年末調整を忘れた・わからない？確定申告との違いも解説

年末調整を忘れたらどうなる？期限と影響を徹底解説

年末調整の基本的な期限と提出先

年末調整は、会社員や公務員にとって毎年行われる重要な税金の手続きです。

これは、1年間（1月1日から12月31日まで）に支払われた給与から源泉徴収された所得税と、本来納めるべき所得税額との過不足を調整し、精算する目的で行われます。

従業員が会社に必要書類を提出する期限は、一般的に11月頃とされていますが、これは各企業によって異なるため、ご自身の会社の担当部署に確認することが最も確実です。

会社が税務署に年末調整の結果を提出する期限は、翌年の1月31日と定められています。

この提出された情報に基づいて、過払い分の税金が還付されたり、不足分の税金が徴収されたりするわけです。

つまり、期限までに書類を提出できないと、会社側も年末調整の手続きを進めることができません。

期日を守ることは、ご自身の税金が正しく精算される上で非常に重要ですので、会社の指示に従い、早めに準備を進めるようにしましょう。

期限を過ぎた場合の具体的な影響（還付遅延、控除漏れ）

年末調整の書類提出期限を過ぎてしまった場合、いくつかの不利益を被る可能性があります。

最も直接的な影響は、所得税の還付が遅れる、または還付を受けられない可能性があることです。

多くの会社員は、源泉徴収によって毎月の給与から多めに所得税が天引きされていることが多く、年末調整によってその過払い分が還付金として戻ってきます。

しかし、書類提出が遅れると、この還付金の受け取りが遅れてしまうか、会社での手続き自体が間に合わず、還付が受けられない事態になることもあります。

さらに、生命保険料控除や地震保険料控除、扶養控除など、適用されるはずだった控除が漏れてしまう可能性もあります。

これらの控除が適用されないと、本来よりも高い所得税が課されてしまい、手元に残る金額が減ってしまいます。

万が一、期限に間に合わなかった場合は、後述する確定申告で対応することになりますが、その分自分で手続きを行う手間が増えることを覚えておきましょう。

会社が忘れた場合の従業員の対処法

年末調整の手続きは会社が行うものですが、稀に会社側が手続きを忘れてしまったり、何らかの理由で年末調整を行わないケースも存在します。

このような場合、従業員は「自分には関係ない」と放置してはいけません。

会社が年末調整を行わない、または忘れてしまった場合、従業員自身で確定申告を行う必要があります。

確定申告を行うことで、年末調整で受けられなかった各種控除を適用させ、納めすぎた所得税の還付を受けることができます。

もし会社から年末調整に関する案内が全くない、あるいは書類提出期間が過ぎても何も連絡がない場合は、速やかに人事部や経理部に確認を取りましょう。

「会社がやらないなら、自分も何もしなくていい」という考えは誤りであり、税金を払い過ぎてしまうだけでなく、場合によっては追徴課税の対象となる可能性もゼロではありません。

自分の税金に関わることなので、会社任せにせず、積極的に状況を確認し、必要であれば自ら確定申告の手続きを進める準備をすることが大切です。

年末調整が「わかりにくい」と感じる理由と、わかりやすく理解する方法

なぜ年末調整は複雑に感じるのか？（用語、仕組み）

多くの人が年末調整を「わかりにくい」「複雑だ」と感じるのには、いくつかの理由があります。

まず、専門的な税務用語が多く使われることが挙げられます。「源泉徴収」「所得控除」「課税所得」といった言葉が頻繁に出てくるため、普段聞き慣れない人にとっては理解のハードルが高く感じられます。

また、年末調整の仕組み自体も、「所得税の過不足を調整する」という間接的なプロセスであるため、直感的に理解しにくい面があります。

毎月給与から天引きされている税金が、年間でどれくらいになるのか、そしてそれが各種控除によってどのように変わるのか、という全体の流れを把握するのが難しいと感じる人も少なくありません。

さらに、提出書類の種類が多く、それぞれに記載すべき情報が多岐にわたるため、記入ミスを恐れて尻込みしてしまうことも、複雑さの一因となっています。

これらの要因が複合的に絡み合い、「年末調整は難しい」という印象を与えているのです。

年末調整と確定申告の決定的な違いを理解する

年末調整の理解を深める上で、確定申告との違いを明確にすることは非常に重要です。

この二つの手続きは、どちらも所得税を精算するためのものですが、その目的、手続きをする人、対象となる所得、そして適用される控除の種類に大きな違いがあります。

以下の表で、その主な違いを比較してみましょう。

項目	年末調整	確定申告
目的	給与所得の源泉徴収税額の過不足精算	全ての所得に対する所得税額の確定と納税
手続きをする人	会社（給与支払者）が従業員に代わって実施	個人（納税者本人）が自ら実施
主な対象者	会社に勤める給与所得者（原則）	自営業者、副業所得者、年収2,000万円超の給与所得者など、全ての所得者
期限（2024年分）	従業員→会社：会社指定（一般的に11月頃） 会社→税務署：翌年1月31日	翌年2月17日〜3月17日
受けられる控除	基礎、配偶者、扶養、生命保険料、地震保険料、社会保険料、住宅ローン（2年目以降）など	上記に加え、医療費、寄附金（ふるさと納税ワンストップ特例を除く）、雑損、住宅ローン（初年度）など、より広範

