「65歳になったら、もう失業給付はもらえないの?」そんな風に思っていませんか? 実は、65歳以上の方でも、雇用保険の失業給付に相当する制度を利用できる場合があります。

人生100年時代と言われる現代において、65歳を過ぎても活き活きと働き続ける方が増えています。それに伴い、高齢期の働き方や、万が一の離職時のセーフティネットへの関心も高まっています。

この記事では、65歳以上の方が利用できる「高年齢求職者給付金」を中心に、雇用保険の対象者や受給条件、さらには年金との併給など、知っておきたい情報を徹底的に解説します。あなたのセカンドキャリアを支えるための重要な知識として、ぜひ最後までお読みください。

65歳以上でも雇用保険の失業給付は対象になる?

「定年退職後や65歳を過ぎてから離職した場合、失業給付は受けられない」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、日本の雇用保険制度は、高齢者の働き方を支援するため、その仕組みを柔軟に変化させています。

特に65歳以上の方を対象とした「高年齢求職者給付金」は、通常の失業給付とは異なる独自の制度として、重要な役割を担っています。ここでは、この制度の概要と、受給に必要な条件、そして支給される金額について詳しく見ていきましょう。

高年齢求職者給付金とは?

高年齢求職者給付金は、65歳以上の雇用保険加入者が離職した際に支給される手当で、一般的な失業手当(基本手当)の代わりとなるものです。その目的は、65歳以上の求職者が、安心して新しい仕事を探せるように経済的な支援を提供することにあります。

従来の雇用保険制度では、65歳以上の労働者は失業給付の対象外となるケースが多くありました。しかし、2017年1月1日以降の法改正により、65歳以上の労働者も一定の条件を満たせば雇用保険に加入できるようになり、この給付金制度の重要性が増しています。

この給付金の大きな特徴の一つは、一時金としてまとめて支給される点です。通常の失業手当のように原則4週間に一度ハローワークで失業認定を受ける必要がなく、認定日に一度手続きを行えば、所定の給付日数の金額がまとめて支給されます。これにより、求職活動に集中しやすくなるというメリットがあります。

近年、高齢者の就業意欲は高まっており、2025年時点での65~69歳の労働力人口比率は53.5%、70~74歳では34.5%に達すると予測されています。このような社会情勢の中で、高年齢求職者給付金は、高齢者が安心して次のステップへ進むための重要なセーフティネットとして機能しています。

高年齢求職者給付金の受給条件を徹底解説

高年齢求職者給付金を受給するためには、大きく分けて二つの条件を満たす必要があります。これらの条件は、受給資格の有無を判断する上で非常に重要となります。

まず一つ目は、雇用保険の被保険者期間です。離職日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して6ヶ月以上あることが求められます。「通算」とは、雇用が途切れていた期間があっても、その1年間の合計で6ヶ月以上あれば条件を満たすことを意味します。例えば、半年働いて一度退職し、また別の職場で半年働いた場合でも、合計1年以上の期間内に6ヶ月以上の被保険者期間があれば対象となる可能性があります。

被保険者期間のカウント方法には注意が必要です。原則として、離職日から1ヶ月ごとに区切った期間において、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を1ヶ月と計算します。さらに、2020年8月1日以降に離職した場合は、賃金支払基礎日数が11日以上の月が6ヶ月に満たない場合でも、賃金支払いの基礎となった労働時間数が80時間以上であれば1ヶ月と計算される特例が適用されます。

二つ目の条件は、失業の状態にあることです。これは、「就職する意思といつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態」を指します。具体的には、ハローワークに求職の申し込みを行い、職業相談や求人への応募といった活動を継続している必要があります。単に仕事を探しているという意思だけでなく、具体的な行動が求められるのです。

逆に、家事や学業に専念する方、自営業を始める準備をしている方、病気やけがなどで直ちに就職できない方などは、失業の状態とは認められず、給付の対象外となります。自身の状況がこれらの条件に合致するかどうか、事前に確認しておくことが大切です。

受給額の計算方法と給付日数

高年齢求職者給付金の支給額は、以下の計算式に基づいて決定されます。基本的な考え方は通常の失業手当と同様ですが、給付日数に特徴があります。

まず、基本手当日額を算出します。これは、退職前の給与を基に計算される一日あたりの支給額です。

基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率

賃金日額 = 退職前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180

「賃金日額」は、離職日の直前6ヶ月間に支払われた給与総額を180で割って算出されます。この賃金日額に、年齢や賃金日額に応じた「給付率」(通常50~80%)をかけたものが基本手当日額となります。

