近年、共働き世帯が日本の夫婦の約7割を占めるようになり、家族のあり方や働き方が大きく変化しています。これに伴い、年末調整や扶養控除等申告書の書き方も、共働き夫婦にとってより重要になっています。

本記事では、最新のデータや2025年度の税制改正を踏まえ、共働き夫婦が扶養控除等申告書を賢く書くための参考情報をまとめました。賢く活用して、家計の負担を軽減しましょう。

  1. 結婚したら知っておきたい!扶養控除等申告書の基本
    1. 扶養控除等申告書とは?共働き夫婦にとっての重要性
    2. 2025年度税制改正で変わる「年収の壁」
    3. 配偶者控除・配偶者特別控除の最新情報
  2. 共働き夫婦必見!控除対象扶養親族の判断ポイント
    1. 扶養親族の基本的な条件と注意点
    2. 夫婦で扶養親族を分担する際のメリット・デメリット
    3. 源泉控除対象配偶者と控除額の関係
  3. 子供がいる家庭必見!高校生や3人のお子さんの場合
    1. 高校生のお子さんの扶養控除「特定扶養親族」
    2. 3人のお子さんを抱える家庭の控除戦略
    3. 扶養控除以外の子供に関する優遇制度
  4. 知っておきたい!特定扶養親族・老人扶養親族・障害者控除
    1. 特定扶養親族の詳細と2025年度改正
    2. 老人扶養親族の適用条件と控除額
    3. 障害者控除の種類と申告方法
  5. 扶養控除等申告書で確認すべき世帯主との続柄とは?
    1. 扶養控除と続柄の基本的な関係
    2. 生計を一にするとは?同居・別居の判断基準
    3. 扶養控除等申告書の提出先と確認事項
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 結婚したら扶養控除等申告書はどうなりますか?
    2. Q: 共働きの場合、扶養控除等申告書はどう書けば良いですか?
    3. Q: 子供が3人いる場合、高校生の子供は控除対象になりますか?
    4. Q: 特定親族とは具体的にどのような人を指しますか?
    5. Q: 障害者控除を受けるためにはどのような手続きが必要ですか?

結婚したら知っておきたい!扶養控除等申告書の基本

扶養控除等申告書とは?共働き夫婦にとっての重要性

扶養控除等申告書とは、年末調整の際に提出する書類であり、所得税や住民税の計算において扶養控除や配偶者控除などを適用するために不可欠なものです。この書類を提出することで、毎月の給与から源泉徴収される税額が適正に計算されます。

特に共働き世帯においては、夫婦それぞれが自身の収入と扶養家族の状況を正確に申告することが、不必要な税負担を避ける上で極めて重要です。2021年時点で夫婦のいる世帯の約7割が共働き世帯となっており、経済的な安定や社会とのつながりを求める意識の変化がその背景にあります。

扶養控除等申告書を賢く書くことで、ご家庭の節税効果を最大限に引き出すことができるでしょう。最新の税制改正にも目を向け、夫婦で協力して記入を進めることが大切です。

2025年度税制改正で変わる「年収の壁」

2025年度の税制改正では、「年収の壁」と呼ばれる所得税制上の扶養要件が大きく見直されます。これまで給与収入103万円以下が所得税法上の扶養の範囲とされていましたが、これが123万円以下に引き上げられることになりました。

この改正により、パートやアルバイトで働く方が、扶養の範囲を気にせずにこれまでよりも多く働くことが可能になります。特に、これまで103万円の壁を意識して就業調整をしていた方にとっては、働き方の選択肢が広がる朗報と言えるでしょう。

この変更は、共働き世帯の働き方を柔軟にし、より多くの収入を得る機会を提供します。扶養控除等申告書を作成する際には、この新しい所得要件を念頭に置き、夫婦それぞれの収入見込み額を正確に把握することが重要です。

