
  4. 指示に従って、準備した納付番号、確認番号、収納機関番号を入力します。
  5. 表示された納付内容(事業主名、金額など)を確認し、間違いがなければ確定します。

電子納付は、時間と場所の制約を受けずに手続きができるため、多忙な事業主にとって非常に便利な選択肢と言えるでしょう。

領収書・領収済通知書の再発行と注意点

領収書・領収済通知書が見つからない場合の対処法

労働保険料の領収書や領収済通知書は、年度更新手続きや各種証明に不可欠な書類です。
万が一、これらの書類が見つからなくなってしまった場合でも、適切に対処することで、再発行や証明書の取得が可能です。

まずは、所轄の労働基準監督署または労働局に相談しましょう。
多くの場合、「労働保険料等納入証明願」という書類を申請することで、労働保険料の納付証明書や領収証明を取得することができます。

この証明書は、領収書と同じく、労働保険料が正しく納付されたことを公的に証明する書類として利用できます。
紛失に気づいた時点で早めに問い合わせを行い、必要な手続きについて指示を仰ぐことが大切です。

再発行における申請手順と必要書類

「労働保険料等納入証明願」を申請する際の手順と、一般的に必要となる書類は以下の通りです。

  1. 申請書の入手: 所轄の労働基準監督署または労働局の窓口で申請書を入手するか、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードします。
  2. 申請書の記入: 事業主の名称、所在地、代表者氏名、証明を必要とする年度、証明を必要とする理由などを正確に記入します。
  3. 必要書類の準備:
    • 事業主の印鑑(法人の場合は代表者印、個人の場合は実印または認印)
    • 本人確認書類(運転免許証など)
    • 申請手数料(必要な場合があるため、事前に確認)
    • 納付したことがわかる書類の写し(銀行口座の引き落とし履歴など、もし手元にあれば)
  4. 申請窓口での提出: 記入済みの申請書と必要書類を、労働基準監督署または労働局の窓口に提出します。郵送での受付も可能な場合がありますが、事前に確認が必要です。

申請から証明書の発行までには、数日から1週間程度の時間がかかる場合があります。
急ぎの場合は、その旨を窓口で伝えましょう。

再発行時の注意点と代替策

領収書や領収済通知書の再発行には、いくつかの注意点があります。

  • 時間的制約: 再発行手続きには時間がかかるため、特に年度更新の締め切り間近や、急いで証明書が必要な場合は、余裕を持って申請することが重要です。
  • 書類の保管徹底: 再発行の手間を避けるためにも、日頃から重要な書類はファイリングするなどして適切に保管する習慣をつけましょう。
  • 電子納付履歴の活用: 電子納付を利用している場合は、インターネットバンキングの取引履歴などが納付の証拠となり得ます。必要な場合は、それらの情報を印刷して利用することも一つの代替策となります。

また、労働保険料の納付期限(通常7月10日)を過ぎての申告・納付は、延滞金や追徴金が発生するリスクが高まります。
たとえ納付書を紛失していたとしても、期限内に手続きを完了させる努力が求められます。
もし経済的な理由で納付が困難な場合は、新型コロナウイルス感染症の影響などによる納付猶予制度(1年間猶予、延滞金免除)なども存在するため、所轄の機関に相談してみましょう。

労働保険料の未納なし証明書について

未納なし証明書とは何か、その用途

労働保険料の未納なし証明書は、その名の通り、事業主が過去の労働保険料を滞納していないことを証明する公的な書類です。
この証明書は、主に以下のような状況で提出を求められることがあります。

  • 公共事業の入札参加資格審査: 国や地方自治体が行う公共事業の入札に参加する際、企業の信頼性を示すために提出が義務付けられることがあります。
  • 各種助成金・補助金申請: 厚生労働省などが実施する雇用関係の助成金や補助金を申請する際、適正な事業運営を行っていることの証明として求められます。
  • 金融機関からの融資: 事業資金の融資を受ける際、金融機関が企業の信用力を判断する材料の一つとして提出を求める場合があります。

この証明書は、事業主が法令を遵守し、社会的な責任を果たしていることを客観的に示す重要な書類であり、円滑な事業活動を行う上で不可欠なものとなっています。

証明書の取得方法と申請窓口

労働保険料の未納なし証明書を取得するためには、所轄の労働基準監督署または労働局に申請を行います。
基本的な申請方法は、前述の「労働保険料等納入証明願」の申請と同様です。

申請の流れは以下のようになります。

  1. 申請書の準備: 労働基準監督署または労働局の窓口で「労働保険料等納入証明願」を入手します。
  2. 必要事項の記入: 事業主情報、証明が必要な期間、証明書の使用目的などを正確に記入します。
  3. 添付書類の準備:
    • 過去の労働保険料の領収書の写しや、納付が確認できる書類(口座振替の記録など)。
    • 事業主の印鑑。
    • 本人確認書類。
    • 法人であれば、法人登記簿謄本(履歴事項全部証明書)など、事業所の存在を証明する書類。
  4. 申請: 準備した書類を窓口に提出します。

労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は、事務組合を通じて申請することも可能です。
事前に委託先の事務組合に相談してみましょう。

申請時の注意点と確認事項

未納なし証明書を申請する際には、以下の点に注意し、事前に確認しておくことが重要です。

  • 未納がないことの確認: 証明書は「未納がないこと」を証明するものですから、申請前に必ずすべての労働保険料が納付済みであることを確認してください。未納がある場合は、まずその納付を完了させる必要があります。
  • 申請期間と発行までの日数: 申請から証明書発行までには数日から1週間程度の期間を要することがあります。余裕を持って申請を行い、必要な期日に間に合うように手配しましょう。
  • 使用目的の明確化: 証明書の用途によっては、提出先から特定の書式や記載事項を求められる場合があります。申請時に使用目的を明確に伝え、必要な情報が記載されるように依頼しましょう。
  • 最新の納付状況: 直近で納付したばかりの場合、行政機関のシステムに反映されるまでにタイムラグがあることがあります。その際は、納付が確認できる証拠(領収書の控えなど)を提出することで対応できる場合があります。

不明な点があれば、申請前に所轄の労働基準監督署や労働局に問い合わせて、詳細な情報を確認することが最も確実です。