雇用保険被保険者資格取得届の基本と必要書類、提出方法

事業主の皆様、従業員を雇用する上で避けて通れない重要な手続きの一つが、「雇用保険被保険者資格取得届」の提出です。
この届出は、従業員が雇用保険のさまざまな給付金を受け取るための第一歩となります。
正確かつ迅速な手続きは、従業員の安心を確保し、事業主としての義務を果たす上で非常に重要です。

本記事では、この資格取得届に関する基本事項から、必要書類、提出方法、そして見落としがちなポイントまで、詳しく解説します。
複雑に感じられがちな手続きも、この記事を読めばスムーズに進められるようになるでしょう。

雇用保険被保険者資格取得届とは?基本を理解しよう

なぜ雇用保険加入が必要なのか?その重要性

雇用保険被保険者資格取得届は、事業主が従業員を雇用保険に加入させるために、管轄のハローワークに提出する極めて重要な書類です。
この手続きを怠ると、従業員は失業した際の「失業手当(基本手当)」、育児や介護で休業する際の「育児休業給付金」や「介護休業給付金」、さらには教育訓練を受ける際の「教育訓練給付金」など、雇用保険が提供するさまざまな給付金を受け取ることができなくなってしまいます。

これらの給付金は、従業員の生活保障やキャリア形成を支援する公的なセーフティネットであり、万が一の事態に備える上で不可欠な制度です。
事業主が適切な時期に正確な届出を行うことは、従業員の権利を守り、安心して働ける環境を提供する上で、社会的な責任を果たすことと同義と言えます。
提出が遅れたり、記入内容に誤りがあったりすると、従業員が給付金の受給条件を満たしていても申請が遅れる、あるいは受け取れないといった不利益が生じる可能性があるため、細心の注意を払う必要があります。

雇用保険制度は、労働者の生活の安定と雇用の促進を目的としており、事業主は法律に基づき、対象となる従業員全員を加入させる義務があります。
この義務を果たすことが、企業と従業員双方にとって健全な雇用関係を築く基盤となるのです。

提出のタイミングと対象となる従業員

雇用保険被保険者資格取得届には、厳格な提出期限と明確な対象者が定められています。
まず、提出期限は「従業員を雇い入れた日の翌月10日まで」と定められています。
例えば、1月15日に従業員を雇用した場合、2月10日までに届け出を完了させる必要があります。
この期限を過ぎると、遅延届となり、従業員が給付金を受け取る際に支障が出る可能性があります。

次に、雇用保険の適用対象となる従業員は、以下の2つの条件をどちらも満たす者です。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上である
  • 31日以上の雇用見込みがある

これらの条件は、正社員だけでなく、パートタイムやアルバイト、契約社員、派遣社員など、あらゆる雇用形態の従業員に適用されます。
例えば、週に20時間以上勤務し、契約期間が1ヶ月を超える見込みのあるアルバイトも、雇用保険の加入対象となります。
また、特筆すべきは「高年齢被保険者」の扱いでしょう。
65歳以上の高齢者を新たに雇用する場合も、上記の条件を満たせば雇用保険の適用対象となります。
高年齢被保険者は、保険料の算定や給付金の仕組みに一部特例がありますが、基本的に加入義務があることを忘れてはなりません。

これらの条件を正確に把握し、対象となる従業員を漏れなく雇用保険に加入させることが、事業主の責務です。
従業員の労働時間や雇用期間をしっかりと確認し、雇用契約書等に基づき判断しましょう。

日本の雇用保険加入状況の現状

日本の雇用保険制度は、社会保障の中核をなす重要な仕組みであり、その加入率は高い水準を維持しています。
近年、社会全体の雇用状況の変化や法改正の影響もあり、社会保険の加入率は増加傾向にあります。
特に雇用保険については、その傾向が顕著です。

具体的なデータを見ると、全体の雇用保険加入率は、平成24年度の79.4%から平成29年度には82.6%へと微増しています。
これは、パートタイム労働者への適用拡大や社会保険の適正加入に向けた取り組みが背景にあると考えられます。
さらに、企業別の雇用保険加入率に目を向けると、実に98%〜99%と非常に高い水準を維持していることが分かります。
この高い加入率は、多くの企業が雇用保険の重要性を認識し、法令遵守に努めている証拠と言えるでしょう。

