扶養控除等申告書の「所得の見積額」をわかりやすく解説!

  1. 扶養控除等申告書の「所得の見積額」とは?
    1. 所得の見積額の基本的な定義
    2. なぜ「見積額」を申告するのか
    3. 年末調整における重要性
  2. 配偶者や親族の所得の見積額の書き方
    1. 給与所得者・年金受給者の計算方法
    2. 扶養控除適用における所得上限の注意点(2025年情報)
    3. 複数収入がある場合の計算ポイント
  3. マイナンバーの記載は必須?知っておきたい注意点
    1. マイナンバー記載の要否と提出時の注意
    2. 記載ミスや申告漏れのリスクと対処法
    3. 申告書を提出しないとどうなる?(乙欄課税)
  4. 扶養控除等申告書の裏面や欄が足りない場合の対処法
    1. 扶養控除等申告書の基本構造と記載スペース
    2. 欄が足りない場合の具体的な対応策
    3. 扶養親族が多い場合の記載のコツ
  5. 扶養控除等申告書を例で理解!具体的な記入例
    1. パート・アルバイトのケース(給与収入のみ)
    2. 年金受給者のケース(公的年金収入のみ)
    3. 複数の所得や特定親族がいるケース(2025年版)
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 扶養控除等申告書の「所得の見積額」とは具体的に何を指しますか?
    2. Q: 配偶者の所得の見積額が不明な場合はどうすれば良いですか?
    3. Q: 扶養控除等申告書にマイナンバーを書かないといけませんか?
    4. Q: 扶養控除等申告書の裏面はどのような内容ですか?
    5. Q: 扶養控除等申告書の扶養親族の欄が足りない場合はどうすれば良いですか?

扶養控除等申告書の「所得の見積額」とは?

所得の見積額の基本的な定義

「所得の見積額」とは、その年の1月1日から12月31日までの間に得られると見込まれる収入金額から、必要経費や各種控除(給与所得控除、公的年金等控除など)を差し引いた後の金額の合計額を指します。
これは単なる収入額とは異なり、控除後の最終的な所得額を意味します。

年末調整の際に、所得税や住民税の計算の基礎となる金額であり、皆さんの税負担を適正に計算するために不可欠な情報です。
この金額が、毎月の給与から源泉徴収される所得税額や、翌年度に課される住民税額の決定に大きく影響します。

特に、配偶者控除や扶養控除といった所得控除の適用を受けるためには、扶養する方の所得の見積額が一定の基準を満たしているかどうかが判断基準となるため、その正確な理解と申告が非常に重要になります。

なぜ「見積額」を申告するのか

「所得の見積額」が「見積額」とされているのは、年末調整を行う10月~12月の時点では、その年の12月31日までの最終的な所得がまだ確定していないためです。
年の途中で転職したり、アルバイトを掛け持ちしたり、あるいは副業を始めたりと、年間を通して収入が変動するケースは少なくありません。

そのため、現時点での状況から「おおよそこれくらいになるだろう」という見込みの金額を申告することになります。
この見積額に基づいて、毎月の給与からの源泉徴収額が調整され、年末に最終的な所得が確定した後、過不足が精算される仕組みです。

もし申告した見積額と実際の所得に大きな差があった場合は、年末調整で精算しきれず、ご自身で確定申告が必要になることもあります。
しかし、一般的な給与所得者であれば、前年の収入や現在の雇用状況から比較的正確に見積もることが可能ですので、可能な限り実態に近い金額を記入しましょう。

年末調整における重要性

「所得の見積額」は、年末調整において非常に重要な役割を果たします。この金額を正確に申告することで、皆さんの税負担が適正に計算されるからです。
具体的には、配偶者控除や扶養控除、基礎控除といった所得控除の適用可否を判断する際の基準となります。

例えば、扶養親族の所得の見積額が年間48万円(給与収入のみの場合は103万円)以下であれば扶養控除の対象となり、納税者本人の所得税や住民税が軽減されます。
もし、この見積額を過少に申告してしまうと、本来受けられるはずの控除が適用されず、結果として多く税金を納めてしまう可能性があります。