次に、この基本手当日額に給付日数を掛けて総支給額を算出します。高年齢求職者給付金の給付日数は、雇用保険の加入期間によって異なります。

  • 被保険者期間が1年未満の場合:30日分
  • 被保険者期間が1年以上の場合:50日分

例えば、退職前6ヶ月の賃金合計が120万円で、賃金日額が6,666円、給付率が50%とすると、基本手当日額は3,333円となります。この方が被保険者期間1年以上であれば、3,333円 × 50日 = 166,650円が一時金として支給される計算です。なお、基本手当日額には上限額が設けられています。

通常の失業手当が所定給付日数分を数回に分けて支給されるのに対し、高年齢求職者給付金は、これらの計算で得られた金額が一時金としてまとめて支給されるため、ハローワークに何度も足を運ぶ必要がなく、手続きの手間が少ないというメリットがあります。これにより、高齢の求職者の方がよりスムーズに次のキャリアへ移行できるような配慮がなされています。

雇用保険の対象者・対象年齢・対象期間について

雇用保険制度は、働く人々の生活と雇用を安定させるための重要な社会保険です。その対象は、時代の変化や社会情勢に合わせて常に見直されており、近年では高齢者の就業促進を目的とした改正が数多く行われています。

ここでは、65歳以上の方が雇用保険に加入できるようになった背景から、複数の職場で働く高齢者への対応、そして雇用保険料の負担や年金との関係まで、雇用保険の対象者に関する具体的な情報をご紹介します。

65歳以上の雇用保険加入制度の変遷

かつての雇用保険制度では、原則として65歳以上の労働者は雇用保険の適用除外とされていました。しかし、少子高齢化が進み、高齢者の就業意欲と労働力への期待が高まる中で、この状況は見直されることになります。

2017年1月1日以降、法改正によって65歳以上の労働者も、一定の条件(週の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがあること)を満たせば、雇用保険に加入できるようになりました。これにより、彼らは「高年齢被保険者」として雇用保険の適用を受けることが可能となり、万が一の離職時には高年齢求職者給付金を受け取れる道が開かれました。

この改正は、高齢者が安心して働き続けられる環境を整備し、セカンドキャリアを支援するという国の強い意思を示すものです。高齢期まで働き続けることは、個人の経済的安定だけでなく、社会全体の活力維持にも貢献します。

実際に、高齢者の就業は顕著に増加しています。2024年時点では「70歳まで働ける企業」の割合が17.1%と増加傾向にあり、さらに2025年には65~69歳の労働力人口比率が53.5%に達すると見込まれています。このようなデータからも、高齢者が社会で活躍する機会が増えていることが伺えます。雇用保険制度の改正は、こうした社会のニーズに応える形で実現したと言えるでしょう。

「マルチジョブホルダー制度」で複数職場の高齢者も安心

近年、働き方は多様化し、一つの企業でフルタイム勤務するだけでなく、複数の職場で短時間ずつ働く「マルチジョブホルダー」も増えています。特に高齢者においては、自身の体力や生活スタイルに合わせて、複数の職場で働くことを選択するケースも少なくありません。

このような働き方に対応するため、2022年1月1日から「マルチジョブホルダー制度」が導入されました。この制度を利用することで、複数の職場で働いている65歳以上の労働者も、条件を満たせば雇用保険の対象となる場合があります。

具体的な適用条件は以下の通りです。

  • 複数の事業所に雇用されている65歳以上の労働者であること。
  • それぞれの事業所での1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満であること。
  • 複数の事業所での1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であること。
  • それぞれの事業所での雇用見込みが31日以上であること。

これら全ての条件を満たした場合、労働者自身がハローワークに申し出ることで、雇用保険の被保険者として複数の事業所での労働時間を合算して認定されることになります。例えば、A社で週10時間、B社で週12時間働いている65歳以上の方の場合、合計週22時間となり、それぞれの雇用見込みが31日以上であれば、この制度の対象となる可能性があります。