高い加入率を背景に、雇用保険は労働者の生活安定に大きく貢献しています。
一方で、失業率の動向も雇用保険の役割を考える上で重要な指標となります。
日本の完全失業率は、2020年には感染症の影響で一時的に上昇しましたが、その後は低下傾向にあります。
2022年平均の完全失業率は2.6%となり、2019年の水準には回復していませんが、安定した低水準を維持しています。
2025年9月時点では、失業率は2.60%で、前月と変わっていません。

このような雇用情勢の中で、雇用保険は、経済変動や個人のキャリア転換期におけるセーフティネットとしての役割を一層強化しています。
事業主としては、このような社会情勢と制度の背景を理解し、適切な手続きを行うことが求められます。

取得届の記入例とダウンロード方法

正確な記入のための重要ポイント

雇用保険被保険者資格取得届の記入は、一見するとシンプルな作業に見えますが、いくつかの重要なポイントを押さえることで、ハローワークでの審査をスムーズに進めることができます。
まず、何よりも大切なのは「最新の様式を使用すること」です。
雇用保険に関する様式は、法改正や制度変更に伴い定期的に更新されることがあります。
古い様式を使用して提出すると、内容が不備とみなされ、再提出を求められる可能性があるため、常に最新版をハローワークの窓口や厚生労働省のウェブサイトで確認するようにしましょう。

記入にあたっては、従業員の氏名、生年月日、性別などの基本情報のほか、雇用年月日、賃金、職種、事業所の情報などを正確に記載します。
特に、過去に雇用保険の被保険者証を受け取ったことがある従業員の場合は、その被保険者証に記載されている内容(被保険者番号など)をしっかりと確認しながら記入することが重要です。
これにより、過去の加入履歴との照合が円滑に行われ、二重登録などの混乱を避けることができます。
また、もし氏名に変更があった従業員の場合は、変更後の氏名を記入し、必要に応じて他の氏名変更手続きと併せて届け出る必要があります。

これらの情報を正確に記載することで、従業員が将来的に雇用保険の給付金を受け取る際のトラブルを防ぐとともに、事業主自身も適正な手続きを行ったという証明になります。
記入内容に少しでも疑問がある場合は、自己判断せずにハローワークの窓口に相談するか、記入例を参考に慎重に進めましょう。

最新様式の入手とダウンロード方法

雇用保険被保険者資格取得届の様式は、前述の通り定期的に更新されるため、常に最新のものを入手して使用することが必須です。
様式を入手する方法はいくつかありますが、最も手軽で推奨されるのは、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードする方法です。
厚生労働省のホームページには、雇用保険関連の各種届出様式が掲載されており、PDF形式で簡単にダウンロードできます。
検索エンジンで「厚生労働省 雇用保険被保険者資格取得届」と入力すれば、すぐに該当ページを見つけることができるでしょう。

ウェブサイトからダウンロードするメリットは、いつでもどこでも最新の様式を入手できる点にあります。
また、ダウンロードした様式はプリンターで印刷して手書きで記入することも、パソコン上で直接入力し印刷することも可能です(ただし、一部の様式は手書き専用の場合もありますので注意が必要です)。
ダウンロードの際には、様式のバージョンや適用開始日を必ず確認し、最新版であることを再確認してください。

その他、ハローワークの窓口でも様式を受け取ることができます。
直接ハローワークを訪れることで、疑問点があればその場で職員に質問できるという利点もありますが、開庁時間内に足を運ぶ必要があります。
電子申請システムを利用する場合も、システム内で最新の様式が提供されるため、別途ダウンロードする手間はかかりません。
ご自身の都合や環境に合わせて、最も効率的で確実な方法で様式を入手しましょう。