逆に過大に申告すると、年末調整で税額が不足し、追徴課税となることもあり得ます。
「扶養控除等申告書」は、この見積額を通じて、その年の税金を計算する上で非常に重要な基礎情報を提供する書類であることを理解しておきましょう。

配偶者や親族の所得の見積額の書き方

給与所得者・年金受給者の計算方法

配偶者や扶養親族が給与収入のみの場合、その年の給与収入金額から「給与所得控除額」を差し引いた金額が「所得の見積額」となります。
例えば、給与収入が103万円の人の場合、給与所得控除額は65万円なので、所得の見積額は「103万円 - 65万円 = 38万円」となります。

同様に、公的年金収入のみの場合も、収入金額から「公的年金等控除額」を差し引いて計算します。
65歳未満で年金収入が118万円以下の場合は公的年金等控除額が60万円となり、所得の見積額は「118万円 - 60万円 = 58万円」です。

65歳以上で年金収入が168万円以下であれば、公的年金等控除額は110万円なので、所得の見積額は「168万円 - 110万円 = 58万円」となります。
これらの計算方法は、扶養控除の適用可否を判断する上で非常に重要ですので、以下も参考にしてください。

収入の種類 収入金額の目安 控除額 所得の見積額
給与収入 103万円以下 65万円 38万円以下
123万円以下 65万円 58万円以下
公的年金収入 65歳未満: 118万円以下 60万円 58万円以下
65歳以上: 168万円以下 110万円 58万円以下

扶養控除適用における所得上限の注意点(2025年情報)

2025年(令和7年)の税制改正により、扶養控除の適用基準となる扶養親族の所得要件にはいくつかの重要な変更点があります。
まず、基本的な扶養親族の合計所得金額の上限が、従来の48万円から58万円(給与収入のみの場合は103万円から123万円)に変更される可能性があります。(※注:最新の税制改正情報をご確認ください)

これは、扶養控除を受けられる範囲が広がることを意味し、より多くの家庭で控除が適用されやすくなるでしょう。
特に注目すべきは「特定親族特別控除」の新設です。これは、19歳以上23歳未満の特定親族で、合計所得金額が58万円超から123万円以下の人を対象とした控除です。

これにより、大学生など、一定の所得がある扶養親族についても、所得に応じて控除を受けられるようになりました。
学費を稼ぎながら学ぶ学生や、アルバイト収入がある若年層を扶養する家庭にとって、大きなメリットとなるでしょう。
「源泉控除対象配偶者」の所得の見積額の上限も、給与収入で160万円以下(所得95万円以下)、または103万円以下(所得48万円以下)とされていますので、配偶者控除を受ける際にも注意が必要です。

複数収入がある場合の計算ポイント

配偶者や扶養親族が給与所得以外にも、事業所得、不動産所得、雑所得など複数の収入源を持っている場合、それぞれの所得金額を合算して「合計所得金額」を計算する必要があります。
例えば、パート収入と、副業での事業所得があるケースでは、給与所得控除後の給与所得と、事業収入から必要経費を差し引いた事業所得を合計します。

この合計所得金額が、扶養控除の適用要件(例:年間所得58万円以下)を満たしているかどうかの判断基準となります。
注意点として、退職所得は、通常、所得の見積額の計算には含めませんが、住民税の計算には考慮される場合がありますので、その点は頭に入れておきましょう。

複数の所得がある場合は計算が複雑になるため、一つ一つの所得源から正確な「所得金額」を算出し、それらを全て合算するという手順を忘れないでください。
不明な点があれば、税務署や税理士、または会社の経理担当者に相談することをおすすめします。

マイナンバーの記載は必須?知っておきたい注意点

マイナンバー記載の要否と提出時の注意

扶養控除等申告書には、原則として、納税者本人および扶養親族のマイナンバー(個人番号)の記載が必須となっています。
これは、税務署や市区町村が、納税者の所得状況や扶養状況を正確に把握し、適正な課税を行うために必要な情報だからです。

もしマイナンバーを記載しないまま提出した場合、会社から改めて記載を求められるか、記載がなければ年末調整が正しく行われない可能性があります。
提出時には、必ずマイナンバーカードや通知カードなどで番号を確認し、正確に記入するようにしましょう。

