概要: 本記事では、辞表作成で迷いがちなWordテンプレートの活用、手書き・パソコンでの書き方、そして用紙や筆記具の選び方までを網羅的に解説します。会社都合や病気退職といったケース別の書き方も紹介し、スムーズな退職手続きをサポートします。
退職の意思を固めた際、適切な書類の提出は円満退職への第一歩となります。
「辞表」という言葉は一般的に、会社役員や公務員が職を辞する際に用いられる書類であり、通常の会社員は「退職願」または「退職届」を提出します。
しかし、本記事では広い意味での「辞表(退職願・退職届)」の書き方と準備について、最新の情報やデータ、傾向を交えて徹底的に解説します。
Wordテンプレートから手書きまで、ご自身の状況に合わせた最適な方法を見つけるためのヒントが満載です。
ぜひこの記事を参考に、スムーズな退職手続きを進めてください。
辞表作成に役立つWordテンプレートとフリー素材の活用法
退職の意思を伝える書類は、正確さと丁寧さが求められます。
手書きで一から作成するのも良いですが、時間がない場合や、書式に不安がある場合は、Wordテンプレートやフリー素材を有効活用するのがおすすめです。
テンプレート活用のメリットと選び方
Wordテンプレートの最大のメリットは、時間と手間を大幅に削減できる点です。
既に基本的なフォーマットが整っているため、氏名や退職日などの必要事項を入力するだけで、ビジネス文書として適切な書類が完成します。
また、自分で書式を考える必要がないため、レイアウトのミスやマナー違反を防ぎやすいのも魅力です。
テンプレートを選ぶ際は、シンプルでビジネス文書としてふさわしいデザインのものを選びましょう。
過度な装飾や凝ったレイアウトは避け、清潔感のある白黒のテンプレートが望ましいです。
信頼できるテンプレートは、大手オフィス用品メーカーや転職サイトなどが提供していることが多く、これらのサイトからダウンロードすれば安心です。
無料テンプレートサイトと利用時の注意点
インターネット上には、無料で退職願や退職届のテンプレートを提供しているサイトが多数存在します。
これらのフリー素材は手軽に利用できる反面、いくつか注意すべき点があります。
まず、提供元が信頼できるサイトかどうかを確認することが重要です。
不審なサイトからのダウンロードは、マルウェア感染のリスクがあるため避けましょう。
次に、ダウンロードしたテンプレートが自身の会社の就業規則や一般的なビジネスマナーに沿っているかを確認してください。
特に、縦書きが原則とされることが多いので、横書きのテンプレートを使う場合は会社の慣習に合わせる配慮が必要です。
最後に、テンプレートをそのまま利用するのではなく、ご自身の状況に合わせて内容をカスタマイズすることを忘れないでください。
Word以外での作成ツールとデザインのヒント
Wordを持っていない、または別のツールを使いたい場合は、GoogleドキュメントやAppleのPagesなど、他の文書作成ソフトでもテンプレートを利用できます。
これらのツールでも、Wordと同様にシンプルな書式を心がけましょう。
デザインのヒントとしては、まずフォントは明朝体やゴシック体など、ビジネス文書に適した読みやすいものを選ぶことです。
文字サイズは、本文が10.5pt~12pt程度が一般的で、表題は一回り大きくするとバランスが良くなります。
用紙サイズはB5またはA4が基本ですが、一般的にはB5が多く用いられます。
複数枚になる場合は、必ずステープラーで留めずにクリップでまとめて提出します。