外国人労働者を雇用する場合の特記事項

近年、日本の労働市場において外国人労働者の存在感は増しており、多くの事業主が外国人の方々を雇用しています。
外国人労働者を雇用する場合、雇用保険被保険者資格取得届の記入には、日本人従業員の場合とは異なるいくつかの特記事項があります。
これらの事項を正確に記入することで、手続きを円滑に進めるだけでなく、「外国人雇用状況の届出」という別の義務を兼ねることができるため、事業主の負担軽減にもつながります。

具体的には、資格取得届の所定の枠内に、外国人労働者の在留カードの情報を正確に記載する必要があります。
記載すべき項目は以下の通りです。

  • ローマ字氏名:パスポートや在留カードに記載されているとおりのローマ字氏名を記入します。
  • 国籍・地域:在留カードに記載された国籍または地域名を記入します。
  • 在留資格:在留カードに記載された在留資格(例:特定技能、技術・人文知識・国際業務など)を記入します。
  • 在留期間:在留カードに記載された在留期間(満了日)を記入します。
  • 在留カード番号:在留カードの12桁の番号を記入します。

これらの情報を雇用保険被保険者資格取得届に記載することで、別途提出が義務付けられている「外国人雇用状況の届出」に代えることが可能です。
これは、事業主にとって事務手続きの簡素化という大きなメリットとなります。
ただし、記載漏れや誤りがあると、代わりにならないだけでなく、届出自体が不備と見なされる可能性があるため、在留カードを直接確認しながら慎重に記入してください。
また、在留期間の更新などがあった場合は、速やかにハローワークに届け出る必要があります。
外国人労働者の適切な雇用管理は、企業コンプライアンスの観点からも非常に重要です。

必要書類と添付書類、職種・雇用形態による違い

原則として必要な書類

雇用保険被保険者資格取得届の提出において、原則としてハローワークに提出する書類は「雇用保険被保険者資格取得届」の様式のみです。
この様式に、従業員の氏名、生年月日、性別、雇用年月日、賃金、職種、事業所番号などの必要事項を漏れなく、かつ正確に記入して提出すれば、多くの場合手続きは完了します。
従業員の基本情報や雇用条件が明確であり、届出内容に特段の疑義が生じない限り、追加の書類を求められることは稀です。

しかし、この「原則」が適用されるのは、届出内容がハローワークの審査基準に合致している場合に限られます。
届出書一枚で済むからといって、記入内容を疎かにすることはできません。
記入漏れや誤字脱字はもちろん、従業員の雇用形態や労働条件に関する記載が不明瞭である場合、あるいは事業所の過去の届出内容と整合性が取れない場合などには、ハローワークから問い合わせが入ったり、後述する添付書類の提出を求められたりする可能性があります。

したがって、原則が「届出書のみ」であっても、事業主としては、いつでも追加書類を提出できるよう、関連する雇用情報を適切に管理・保管しておくことが重要です。
特に、従業員の雇用開始日、週所定労働時間、賃金に関する情報は、雇用保険の加入要件に直結するため、いつでも提示できるよう準備しておく必要があります。
スムーズな手続きのためにも、届出書の記入は慎重に行い、不明な点があれば事前にハローワークに確認するなどの対応を心がけましょう。

追加で求められる可能性のある添付書類

原則として雇用保険被保険者資格取得届のみで提出可能ですが、提出した届出内容に疑義が生じた場合や、ハローワークが内容の確認を必要と判断した場合、追加の添付書類の提出が求められることがあります。
これは、届出の正確性を確保し、従業員が将来的に雇用保険の給付を適切に受けられるようにするために行われるものです。
事業主としては、このような状況に備え、以下の書類を適切に管理・保管しておくことが求められます。

添付書類として一般的に求められる可能性のあるものには、以下のような書類があります。

  • 労働者名簿:従業員の氏名、生年月日、性別、住所、職種、雇用年月日などが記載された名簿です。
  • 出勤簿(タイムカード):従業員の出勤・退勤時刻、休憩時間などが記録された書類で、週所定労働時間を確認するために必要となります。
  • 賃金台帳:従業員の基本給、手当、控除額などが記載された書類で、賃金支払いの実態を確認します。
  • 雇用契約書または労働条件通知書:従業員と事業主の間で交わされた雇用条件(労働時間、賃金、雇用期間など)が明記された書類です。
  • 辞令(入社辞令、配属辞令など):従業員の入社日や職務内容が確認できる書類です。