マルチジョブホルダー制度は、多様な働き方を推進し、高齢者が安心して社会参加を続けられるよう支援する画期的な制度です。これにより、単一の職場では雇用保険の対象とならない短時間労働者でも、複数の仕事を組み合わせることでセーフティネットを確保できるようになりました。ただし、この制度の適用を受けるには、労働者自身によるハローワークへの手続きが必要となりますので注意が必要です。

年金との併給と雇用保険料の負担

65歳以上の方にとって、年金と失業給付の併給可否は非常に重要な関心事です。一般的な失業手当(基本手当)を受給する場合、原則として65歳未満の被保険者は、老齢厚生年金など一部の年金と同時に受け取ることができません。年金が支給停止されるか、失業手当が減額されるなどの調整が入ります。

しかし、高年齢求職者給付金に関しては、この点が異なります。65歳以上の方は、高年齢求職者給付金と年金を同時に受け取ることが可能です。これは、高齢者の生活を多角的に支援し、求職活動を阻害しないための特別な措置と言えます。

ただし、受給している年金の種類や、年金の繰り上げ受給の有無など、個々の状況によっては調整が必要となる場合もありますので、具体的な状況については年金事務所やハローワークに確認することをおすすめします。

次に、雇用保険料の負担についてです。かつて65歳以上の労働者は雇用保険料の徴収対象外とされていました。しかし、2020年4月からは制度が改正され、65歳以上の従業員も一般の従業員と同様に雇用保険料の支払い義務が生じるようになりました。

これにより、65歳以上の労働者を雇用する企業側も、雇用される労働者側も、それぞれ定められた雇用保険料率に基づき保険料を負担することになります。この変更は、高齢者の雇用保険適用拡大に伴う財政基盤の強化と、全年齢層における公平な負担を目的としたものです。企業にとっては、高齢者を雇用する際のコスト要因の一つとなりますが、同時に優秀な高齢人材の確保や、長年の経験・知識の活用といったメリットも大きいと言えるでしょう。

アルバイトやパートでも失業給付の受給条件は?

「正社員ではないから、失業給付はもらえないだろう」と諦めているアルバイトやパートの方もいるかもしれません。しかし、雇用保険の対象は働き方に限定されず、一定の条件を満たせば非正規雇用の方でも失業給付、特に65歳以上の場合は高年齢求職者給付金の対象となります。

ここでは、短時間労働者が雇用保険に加入するための具体的な条件や、被保険者期間のカウント方法、さらには失業状態と見なされるための求職活動について詳しく解説します。あなたの働き方でも、もしかしたらセーフティネットが確保されているかもしれません。

非正規雇用でも雇用保険の対象となる条件

アルバイトやパートといった非正規雇用で働く方でも、以下の2つの条件を同時に満たせば、雇用保険の被保険者となります。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 31日以上の雇用見込みがあること

これらの条件は、雇用形態(正社員、パート、アルバイトなど)に関わらず共通です。つまり、たとえパートタイマーとして働いていても、週に20時間以上勤務し、今後1ヶ月以上働く見込みがあれば、会社は雇用保険に加入させる義務があるのです。

例えば、週3日勤務で1日7時間働いているパートタイマーの方は、週の所定労働時間が21時間となり、もし雇用見込みも満たしていれば雇用保険の対象となります。一方、週2日勤務で1日5時間(週10時間)の場合は、所定労働時間が20時間未満のため、原則として雇用保険の対象外となります。

ただし、先ほどご紹介した「マルチジョブホルダー制度」は、65歳以上の方に限り、複数の事業所の労働時間を合算して週20時間以上とすることで、雇用保険の対象となれる特例です。この制度は、単一の事業所だけでは条件を満たせない短時間労働の高齢者に、より広いセーフティネットを提供しています。

ご自身の雇用契約書や勤務実態を確認し、もし上記条件を満たしているにもかかわらず雇用保険に加入していない場合は、会社に確認するか、ハローワークに相談することをおすすめします。適切な手続きが行われていれば、万が一の離職時に高年齢求職者給付金を受け取れる可能性があります。

被保険者期間の具体的なカウント方法

高年齢求職者給付金を受給するためには、離職日以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が「通算して6ヶ月以上」あることが条件となります。この「1ヶ月」がどのようにカウントされるのかは、特に短時間労働者にとって重要なポイントです。

被保険者期間のカウント方法は、原則として離職日から1ヶ月ごとに区切った期間において、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を1ヶ月と計算します。賃金支払基礎日数とは、給与が支払われた日数を指し、実際に出勤した日数とほぼ同じと考えて良いでしょう。

