概要: 雇用保険は、失業中の生活を支える基本手当をはじめ、再就職やスキルアップを支援する様々な給付金制度があります。この記事では、それぞれの給付金の内容や、受給資格、そして気になる給付額の計算方法について分かりやすく解説します。
日本の雇用保険制度は、働く私たちにとって、まさかの時の生活保障やキャリアアップを力強く後押ししてくれる大切なセライです。失業した時の生活費、再就職を支援する手当、スキルアップのための学びの費用補助など、その内容は多岐にわたります。
本記事では、2025年8月時点の最新情報も踏まえながら、雇用保険から受け取れる主要な給付金について、その種類から受給要件、計算方法まで徹底的に解説します。ご自身の状況に合わせて賢く活用できるよう、ぜひ最後までお読みください。
失業中の生活を支える「雇用保険の基本手当(失業保険)」とは?
「失業保険」と聞くと、多くの方がイメージするのが、この「基本手当」ではないでしょうか。これは、職を失い、新たな仕事を探している間の生活を経済的に支えるための給付金です。もしもの時に慌てないよう、制度の基本をしっかり押さえておきましょう。
基本手当の受給資格と期間
基本手当を受け取るためには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず大前提として、「失業状態であること」が挙げられます。これは単に仕事がないだけでなく、「就職しようとする意思と能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態」を指します。病気やけがで働けない場合などは、基本手当の対象外となることがあります。
次に重要なのが、「雇用保険の被保険者期間」です。原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが求められます。ただし、会社が倒産したり、解雇されたりといった会社都合の離職の場合は、離職日以前1年間に被保険者期間が通算6ヶ月以上あれば受給資格を得られます。ご自身の離職理由がどちらに該当するかによって、必要な被保険者期間が変わるため、確認が必要です。
給付期間(給付日数)も、離職理由や雇用保険の加入期間によって異なります。例えば、自己都合退職の場合は90〜150日、会社都合退職の場合は90〜330日(年齢や被保険者期間による)と、幅広い日数設定があります。待期期間(7日間)が設けられ、自己都合退職の場合は、さらに2ヶ月間の給付制限期間が原則として適用されますが、2025年4月からはこの給付制限期間が短縮される見込みとなっており、よりスムーズな給付が期待されます。
日額の計算方法と最新の上限・下限額
基本手当の支給額は、離職前の賃金に基づいて計算されます。具体的には、離職直前6ヶ月間の給与総額を180で割って算出される「賃金日額」が基準となります。この賃金日額に、給付率(約50〜80%)を乗じて、1日あたりの「基本手当日額」が決定されます。給付率は賃金が低いほど高くなる仕組みです。
ただし、基本手当には上限額と下限額が設定されており、賃金日額が高い人でも、一定額以上は支給されません。これは、制度の公平性を保つための措置です。特に、2025年8月1日からは、基本手当日額の下限額が2,411円(+116円)に引き上げられます。また、上限額も年齢区分ごとに見直されており、例えば30歳未満の方の上限額は7,255円(+190円)となります。
具体例を見てみましょう。例えば29歳で離職前の賃金日額が17,000円の場合、年齢区分による上限額(30歳未満は7,255円)が適用されるため、基本手当の日額は7,255円となります。このように、ご自身の賃金と年齢によって、実際に受け取れる日額は異なりますので、ハローワークで正確な情報をご確認いただくことをお勧めします。最新の改定は、平均給与額の上昇や最低賃金の引き上げに対応するためのものであり、失業中の生活保障をより手厚くする狙いがあります。
自己都合退職と会社都合退職の違い
基本手当の受給において、離職理由が「自己都合」か「会社都合」かは非常に重要なポイントです。この違いによって、待期期間や給付日数が大きく変わってきます。
まず、「給付制限期間」の有無が最大の違いです。自己都合退職の場合、7日間の待期期間に加えて、原則として2ヶ月間の給付制限期間が設けられます。この期間中は基本手当が支給されないため、その間の生活費は自己負担となります。一方、会社都合退職(倒産、解雇など)の場合は、待期期間7日間が経過すれば、すぐに基本手当の支給が開始されます。ただし、2025年4月からは、自己都合退職者の給付制限期間が短縮される見込みであり、特定の教育訓練を受講することで給付制限が解除される新制度も導入される予定です。
