概要: 失業給付(雇用保険の基本手当)は、退職理由や加入期間によって受給できる条件・期間・金額が異なります。この記事では、もらえる条件、金額の目安、手続き方法、さらにはもらえる期間やもらいながら働く場合の注意点まで、網羅的に解説します。
失業給付(雇用保険)は、予期せぬ失業によって収入が途絶えた際に、生活の安定を図りながら再就職活動を行うための大切なセーフティネットです。
しかし、「どんな条件でいくらもらえるの?」「いつまで支給されるの?」といった疑問を抱えている方も少なくないでしょう。
ここでは、2025年時点での最新情報に基づき、失業給付の受給条件、期間、金額、そして手続き上の注意点まで、分かりやすく解説していきます。
この情報を参考に、安心して再就職活動を進めるための一歩を踏み出しましょう。
失業給付(雇用保険)とは?基本手当の受給資格
失業給付の目的と対象者
失業給付、正式には「雇用保険の基本手当」と呼ばれ、職を失った方が安心して再就職活動に取り組めるよう、国が生活を支えるための制度です。
これは、単に失業者の生活を保障するだけでなく、経済活動の安定にも寄与する重要な社会保障制度の一つと言えるでしょう。
対象となるのは、雇用保険に加入していた会社員やパート・アルバイトの方で、離職後に再就職の意思と能力があるにもかかわらず、仕事が見つからない「失業状態」にある方です。
予期せぬ解雇はもちろん、自己都合退職であっても、一定の条件を満たせば受給資格があります。
この制度は、一時的な収入の途絶による不安を軽減し、前向きに次の仕事を探すための土台を提供してくれます。
失業給付を上手に活用することで、焦らずじっくりと自分に合った職場を見つけることができるでしょう。
受給に必要な「失業状態」とは?
失業給付を受給するための大前提として、「失業状態であること」が挙げられます。
これは、「就職しようとする積極的な意思と能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状態」を指します。
単に仕事をしていないだけでなく、ハローワークで求職の申し込みを行い、積極的に求職活動を行っていることが必須となります。
例えば、病気や怪我、出産・育児、親族の介護などで一時的に働くことが難しい場合でも、ハローワークに申請することで受給期間の延長が認められることがあります。
しかし、働く意思がない方や、病気や怪我などで全く働けない状態が続く場合は、「失業状態」とは見なされず、原則として失業給付の対象外となります。
また、失業認定日には、求職活動の状況をハローワークに申告する必要があり、これが適切に行われていないと支給が停止される場合もありますので注意が必要です。
雇用保険の加入期間に関する条件
失業給付の受給資格を得るためには、雇用保険の被保険者期間が一定期間以上あることが求められます。
この期間は、離職理由によって異なります。
- 自己都合退職などの一般の離職者:
離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12ヶ月以上必要です。 - 会社都合退職、または正当な理由のある自己都合退職者(特定受給資格者・特定理由離職者):
離職日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上あれば受給資格が得られます。
会社都合退職や、病気、出産・育児、介護といったやむを得ない理由による自己都合退職の場合は、「特定受給資格者」または「特定理由離職者」と認定され、一般の離職者よりも短い加入期間で受給資格が得られるのが特徴です。
これらの期間は、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1ヶ月としてカウントされます。
自分の離職理由と被保険者期間を正確に把握し、自分がどの区分に該当するかを確認することが、失業給付受給への第一歩となります。
失業給付(雇用保険)はいくらもらえる?計算方法と平均額
失業給付の金額を決定する基本手当日額
失業給付として受け取れる金額は、「基本手当日額」と「所定給付日数」を掛け合わせて算出されます。
この基本手当日額は、離職する前の賃金日額、つまり退職前の給与を基に計算されるため、個々人の給与水準によって支給額が異なります。
具体的には、離職日以前6ヶ月間の賃金総額(ボーナスなどを除く)を180日で割った金額が「賃金日額」となります。
基本手当日額は、この賃金日額におおよそ50%~80%を乗じた金額が支給されます。
ただし、賃金日額が低い人ほど高い給付率が適用され、逆に賃金日額が高い人ほど給付率が低くなる仕組みがとられています。