これらの書類は、届出書に記載された情報(例えば「週の所定労働時間20時間以上」や「31日以上の雇用見込み」)が事実と合致しているかを確認するために用いられます。
特に、パートタイマーやアルバイトなど、労働時間が変動しやすい従業員の場合、出勤簿や賃金台帳は重要な証拠となります。
これらの書類の提出を求められた際、迅速に対応できるよう日頃から整理整けて保管しておくことが、トラブルを未然に防ぐ上で非常に重要です。

職種・雇用形態ごとの注意点

雇用保険被保険者資格取得届の提出にあたっては、従業員の職種や雇用形態によって特別な注意が必要となる場合があります。
基本的な加入条件は「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込みがある」ですが、これらの条件を様々な雇用形態に当てはめて考えることが大切です。

例えば、パートタイムやアルバイトの従業員の場合、所定労働時間が20時間を超えるかどうかが非常に重要な判断基準となります。
シフト制の場合など、週によって労働時間が変動する可能性のある従業員については、雇用契約書に記載された所定労働時間を明確にし、それが年間を通じて継続的に20時間以上となる見込みがあるかを確認する必要があります。
もし、雇用契約書上は20時間未満でも、実態として継続的に20時間を超えている場合は、雇用保険の適用対象となることがあります。

また、派遣社員については、雇用契約を結んでいるのは派遣元企業ですが、雇用保険の適用は派遣元企業が行います。
しかし、派遣先企業としては、派遣社員の労働時間管理を適切に行い、雇用保険の適用条件を満たしているかどうかの確認を派遣元企業と連携して行うことが望ましいでしょう。

さらに、65歳以上の高齢者を新たに雇用する場合も、「高年齢被保険者」として雇用保険の適用対象となります。
かつては65歳以上で新規雇用される場合は雇用保険の適用外でしたが、法改正により2017年1月1日以降、高年齢被保険者として適用対象となりました。
この場合も、上記の「1週間の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込みがある」という条件を満たす必要があります。
これらの職種・雇用形態ごとの細かな違いを理解し、適切に判断することが、雇用保険の手続きを正確に進めるための鍵となります。

提出先と郵送での提出について

提出先の選択肢とそのメリット・デメリット

雇用保険被保険者資格取得届の提出方法には、主に3つの選択肢があります。それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるため、事業主の皆様はご自身の状況や利便性に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。

  1. ハローワーク窓口への直接持参
    • メリット:専門の職員が書類の内容を確認してくれるため、不備があればその場で指摘・修正が可能です。不明な点があれば直接質問でき、安心して手続きを進められます。
    • デメリット:窓口が混雑している場合、待ち時間が発生することがあります。開庁時間内に訪問する必要があるため、営業時間外には提出できません。
  2. 郵送での提出
    • メリット:ハローワークへ直接足を運ぶ必要がなく、時間や場所の制約を受けにくい点が大きな利点です。
    • デメリット:郵送中の紛失リスクや、書類に不備があった場合に修正に時間がかかる可能性があります。個人情報を含むため、送付方法には注意が必要です。詳細は後述します。
  3. 電子申請
    • メリット:オンライン上で手続きが完結するため、用紙の準備が不要で、24時間いつでも申請可能です。事務処理の効率化に繋がり、書類の保管スペースも不要になります。
    • デメリット:事前のシステム登録や設定が必要となり、初期導入に手間がかかる場合があります。また、システム操作に慣れるまで時間がかかることもあります。

事業の規模や従業員の数、利用できるリソースなどを考慮し、最も効率的で確実な提出方法を選択しましょう。近年では、電子申請の利用が推奨されており、手続きのデジタル化が進んでいます。

郵送で提出する際の注意点と推奨事項

雇用保険被保険者資格取得届を郵送で提出する場合、その手軽さゆえに選ばれることも多いですが、いくつかの重要な注意点を踏まえておく必要があります。
郵送はハローワークへ直接足を運ぶ手間を省けますが、書類の不備や紛失といったリスクも伴います。

