概要: 年末調整は、所得税の過不足を精算する重要な手続きです。年金収入がある方、副業や派遣で働いている方、扶養家族がいる方など、多くの方が疑問を抱えがちです。この記事では、年末調整の基本的な書き方から、様々なケースに応じた具体的な記入例までを分かりやすく解説します。
【徹底解説】年末調整で知っておきたい年金・副業・扶養の書き方
毎年、会社員にとって避けて通れない年末調整。「今年は定額減税もあるし、副業も始めたから複雑になりそう…」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、2024年・2025年の最新情報を踏まえ、年金、副業、扶養家族といった、多くの人が疑問に感じるポイントに焦点を当て、年末調整の書き方を徹底解説します。
この記事を読めば、あなたの年末調整に関する疑問が解消され、スムーズな手続きができるようになります。ぜひ最後まで読んで、今年の年末調整を乗り切りましょう!
年末調整で年金収入がある場合の記入方法
公的年金を受給している場合でも、年末調整で申告できる控除があります。特に、年の途中で就職・転職した方やiDeCoに加入している方は必見です。
国民年金保険料の控除申請
国民年金保険料は、支払った全額が「社会保険料控除」の対象となります。年末調整でこの控除を受けるためには、支払った国民年金保険料の金額を証明する書類が必要です。
具体的には、日本年金機構から送られてくる「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を年末調整時に提出します。年の途中で転職した場合や、ご家族の国民年金保険料を代わりに支払っている場合も、同様に申告が可能です。
例えば、会社員として働く傍らで、退職期間中に国民年金に加入していた期間がある場合や、扶養しているご両親の国民年金保険料を支払っている場合などがこれに該当します。忘れずに申告して、税負担を軽減しましょう。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の申告方法
iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している方は、支払った掛金が全額「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。この控除を受けるためには、iDeCoの運営管理機関から発行される「小規模企業共済等掛金払込証明書」を年末調整時に提出する必要があります。
iDeCoは、将来のための資産形成をしながら、掛け金が所得控除になるという大きな税制優遇が魅力です。証明書が手元に届いたら、大切に保管し、年末調整の際には忘れずに提出しましょう。
もし証明書を紛失してしまった場合は、加入しているiDeCoの運営管理機関に再発行を依頼することが可能です。早めに手続きを行い、年末調整に備えてください。
年金収入と年末調整の基本ルール
公的年金収入自体は、原則として年末調整の対象ではありません。公的年金は、支給時に源泉徴収されているため、年末調整ではなく確定申告によって税額の精算が行われるのが一般的です。
しかし、上記で解説した国民年金保険料やiDeCoの掛金など、公的年金に関連して支払った特定の費用については、年末調整で控除を申請できます。
つまり、会社から給与を受け取っている場合は、給与所得に対する年末調整でこれらの控除を申告し、年金収入については必要に応じて確定申告を行う、という流れになります。ご自身の状況に合わせて、適切な手続きを選択することが重要です。
前の職場や派遣、副業がある場合の注意点
複数の収入源がある場合や、年の途中で転職した場合は、年末調整の手続きが複雑になりがちです。特に副業をしている方は、確定申告の必要性も出てくるため、注意が必要です。
複数の職場からの給与がある場合の手続き
年の途中で転職した場合や、複数の会社から給与を受け取っている場合、年末調整は原則として主たる給与の支払者(現在勤務している会社)で行います。
前の職場から源泉徴収票を受け取り、それを現在の会社に提出することで、合算された所得で年末調整が行われます。もし、前の職場の源泉徴収票を提出し忘れてしまった場合や、複数の勤務先から給与をもらっているが、片方の収入が主たる給与ではない場合(例えば、パートを掛け持ちしている場合など)は、ご自身で確定申告を行う必要があります。
源泉徴収票は退職後1ヶ月以内に交付されるのが一般的です。早めに手元に準備し、現在の会社に提出できるよう準備しましょう。
副業所得の申告と確定申告の必要性
副業をしている場合、原則として本業の勤務先で年末調整を行い、副業の所得はご自身で確定申告をする必要があります。特に、副業による所得が年間20万円を超える場合は、確定申告が必須です。
副業先で年末調整を受けてしまうと、本業と副業の双方で控除が重複して適用され、税額計算に誤りが生じる可能性があります。これは追加の納税やペナルティの対象となるため、十分な注意が必要です。
また、副業所得が20万円以下であっても、医療費控除や寄附金控除、住宅ローン控除(初年度)を受ける場合は、確定申告が必要になります。ご自身の副業所得の金額と、その他の控除の適用状況をしっかりと確認しましょう。
副業所得の区分と税制優遇
副業で得た所得は、その内容によって「雑所得」や「事業所得」などに区分されます。この所得区分は、税制上の優遇措置を受けられるかどうかに大きく影響します。
例えば、フリーランスとして本格的に事業を行っている場合は「事業所得」として申告できる可能性がありますが、アルバイトやパート以外の単発的な副業収入(フリマアプリでの販売、Webライティングなど)は「雑所得」に該当することが多いです。参考情報にあるように、事業所得であれば青色申告特別控除などの税制上の優遇措置を受けられる可能性がありますが、雑所得ではこれらの優遇を受けることはできません。