次に、「給付日数」も異なります。自己都合退職の場合、給付日数は90〜150日ですが、会社都合退職の場合は、年齢や被保険者期間に応じて90〜330日と、より長期間にわたって支給される可能性があります。これは、会社都合による離職の方が、求職活動においてより不利な状況にあると判断されるためです。また、雇用保険の被保険者期間の要件も、自己都合の場合は離職日以前2年間に通算12ヶ月以上であるのに対し、会社都合の場合は離職日以前1年間に通算6ヶ月以上で受給資格が得られるなど、会社都合の方が緩やかな要件となっています。ご自身の離職理由が曖昧な場合は、ハローワークに相談し、正確な区分を確認することが大切です。
再就職を応援!「再就職手当」と「早期再就職手当」について
失業中の生活を支える基本手当ですが、国としては早期の再就職を促すことも重視しています。そのために用意されているのが、「再就職手当」です。早期に安定した職に就くことで、残りの基本手当をまとまった形で受け取れる、非常に魅力的な制度です。
再就職手当とは?受給要件と目的
再就職手当は、基本手当の受給資格がある方が、所定の給付日数を残して早期に安定した職業に就いた場合に支給される手当です。この制度の最大の目的は、失業期間の長期化を防ぎ、求職者の方々が意欲的に再就職活動を行い、社会復帰を果たすことを支援することにあります。また、基本手当を受給しきる前に再就職が決まることで、求職者にとって経済的なインセンティブとなるだけでなく、労働市場全体の活性化にも繋がります。
受給するためには、いくつかの重要な要件があります。まず、「ハローワークに求職の申し込みを行い、受給資格の決定を受けた後」であること。そして、「待期期間満了後に就職すること」が必須です。自己都合退職などで給付制限がある場合は、その期間が経過した後の就職である必要があります。さらに、就職した会社での勤務が「1年を超えて勤務することが確実である」と見込まれること、そして最も重要なのが「基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上残っていること」です。
他にも、再就職先が離職前の事業主とは異なること、雇用保険の被保険者となること、過去3年以内に再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていないこと、などの要件があります。これらの要件を全て満たすことで、再就職手当の支給対象となります。ハローワークは、再就職先がこれらの要件を満たしているかを確認するため、事業主への照会を行うこともあります。申請には期限があるため、再就職が決まったら速やかにハローワークに相談することが肝心です。
支給金額の計算方法と上限額
再就職手当の支給額は、残っている基本手当の支給残日数と、その残日数に応じた給付率によって決まります。具体的には、再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が、所定給付日数のどれくらいの割合で残っているかによって、以下のいずれかの給付率が適用されます。
- 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上残っている場合:基本手当の日額の70%
- 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上残っている場合:基本手当の日額の60%
この給付率に、基本手当の日額と支給残日数を乗じて、再就職手当の金額が算出されます。
計算例:
基本手当の日額が4,000円、所定給付日数が90日の場合を考えてみましょう。もし、支給残日数が60日残っている時点で再就職が決まったとします。この場合、支給残日数は90日の3分の2(60日)に当たるため、給付率70%が適用されます。
再就職手当 = 基本手当日額 4,000円 × 支給残日数 60日 × 給付率 70% = 168,000円
また、再就職手当にも上限額が設定されています。この上限額は、基本手当の日額と同様に、年齢によって異なります。2025年8月1日時点では、60歳未満の場合は6,120円、60歳以上65歳未満の場合は4,950円が基本手当日額の上限となり、これを超える日額で計算されることはありません。上限額は経済状況によって変更される可能性があるため、申請時には最新の情報をハローワークで確認するようにしましょう。早期に再就職するほど支給率が高くなるため、積極的に求職活動を行うことが賢明です。
再就職手当以外の早期就職支援