特に、配偶者や扶養親族のマイナンバーを記載する際は、本人に確認を取ることが重要です。プライバシー情報であるため、取り扱いには十分な注意と確認が求められます。
企業側も、マイナンバーの収集・保管・利用には厳格なルールが定められているため、提出する側もその重要性を理解しておくべきです。

記載ミスや申告漏れのリスクと対処法

扶養控除等申告書は、年末調整の基礎となる非常に重要な書類です。そのため、記載ミスや申告漏れがあった場合には、いくつかリスクが生じます。
最も一般的なのは、控除額が正しく適用されないことです。

例えば、扶養親族の所得見積額を間違えて申告し、本来受けられるはずの扶養控除が受けられなかった場合、年末調整で税金が多く引かれてしまいます。
また、逆に所得を過少に申告して控除を受けすぎた場合、年末調整で追徴課税が発生するか、確定申告で追加納税が必要になる可能性があります。

もし申告書提出後に誤りに気づいた場合は、年末調整の期限(翌年の1月31日)までであれば、会社に依頼して訂正が可能です。
期限を過ぎてしまった場合は、ご自身で確定申告を行うことで、誤りを是正し、正しい税額を申告・納付することができます。
書類の不備や記載漏れがないか、提出前に再度確認する習慣をつけましょう。

申告書を提出しないとどうなる?(乙欄課税)

「扶養控除等申告書」は、提出が法律で義務付けられているわけではありませんが、提出しないことによるデメリットは非常に大きいです。
この申告書を提出しないと、会社はあなたが「扶養親族がいない」とみなし、「乙欄」と呼ばれる高い税率で毎月の給与から源泉徴収を行います。

これにより、本来支払うべき所得税よりも多くの税金が天引きされるため、毎月の手取り額が大幅に減少してしまいます。
さらに、この申告書を提出しない従業員は、原則として会社での年末調整の対象外となります。

年末調整が行われないということは、配偶者控除や扶養控除、生命保険料控除などの各種所得控除が適用されず、ご自身で確定申告をしない限り、払いすぎた税金が戻ってこないことになります。
結果として、多くの税金を払い続けることになり、大変不利です。
複数の会社で働いている場合を除き、原則として必ず1か所の勤務先に提出するようにしましょう。

扶養控除等申告書の裏面や欄が足りない場合の対処法

扶養控除等申告書の基本構造と記載スペース

扶養控除等申告書は、主に表面に納税者本人の情報や基礎控除の申告、そして「控除対象扶養親族」や「16歳未満の扶養親族」などの欄があります。
裏面には、配偶者の所得の見積額を記入する「配偶者控除等申告書」や、保険料控除を申告する欄などが配置されています。

表面の扶養親族を記載する欄は、通常、数名分しかスペースが用意されていません。
これは、多くの家庭では扶養親族の人数が限られていることを想定しているためです。

しかし、大家族や、同居する複数の親族を扶養している場合など、定められた欄では足りないケースも当然出てくるでしょう。
この限られたスペースの中で、全ての情報を適切に記入することが求められますが、もし欄が不足した場合は、適切な対処法を知っておくことが重要です。

欄が足りない場合の具体的な対応策

扶養親族が多くて申告書の欄が足りない場合でも、心配する必要はありません。いくつかの対処法があります。
最も一般的な方法は、「別紙」を添付することです。

市販の白い紙や、会社から指定された用紙に、申告書の様式に準じて「氏名」「生年月日」「個人番号(マイナンバー)」「所得の見積額」「続柄」といった必要事項を漏れなく記載します。
この別紙に記載する際には、「扶養控除等申告書 別紙」と明記し、納税者本人の氏名も忘れずに記入しましょう。

そして、本来の申告書の所定の欄には「別紙参照」などと記載し、別紙を添付して提出します。
また、勤務先によっては、会社独自の様式や追加用紙を用意している場合もありますので、まずは会社の経理担当者に相談するのが確実です。
決して欄外に無理やり小さい字で書き込んだり、不明瞭な書き方をしてしまったりしないよう注意してください。

扶養親族が多い場合の記載のコツ

扶養親族が多い場合、申告書の記入は少し手間がかかりますが、いくつかのコツを押さえることでスムーズに進められます。
まず、事前に必要な情報を全て集めておくことが重要です。

