年末調整は、会社員にとって毎年恒例の重要な手続きです。しかし、「いつからいつまで?」「何をすればいいの?」といった疑問を持つ方も少なくないでしょう。

この記事では、年末調整の基本的な時期から、対象となる給与の区切り、誰が対象となるのか、さらにはよくある疑問や、2024年度・2025年度の税制改正による変更点まで、徹底的に解説します。最新の情報も踏まえ、あなたの年末調整がスムーズに進むようサポートします。

  1. 年末調整の時期はいつ?知っておきたい基本
    1. 一般的なスケジュールと提出期限
    2. 対象となる給与期間と還付・追加徴収のタイミング
    3. なぜ年末調整が必要なのか?その目的
  2. 年末調整、いつからいつまで?収入の区切りと注意点
    1. 年末調整の対象となる「収入」の定義
    2. 年末調整で精算できない所得と確定申告の必要性
    3. 複数からの給与や転職時の注意点
  3. 年末調整は誰が対象?有無の確認方法
    1. 年末調整の対象者と基本的な条件
    2. 年末調整が不要、またはできないケース
    3. 自分が対象かどうかの確認方法と対応
  4. 年末調整の疑問を解消!Q&A
    1. Q1: 住宅ローン控除の初年度はなぜ確定申告が必要なの?
    2. Q2: ふるさと納税は年末調整で控除できる?できない場合はどうすればいい?
    3. Q3: 年末調整を忘れてしまったらどうなる?
  5. 年末調整の昨年との違いと記入のポイント
    1. 2024年度(令和6年)の主な変更点と対応
    2. 2025年度(令和7年度)の税制改正による変更点(予定)
    3. スムーズな年末調整のための記入・提出のポイント
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: 年末調整はいつからいつまでに行われますか?
    2. Q: 年末調整の対象となる収入はいつまでのものですか?
    3. Q: 年末調整の有無はどうやって確認できますか?
    4. Q: 年末調整の還付金はいつ頃戻ってきますか?
    5. Q: 年末調整の区分とは何ですか?

年末調整の時期はいつ?知っておきたい基本

一般的なスケジュールと提出期限

年末調整は、例年10月頃から翌年1月にかけて行われる、給与所得者にとって必須の税金精算手続きです。

具体的には、多くの企業で10月中旬から下旬にかけて、従業員向けに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの各種申告書が配布されます。これらの書類は、従業員が自身の家族構成や保険加入状況などを記入し、11月上旬を目安に勤務先へ提出するのが一般的です。

ただし、会社によっては書類配布時期や提出期限が異なる場合がありますので、必ず勤務先の担当部署や経理・人事部からの案内を確認しましょう。提出された書類に基づき、会社が年間の所得税額を計算し、過不足を精算してくれます。

対象となる給与期間と還付・追加徴収のタイミング

年末調整の対象となるのは、その年の1月1日から12月31日までの1年間に支払われた給与です。

ここでのポイントは、「支払われた日」が基準となること。例えば、12月分の給与が翌年1月に支払われた場合、その給与は翌年の年末調整の対象となります。今年の年末調整には含まれない点に注意が必要です。

年末調整の結果、所得税が払いすぎていた場合は「還付」、不足していた場合は「追加徴収」となります。これらの精算は、一般的に12月または翌年1月の給与支払い時に行われることが多いです。給与明細で「年末調整還付金」や「年末調整追加徴収」といった項目が記載されるので、確認してみましょう。

なぜ年末調整が必要なのか?その目的

「なぜ毎年年末調整をする必要があるの?」と疑問に感じる方もいるかもしれません。

私たち会社員は、毎月の給与から所得税が「源泉徴収」という形で天引きされています。この源泉徴収額は、扶養親族の人数などを考慮して大まかに計算された概算額であり、年間の正確な所得税額とは異なる場合があります。

年末調整の主な目的は、この概算で徴収された所得税額と、年間の正確な所得税額との差額を調整することです。生命保険料控除や地震保険料控除、iDeCoの掛金、配偶者控除、扶養控除など、様々な所得控除を適用することで、本来支払うべき税額を計算し、払いすぎた分を還付、足りない分を追加徴収します。