雇用保険制度には、再就職手当以外にも、早期の就職を支援するための様々な手当が用意されています。これらは、再就職の形態や特定の困難を抱える求職者に対して、経済的なサポートを提供することを目的としています。
例えば、「就業促進定着手当」は、再就職手当を受給して再就職した会社に6ヶ月以上雇用され、かつその6ヶ月間の賃金が離職前の賃金より低い場合に支給される手当です。これは、早期に再就職できたものの、賃金が下がってしまった方の生活を支え、就職先への定着を促す目的があります。支給額は、低下した賃金の差額を基に計算され、上限額が設定されています。
また、障害を持つ方や45歳以上の長期失業者など、特に再就職が困難な方が安定した職業に就いた場合には、「常用就職支度手当」が支給されることがあります。これは、再就職手当の要件を満たさない場合でも、就職を促進するための手当であり、支度金としてまとまった金額が支給されます。支給額は基本手当の日額の40日分または50日分が上限となります。
さらに、再就職ではなく、短期の仕事やアルバイトなど、雇用保険の適用がない働き方をした場合に支給される「就業手当」という制度もあります。これは、基本手当の支給残日数がある方が、雇用保険の適用を受けない働き方で収入を得た場合に、その収入と基本手当との差額の一部を補填する目的で支給されます。これら各種の手当は、それぞれの受給要件が細かく定められていますので、ご自身の状況に合わせて利用できる制度がないか、必ずハローワークで相談し、詳細を確認することが重要です。これらの手当を賢く活用することで、安心して再就職を目指すことができるでしょう。
スキルアップを支援!「教育訓練給付金」で学び直しを
「学び直し」や「リスキリング」といった言葉が注目される現代において、自身のスキルアップはキャリア形成に不可欠です。雇用保険制度には、働く方々が新たな知識や技能を習得し、キャリアアップを図るための「教育訓練給付金」という心強い支援があります。この制度を上手に活用すれば、費用を気にせず学びに取り組むことが可能になります。
教育訓練給付金の種類と給付率
教育訓練給付金は、受講する講座の内容や難易度に応じて、主に以下の3種類に分かれています。
- 一般教育訓練給付金:キャリア形成促進助成金の対象となる講座や、労働者の職業能力開発に資する講座が対象です。簿記、パソコンスキル、語学など、比較的幅広い講座が含まれます。
- 給付率:訓練費用の20%
- 上限額:10万円
- 特定一般教育訓練給付金:速やかな再就職や早期のキャリア形成に資する講座として、特に専門性の高い講座が対象です。介護福祉士、保育士、IT関連の専門資格などが含まれることが多いです。
- 給付率:訓練費用の40%
- 上限額:20万円
- 専門実践教育訓練給付金:中長期的なキャリア形成を支援するための、より専門的で実践的な講座が対象です。高度専門士、修士課程、特定専門職大学院などがこれに該当します。
- 給付率:訓練費用の50%
- 上限額:年間40万円(最大3年間で120万円)
これらの給付金は、厚生労働大臣が指定した教育訓練講座を受講・修了した場合に、その費用の一部が支給されるものです。ご自身のキャリアプランに合わせて、最適な講座と給付金の種類を選びましょう。支給対象となる講座は、厚生労働省のウェブサイトやハローワークで確認することができます。学ぶ意欲のある方を積極的に支援する制度ですので、ぜひ検討してみてください。
追加支給と教育訓練支援給付金
専門実践教育訓練給付金は、その中でも特に手厚い支援が用意されています。基本の給付率50%に加えて、さらなる追加支給のチャンスがあるため、より高い目標を持つ方にとって大きな後押しとなります。
まず、専門実践教育訓練を修了し、目標とする資格を取得して1年以内に雇用保険の被保険者として就職(または継続して雇用)された場合、訓練費用の20%が追加で支給されます。これにより、合計で訓練費用の最大70%(年間上限56万円)が給付されることになります。これは、学んだことが実際のキャリアアップに繋がったことを評価し、さらなる学びと就職へのモチベーションを高めるための制度です。
さらに、2024年10月以降に専門実践教育訓練の受講を開始し、訓練修了後の賃金が受講開始前と比較して5%以上上昇した場合は、追加で10%が支給される可能性があります。これは、リスキリングの成果が賃金上昇という形で具体的に現れた場合に、その努力をさらに評価するものです。これにより、最大で訓練費用の80%が給付される可能性があります。