この違いを把握することで、自分がどちらの手続きを行うべきか、または両方を組み合わせる必要があるのかがより明確になります。

控除の種類と対象をシンプルに把握するコツ

年末調整を理解する上で、最も重要な要素の一つが「控除」です。

控除とは、税金を計算する際に、所得から差し引くことができる金額のことで、これが多ければ多いほど、課税される所得が減り、結果として納める税金も少なくなります。

年末調整で適用される主な控除には、基礎控除（全ての納税者に適用）、配偶者控除・扶養控除（扶養家族がいる場合に適用）、生命保険料控除や地震保険料控除（保険に加入している場合に適用）、そして住宅ローン控除（2年目以降）などがあります。

これらをシンプルに把握するコツは、「どんな費用が、誰のために、どれくらいかかったか」という視点を持つことです。

• 自分自身の基本的な生活費にかかる控除（基礎控除）
• 家族の生活を支えるための控除（配偶者控除、扶養控除）
• 将来の備えや災害への備えにかかる控除（生命保険料控除、地震保険料控除）

このようにグループ分けして考えると、自分がどの控除の対象になりそうか見当がつきやすくなります。

また、毎年会社から配布される「給与所得者の扶養控除等（異動）申告書」や「保険料控除申告書」などの書類は、どの控除が自分に関わるのかを教えてくれるガイドラインの役割も果たします。

不明な点があれば、会社の経理担当者に質問するか、国税庁のウェブサイトで情報を確認することが有効です。

年末調整をしないとどうなる？受けられない人を具体例で解説

年末調整の対象外となる主なケース（副業、年収2000万円超など）

年末調整は多くの会社員にとって自動的に行われる便利な手続きですが、実は全ての人が対象となるわけではありません。

特定の条件に該当する人は、年末調整ではなく、自身で確定申告を行う必要があります。

主な対象外となるケースは以下の通りです。

• 年収が2,000万円を超える給与所得者：高額所得者は年末調整の対象外となり、自身で確定申告を行う必要があります。
• 副業をしていて、その所得が20万円を超える人：本業の給与所得以外に、アルバイトや原稿料、アフィリエイト収入などの副業所得があり、その所得（収入から必要経費を引いた金額）が年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。
• 年の途中で退職し、年末までに再就職していない人：会社に在籍していないため、年末調整が行われません。この場合、自分で確定申告を行うことで、納めすぎた所得税が還付される可能性があります。
• 2か所以上から給与をもらっている人：主たる給与以外の給与収入金額と、各種の所得金額の合計額が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
• 災害減免法の規定により、所得税等の徴収猶予や還付を受けた人：特別な状況下で税制上の優遇を受けた場合も、確定申告が必要になることがあります。

これらのケースに該当するにもかかわらず、確定申告を行わないと、税金を多く払いすぎたままになったり、本来納めるべき税金を納めていないと見なされ、追徴課税の対象となる可能性があるので注意が必要です。