これは、賃金の低い方への生活保障を手厚くするためであり、失業給付が生活のセーフティネットとしての役割を果たす上で重要な点です。
賃金日額の計算と年齢別上限額
前述の通り、基本手当日額は離職日以前6ヶ月間の賃金総額を基に計算されます。
例えば、離職前6ヶ月間の給与総額が180万円だった場合、賃金日額は180万円 ÷ 180日 = 10,000円となります。
この賃金日額に給付率が適用されますが、年齢によって基本手当日額の上限額と下限額が定められています。
2025年8月更新時点での上限額と下限額は以下の通りです。
| 年齢区分 | 基本手当日額の上限額 | 基本手当日額の下限額 |
|---|---|---|
| 29歳以下 | 7,065円 | 2,869円(全年齢共通) |
| 30歳~44歳 | 7,845円 | |
| 45歳~59歳 | 8,635円 | |
| 60歳~64歳 | 7,420円 |
賃金日額が高くても、この上限額を超えて支給されることはありません。
反対に、賃金日額が低くても下限額を下回ることはありません。
これらの金額は物価変動等により毎年8月に見直されるため、最新の情報はハローワークで確認することをおすすめします。
具体的な支給額のシミュレーション
では、具体的な例で失業給付の総支給額をシミュレーションしてみましょう。
例えば、30歳の方が離職前の賃金日額10,000円、所定給付日数120日の場合を想定します。
30歳~44歳の上限額は7,845円ですので、この方の基本手当日額は賃金日額10,000円に給付率を適用した結果、上限額の7,845円が適用されます。
この基本手当日額に所定給付日数を掛け合わせると、総支給額が算出できます。
計算式は以下の通りです。
7,845円(基本手当日額) × 120日(所定給付日数) = 941,400円(総支給額)
この約94万円が、失業期間中に受け取れる給付金の総額となります。
ただし、これはあくまで一例であり、個人の賃金日額や所定給付日数、離職時の年齢によって大きく変動します。
自分の具体的な支給額を知るためには、ハローワークで離職票を提出し、受給資格の決定を受ける必要があります。
失業給付(雇用保険)はいつまで?受給期間と延長について
所定給付日数とは?離職理由による違い
失業給付が支給される期間は「所定給付日数」と呼ばれ、これは離職理由、雇用保険の被保険者期間、そして離職時の年齢によって決まります。
一般的に、会社都合退職や正当な理由のある自己都合退職(特定受給資格者・特定理由離職者)の方が、自己都合退職(一般受給資格者)よりも所定給付日数が長くなる傾向にあります。
これは、前者が再就職までの準備期間が不測の事態によって生じたため、より手厚い保障が必要と判断されるためです。
所定給付日数の例は以下の通りです。
| 離職理由 | 被保険者期間 | 所定給付日数(例) |
|---|---|---|
| 自己都合退職など (一般受給資格者) |
10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 | |
| 20年以上 | 150日 | |
| 会社都合退職など (特定受給資格者・特定理由離職者) |
1年未満 | 90日 |
| 1年以上5年未満 | 90日~120日 | |
| 5年以上10年未満 | 120日~180日 | |
| 10年以上20年未満 | 180日~240日 | |
| 20年以上 | 240日~330日 |
(※具体的な日数は年齢によっても変動します。上記は一例です。)
自分がどの区分に該当するかは、ハローワークで受給資格の決定を受ける際に確認できます。
受給期間の原則と注意点
失業給付には「所定給付日数」とは別に「受給期間」という概念があります。
原則として、失業給付を受け取れる期間は、離職日の翌日から1年間と定められています。
この受給期間内に、所定給付日数分の失業給付を受け取る必要があります。
例えば、所定給付日数が120日であっても、離職日の翌日から1年が経過すると、たとえまだ支給されていない日数があったとしても、それ以降は基本手当を受け取ることができなくなります。
したがって、この1年という期限を意識しながら、計画的に求職活動を進めることが非常に重要です。
特に、自己都合退職の場合は「給付制限期間」があり、この期間も受給期間の1年に含まれるため、実際に給付が始まるまでの期間も考慮して活動計画を立てる必要があります。
受給期間を過ぎてしまうと、残りの手当は一切支給されませんので、十分にご注意ください。
特別な事情による受給期間の延長制度
上記で述べた「受給期間は離職日の翌日から1年間」という原則には、例外が設けられています。