また、専門実践教育訓練を受講する人を対象に、訓練期間中の生活費を支援する「教育訓練支援給付金」が別途支給される場合があります。これは、失業中の方が専門実践教育訓練を受講する際に、基本手当の支給が終了した後も安心して訓練に専念できるよう、基本手当の日額の80%に相当する金額が支給されるものです。ただし、受講開始時の年齢が45歳未満であることなど、いくつかの要件があります。これらの追加支援を上手に活用することで、経済的な不安なくスキルアップに集中できるでしょう。
受給要件と申請のポイント
教育訓練給付金を受給するためには、いくつかの共通する要件と、種類ごとの追加要件があります。まず、雇用保険の被保険者期間が一定期間以上あることが必須です。
- 初回受給の場合:被保険者期間が通算2年以上(専門実践の場合は3年以上)
- 2回目以降の受給の場合:前回の給付金受給から3年以上経過しており、かつ通算被保険者期間が初回と同様の要件を満たしていること
となっています。現在お勤めでなくても、退職日の翌日から1年以内に教育訓練を開始すれば、退職者の方でも申請が可能です(ただし、離職日の翌日から受講開始日までが1年以内である必要があります)。
申請には、受講開始日の1ヶ月前までにハローワークで「ジョブ・カード」の発行を受け、キャリアコンサルティングを受けることが推奨されます。特に専門実践教育訓練の場合は、これが必須となります。また、受講しようとする教育訓練が厚生労働大臣の指定を受けているか、事前に確認することが非常に重要です。
申請の具体的な流れとしては、まずハローワークで受給資格の有無を確認し、必要な書類を準備します。教育訓練施設のパンフレットや、受講費用に関する明細なども必要になります。講座修了後、所定の期間内にハローワークに申請を行うことで給付金が支給されます。申請手続きは複雑に感じるかもしれませんが、ハローワークの職員が丁寧にサポートしてくれますので、まずは最寄りのハローワークで相談し、ご自身の状況に合わせたアドバイスを受けることをお勧めします。計画的な学びのために、早めの情報収集と準備を心がけましょう。
雇用保険の給付金、賢く受け取るための計算方法と注意点
雇用保険の給付金制度は多岐にわたり、それぞれに異なる計算方法や受給要件が存在します。これらの制度を最大限に活用するためには、ご自身の状況に合わせて、どのような給付金がどのくらい受け取れるのかを正確に把握し、適切な手続きを踏むことが不可欠です。ここでは、各給付金の計算シミュレーションや、申請時の注意点、そして受給中の義務について解説します。
各給付金の計算シミュレーション
実際の例を通して、各給付金の計算方法をより具体的に理解しましょう。
基本手当の場合
- 例:35歳、離職前の賃金日額が12,000円。自己都合退職で、給付日数が90日と決定。
- 基本手当日額は、賃金日額の約50〜80%で計算されますが、ここでは仮に55%として計算します。
- 基本手当日額 = 12,000円 × 55% = 6,600円(上限額を超えない場合)
- 総支給見込額 = 6,600円 × 90日 = 594,000円
- ただし、自己都合退職の場合、7日間の待期期間と2ヶ月の給付制限期間(2025年4月以降は短縮見込み)が適用されるため、実際の支給開始は遅れます。
再就職手当の場合
- 例:上記の基本手当受給者が、給付日数が30日残っている時点で再就職(残り日数90日-30日=60日)。支給残日数が所定給付日数90日の3分の2(60日)にあたるため、給付率70%が適用。
- 再就職手当 = 基本手当日額 6,600円 × 支給残日数 60日 × 給付率 70% = 277,200円
- 早期に再就職することで、まとまった金額を受け取れることが分かります。
教育訓練給付金(専門実践)の場合
- 例:専門実践教育訓練講座の受講費用が合計80万円。
- 基本給付(50%) = 80万円 × 50% = 40万円(年間上限40万円のため、このケースでは全額給付)
- 資格取得&雇用で追加給付(20%) = 80万円 × 20% = 16万円
- 賃金上昇で追加給付(10%) = 80万円 × 10% = 8万円
- 合計で最大 = 40万円 + 16万円 + 8万円 = 64万円(訓練費用の80%)
このように、ご自身の状況や選択によって、受け取れる給付金の金額は大きく変動します。あくまでシミュレーションであり、実際の支給額は個別の条件によって異なりますので、必ずハローワークで詳細を確認してください。
申請時期と手続きの注意点
雇用保険の給付金を受け取るためには、それぞれの制度に定められた申請時期と適切な手続きが不可欠です。これらの手続きを怠ると、受給できるはずのお金を受け取れなくなる可能性もありますので、十分な注意が必要です。
基本手当の場合