配偶者控除・配偶者特別控除の最新情報

配偶者控除や配偶者特別控除についても、2025年度の税制改正で重要な変更があります。源泉控除対象配偶者となる配偶者の給与年収の上限が、150万円から160万円に引き上げられます(納税者本人の合計所得が900万円以下の場合)。

これにより、これまで配偶者控除や配偶者特別控除の適用外だった世帯でも、新たに控除を受けられる可能性があります。配偶者特別控除についても、満額受けられる上限が160万円に引き上げられるため、共働き夫婦にとっては家計にプラスとなる変更点です。

また、基礎控除額が48万円から58万円に引き上げられ、給与所得控除も引き上げられます。これらの改正は、扶養控除等申告書の記入において、配偶者の所得状況をより慎重に確認する必要があることを示唆しています。

共働き夫婦必見!控除対象扶養親族の判断ポイント

扶養親族の基本的な条件と注意点

扶養親族とは、納税者と「生計を一にする」親族で、年間合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下)などの要件を満たす方を指します。2025年度の改正で、給与収入の要件が123万円に緩和されたことは、多くの家庭にとって朗報です。

最も重要な注意点として、同じ扶養親族を夫婦で重複して申告することはできません。 例えばお子さんがいる場合、夫と妻のどちらか一方の扶養控除等申告書にのみ記載する必要があります。どちらが扶養控除を受けるかは、事前に夫婦で話し合って決めることが大切です。

扶養控除は、控除を受ける人の所得が多いほど税金の軽減効果が高くなる傾向があります。夫婦の所得状況を考慮し、より有利になるように申告しましょう。扶養親族の対象となる年齢や関係性もしっかり確認しておくことが必要です。

夫婦で扶養親族を分担する際のメリット・デメリット

共働き夫婦の場合、複数の扶養親族がいる際には、夫婦で扶養親族を分担して申告することも可能です。扶養控除等申告書には「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」という欄があり、ここに相手が扶養控除を受ける親族の情報を記載します。

例えば、お子さんが2人いる場合、夫が長子を、妻が次子を扶養親族として申告するといったケースが考えられます。この分担により、夫婦それぞれの所得税・住民税が軽減される可能性がありますが、それぞれの所得額や控除額によって最適な方法は異なります。

メリットとしては、所得の高い方が控除額の大きい特定扶養親族(19歳以上23歳未満の学生など)を申告することで、世帯全体の節税効果を高めることが挙げられます。デメリットとしては、申告が複雑になることや、計算を誤ると税務署からの指摘を受ける可能性があることです。不明な点は専門家に相談することをお勧めします。

源泉控除対象配偶者と控除額の関係

源泉控除対象配偶者とは、納税者本人の所得の見積額が900万円以下(給与収入なら1,095万円以下)で、生計を一にする配偶者の所得の見積額が95万円以下(給与収入なら160万円以下)などの条件を満たす配偶者を指します。

この条件を満たすと、納税者は配偶者控除や配偶者特別控除の適用が可能になります。2025年度の税制改正により、配偶者の給与年収上限が160万円に引き上げられたことで、より多くの世帯がこの恩恵を受けられるようになりました。

ただし、納税者本人の合計所得金額によって控除額は段階的に減少します。ご自身の所得と配偶者の所得を正確に把握し、夫婦で協力して申告書を作成することが、最大限の控除を受けるための鍵となります。源泉控除対象配偶者に該当するかどうかで、年末調整の計算にも影響が出るため、しっかり確認しましょう。

子供がいる家庭必見!高校生や3人のお子さんの場合

高校生のお子さんの扶養控除「特定扶養親族」

扶養控除には、扶養親族の年齢によって控除額が異なる区分があります。特に高校生以上のお子さんがいる家庭で注目したいのが「特定扶養親族」です。これは19歳以上23歳未満の扶養親族が対象となり、一般の扶養親族よりも高い控除額(63万円)が適用されます。