これには、扶養親族全員の氏名、生年月日、マイナンバー、そして「所得の見積額」が含まれます。
特に「所得の見積額」の計算は、それぞれ収入源が異なる場合もあるため、一つ一つ確認して正確な金額を把握しておきましょう。

次に、優先順位をつけて記入することをおすすめします。例えば、年末調整の対象となる控除対象扶養親族(16歳以上)を優先的に記載し、その後に16歳未満の扶養親族を記載していくなどです。
もし欄が不足し別紙を使用する場合は、別紙に記載する内容をリストアップし、漏れがないか二重にチェックしましょう。
家族構成や所得状況が変わるたびに、申告書の内容も更新が必要となるため、定期的な見直しも重要です。特に2025年の税制改正のように制度変更があった場合は、記載内容が最新の情報に基づいているかを確認することが大切です。

扶養控除等申告書を例で理解!具体的な記入例

パート・アルバイトのケース(給与収入のみ)

例として、夫(会社員)と、パートで働く妻(Aさん)の場合を考えてみましょう。Aさんの2025年の年間パート収入が120万円と見込まれるとします。
この場合、Aさんの所得の見積額を計算します。給与収入120万円に対し、給与所得控除額は65万円です。

したがって、Aさんの所得の見積額は「120万円(収入)-65万円(給与所得控除)=55万円」となります。
夫の扶養控除等申告書の配偶者欄には、この「55万円」を記入します。

2025年の扶養親族の所得要件が58万円以下(給与収入123万円以下)に変更される可能性を考慮すると、Aさんは夫の源泉控除対象配偶者に該当し、夫は配偶者控除を受けられることになります。
もしAさんの収入が103万円以下であれば所得は38万円となり、夫はより大きな配偶者特別控除を受けることが可能です。
このように、具体的な収入と控除額を把握することで、正確な所得の見積額を記入し、適切な控除を受けることができます。

年金受給者のケース(公的年金収入のみ)

次に、会社員の長男(Bさん)が、公的年金を受給している68歳の母(Cさん)を扶養しているケースを考えます。
Cさんの2025年の年間公的年金収入が160万円と見込まれるとします。

Cさんは65歳以上なので、公的年金等控除額は110万円です。
したがって、Cさんの所得の見積額は「160万円(収入)-110万円(公的年金等控除)=50万円」となります。

長男Bさんの扶養控除等申告書には、Cさんの氏名、生年月日、マイナンバー、そして「所得の見積額:50万円」を記入します。
2025年の扶養親族の所得要件が58万円以下に変更される可能性を考慮すると、CさんはBさんの控除対象扶養親族に該当し、Bさんは扶養控除を受けられることになります。
年金収入も給与収入と同様に、控除額を差し引いた所得額で判断されるため、特に高齢の扶養親族がいる場合は、年金収入額と年齢に応じた控除額を正確に確認することが大切です。

複数の所得や特定親族がいるケース(2025年版)

最後に、会社員のDさんが、給与収入がある大学生の長女(Eさん、20歳)と、副業(事業所得)を持つ妻(Fさん)を扶養しているケースを想定します。
Eさんの2025年の年間給与収入が140万円と見込まれる場合、給与所得控除65万円を差し引くと、所得の見積額は「140万円-65万円=75万円」となります。

2025年からは「特定親族特別控除」が新設され、19歳以上23歳未満で所得が58万円超123万円以下の特定親族も控除対象となり得るため、DさんはEさんについてこの控除を受けられる可能性があります。
次に、Fさんの年間パート収入が100万円、副業の事業所得が20万円(必要経費控除後)と見込まれるとします。

Fさんの給与所得は「100万円-65万円=35万円」です。事業所得は20万円。
Fさんの合計所得の見積額は「35万円(給与所得)+20万円(事業所得)=55万円」となります。
DさんはFさんの所得が58万円以下なので、源泉控除対象配偶者として配偶者控除を受けられます。
このように、複数の収入源がある場合は、それぞれの所得を正確に計算し、合計することで、扶養控除等申告書に適切な所得の見積額を記入することができます。複雑な場合は、税務署や税理士に相談することをお勧めします。