離職後は、まず速やかにハローワークに出向き、求職の申し込みと離職票の提出を行う必要があります。この手続きが遅れると、待期期間や給付制限期間の開始も遅れ、結果として給付金の支給開始が遅れてしまいます。特に自己都合退職の場合、2ヶ月の給付制限期間がありますから、早めの手続きが重要です。
また、失業認定日にハローワークへ出向き、求職活動の実績を報告することも必須です。原則として4週間に1度の認定日に、指定された回数以上の求職活動実績が必要となります。
再就職手当の場合
再就職が決まったら、就職日の翌日から1ヶ月以内にハローワークへ申請書類を提出する必要があります。この期限を過ぎると、原則として手当は支給されません。再就職先の事業主にも書類作成を依頼する必要があるため、内定が決まった段階でハローワークに相談し、必要な書類や手続きについて確認しておくことをお勧めします。
教育訓練給付金の場合
教育訓練給付金は、受講開始前にハローワークでの相談や、ジョブ・カードの作成(専門実践の場合必須)が必要です。特に、受講開始日の1ヶ月前までに事前手続きを済ませる必要があります。講座修了後も、決められた期間内(修了日の翌日から1ヶ月以内)に申請書類を提出しなければなりません。
どの給付金も、必要書類の不備があると手続きが滞るため、ハローワークで「何が必要か」「いつまでに提出するか」を事前に確認し、余裕を持って準備することが賢明です。インターネットで情報収集するだけでなく、必ずハローワークの窓口で最新かつ正確な情報を得るようにしましょう。
受給中の求職活動義務と不正受給の防止
雇用保険の給付金は、単にお金を受け取るだけでなく、受給者には制度の目的に沿った義務が課せられます。特に基本手当を受給している間は、積極的に就職活動を行うことが必須です。
具体的には、失業認定日ごとに定められた回数以上の求職活動実績を報告する必要があります。求職活動とは、ハローワークでの職業相談、求人への応募、就職面接、公的な職業訓練の受講などが該当します。単に自宅で求人情報を眺めているだけでは、求職活動として認められない場合がありますので注意が必要です。ハローワークの就職支援セミナーへの参加なども、有効な求職活動実績となります。
また、ハローワークへの報告義務も重要です。アルバイトやパートなどで一時的に収入を得た場合、または再就職が決まった場合は、その事実を速やかにハローワークに申告しなければなりません。これらの報告を怠ったり、虚偽の申告を行ったりすることは、「不正受給」となります。不正受給と判断された場合、受け取った給付金の全額返還はもちろんのこと、さらにその2倍の金額(つまり3倍返し)の納付命令や、悪質な場合は詐欺罪として処罰される可能性もあります。
雇用保険制度は、働く人々の生活とキャリアを支えるための大切なセーフティネットです。この制度を正しく理解し、誠実に利用することが、ご自身の信頼を守り、安心して新しいキャリアへと進むための第一歩となります。不明な点があれば、自己判断せず、必ずハローワークに相談しましょう。正しい知識と行動で、雇用保険を賢く活用してください。
知っておきたい!その他の雇用保険給付金(訓練延長給付・高年齢雇用継続給付など)
雇用保険制度は、基本手当や再就職手当、教育訓練給付金だけでなく、特定の状況にある労働者を支援するための様々な給付金も提供しています。これらの制度を知っておくことで、予期せぬ事態やキャリアの転換期においても、より安心して対応できるようになります。ここでは、特に知っておきたいその他の給付金について解説します。
訓練延長給付と個別延長給付
基本手当の支給期間は通常、所定給付日数で終了しますが、特定の条件を満たす場合には、その給付期間が延長されることがあります。これが「訓練延長給付」と「個別延長給付」です。
訓練延長給付は、基本手当の受給資格者が、ハローワークの指示によって公共職業訓練等を受講する場合に適用されます。この給付は、訓練を受けている期間中、基本手当の支給が継続される制度です。もし、所定給付日数が訓練期間中に終了してしまっても、訓練が修了するまで(最大2年間)基本手当が支給されるため、経済的な心配なくスキルアップに集中することができます。この制度は、就職に必要な知識や技能を習得するための訓練を奨励し、より安定した再就職を支援することを目的としています。
一方、個別延長給付は、景気の悪化など、特定の地域や産業で雇用情勢が著しく悪化した場合や、就職が特に困難な方(障害を持つ方、45歳以上の長期失業者など)に対して、基本手当の給付日数を最大60日間延長する制度です。これは、雇用情勢によって再就職が困難になっている状況や、個人の特別な事情を考慮し、より長い期間の生活保障を提供することで、求職活動を支援するものです。ただし、これらの延長給付を受けるためには、それぞれに定められた厳格な要件を満たす必要があり、ハローワークの判断によって適用されます。ご自身の状況が該当する可能性がある場合は、積極的にハローワークに相談しましょう。