妊娠・出産、病気・怪我、親族の介護など、やむを得ない理由により引き続き30日以上働くことができない場合、申請することで受給期間を延長することができます。
この制度は、本来働ける状態になった時点で再就職活動ができるよう、受給期間のカウントを一時停止するものです。
延長できる期間は、理由によって最大3年間(離職日の翌日から最長4年間)まで認められる場合があります。
申請期限は、働けなくなった日(または離職日の翌日から30日経過した日)の翌日から1ヶ月以内が推奨されていますが、制度上は延長後の受給期間の最後の日まで申請可能です。
申請は、居住地を管轄するハローワークにて行い、所定の申請書と必要書類(離職票、診断書、母子手帳など)を提出します。
該当する可能性がある場合は、早めにハローワークに相談し、詳細を確認するようにしましょう。
失業給付(雇用保険)のもらい方:手続きの流れと振込日
ハローワークでの求職申込みから認定まで
失業給付を受け取るためには、まずハローワークでの手続きが必須です。
退職後、会社から交付される「離職票」を準備し、お住まいの地域を管轄するハローワークへ赴きます。
ハローワークでは、まず求職の申し込みを行い、失業給付の受給資格の決定を受けます。
この際、必要書類(離職票、雇用保険被保険者証、本人確認書類、マイナンバーカード、写真、預金通帳など)を提出し、受給資格の有無や所定給付日数などが決定されます。
その後、雇用保険受給説明会に参加し、雇用保険の仕組みや今後の手続きの流れ、求職活動の具体的な方法などについて説明を受けます。
この説明会で「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が交付され、最初の「失業認定日」が伝えられます。
これが、給付金を受け取るための最初のステップとなります。
待期期間と給付制限期間の理解
受給資格が決定し、求職の申し込みを行った後、すぐに給付金が支給されるわけではありません。
まず、すべての離職者に共通して「待期期間」と呼ばれる7日間が設けられています。
この期間は、失業状態の確認のために給付が停止され、アルバイト等の就労も避けることが推奨されます。
待期期間が満了した後、離職理由によってはさらに「給付制限期間」が設けられることがあります。
- 自己都合退職の場合:
待期期間満了後、1ヶ月間の給付制限期間があります。(2025年4月1日以降、これまでの2ヶ月から1ヶ月に短縮されます。5年以内に3回以上自己都合退職している場合は3ヶ月となります。) - 会社都合退職、または正当な理由のある自己都合退職者(特定受給資格者・特定理由離職者)の場合:
この給付制限期間はありません。待期期間満了後、すぐに失業給付の対象となります。
これらの期間を経て、初めて失業給付の支給対象となります。特に自己都合退職の場合は、給付が始まるまでに時間がかかることを理解しておくことが大切です。
失業認定と給付金の振込スケジュール
給付制限期間(または待期期間)が明けると、原則として4週間に一度の頻度でハローワークへ赴き、「失業認定」を受ける必要があります。
失業認定日には、これまでの求職活動の状況を「失業認定申告書」に記入し、ハローワークの窓口で申告します。
この求職活動の実績が認められて初めて、その直前の4週間分の失業給付が支給されることになります。
求職活動には、ハローワークの職業相談や職業紹介、指定のセミナー受講、企業への応募などが含まれます。
失業認定がなされると、通常は5営業日程度で指定した金融機関の口座へ給付金が振り込まれます。
振込日は金融機関の処理状況によって多少前後することがあるため、余裕を持って確認しましょう。
この一連の手続きを所定給付日数分、受給期間内に行うことで、安定した生活を送りながら再就職を目指すことができます。
失業給付(雇用保険)をもらえないケースと賢く活用する方法
失業給付が支給されない・停止されるケース
失業給付は、すべての失業者に支給されるわけではありません。以下のようなケースでは、失業給付が支給されなかったり、支給が停止されたりする可能性があります。
- 働く意思や能力がないと判断された場合:
病気や怪我で長期的に働けない、家事に専念する、退職後のんびりしたいなど、積極的に求職活動をする意思がない場合は支給対象外です。 - 自営業を開始した場合:
個人事業主として開業したり、会社の役員に就任したりした場合は、原則として失業状態とはみなされません。 - ハローワークの指示に従わない場合:
正当な理由なく失業認定日にハローワークへ行かない、紹介された仕事の応募を拒否する、職業訓練を拒否するなど、求職活動を怠ると支給が停止されることがあります。 - 不正受給が発覚した場合:
虚偽の申告や報告により不正に給付を受け取った場合、支給された全額の返還命令に加え、さらに多額の罰金が課せられる可能性があります。
また、待期期間中のアルバイトも支給停止や給付制限期間の延長につながる可能性があるため、注意が必要です。
少しでも疑問がある場合は、必ずハローワークに相談し、正確な情報を確認しましょう。
受給中のアルバイト・副業に関する注意点
失業給付の受給中にアルバイトや副業をすることは可能ですが、いくつかの厳しいルールがあります。
これらのルールを破ると、給付金が減額されたり、支給が停止されたり、最悪の場合は不正受給とみなされることもあります。
主な注意点は以下の通りです。
- 1週間の所定労働時間:
1週間の所定労働時間が20時間以上になる就労は、就職とみなされ、失業給付の受給資格を失います。 - 1日の収入額:
1日の収入が基本手当日額の80%を超過する場合、その日の失業給付は支給されません。 - ハローワークへの申告義務:
アルバイトや副業で収入を得た場合、金額の多寡にかかわらず、必ず失業認定申告書に記入し、ハローワークに申告しなければなりません。
隠れて働いたことが後から発覚した場合、不正受給として重い処分を受けることになります。
少しでも働く可能性があれば、事前にハローワークに相談し、ルールを確認してから行動に移すようにしましょう。
制度改正を活かした賢い再就職準備
2025年4月1日からは、失業給付に関する重要な制度改正が予定されています。
特に、自己都合退職者の給付制限期間が、これまでの2ヶ月から1ヶ月に短縮される点は大きな変更です。
これにより、自己都合で退職した場合でも、より早く給付金を受け取りながら再就職活動に専念できるようになります。
また、厚生労働大臣が指定する「教育訓練」を受講することで、給付制限期間が解除される新たな制度も導入されます。
これは、スキルアップやキャリアチェンジを目指す方にとって、給付制限期間を有効活用し、再就職を有利に進める絶好の機会となるでしょう。
さらに、やむを得ない理由による受給期間の延長制度も活用し、自分の状況に合わせた柔軟な再就職プランを立てることが可能です。
これらの制度を賢く利用し、給付金を単なる生活費として消費するだけでなく、未来のキャリアへの投資として捉え、積極的に再就職準備を進めましょう。
最新の情報や詳細は、お住まいの地域を管轄するハローワークに必ずご確認ください。
まとめ
よくある質問
Q: 失業給付(雇用保険)の基本手当をもらえる条件は何ですか?
A: 原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上あることが条件です。ただし、倒産や解雇などの会社都合による離職の場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が6ヶ月以上あれば受給資格が得られます。また、働く意思と能力があるにも関わらず、職業に就くことができない状態であることも重要です。
Q: 失業給付(雇用保険)はいくらくらいもらえるのでしょうか?
A: 基本手当の額は、離職前6ヶ月間の賃金総額を180で割った「基本手当日額」に、年齢や雇用保険の加入期間に応じて定められた「支給率」をかけて計算されます。最新の制度や個別のケースによる正確な金額は、ハローワークのウェブサイトや窓口で確認することをおすすめします。
Q: 失業給付(雇用保険)はどのくらいの期間もらえるのですか?
A: 受給期間は、離職理由や年齢、雇用保険の加入期間によって異なります。一般的には90日〜150日ですが、倒産・解雇などの特定受給資格者や、やむを得ない理由で離職した特定理由離職者などは、より長期間(最大360日)受給できる場合があります。
Q: 失業給付(雇用保険)の手続きはどのようにすれば良いですか?
A: まず、お住まいの地域を管轄するハローワークで求職の申し込みを行い、雇用保険受給資格者証の交付を受けます。その後、週に一度(または2週間に一度)ハローワークで失業認定を受け、指定された振込日に指定口座へ振り込まれます。辞める時に会社から受け取る離職票などの書類が必要です。
Q: 失業給付(雇用保険)をもらいながら働くことはできますか?
A: 原則として、失業給付を受給中に就職が決まった場合は、失業給付の受給資格はなくなります。ただし、就職活動の一環としてアルバイトなど一時的な就労で収入を得る場合や、一定の条件を満たせば、失業給付を受給しながら働く(または給付を受けつつ就職活動をする)ことが可能なケースもあります。詳細はハローワークにご確認ください。