年末調整をしないことのデメリット（還付金、控除）

年末調整の対象者が手続きをしない、または忘れてしまった場合、最も大きなデメリットは、納めすぎた税金が還付されないことです。

多くの会社員は毎月、源泉徴収によっておおよその所得税を納めていますが、年末調整によって各種控除が適用され、最終的な納税額が確定します。

この過程で、通常は源泉徴収された金額よりも実際に納めるべき金額の方が少なくなるため、その差額が還付金として戻ってきます。

年末調整を行わないと、この還付金を受け取ることができず、結果として本来必要なかった税金を払い続けることになってしまいます。

また、生命保険料控除や地震保険料控除、住宅ローン控除（2年目以降）など、年末調整で申告できる様々な控除が適用されません。

これらの控除を受けられないと、課税所得が高くなり、結果的に所得税額が増えてしまうのです。

国税庁のデータによると、年末調整により約4,171万人の給与所得者が確定申告をせずに済んでおり、これは給与所得者の約9割に相当します。

このデータからも、年末調整が多くの人にとって税負担を軽減し、手続きを簡素化する上でいかに重要であるかが分かります。

2025年度からの変更点と対象者の影響

年末調整制度は、社会情勢や経済状況の変化に合わせて定期的に見直しが行われています。

特に注目すべきは、2025年度（令和7年度）から適用される予定の変更点です。

これらの変更は、特定の層の税負担軽減を目的としており、年末調整の対象者や控除額に影響を及ぼします。

主な変更点としては、以下の3つが挙げられます。

• 基礎控除・給与所得控除の引き上げ: 基礎控除額が現在の48万円から、合計所得金額に応じて58万円～95万円に引き上げられます。これは、全ての納税者に影響し、特に低・中所得者層の税負担が軽減されることが期待されます。
• 特定親族特別控除の創設: 新たに特定の親族を扶養している場合に適用される「特定親族特別控除」が創設されます。これにより、高齢の親や障がいを持つ親族を扶養している世帯の税負担が軽減される可能性があります。
• 扶養親族等の所得要件の改正: 扶養親族の所得要件が見直されます。これにより、これまで扶養控除の対象外だった親族が対象となる、あるいはその逆のケースも発生する可能性があります。

これらの変更は、個々の所得状況や家族構成によって影響が異なります。

特に、低・中所得者層や、特定の親族を扶養している方にとっては、手取りが増えるチャンスとなる可能性があります。

ご自身の状況に照らし合わせ、最新の情報を確認するようにしましょう。

年末調整を忘れた・間に合わなかった場合の「確定申告」のやり方

確定申告への切り替えが必要なケース

年末調整をうっかり忘れてしまった、あるいは会社の都合で年末調整が間に合わなかった場合でも、諦める必要はありません。その場合は、ご自身で確定申告を行うことで、適切に税金を精算することができます。

確定申告への切り替えが必要となる主なケースは以下の通りです。

• 年末調整に必要な書類（保険料控除証明書など）を期限までに会社に提出できなかった。
• 年の途中で退職し、年末までに再就職しなかったため、年末調整を受けられなかった。
• 副業の所得が年間20万円を超えたため、本業の給与所得以外に申告が必要になった。
• 医療費控除や寄附金控除（ふるさと納税のワンストップ特例を利用しない場合）など、年末調整では申告できない控除を受けたい。
• 住宅ローン控除を初めて適用する場合（初年度のみ確定申告が必要）。
• 年収が2,000万円を超えているため、年末調整の対象外である。

これらの状況に該当する場合、または年末調整で申告漏れがあった場合は、確定申告によって過払い分の税金の還付を受けることができます。

確定申告は、納税者本人が自らの所得と税額を確定させる手続きであり、年末調整ができない場合の「セーフティネット」のような役割を果たします。

確定申告の具体的な手順と必要書類

年末調整を忘れた・間に合わなかった場合の確定申告は、以下の手順で進めます。

1. 必要書類の収集:
   • 源泉徴収票（会社から発行される1年間の給与と源泉徴収税額が記載されたもの）
   • 各種控除証明書（生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、iDeCoの掛金証明書、医療費の領収書、寄附金受領証明書など、適用したい控除に応じた書類）
   • 本人確認書類（マイナンバーカードなど）
   • 還付金を受け取る金融機関の口座情報
2. 確定申告書の作成:

   国税庁のウェブサイトにある「確定申告書等作成コーナー」を利用するのがおすすめです。質問に答える形式で簡単に作成でき、自動で税額が計算されます。

   または、税務署で申告書を入手し、手書きで作成することも可能です。

3. 提出方法:
   • e-Tax（電子申告）: 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」から直接、インターネット経由で提出します。令和5年分確定申告では約7割の人がe-Taxを利用しており、最も推奨される方法です。自宅から手軽に提出でき、還付も早まります。
   • 郵送: 作成した申告書を所轄の税務署に郵送します。
   • 持参: 所轄の税務署の窓口に直接提出します。

確定申告は、翌年2月17日から3月17日まで（2024年分の所得税の場合）が申告期間となります。

還付申告の場合は、課税年度の翌年1月1日から5年間申告が可能ですので、早めに手続きをすることで、還付金を早く受け取ることができます。

確定申告の期限と、遅れた場合のペナルティ

確定申告には明確な期限があり、原則として翌年2月17日から3月17日まで（2024年分の所得税の場合）と定められています。

この期間内に申告・納税を行わない場合、いくつかのペナルティが課せられる可能性があります。

主なペナルティは以下の通りです。

• 無申告加算税: 確定申告の期限を過ぎて申告・納税した場合に課される税金です。本来納めるべき税額に対して、原則として50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合で課されます。ただし、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、軽減される場合があります。
• 延滞税: 納税が期限に遅れた場合に課される税金です。納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、原則として年7.3%または特例基準割合＋7.3%のいずれか低い方の割合で課されます。