いずれのツールを使うにしても、最終的にはA4またはB5の白い紙に印刷することになるため、印刷時のレイアウト崩れがないか、事前にプレビューで確認することが大切です。
辞表の基本:書くべき内容と「私儀」の正しい使い方
辞表(退職願・退職届)は、正確な情報と丁寧な言葉遣いが求められる重要な書類です。
まずは、それぞれの書類が持つ意味合いを理解し、適切な内容を記述することが円満退職への第一歩となります。
「退職願」「退職届」「辞表」の違いと適切な選択
退職に関する書類には、「退職願」「退職届」「辞表」の3種類があり、それぞれ意味合いが異なります。
「退職願」は、会社に対して退職を「お願いする」書類であり、会社が承認しない限り退職が決定しない可能性があります。
そのため、提出後に撤回することも理論上は可能です。
一方、「退職届」は、退職が「決定した後」に、会社へ退職を「届け出る」書類です。
提出と同時に退職の意思表示が完了するため、原則として撤回はできません。
そして「辞表」は、役員や公務員がその役職や職務を辞する際に用いる書類であり、一般の会社員が使用することはほとんどありません。
多くの会社員は、まず「退職願」を提出し、会社と退職日などを合意した上で「退職届」を改めて提出するか、最初から「退職届」を提出するかのいずれかの方法を取ります。
ご自身の状況や会社の慣習に合わせて、適切な書類を選びましょう。
必須記載事項と「私儀」から始める書き出し
辞表(退職願・退職届)には、いくつかの必須記載事項があります。
これらを漏れなく、かつ正確に記載することが求められます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 表題 | 「退職願」または「退職届」と中央に記載 |
| 書き出し | 一行目の下部に「私儀(わたくしぎ)」または「私事」と記載 |
| 退職理由 | 自己都合の場合は「一身上の都合」が一般的 |
| 退職日 | 退職希望日を明確に記載 |
| 提出日 | 書類を作成した日付を記載 |
| 署名・捺印 | 所属部署、役職、氏名を記載し、認印を押す(シャチハタ不可) |
| 宛名 | 会社の正式名称と代表取締役(社長)の氏名を記載 |
特に重要なのが、書き出しの「私儀(わたくしぎ)」です。
これは「私事ですが」「私ことではございますが」という意味で、謙譲の意を表すビジネス文書の慣例です。
便箋の一行目下部に「私儀」と書き始め、二行目から本文を続けるのが正しいマナーとされています。
退職理由と退職日の書き方:自己都合の場合
自己都合で退職する場合の退職理由は、通常「一身上の都合により」と簡潔に記載するのが一般的です。
具体的な退職理由(例:給与への不満、人間関係の悩み、キャリアアップなど)を詳細に書く必要はありません。
これは、円満退社のため、また個人的な事情を公的な書類に記載しないというビジネス上の配慮からです。
実際の退職理由に関するデータを見ると、近年「給与の低さ」が依然として多く挙げられますが、「人間関係」や「社風・雰囲気」なども上位を占めています。
しかし、半数以上の従業員が、本当の退職理由を伝えず「円満退社」のために建前を伝えているという調査結果もあります。
退職日は、会社の就業規則で定められた期間(一般的には退職希望日の1〜2ヶ月前)を考慮して明確に記載します。
民法上は退職の2週間前までに申し出れば退職可能ですが、引き継ぎ期間などを考慮すると、余裕を持った時期の提出が望ましいです。
辞表用紙の選び方:便箋や封筒、どこで手に入れる?