これにより、納税者自身が確定申告をする手間を省き、税務処理を簡素化する役割も果たしています。

年末調整、いつからいつまで?収入の区切りと注意点

年末調整の対象となる「収入」の定義

年末調整の対象となる「収入」とは、原則としてその年の1月1日から12月31日までに実際に支払われた給与を指します。

これは、手取り額ではなく、通勤手当など非課税の手当を除いた、いわゆる額面の給与所得が対象となります。ボーナスも給与所得の一部として含まれます。

前述の通り、12月分の給与が翌年1月に支払われる場合は、その給与は翌年の年末調整の対象となるため、今年の所得としてカウントされない点に注意が必要です。例えば、2024年12月分の給与が2025年1月10日に支払われる場合、その給与は2025年の年末調整で精算されます。

年末調整で精算できない所得と確定申告の必要性

年末調整は非常に便利な制度ですが、すべての所得や控除を精算できるわけではありません。以下のようなケースでは、ご自身で確定申告を行う必要があります。

  • ふるさと納税: 寄付金控除は年末調整では手続きできません。「ワンストップ特例制度」を利用しない場合は確定申告が必要です。
  • 医療費控除: 年間10万円以上の医療費を支払った場合(所得に応じて異なる)は確定申告が必要です。
  • 住宅ローン控除の初年度: 住宅ローン控除を受ける最初の年のみ確定申告が必要です。
  • 副業による所得: 給与所得以外の所得(事業所得、不動産所得など)が20万円を超える場合。
  • 株式やFXなどの投資による所得: 特定口座(源泉徴収あり)以外の場合は確定申告が必要です。

これらの所得や控除がある場合は、年末調整とは別に、確定申告の準備を進めるようにしましょう。

複数からの給与や転職時の注意点

年中に複数の会社から給与を受け取っていたり、転職を経験したりした場合、年末調整には特別な注意が必要です。

原則として、年末調整はその年の最後に給与の支払いを受けた会社で行います。もし年中に転職した場合、新しい会社に前職の源泉徴収票を提出する必要があります。これにより、前職と現職を合算した年間の給与所得に対して年末調整が行われます。

もし、年の途中で会社を退職し、その後再就職していない場合は、ご自身で確定申告を行う必要があります。この場合、前職で受け取った源泉徴収票を添付して、忘れずに手続きを行いましょう。

また、副業としてアルバイトをしていて、複数の会社から給与を受け取っている場合も、原則としてメインとなる勤務先で年末調整を行い、他のアルバイト先からの源泉徴収票を提出します。ただし、副業の給与所得が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要になる可能性があります。

年末調整は誰が対象?有無の確認方法

年末調整の対象者と基本的な条件

年末調整の最も基本的な対象者は、勤務先から給与の支払いを受けている会社員やパート・アルバイトの方々です。

具体的には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先に提出している人が対象となります。この申告書は、主に扶養家族の有無を会社に伝えるためのもので、提出することで毎月の給与から天引きされる源泉徴収税額が調整されます。

通常、会社に正社員として雇用されている方はもちろん、パートやアルバイトであっても、一定期間以上継続して勤務し、雇用契約がある場合は年末調整の対象となります。自身が対象かどうか不明な場合は、勤務先の経理や人事担当者に確認することが最も確実です。

年末調整が不要、またはできないケース

多くの方が年末調整の対象となりますが、中には対象外となるケースも存在します。以下に主な例を挙げます。

  • 給与収入が2,000万円を超える人: 所得が高額なため、年末調整では処理しきれない部分があるため、確定申告が必要です。
  • 年途中で退職し、その後再就職の予定がない人: この場合、前職で年末調整が行われないため、ご自身で確定申告を行うことで税金の精算ができます。
  • 非居住者: 日本に居住していない人は、原則として年末調整の対象外です。
  • 災害減免法により所得税の徴収猶予や還付を受けた人: 特定の事情があるため、別途の税務処理が必要です。
  • 給与所得が103万円以下で、所得税がかかっていない人: そもそも所得税が課税されていないため、年末調整による還付や追加徴収の必要がありません。ただし、住民税の申告は必要な場合があります。