これらの加算税や延滞税は、本来納めるべき税金に加えて支払う必要があるため、経済的な負担が大きくなります。

また、青色申告をしている場合、期限内に申告しないと、通常よりも高い特別控除額（最大65万円）が受けられなくなり、特別控除額が減額される場合もあります。

税金の還付を受けるための還付申告については、上記のようなペナルティはありません。

還付申告は、課税年度の翌年1月1日から5年間いつでも申告が可能ですので、もし年末調整で還付を受け損ねた場合は、期限を気にせず早めに手続きをしましょう。

年末調整の疑問を解消！どこに聞けばいい？よくある質問とその回答

会社の人事・経理部門に聞くべきこと

年末調整に関する疑問や不明点が生じた際、まず最初に相談すべきは、ご自身がお勤めの会社の人事部や経理部です。

会社の人事・経理部門は、従業員の年末調整手続きを代行しているため、最も身近で具体的な情報を提供してくれる存在です。

以下のような質問は、会社に問い合わせるのが適切です。

• 年末調整の書類提出期限はいつですか？
• どのような書類を提出すればよいですか？（例：扶養控除等申告書、保険料控除申告書、住宅ローン控除申告書など）
• 年末調整で申告できる控除の種類について詳しく教えてほしい。
• 結婚や出産、引っ越しなどで家族構成や住所が変わった場合、何を提出すればよいですか？
• 源泉徴収票はいつ発行されますか？

会社の担当者は、自社のシステムや過去の事例に基づいて、具体的なアドバイスを提供してくれます。

ただし、会社が答えることができるのは、あくまで年末調整の範囲内の質問に限られることに注意してください。

個別の複雑な税務相談や、年末調整の対象外となる所得に関する質問は、税務署や税理士に相談する必要があります。

税務署や税理士に相談するべきケース

会社の人事・経理部門では解決できない、より専門的で個別の税務相談が必要な場合は、税務署や税理士に相談することを検討しましょう。

特に以下のようなケースでは、専門家の助言が不可欠です。

• 副業をしていて、確定申告が必要かどうかの判断に迷う場合: 複数の収入源がある場合の所得計算や控除の適用は複雑になるため、税務署や税理士に相談するのが安全です。
• 医療費控除や寄附金控除など、年末調整では申告できない控除を受けたい場合: これらの控除は確定申告でしか適用できないため、具体的な手続き方法や必要書類について相談しましょう。
• 住宅ローン控除を初めて適用する場合: 初年度は確定申告が必要であり、手続きが複雑なため、税務署の相談窓口や税理士に相談するのが良いでしょう。
• 過去の確定申告に誤りがあった、または申告を忘れていた場合: 修正申告や期限後申告について、税務上のペナルティも含めて具体的なアドバイスを受けることができます。
• 相続や贈与など、年末調整や通常の確定申告の範囲を超える税金に関する相談: これらの特殊な税務は専門的な知識が必要なため、税理士に相談するのが最適です。

税務署では無料で相談に応じてもらえますが、相談者が多いため事前に予約が必要な場合が多いです。また、税理士に相談する場合は費用が発生しますが、より詳細で個別の状況に合わせたアドバイスが期待できます。

e-Taxや国税庁サイトを活用した自己解決

近年、年末調整や確定申告に関する情報は、インターネット上で豊富に提供されており、e-Taxや国税庁のウェブサイトを活用することで、多くの疑問を自己解決できるようになっています。

特に、国税庁のウェブサイトには、年末調整や確定申告に関する詳細な情報が網羅されており、以下のようなコンテンツが充実しています。

• 年末調整のしかた、確定申告の手引き: 各種控除の要件や計算方法、申告書の記載例などが分かりやすく解説されています。
• 確定申告書等作成コーナー: 質問に答える形式で申告書を簡単に作成でき、そのままe-Taxで電子申告することも可能です。特に、令和5年分確定申告では約7割の人がe-Taxを利用しており、その利便性の高さが伺えます。
• よくある質問（FAQ）: 多くの人が抱える疑問に対して、具体的な回答が掲載されています。
• 動画による解説: 視覚的に分かりやすい動画で、手続きの流れやポイントを学ぶことができます。

これらのオンラインツールを活用することで、自宅にいながらにして、自身のペースで税金に関する知識を深め、手続きを進めることが可能です。

また、e-Taxを利用すれば、税務署に行く手間や郵送費用も省け、還付金も比較的早く受け取れるメリットがあります。

まずはこれらのリソースを最大限に活用し、それでも解決できない疑問点があれば、会社や専門家に相談するという流れが効率的でおすすめです。