例えば、ある月に20日出勤していれば、その月は被保険者期間の1ヶ月としてカウントされます。しかし、短時間勤務の場合、月の出勤日数が11日に満たないケースも少なくありません。

そこで、2020年8月1日以降に離職した方については、賃金支払基礎日数が11日以上の月が6ヶ月に満たない場合でも、特例が設けられています。それは、賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上であれば、その月を1ヶ月と計算するというものです。この特例により、例えば月に10日出勤でも、1日の労働時間が8時間以上であれば、その月は80時間以上勤務したことになり、被保険者期間としてカウントされることになります。

この特例は、特にシフト制で働く方や、1日の労働時間は長いものの、月の出勤日数が少ない短時間労働者にとって、受給資格を得るための大きな助けとなります。ご自身の過去の勤務実績を振り返り、被保険者期間がどのくらいあるかを確認してみましょう。もし不安な点があれば、ハローワークの窓口で相談することをおすすめします。

失業状態と見なされる求職活動の具体例

高年齢求職者給付金を受け取るためには、「失業の状態にあること」、つまり「就職する意思といつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態」であることが必須条件です。

では、「積極的に求職活動を行っている」とは具体的にどのような活動を指すのでしょうか? 単に「仕事を探している」と口にするだけでなく、具体的な行動が求められます。主な求職活動の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ハローワークでの職業相談・職業紹介:求人情報の閲覧だけでなく、担当者との相談を通じて具体的な求人に応募することが重要です。
  • 求人への応募:ハローワーク以外の民間求人サイトや新聞広告、企業の採用ページなどを通じて、具体的な求人に応募すること。
  • 各種セミナーや講習会への参加:再就職支援セミナーや職業訓練説明会、資格取得のための講習会など、就職に役立つ知識やスキルを習得する活動。
  • 企業説明会や面接会への参加:合同企業説明会や個別の企業面接への参加。
  • 再就職支援会社の利用:キャリアコンサルティングを受ける、求人紹介を受けるなど。

これらの活動は、失業認定申告書に記載し、ハローワークに提出することで求職活動実績として認められます。例えば、「知人に仕事がないか尋ねた」といった抽象的な活動は、求職活動実績として認められない場合がありますので注意が必要です。具体的に、いつ、どこで、どのような内容の活動を行ったのかを明確に記録しておくことが大切です。

特に高年齢求職者給付金は一時金として支給されるため、失業認定日に必要な求職活動実績を満たしていることが重要となります。支給を確実に受けるためにも、計画的に求職活動を行い、その内容を正確に記録するように心がけましょう。

雇用保険の対象外となるケースとは?

失業給付は、離職後の生活を支える大切な制度ですが、誰もが自動的に受けられるわけではありません。雇用保険の加入条件や受給条件を満たさない場合、または特定の状況下では、残念ながら給付の対象外となってしまいます。

特に65歳以上の方が高年齢求職者給付金を受けようとする場合、自身の状況が制度の条件に合致しているかを正確に理解しておくことが重要です。ここでは、具体的にどのようなケースで雇用保険の給付が受けられないのか、その詳細を解説します。

高年齢求職者給付金が支給されない具体的な状況

高年齢求職者給付金は、基本的に「失業の状態」にある求職者を支援するための制度です。そのため、以下のいずれかの状況に該当する場合、給付の対象外となります。

  • 就職する意思がない、またはいつでも就職できる能力がない場合
    「失業の状態」の定義の根幹に関わる部分です。単に仕事を辞めただけでは、給付は受けられません。
    例えば、定年退職後、しばらくは働かずにゆっくり過ごしたいと考える方や、家事に専念する予定の方、あるいは趣味や学業に集中したいという方は、就職の意思がないと判断されます。
  • 積極的に求職活動を行っていない場合
    求職の意思があっても、具体的な活動が見られない場合は「失業の状態」とは認められません。
    ハローワークへの求職申し込みだけで終わってしまい、職業相談や求人への応募を全く行わないケースなどがこれに該当します。
  • 自営業を始める準備をしている、またはすでに始めている場合
    個人事業主として独立開業を目指している方や、すでに事業を開始している方は、失業ではなく「就業」の状態と見なされるため、給付の対象外となります。
  • 病気やけが、妊娠・出産、育児、介護などで直ちに就職できない場合
    健康上の理由や家庭の事情で、すぐに仕事に就くことが難しい状況にある方も、一時的に「就職できる能力がない」と判断され、給付の対象外となります。
    ただし、これらの理由で求職活動ができない期間は、受給期間の延長申請ができる場合がありますので、ハローワークに相談することが重要です。