辞表(退職願・退職届)は、内容だけでなく、使用する用紙や封筒、筆記具にもビジネスマナーが問われます。
適切な用紙を選び、丁寧に準備することで、会社への敬意を示すことができます。
便箋の種類とサイズ:B5・A4の選び方
辞表に用いる便箋は、白無地の縦書き用が基本です。
罫線が入っていても構いませんが、無地の方がより丁寧な印象を与えます。
用紙サイズは、一般的にB5またはA4が用いられますが、B5サイズの方がより一般的で、封筒に収まりやすいという利点があります。
A4サイズは、内容量が多い場合や、会社の他の書類がA4で統一されている場合に選ばれることがあります。
どちらのサイズを選ぶにしても、インクがにじみにくい上質な紙を選ぶことが重要です。
複数枚になる場合は、重ねて左上をクリップで留めるのがマナーで、ホチキスは使用しません。
また、文字を書き損じる可能性を考慮し、数枚余分に用意しておくことをおすすめします。
封筒の選び方と記載ルール:白無地・〆印
辞表を提出する際の封筒も、便箋と同様に白無地のものを選びます。
郵便番号の枠がない、いわゆる「私用封筒」が適切です。
サイズは、三つ折りした便箋がきちんと収まる長形3号が一般的です。
封筒の表面には、中央に「退職願」または「退職届」と毛筆または黒のサインペンで丁寧に記載します。
裏面には、左下に所属部署名と氏名を記入します。
封をする際は、糊でしっかりと閉じ、封じ目には「〆」の印を書きます。
これは「確かに封をしました」という意味合いを持ち、改ざん防止の役割も果たします。
テープで安易に封をするのは避けましょう。
どこで手に入れる?文具店、コンビニ、100均
辞表に使用する便箋や封筒は、様々な場所で手に入れることができます。
最も確実なのは、文具専門店です。
ここでは、ビジネス文書に適した高品質な便箋や封筒が豊富に揃っており、店員に相談しながら選ぶことも可能です。
急ぎの場合や手軽に購入したい場合は、コンビニエンスストアや100円ショップでも白無地の便箋や封筒が販売されています。
ただし、これらの場所で手に入る製品は種類が限られていることや、紙質が専門店のものに劣る場合もあるため、選ぶ際には注意が必要です。
インクが滲まないか、透けないかなどを確認し、必要に応じて少し高価でも品質の良いものを選ぶことをおすすめします。
また、黒のボールペンや万年筆も同時に購入しておくと良いでしょう。
手書き?パソコン?辞表の作成方法と筆記具の選び方
辞表(退職願・退職届)を作成する際、手書きとパソコン作成のどちらを選ぶべきか悩むかもしれません。
それぞれにメリット・デメリットがあり、状況に応じて最適な方法を選択することが大切です。
手書きのメリット・デメリットと適切な筆記具
手書きの辞表は、相手に丁寧な印象を与えるという大きなメリットがあります。
「手間をかけて書いてくれた」という気持ちが伝わりやすく、特に伝統的な企業や、上司が年配の方である場合は、手書きの方が好意的に受け取られる傾向があります。
しかし、デメリットとしては、書き損じのリスクが高い点が挙げられます。
万が一間違えてしまうと、最初から書き直す必要があり、時間と労力がかかります。
また、字が苦手な人にとっては負担になることもあります。
手書きで作成する際の筆記具は、黒のボールペンまたは万年筆が適しています。
鉛筆やシャープペンシルは公的な文書には不適切であり、水性ペンやサインペンはにじみやすい可能性があるため避けるべきです。
特に、捺印に使用する印鑑は、認印(シャチハタは不可)を使用し、文字にかからないよう鮮明に押印しましょう。
パソコン作成の効率性とマナー
パソコンで辞表を作成する最大のメリットは、効率性と正確性です。
Wordテンプレートなどを利用すれば、間違いなく適切なフォーマットで文書を作成できますし、修正も容易です。
文字の均一性も保たれるため、読みやすい書類が完成します。
パソコン作成でも、手書きと同様にビジネスマナーを守ることが重要です。
具体的には、縦書きが一般的であること、ビジネス文書として適切なフォント(明朝体など)を選ぶことなどが挙げられます。
過度な装飾や色使いは避け、シンプルでプロフェッショナルな印象を与えるようにしましょう。
印刷時には、質の良いプリンターを使用し、にじみやかすれがないか確認することも大切です。
署名と捺印の部分は、印刷後に自筆で記入し、押印するようにしてください。
印刷方法と清書の際の注意点
パソコンで作成した辞表は、プリンターで印刷することになります。
この際、いくつか注意すべき点があります。
まず、高品質な印刷ができるプリンターを使用することが重要です。
インクジェットプリンターの場合は、インク残量が十分であるか確認し、レーザープリンターの場合はトナーが不足していないかを確認しましょう。