2025年度の税制改正では、この特定扶養親族の所得要件も緩和され、これまで給与収入103万円以下だったものが123万円以下に引き上げられました。これにより、大学や専門学校に通いながらアルバイトをしているお子さんでも、より多く稼ぎながら特定扶養控除の対象となる可能性が高まります。

お子さんが学費や生活費を補うためにアルバイトをしている場合、その収入が扶養控除にどう影響するかは重要なポイントです。この改正により、年収123万円までは特定扶養控除の満額を受けられるため、家計にとって大きなメリットとなるでしょう。高校生(16歳以上19歳未満)も一般扶養親族(控除額38万円)の対象となります。

3人のお子さんを抱える家庭の控除戦略

お子さんが3人いるご家庭では、扶養控除の申告において賢い戦略が必要です。前述の通り、同じ扶養親族を夫婦で重複して申告することはできません。そのため、夫婦どちらか一方の扶養控除等申告書に記載することになりますが、複数の扶養親族がいる場合は分担することも可能です。

例えば、長男は夫の扶養親族とし、次男と三男は妻の扶養親族とするといった分け方が考えられます。この際、所得の高い方が控除額の大きい特定扶養親族(大学生など)を扶養に入れることで、世帯全体の税負担をより効果的に軽減できる可能性があります。

ただし、扶養控除の他にも児童手当などの子育て支援制度があります。これらの制度は所得制限がある場合も多いため、扶養の分け方が他の制度に影響しないか、総合的に判断することが大切です。夫婦でよく話し合い、税制上のメリットを最大化する選択をしましょう。

扶養控除以外の子供に関する優遇制度

子供がいる家庭では、所得税の扶養控除以外にも様々な優遇制度があります。例えば、住民税の計算においては、所得税と同様に扶養控除が適用され、非課税限度額にも影響を与えます。

また、お子さんの医療費がかさんだ場合には「医療費控除」の対象となる可能性があります。一年間の医療費が一定額を超えた場合に、所得から控除され、税負担が軽減されます。これは年末調整では申告できないため、確定申告が必要です。

直接的な税制優遇ではありませんが、大学等への進学に際しては、奨学金制度や教育ローンなども活用できます。扶養控除等申告書の記入は、家計全体を見直し、利用できる制度がないか確認する良い機会にもなりますので、総合的な視点で検討してみてください。

知っておきたい!特定扶養親族・老人扶養親族・障害者控除

特定扶養親族の詳細と2025年度改正

特定扶養親族は、扶養親族のうち19歳以上23歳未満の学生などが該当し、通常の扶養控除(38万円)よりも手厚い63万円の控除が適用されます。この年齢層は、大学や専門学校への進学により多額の教育費がかかることが多いため、税制上の配慮がなされています。

2025年度の税制改正では、この特定扶養親族の所得要件も緩和されます。これまでは給与収入103万円以下が条件でしたが、123万円以下まで引き上げられます。これは、学業と両立しながらアルバイトで収入を得る学生にとって、非常に大きなメリットとなります。

例えば、年間120万円のアルバイト収入がある大学生は、改正前であれば特定扶養控除の対象外でしたが、改正後は対象となり、扶養者の税負担が大幅に軽減されることになります。扶養控除等申告書を記入する際には、お子さんの年齢と収入を正確に確認し、該当する控除を忘れずに申告しましょう。

老人扶養親族の適用条件と控除額

納税者が扶養している親族が70歳以上の場合、その親族は「老人扶養親族」として扱われ、一般の扶養親族よりも高い控除額が適用されます。老人扶養親族には、同居しているか否かで控除額が異なります。

  • 同居老親等: 納税者本人または配偶者の直系の尊属で、常に同居している場合、控除額は58万円です。
  • 同居老親等以外: 同居していない場合や、直系尊属以外の老人扶養親族の場合、控除額は48万円です。