これらの状況は、高年齢求職者給付金の支給を判断する上で非常に重要なポイントとなります。自身の状況を客観的に見つめ直し、不明な点があれば必ずハローワークに相談しましょう。

雇用保険の適用除外となる条件

高年齢求職者給付金は、雇用保険の被保険者であった方が対象となるため、そもそも雇用保険に加入していなかった場合は、給付を受けられません。以下のような条件に該当する方は、雇用保険の適用除外となることがあります。

  • 週の所定労働時間が20時間未満の労働者(マルチジョブホルダー制度を利用しない65歳以上を除く)
    雇用保険加入の最も基本的な条件の一つです。アルバイトやパートなどで、週の労働時間が短い場合は対象外となります。ただし、65歳以上の方でマルチジョブホルダー制度を利用して合計週20時間以上となる場合は、この限りではありません。
  • 31日以上の雇用見込みがない労働者
    短期の契約などで、雇用期間が31日未満であることが明確な場合、雇用保険の対象外となります。
  • 法人の代表者や役員(一部例外あり)
    会社の経営者や役員は、原則として「雇用される側」ではなく「雇用する側」と見なされるため、雇用保険の適用除外となります。ただし、労働者としての実態がある場合は加入できる例外もあります。
  • 学生(一部例外あり)
    夜間学生や休学中の学生など、一部の例外を除き、原則として雇用保険の対象外です。
  • 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて雇用される場合
    短期間の季節労働者も、原則として適用除外となることがあります。

これらの条件は、雇用保険加入の入り口となる部分です。ご自身の雇用契約や勤務実態がこれらの条件に当てはまらないか確認し、もし加入していなかった場合は、高年齢求職者給付金だけでなく、通常の失業給付も対象外となることを理解しておく必要があります。

雇用保険は、労働者のセーフティネットとして非常に重要な役割を果たすため、自身の加入状況を定期的に確認することが賢明です。

手続きの不備や遅延による受給不可

高年齢求職者給付金は、受給資格があるにもかかわらず、手続き上の問題で支給を受けられないケースも存在します。特に高齢者の場合、情報収集や手続きに不慣れなために、こうした事態に陥ることがないよう注意が必要です。

主な手続き上の問題点としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 離職票の提出遅延や不備
    会社を離職した後、雇用保険の手続きには「離職票」が必要となります。会社が離職票の発行を遅らせたり、記載内容に不備があったりすると、ハローワークでの申請手続きが滞り、結果として給付の開始が遅れたり、申請期間を過ぎてしまったりする可能性があります。
  2. 申請期間の徒過
    高年齢求職者給付金には、受給資格の決定と支給申請に期限があります。原則として、離職日の翌日から1年間が申請期間であり、この期間を過ぎると給付を受ける権利を失ってしまいます。
    病気やけがなど、やむを得ない理由がある場合は受給期間の延長申請が可能ですが、いずれにしても早めの手続きが肝心です。
  3. 失業認定日に必要な求職活動実績の不足
    高年齢求職者給付金は一時金ですが、支給を受けるためには失業認定日に必要な求職活動実績を満たしている必要があります。
    ハローワークでの職業相談や求人への応募など、積極的な活動が不足していると、失業が認定されず、給付を受けられない可能性があります。

これらの手続き上の問題は、受給資格がある方にとっては非常にもったいないケースです。離職後は、できるだけ早く会社から離職票を受け取り、ハローワークへ赴いて相談・申請を行うことが、スムーズな給付受給への鍵となります。

手続きに不安がある場合は、ハローワークの職員に積極的に質問し、適切なサポートを受けるようにしましょう。早めの行動と正確な手続きが高齢期の安心につながります。

失業給付の受給条件を満たさなくなった場合は?