ご自身の副業がどちらの所得区分に該当するか分からない場合は、税務署や税理士に相談することをお勧めします。正しい区分で申告することで、適正な税負担に繋がります。
扶養家族(娘さんのアルバイトなど)の申告方法
扶養家族がいる場合、扶養控除を適用することで税負担を軽減できます。特に、お子さんがアルバイトをしている場合は、所得金額に注意が必要です。2025年には扶養親族の所得要件が見直されるので、最新情報を確認しましょう。
扶養親族の所得要件の最新情報(2025年改正)
扶養親族の所得要件は、2025年(令和7年)12月1日以降の給与支払に係る年末調整から変更されます。これまで扶養親族や同一生計配偶者の合計所得金額は「48万円以下」が要件でしたが、これが「58万円以下」に引き上げられます。
これは、基礎控除や給与所得控除の見直しに伴うもので、より多くの人が扶養控除を受けやすくなる方向への変更です。例えば、お子さんがアルバイトをしている場合、年間の給与収入が103万円以下であれば扶養に入れる、という従来の目安(給与所得控除55万円+基礎控除48万円=103万円)から、113万円以下(給与所得控除55万円+基礎控除58万円=113万円)へと緩和されます。
この変更は2025年以降に適用されるため、今年の年末調整はまだ旧基準で計算されますが、来年以降を見据えて覚えておきましょう。
特定親族特別控除の新設と対象者
2025年分以降の所得税から、新たに「特定親族特別控除」が創設されます。これは、19歳以上23歳未満の親族がいる場合に受けられる控除です。これまでの「特定扶養親族」の区分と異なり、より対象者を明確にする目的があります。
具体的には、大学などで学費がかかるこの年代の扶養親族がいる家庭の負担を軽減することが狙いです。この控除が新設されることで、年末調整の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記載方法も一部変更される可能性があります。該当する親族がいる方は、来年の年末調整に向けて詳細情報を確認しておくことが重要です。
控除額など具体的な内容は今後の発表を待つ必要がありますが、家計への影響は少なくないため、注視していきましょう。
アルバイト収入と扶養控除の注意点
お子さんがアルバイトをしている場合、その収入金額によって扶養控除の対象となるかどうかが決まります。現在の基準では、アルバイト収入が年間103万円を超えると、親の扶養控除の対象から外れてしまいます。
これは、給与所得控除55万円と基礎控除48万円の合計103万円が、扶養親族の所得上限となっているためです。例えば、娘さんがアルバイトで年間104万円稼いだ場合、その年の年末調整では扶養控除を申告できません。
来年2025年以降は、この上限が113万円に引き上げられますが、それまでは103万円の壁に注意が必要です。お子さんのアルバイト収入を把握し、事前に年末調整の申告書で確認するようにしましょう。
丙欄や非居住者など、特殊なケースの年末調整
一般的な会社員とは異なる雇用形態や居住状況の場合、年末調整の取り扱いも特殊になります。ここでは、丙欄適用者や国外に居住する親族がいる場合の年末調整について解説します。
丙欄適用者の年末調整
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」には、乙欄、丙欄といった記載箇所があります。丙欄は、日雇い労働者や短期間のアルバイトなど、雇用期間が非常に短い労働者に対して適用される給与支払いのための欄です。丙欄が適用される給与は、給与が支払われる都度、日額表の丙欄に基づいて源泉徴収が行われます。
丙欄適用者として給与を受け取っている場合、その給与は年末調整の対象とならないのが原則です。そのため、これらの給与所得者は、ご自身で確定申告を行うことで、年間を通して源泉徴収された税額の精算を行う必要があります。
もし、会社で年末調整を受けられる通常の給与所得と、丙欄が適用される給与所得の双方がある場合は、通常の給与については年末調整を行い、丙欄適用分の所得は確定申告で合算して申告することになります。複雑な場合は、税務署への相談がおすすめです。
国外居住親族の扶養控除と必要書類
国外に居住している親族を扶養控除の対象とする場合、2024年の年末調整では特に注意が必要です。これまでの「親族関係書類」と「送金関係書類」に加え、電子決済手段による送金も証明書類として認められるようになりました。
具体的には、PayPalやWise(旧TransferWise)などの国際送金サービスを利用した場合でも、送金の事実を証明できる書類があれば、送金関係書類として提出できるようになっています。これは、デジタル化の進展に対応した変更点と言えるでしょう。
これらの書類は、扶養控除等申告書と合わせて会社に提出する必要があります。書類が不足していると控除が認められない可能性があるため、早めに準備し、不備がないか確認することが大切です。
特殊なケースにおける年末調整の注意点
その他、年末調整では様々な特殊ケースが存在します。例えば、年の途中で死亡退職した場合や、災害などにより住宅や家財に損害を受けた場合などです。
また、2024年は定額減税が実施されたことで、年末調整でその最終調整(年調減税事務)が行われます。この定額減税は、基本的に会社側で対応されるため、従業員が特別な手続きをする必要はありませんが、個々の状況によって影響が異なる場合があります。
住宅ローン控除についても、2024年の年末調整から「調書方式」が採用され、手続きが簡略化されています。このように、税制は毎年細かな変更が加わることが多いため、ご自身の状況に合わせた最新の情報を国税庁のウェブサイトなどで確認することが最も確実です。
年末調整でよくある疑問をQ&Aで解決!