これらのケースに該当する方は、年末調整ではなく確定申告によってご自身の税金を精算する必要があります。

自分が対象かどうかの確認方法と対応

「自分は年末調整の対象なのかな?」と不安に感じたら、まずは勤務先の経理・人事担当者に直接確認するのが最も手軽で確実な方法です。

雇用契約の内容や、年間の給与見込み額などに基づいて、担当者が判断してくれます。また、税務署のウェブサイトや国税庁のタックスアンサーでも、年末調整の対象者について詳しく解説されていますので、参考にすることができます。

もし自分が年末調整の対象外であることが判明しても、心配はいりません。多くの場合、ご自身で確定申告を行うことで、正しい所得税額に精算し、払いすぎた税金があれば還付を受けることができます。特に、医療費控除や住宅ローン控除(初年度)など、年末調整では扱えない控除を受けたい場合は、積極的に確定申告を行いましょう。

確定申告は翌年の2月16日から3月15日までの期間に行われますが、還付申告であれば、その年の翌年1月1日から5年間遡って手続きが可能です。

年末調整の疑問を解消!Q&A

Q1: 住宅ローン控除の初年度はなぜ確定申告が必要なの?

住宅ローン控除(正式には住宅借入金等特別控除)は、住宅を購入・新築した際に大きな節税効果をもたらす制度です。しかし、この控除を初めて適用する年(初年度)は、年末調整では手続きができず、ご自身で確定申告を行う必要があります。

その理由は、初年度には住宅の取得価額、居住開始年月日、借入金の年末残高、登記事項証明書、請負契約書や売買契約書など、非常に多くの詳細な情報を税務署が直接確認する必要があるためです。これらの情報は複雑で多岐にわたるため、勤務先が従業員に代わって処理するのは困難とされています。

一度確定申告を行い、税務署で住宅ローン控除が適用されることが確認されれば、翌年以降は金融機関から送られてくる「年末残高証明書」を勤務先に提出するだけで、年末調整で控除を受けられるようになります。

なお、2024年度の税制改正では、子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額の調整や、省エネ性能に応じて床面積要件の緩和措置の延長などが行われていますので、ご自身のケースで適用される条件を確認することが重要です。

Q2: ふるさと納税は年末調整で控除できる?できない場合はどうすればいい?

残念ながら、ふるさと納税による寄付金控除は、年末調整では手続きできません。これは、ふるさと納税が「寄付金控除」という種類の所得控除であり、年末調整で扱える控除項目が限定されているためです。

ふるさと納税で寄付金控除を受ける方法は、主に以下の2つです。

  1. ワンストップ特例制度の利用:

    • 確定申告が不要な給与所得者であること。
    • ふるさと納税の寄付先が年間5自治体以内であること。

    この条件を満たせば、寄付した自治体から送付される申請書に必要事項を記入し、返送するだけで控除が受けられます。

  2. 自身で確定申告を行う:

    • 寄付先が6自治体以上の場合。
    • 医療費控除や住宅ローン控除(初年度)など、他の控除も合わせて申告する場合。
    • 年収2,000万円超などで確定申告が必須な場合。

    確定申告書に寄付金控除の情報を記載し、寄付の証明書(受領書)を添付して税務署に提出します。

年末調整では対応できないため、ふるさと納税をされた方は、ご自身の状況に合わせてどちらかの方法で手続きを忘れずに行いましょう。

Q3: 年末調整を忘れてしまったらどうなる?