高年齢求職者給付金は、一時金として支給されるため、一般的な失業手当とは異なる特徴があります。しかし、受給資格を得た後も、その条件を維持できなければ給付を受けられなくなる可能性があります。

ここでは、求職活動を怠った場合の給付停止のリスクや、再就職した場合の給付への影響、そして給付の申請期間と有効期限について解説します。適切な行動をとり、最大限に制度を活用するためのポイントを理解しましょう。

求職活動を怠った場合の給付停止措置

高年齢求職者給付金は、あなたが積極的に再就職を目指していることを前提とした支援制度です。そのため、求職活動を怠ると、失業認定が受けられず、結果として給付を受けられなくなる可能性があります。

一般的な失業手当(基本手当)の場合、認定日ごとに求職活動実績の確認が行われ、不足していればその期間の給付が停止されます。高年齢求職者給付金は一時金としてまとめて支給されますが、それでも初回支給を受けるための失業認定日には、規定の求職活動実績を満たしていることが必須となります。

具体的には、ハローワークから紹介された求人に応募しない、職業相談に行かない、指定されたセミナーに参加しないといった行動は、求職活動を怠っていると判断される可能性があります。ハローワークは、単に求職の意思があるだけでなく、具体的な行動を求めています。

給付金を確実に受け取るためには、求職申し込み後、ハローワークの職員と連携を取りながら、計画的に求職活動を行うことが重要です。活動内容をしっかりと記録し、失業認定日に申告できるように準備しておきましょう。支給決定前の段階で活動が不十分だと判断されると、給付が受けられなくなるというリスクがあることを理解しておく必要があります。

積極的な求職活動は、単に給付金を受け取るためだけでなく、自身の再就職を早めるためにも非常に有効です。前向きな姿勢で活動に取り組むことが、次のキャリアへと繋がる最善の道となるでしょう。

再就職した場合と再就職手当の可能性

高年齢求職者給付金は、失業の状態にある方への一時的な経済支援を目的としています。そのため、給付の支給決定後であっても、再就職が決まった時点で、原則として給付の対象とはならなくなります

一般的な失業手当(基本手当)には、所定給付日数を残して早期に再就職した場合に支給される「再就職手当」という制度があります。これは、早期の再就職を促進するためのインセンティブとして機能します。しかし、高年齢求職者給付金は一時金としてまとめて支給される性質上、この再就職手当の対象とはなりません

例えば、高年齢求職者給付金が50日分まとめて支給された後、すぐに再就職が決まったとしても、給付金が返還されることはありませんし、別途再就職手当が支給されることもありません。この点が、通常の失業手当との大きな違いです。

そのため、高年齢求職者給付金を受給した方が早期に再就職できた場合、支給された給付金は再就職後の生活資金や準備費用として有効活用できることになります。これは、高齢の求職者にとって、経済的な不安を軽減し、新しい仕事に安心して臨めるという点でメリットが大きいと言えるでしょう。

再就職が決まった際は、速やかにハローワークにその旨を報告し、必要な手続きを行うようにしましょう。正確な情報提供が、制度の適切な運用と公平性を保つ上で不可欠です。

給付の申請期間と有効期限に注意

高年齢求職者給付金は、無期限に申請できるものではなく、申請期間と有効期限が設けられています。この期間を過ぎてしまうと、せっかく受給資格があっても給付を受けられなくなってしまうため、特に注意が必要です。

原則として、高年齢求職者給付金の申請期間は、離職日の翌日から1年間です。この1年間の間に、ハローワークへ求職の申し込みを行い、受給資格の決定と支給申請を完了させる必要があります。

例えば、2024年4月1日に離職した場合、2025年3月31日までに全ての申請手続きを終えなければなりません。この期間を1日でも過ぎてしまうと、原則として給付を受ける権利が消滅してしまいます。

ただし、病気やけが、妊娠・出産、育児、介護など、やむを得ない理由によって30日以上継続してハローワークに来所できない、または求職活動ができない期間がある場合は、受給期間の延長申請が可能です。この延長申請は、その理由が終わった日の翌日から1ヶ月以内に行う必要があり、最大で離職日の翌日から4年間まで延長することができます。

高齢者の場合、病気や体調不良で一時的に求職活動が困難になることも少なくありません。そのような状況に陥った場合は、放置せずに、速やかにハローワークに相談し、延長申請の手続きについて確認することが非常に重要です。

いずれにしても、離職後は時間を置かずにハローワークへ赴き、早めに手続きを開始することが、高年齢求職者給付金を確実に受け取るための最も確実な方法と言えるでしょう。自身のセカンドキャリアを円滑に進めるためにも、期限の厳守を心がけてください。