共働き夫婦が高齢の親を扶養している場合、どちらの扶養に入れるかによって控除額が変わる可能性があります。生計を一にしていれば、別居している親でも扶養親族とすることができますが、送金証明などで生計同一を証明する必要がある点に注意が必要です。

障害者控除の種類と申告方法

納税者本人、配偶者、または扶養親族が障害者である場合、「障害者控除」を受けることができます。この控除も障害の程度や状況によって、控除額が異なります。

  • 一般の障害者: 27万円の控除。
  • 特別障害者: 身体障害者手帳1級・2級など、重度の障害者として認定された場合、40万円の控除。
  • 同居特別障害者: 納税者本人、配偶者、または扶養親族が特別障害者であり、かつ同居している場合、75万円の控除。

障害者控除は、扶養控除等申告書の該当欄に記入することで申告できます。通常、障害者手帳など公的な証明書が必要です。共働き夫婦で障害を持つ親族を扶養している場合は、夫婦どちらの扶養親族として申告するかを検討し、最も控除額が高くなるように申告しましょう。

扶養控除等申告書で確認すべき世帯主との続柄とは?

扶養控除と続柄の基本的な関係

扶養控除等申告書には、「世帯主との続柄」を記載する欄があります。これは、扶養親族となる人が、納税者本人とどのような関係にあるかを示すものです。扶養控除の対象となるのは、納税者と「生計を一にする」親族であることが大前提となります。

親族の範囲は、配偶者、子、孫、父母、祖父母、兄弟姉妹など広範囲にわたります。しかし、全ての親族が扶養控除の対象となるわけではなく、前述の所得要件を満たし、かつ納税者と生計を一にしている必要があります。この「続柄」の記載は、その関係性を明確にするための重要な情報です。

例えば、別居している親を扶養に入れる場合でも、続柄は「父」や「母」となります。同居しているかどうかで控除額が変わる老人扶養親族のケースでも、この続柄の確認は不可欠です。正確な記載を心がけましょう。

生計を一にするとは?同居・別居の判断基準

「生計を一にする」という言葉は、必ずしも同居していることを意味しません。納税者と扶養親族が同じ財布で生活している、または生活費を共有している状態を指します。具体的には以下のようなケースが挙げられます。

状況 生計を一にすると判断される例
同居している場合 家計が一緒であれば、通常「生計を一にする」と判断されます。
別居している場合
  • 単身赴任などで一時的に離れて暮らしている配偶者や子。
  • 遠隔地にいる親や子へ、定期的に生活費や学費を送金している場合。
  • 健康保険の扶養に入っている場合。

別居している親を扶養に入れる場合など、生計を一にしていることを証明するためには、銀行の送金記録や仕送り明細などが求められることがあります。疑問な場合は、税務署や会社の給与担当者に確認することをお勧めします。

扶養控除等申告書の提出先と確認事項

扶養控除等申告書は、通常、年末調整の時期(10月~12月頃)に会社から配布され、勤務先に提出します。会社の人事・経理担当者が内容を確認し、源泉徴収される税額の計算や年末調整を行います。そのため、提出期限を守り、正確に記入することが非常に重要です。

記入にあたっては、以下の点を再確認しましょう。

  • 夫婦それぞれの年間収入の見積額を正確に把握する。
  • 扶養親族の重複申告は絶対に避ける。夫婦で事前に話し合い、どちらがどの親族を扶養するか決めておく。
  • 2025年度税制改正による所得要件の変更(123万円、160万円)を念頭に置く。
  • 特定扶養親族、老人扶養親族、障害者控除など、特別な控除に該当しないかを確認する。

不明な点があれば、会社の給与担当者や税務署に相談し、誤りのないように申告しましょう。共働き夫婦が扶養控除等申告書を正確に記入することで、不必要な税負担を避け、より賢く家計を管理することができます。最新の税制改正の内容を理解し、ご自身の状況に合わせて慎重に申告書を作成してください。