まず最も重要なのは、送付する書類が「個人情報」を多く含んでいるという点です。
従業員の氏名、生年月日、住所といったデリケートな情報が記載されているため、郵送中の紛失や情報漏洩のリスクを最小限に抑える対策が必要です。
そのため、簡易書留や特定記録郵便といった追跡可能なサービスを利用することが強く推奨されます。
これにより、郵便物の追跡が可能となり、万が一の紛失時にも状況を把握しやすくなります。

次に、書類の不備による手続きの遅延を防ぐため、送付前には以下のチェックリストを活用することをお勧めします。

  • 記入漏れや誤字脱字がないか最終確認したか
  • 必要な添付書類(もしあれば)をすべて同封したか
  • ハローワークから返送を希望する場合、返信用封筒(切手貼付済、宛名記入済)を同封したか
  • 提出する届出書のコピーを控えとして保管したか

特に、返信用封筒の同封は、受理されたことを確認するための被保険者証の送付や、不備があった場合の連絡に必要となるため、忘れずに入れるようにしましょう。
また、提出した届出書の控えは、万が一の問い合わせや再提出の際に必要となるため、必ず事業所で保管するようにしてください。
郵送による提出は便利ですが、これらの注意点を守ることで、より安全で確実な手続きが可能となります。

電子申請による効率的な手続き

近年、行政手続きのデジタル化が進む中で、雇用保険被保険者資格取得届も電子申請による提出が可能です。
電子申請は、事業主にとって多くのメリットをもたらし、事務作業の効率化とコスト削減に大きく貢献します。

電子申請の最大のメリットは、その利便性にあります。
インターネット環境があれば、24時間365日いつでもどこからでも申請手続きを行うことができます。
これにより、ハローワークの開庁時間に縛られることなく、事業主の都合の良い時間に作業を進められるため、時間の有効活用が可能です。
また、紙の書類を印刷したり、郵送したりする手間が省けるため、用紙代や郵送費のコスト削減にもつながります。
さらに、書類の物理的な保管スペースも不要となり、情報管理の面でもメリットがあります。

電子申請は、政府が提供する「e-Gov(電子政府の総合窓口)」を通じて行われます。
利用を開始するには、事前の利用者登録や、電子証明書の取得などの準備が必要となります。
これらの初期設定には多少の時間と手間がかかるかもしれませんが、一度設定が完了すれば、以降の各種社会保険・労働保険手続きを効率的に行えるようになります。
システム上での入力ミスを防ぐためのチェック機能や、過去の申請履歴を簡単に参照できる機能なども充実しており、人為的なエラーのリスクを低減し、正確な手続きを支援します。

電子申請は、特に多くの従業員を抱える企業や、複数拠点で事業を展開する企業にとって、事務処理の標準化と効率化を実現するための強力なツールとなります。
初期投資は必要ですが、長期的に見れば、業務効率の向上とコンプライアンス強化に大きく寄与するでしょう。
まだ電子申請を利用していない事業主の方は、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。

資格取得届出確認照会票の役割

資格取得届出確認照会票とは何か

資格取得届出確認照会票は、雇用保険の被保険者である従業員が、自身の雇用保険の加入状況や被保険者番号などを確認するために利用する書類です。
事業主が提出する資格取得届とは異なり、この照会票は従業員が自身の雇用保険に関する情報をハローワークに照会する際に使用されます。
この制度は、従業員が自身の雇用保険加入状況について不安を感じた場合や、被保険者番号が不明な場合などに、自ら情報を確認できる手段を提供するものです。

具体的には、従業員がハローワークの窓口に申請することで、自身の雇用保険被保険者番号、資格取得日(雇用保険に加入した日)、離職日などの情報が記載された照会票が発行されます。
これは、事業主が雇用保険の手続きを適切に行ったかどうかの確認や、転職先での雇用保険手続きにおいて自身の被保険者番号が必要になった場合などに非常に役立ちます。
従業員にとって、自身のキャリアパスや社会保障に関する重要な情報を把握するためのツールとして、この照会票は大きな意味を持ちます。