印刷用紙は、便箋と同様に白無地で、厚手のものを選ぶとより丁寧な印象を与えます。
印刷が終わったら、誤字脱字がないか、レイアウトが崩れていないか、にじみやかすれがないかを必ず最終確認してください。
特に、氏名や退職日などの重要な情報に間違いがないか、複数回チェックすることをおすすめします。
最後に、署名と捺印を手書きで行い、完全に清書が完了した状態にして提出に備えましょう。
会社都合や病気退職の場合の辞表の書き方と注意点
退職の理由は人それぞれですが、自己都合以外の理由で退職する場合、辞表(退職願・退職届)の書き方にも少し注意が必要です。
会社都合や病気による退職では、退職理由の記載方法や、手続き上のポイントが異なります。
会社都合退職の場合の書き方と注意点
会社都合による退職(例えば、事業所の閉鎖、リストラ、解雇勧告など)の場合、退職理由を「一身上の都合により」と記載するのは適切ではありません。
この場合、「会社都合により」または具体的な理由(例:「〇〇事業部閉鎖に伴い」)を記載するのが一般的です。
ただし、会社側から「一身上の都合」と書くように指示されるケースもあります。
これは、会社都合の退職者が多いと、企業のイメージダウンにつながるためです。
しかし、会社都合で退職すると、失業給付金が優遇されるなど労働者にとってメリットがあるため、安易に「一身上の都合」とせず、会社側とよく相談し、納得した上で記載内容を決定することが重要です。
不明な点があれば、労働基準監督署や弁護士に相談することも検討しましょう。
病気・怪我による退職の場合の書き方
病気や怪我により業務継続が困難となり退職する場合は、その旨を退職理由として明確に記載します。
例えば、「傷病のため、業務の継続が困難となりましたので」や「療養に専念いたしたく」といった表現が用いられます。
この場合、診断書などの提出を求められることが多いため、医師の診断を受け、必要な書類を準備しておきましょう。
診断書を添付することで、会社側も状況を理解しやすくなり、円滑な退職手続きにつながります。
また、退職前に休職制度を利用できないか、時短勤務など、別の働き方ができないか、まずは会社の人事担当者や直属の上司に相談してみることも大切です。
企業側が最も退職を防ぎたい年代は「30代」であり、次いで「20代」であるというデータもあるため、会社も人材流出を防ぐために様々な対応を検討してくれる可能性があります。
特殊な状況での辞表提出と相談の重要性
どのような理由であれ、退職はデリケートな問題であり、提出する書類も慎重に扱う必要があります。
特に、通常の退職とは異なる特殊な状況(例えば、ハラスメントが理由、人間関係のこじれなど)での退職の場合、書類の記載内容や提出方法には一層の注意が必要です。
このような状況では、事前に上司や人事担当者に口頭で相談し、状況を共有することが非常に重要です。
参考情報にもあるように、退職代行サービスの利用者は20代が最も多いですが、幅広い年齢層で利用されており、困難な状況では外部の専門家を頼る選択肢もあります。
書類提出前に十分に話し合いの場を設けることで、不要なトラブルを避け、お互いにとって納得のいく形で手続きを進めることができます。
会社の就業規則を再度確認し、不明な点は必ず質問するようにしましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 辞表作成に使えるWordテンプレートはどこで手に入りますか?
A: Wordのテンプレート機能や、インターネット上のフリー素材サイトで「辞表 Word テンプレート」などで検索すると見つけることができます。
Q: 辞表の「私儀」とはどういう意味で、いつ使えば良いですか?
A: 「私儀」は、自分自身をへりくだって表現する言葉で、辞表の冒頭に「私儀」と書き出すのが一般的です。
Q: 辞表を書く便箋や封筒は、どこで購入できますか?
A: 文房具店、コンビニエンスストア、100円ショップ(ダイソーなど)で購入できます。シンプルな白無地の便箋と封筒が適しています。
Q: 辞表は手書きとパソコン作成、どちらが良いですか?
A: どちらでも構いませんが、手書きの場合は丁寧に、パソコン作成の場合は印刷して提出するのが一般的です。会社の規定や上司の意向を確認するのが良いでしょう。
Q: 会社都合や病気で退職する場合、辞表の書き方に違いはありますか?
A: 退職理由を詳細に記載する必要はありませんが、会社都合の場合は「一身上の都合により」と記載し、病気退職の場合は「病気療養のため」といった簡潔な理由を付記することがあります。詳細は就業規則や上司にご確認ください。