年末調整には毎年、様々な疑問がつきものです。ここでは、2024年・2025年の最新情報も交えながら、よくある質問にお答えします。
Q1. 定額減税・年調減税事務について、従業員として何をすればいいですか?
A. 2024年6月から実施された定額減税は、基本的に勤務先で対応されるため、従業員の方が特別な手続きをする必要はありません。
年末調整では、この定額減税の最終調整(年調減税事務)が行われます。具体的には、既に受けた減税額と、年間の所得税額から計算される減税額との差額が調整される形です。ご自身の給与明細を確認し、減税が適用されているかを確認する程度で大丈夫です。
ただし、年の途中で入社した場合や、複数の会社から給与を受けている場合など、一部のケースでは調整方法が異なることがあります。不明な点があれば、勤務先の人事・経理担当者に確認しましょう。
Q2. 年末調整書類の電子化と押印不要のポイントは?
A. 2021年度(令和3年度)の税制改正により、年末調整関係書類は原則として押印が不要になりました。これは、年末調整業務のデジタル化推進の一環です。
多くの企業で年末調整業務のペーパーレス化やシステム導入が進められており、従業員もPCやスマートフォンから直接情報を入力・提出できる仕組みが増えています。これにより、書類の作成や提出の手間が大幅に軽減されます。
勤務先がどのような形式で年末調整を行っているか(紙での提出か、システムでの入力かなど)を事前に確認し、指示に従って手続きを進めましょう。デジタル化された場合でも、提出すべき情報はこれまでと変わらないため、準備を怠らないようにしてください。
Q3. その他のよくある質問(住宅ローン控除、様式変更など)
A.
【住宅ローン控除】
2024年の年末調整から、住宅ローン控除の申告は「調書方式」が採用されました。これにより、初年度以外は税務署から送られてくる「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」を提出するだけで手続きが完了し、簡略化されています。
【年末調整書類の様式変更】
2024年の年末調整では、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や「給与所得者の保険料控除申告書」の一部記載事項が簡略化され、より記入しやすくなっています。変更点を確認しながら記入しましょう。
【年末調整に関する最新情報の確認】
税制は変更される可能性があるため、常に最新の情報を国税庁などの公式サイトで確認することが最も重要です。不明な点があれば、早めに勤務先の人事・経理担当者や税務署に相談するようにしましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 年金収入がある場合、年末調整でどのような書類が必要ですか?
A: 公的年金等受給者である場合、基本的には確定申告が必要となります。ただし、一定の要件を満たす場合は、年末調整で済むこともあります。詳細は国税庁のウェブサイト等でご確認ください。
Q: 前の会社(前の職場)で源泉徴収票を受け取りましたが、年末調整に必要ですか?
A: はい、前の会社での給与所得がある場合、その源泉徴収票は年末調整で必要になります。給与所得者の扶養控除等申告書に記入する際に参照します。
Q: 副業の収入がある場合、年末調整でどのように申告しますか?
A: 副業の収入が給与所得以外の場合は、原則として確定申告が必要です。給与所得との合算で年末調整を行うことはできません。
Q: 派遣社員の場合、年末調整は誰に依頼すれば良いですか?
A: 派遣社員の場合、年末調整は原則として派遣元会社で行います。派遣先会社で直接行うことはありません。
Q: 丙欄とは何ですか?年末調整で丙欄になるのはどのような場合ですか?
A: 丙欄とは、年の途中で入社した方などで、給与所得者の扶養控除等申告書を提出していない場合に、源泉徴収税額の計算方法が丙欄となることを指します。基本的には、年間を通じて同一の会社に勤務している場合は甲欄で計算されます。