高年齢雇用継続給付金
少子高齢化が進む日本において、高年齢者が意欲と能力に応じて働き続けられる社会の実現は喫緊の課題です。雇用保険制度では、60歳以降も働き続ける高年齢者を支援するため、「高年齢雇用継続給付金」を設けています。
この給付金は、60歳以上65歳未満の被保険者で、60歳以降に賃金が以前に比べて75%未満に低下した方に対して支給されます。具体的には、60歳到達時と比較して、現在の賃金が75%未満に低下した場合に、その低下率に応じて、現在の賃金の最大15%相当額が支給されます。例えば、60歳時点の賃金が月額30万円だった人が、60歳以降に再雇用などで月額20万円になった場合(75%未満に低下)、その差額を補填する形で給付金が支給されるイメージです。この制度の目的は、賃金が低下することによって働き続ける意欲が失われることを防ぎ、高年齢者が安心して長く職場で活躍できる環境を整えることにあります。
受給するためには、雇用保険の被保険者期間が5年以上あること、60歳以上65歳未満であること、そして賃金が60歳到達時と比較して一定割合以下に低下していることなどの要件があります。また、給付金は原則として2ヶ月ごとに支給され、65歳に到達する月まで支給されます。定年後も働き続けたいけれど、賃金が下がってしまうことが不安、と感じている方にとって、非常に心強い支援となるでしょう。詳細は、勤務先の担当部署やハローワークにご相談ください。
2025年10月創設!教育訓練休暇給付金
働く人々の主体的な能力開発をさらに後押しするため、雇用保険制度は常に進化を続けています。その新たな動きとして、2025年10月から「教育訓練休暇給付金」が創設される予定です。
この新しい給付金は、労働者がキャリアアップやスキルアップのために、無給の長期教育訓練休暇を取得した場合に、その期間中の生活費の負担を軽減することを目的としています。これまで、教育訓練給付金は訓練費用の一部を補助するものでしたが、この新制度は、無給の休暇中に収入が途絶えることによる経済的不安を解消し、より多くの人が学び直しに挑戦できるよう支援するものです。働きながら学ぶだけでなく、一定期間仕事から離れて集中的に学びたいというニーズに応える画期的な制度と言えるでしょう。
具体的な受給要件としては、雇用保険の被保険者であること、就業規則等に基づいて30日以上の無給の教育訓練休暇を取得していることなどが想定されています。支給額や支給期間の詳細は今後発表される見込みですが、教育訓練期間中の生活費を支援することが明確な目的とされています。これにより、これまで費用や生活費の心配から学び直しに踏み切れなかった方々にとって、大きなチャンスが広がります。スキルアップを通じて自身の市場価値を高め、より良いキャリアを築くための強力なツールとなることは間違いありません。
これらの最新情報は、厚生労働省やハローワークのウェブサイトで随時更新されますので、関心のある方は定期的にチェックし、最新の情報を入手することをお勧めします。雇用保険制度を賢く活用し、あなたのキャリアを豊かにしていきましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 雇用保険の基本手当(失業保険)とは何ですか?
A: 会社都合や自己都合で離職し、ハローワークで求職活動をしている方に、一定期間支払われる失業中の生活を保障するための給付金です。
Q: 再就職手当はどのような場合に受け取れますか?
A: 原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が1年以上あり、再就職が決まり、所定給付日数の一定割合以上が残っている場合に受け取れます。
Q: 教育訓練給付金は、どのような訓練で利用できますか?
A: 国が指定した教育訓練講座を受講した場合に、その費用の一部が支給される制度です。対象となる講座はハローワークで確認できます。
Q: 基本手当の金額はどのように計算されますか?
A: 離職日以前6ヶ月間の賃金日額に、一定の給付率をかけて計算されます。給付率は年齢や賃金額によって異なります。
Q: 賃金日額や賃金月額の計算方法が知りたいです。
A: 賃金日額は、離職日以前6ヶ月間の賃金の合計額を180で割って算出します。賃金月額は、賃金日額に30をかけて算出しますが、上限額・下限額が定められています。