年末調整の手続きをうっかり忘れてしまったり、期限内に書類を提出できなかったりしても、ご安心ください。税金を取り戻す道は残されています。

もし勤務先が年末調整の処理期間を過ぎてしまった場合でも、ご自身で「確定申告」を行うことで、正しい所得税額に精算し、払いすぎた税金があれば還付を受けることができます。

確定申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。この期間内に、必要書類を準備して税務署に申告書を提出しましょう。

特に、所得税が払いすぎている場合の「還付申告」は、その年の翌年1月1日から5年間遡って申請することが可能です。もし、数年前に年末調整を忘れてしまった心当たりがある方も、諦めずに税務署や税理士に相談してみることをお勧めします。忘れずに手続きを行うことで、本来受け取るべき税金の還付を受けられます。

年末調整の昨年との違いと記入のポイント

2024年度(令和6年)の主な変更点と対応

年末調整は毎年、税制改正によって内容が変更される可能性があります。2024年度(令和6年)の年末調整では、特に以下の点が大きな変更点となります。

  • 定額減税の最終調整(年調減税):

    2024年6月から実施されている定額減税(所得税3万円、住民税1万円)について、年末調整で最終的な調整(年調減税)が行われます。給与から天引きされた減税額と、年間の所得税額を比較し、過不足を精算します。これにより、年間の所得税が定額減税額よりも少ない場合は、不足分が支給されるなど、きめ細やかな調整が図られます。

  • 保険料控除申告書の簡略化:

    「給与所得者の保険料控除申告書」において、「申告者との続柄」欄の記載が不要になりました。これにより、書類記入の手間が少し軽減されます。

  • 住宅ローン控除の変更:

    住宅ローン控除の年末残高証明について、金融機関から税務署へ直接情報が提出される「調書方式」が採用されました。これにより、住宅ローン控除を受ける際の書類提出の手間が一部簡略化される可能性があります。具体的な手続きについては、勤務先からの指示を確認しましょう。

これらの変更点に留意し、漏れなく手続きを進めることが大切です。

2025年度(令和7年度)の税制改正による変更点(予定)

現時点では「予定」ではありますが、2025年度(令和7年度)の税制改正によって、年末調整に影響を与える可能性のある重要な変更点がいくつか報じられています。これらは将来の年末調整に関わるため、今から注目しておく価値があります。

  • 基礎控除額・給与所得控除額の見直し:

    所得税額の計算に直結する控除額が見直される可能性があります。これにより、手取り額や税額に影響が出る場合があります。

  • 特定親族特別控除の新設:

    一定の要件を満たす親族に対する新たな控除が設けられる可能性があります。この控除が適用されることで、税負担が軽減される世帯が出てくるでしょう。

  • 扶養親族等の所得要件の改正:

    扶養親族の対象となる所得の基準が見直される可能性があります。配偶者や子を扶養している家庭にとっては、控除を受けられるかどうかの判断基準が変わるため、特に注意が必要です。

これらの情報は現時点での予定であり、確定ではないため、今後の政府発表や国税庁からの正式な情報に注意を払い、最新の情報を確認することが重要です。

スムーズな年末調整のための記入・提出のポイント

年末調整をスムーズに、そして正確に行うためには、いくつかのポイントがあります。これらを意識するだけで、あなたの負担は大きく軽減されるはずです。

  1. 早めの書類準備:

    生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金証明書など、各種控除証明書は発行時期が決まっています。これらが届いたら、紛失しないようすぐに整理し、年末調整書類の提出に備えましょう。特に、郵送されるものが多いので、郵便物の見落としがないように注意してください。

  2. 記入漏れ・誤記の徹底確認:

    扶養家族の氏名、生年月日、マイナンバー(提出が必要な場合)、各種控除額の計算、適用される保険の種類など、記入箇所は多岐にわたります。記入漏れや誤記があると、再提出を求められたり、正しい控除が適用されなかったりする原因になります。提出前には必ず複数回チェックするようにしましょう。

  3. 不明点は会社担当者に確認:

    年末調整の書類で分からない箇所や、自分の状況でどの控除が適用されるのか迷った場合は、自己判断せずに、必ず勤務先の経理・人事担当者に質問しましょう。税務は専門的な知識が必要なため、専門家の意見を仰ぐのが最も確実です。

年末調整は、毎年内容が変更される可能性があり、常に最新の情報を確認することが求められます。国税庁のウェブサイトや、勤務先からの案内をこまめにチェックし、確実に手続きを進めることで、賢く税金を精算しましょう。