事業主側から見ると、従業員がこの照会票を用いて加入状況を確認するということは、事業主が提出した資格取得届が正しく処理され、従業員が雇用保険に適切に加入できているかを間接的に示すことにもなります。
万が一、従業員が照会票を申請して自分の情報が見つからなかった場合、それは事業主がまだ届出を提出していないか、あるいは提出した届出に不備があった可能性を示唆することになります。
このような場合、事業主は速やかに状況を確認し、必要な対応を取る義務があります。

照会票が必要となるケース

資格取得届出確認照会票は、従業員が様々な状況で自身の雇用保険加入情報を確認する必要が生じた際に活用されます。
具体的にどのようなケースでこの照会票が必要となるのかを理解しておくことは、従業員からの問い合わせに適切に対応するためにも重要です。

最も一般的なケースは、転職時です。
新しい職場で雇用保険の手続きを行う際、以前の職場で使用していた雇用保険被保険者番号を求められることがよくあります。
しかし、長期間同じ職場で働いていた、あるいは以前の被保険者証を紛失してしまったなどの理由で、自身の被保険者番号を覚えていない従業員は少なくありません。
このような時に、ハローワークで照会票を取得し、自身の被保険者番号を確認することができます。

次に、従業員が自身の雇用保険の加入状況に疑念を抱いた場合です。
例えば、給与明細から雇用保険料が控除されているにもかかわらず、本当に雇用保険に加入できているのか不安に感じた従業員が、ハローワークで直接確認したいと考えることがあります。
これは、事業主が資格取得届を提出しているにもかかわらず、何らかの事情でハローワークでの処理が遅れている、あるいは従業員が自身の雇用保険番号を把握していないといった場合に起こり得ます。

また、育児休業給付金や介護休業給付金、教育訓練給付金などの申請を検討している従業員が、自身の被保険者期間や加入状況を確認するために利用することもあります。
これらの給付金は、受給資格に一定期間以上の雇用保険加入期間が求められるため、事前に自身の加入状況を正確に把握しておくことが重要となります。
このように、照会票は従業員が自身の権利を行使する上で、非常に重要な情報源となるのです。

照会票の取得方法と確認時の注意点

資格取得届出確認照会票の取得は、基本的に従業員本人が直接ハローワークに申請することで行われます。
事業主が従業員に代わって申請することは原則としてできません。
従業員が照会票を取得する際の一般的な方法は以下の通りです。

  1. ハローワーク窓口での申請
    • 本人が管轄のハローワーク窓口に直接出向きます。
    • 本人確認のため、運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどの身分証明書が必要です。
    • 照会票の申請書を記入し、窓口に提出します。その場で情報が確認され、照会票が発行されることが多いです。
  2. 郵送での申請
    • ハローワークによっては、郵送での申請を受け付けている場合があります。
    • 申請書(ハローワークのウェブサイトからダウンロード可能)に必要事項を記入し、身分証明書のコピー、返信用封筒(切手貼付済、宛名記入済)を同封して郵送します。
    • 郵送での申請は、窓口に足を運べない場合に便利ですが、書類の不備や郵送期間を考慮し、余裕を持って申請する必要があります。

照会票を受け取った従業員は、そこに記載されている被保険者番号、資格取得日、離職日などの情報が正しいかを確認します。
もし、記載内容と自身の認識に食い違いがある場合は、速やかにハローワークに問い合わせ、場合によっては事業主にも確認を求めることになります。
例えば、資格取得日が本来の雇用年月日と異なっている場合などは、事業主が提出した資格取得届の記載ミスや処理遅延の可能性が考えられます。

事業主としては、従業員から照会票に関する相談があった場合、自身の控えの書類(資格取得届の控え、雇用契約書など)を確認し、正確な情報を提供できるよう準備しておくことが望ましいでしょう。
従業員が安心して雇用保険制度を利用できるよう、適切な情報提供とサポートを行うことが、信頼関係の構築にも繋がります。