概要: 内定通知書は、採用決定を正式に伝える大切な書類です。本記事では、内定通知書の書き方から、作成期間、送付方法、封筒の選び方、印鑑の必要性、さらにはテンプレートやメールでの送付方法まで、網羅的に解説します。スムーズな内定通知書作成・送付にお役立てください。
採用活動において、企業と内定者双方にとって極めて重要な意味を持つ「内定通知書」。この書類のスムーズな送付は、企業の信頼性を高めるだけでなく、入社意欲の高い優秀な人材を確実に確保するために不可欠です。
本記事では、内定通知書の適切な書き方から、印象を左右する封筒の選び方、送付のタイミング、そして最新の採用市場の動向までを徹底的に解説します。
内定通知書は、単なる事務的な書類ではありません。それは、新たな仲間を迎え入れる企業からの最初で最も大切なメッセージ。この記事を通じて、貴社が内定者との良好な関係を築き、スムーズな入社へと繋げるための一助となれば幸いです。
内定通知書の基本:記載すべき項目と作成のポイント
内定通知書の法的意味と重要性
内定通知書は、法的な発行義務があるわけではありませんが、多くの企業が発行している重要な書類です。その最大の目的は、採用選考を経て内定が決まった求職者に対し、その旨を正式に通知し、企業と内定者の間で労働契約が成立したとみなされる可能性があるためです。
この書類を通じて、内定者は自身の就職先が確定したことを認識し、具体的な入社準備へと移行することができます。同時に、企業側にとっては内定者との認識の齟齬を防ぎ、後のトラブルを未然に防止する役割も果たします。
例えば、口頭での内定通知だけでは、給与や勤務地といった重要な条件について、後から「言った」「言わない」の水掛け論に発展するリスクがあります。書面で明確に条件を提示することで、このようなリスクを回避し、双方にとって安心できる土台を築くことができます。
また、内定通知書は企業の信頼性や誠実さを内定者に伝える最初の機会でもあります。丁寧かつ迅速な対応は、内定者の企業へのエンゲージメントを高め、入社への期待感を醸成する上で非常に効果的です。特に、複数の企業から内定を得ている内定者にとって、企業の印象は最終的な入社決定に大きく影響するため、その重要性は計り知れません。
単なる事務処理としてではなく、内定者との最初の「約束」として、その法的意味合いと重要性を理解し、作成に取り組みましょう。
記載すべき必須項目と詳細
内定通知書に記載すべき項目は多岐にわたりますが、内定者との誤解を避け、スムーズな入社手続きを促すために、以下の要素は必ず含めるようにしましょう。
- 日付: 内定日または送付日を正確に記載します。
 - 宛名: 内定者の氏名をフルネームで、敬称を添えて記載します。
 - 差出人: 企業名、代表者名、そして採用担当部署名を明記し、企業としての正式な通知であることを示します。
 - 応募へのお礼: 長きにわたる選考プロセスへの参加と協力に対する感謝の意を伝えます。
 - 内定通知: 「貴殿の採用を決定いたしました」など、内定が正式に決定した旨を明確に記載します。
 - 入社日: 正式な入社日を年月日まで正確に記載します。内定者が入社準備を進める上で最も重要な情報の一つです。
 - 就業場所: 配属部署や具体的な勤務地を明記します。転勤の可能性についても記載が必要であれば加えます。
 - 準備書類: 入社までに提出が必要な書類(例:内定承諾書、誓約書、身元保証書、健康診断書など)の一覧と、それぞれの提出期限を明記します。返信用封筒の有無なども記載すると親切です。
 - 内定取り消し事由: 法的に認められる内定取り消しの条件を明確に記載します。これにより、内定者とのトラブルを未然に防ぐことができます。一般的には、経歴詐称や重大な犯罪行為などが該当します。
 - 同封書類の案内: 内定通知書以外に同封されている書類(労働条件通知書、入社案内、会社パンフレットなど)の一覧を記載します。
 - 連絡先: 採用担当部署の名称、担当者名、電話番号、メールアドレスを明記し、内定者からの問い合わせにいつでも対応できる体制を示します。
 
これらの項目を漏れなく、かつ分かりやすく記載することが、内定者にとって親切であり、企業にとっても円滑な採用活動に繋がります。
内定者の心をつかむ効果的な記述とは
内定通知書は、単に事務的な情報を羅列するだけでなく、内定者の心をつかみ、入社へのモチベーションを高めるための重要なツールでもあります。
まずは、選考過程を通じて感じた内定者の魅力や、入社後に期待する役割について具体的に触れることで、パーソナライズされたメッセージを届けましょう。例えば、「〇〇様の△△な能力を、弊社の□□プロジェクトで存分に発揮していただくことを期待しております」といった具体的な言及は、内定者に「自分は会社にとって必要な存在だ」という実感を与え、入社後の活躍を具体的にイメージさせることができます。
次に、会社のビジョンや文化、そして内定者がその中でどのように成長していけるのかを簡潔に伝えると良いでしょう。例えば、「弊社は『〇〇を通じて社会に貢献する』というビジョンを掲げており、共にその実現を目指せる仲間を心待ちにしております」といったメッセージは、内定者に共感を呼び、企業の方向性への理解を深めるきっかけとなります。
さらに、入社後のサポート体制や、新入社員を歓迎する雰囲気を伝えることも重要です。「入社後はOJTリーダーが丁寧にサポートいたしますのでご安心ください」「社員一同、〇〇様を心より歓迎いたします」といった一文は、内定者の入社への不安を和らげ、安心感を与えます。
参考情報にもあるように、内定者フォローの重要性が増している現代において、内定通知書は最初の内定者フォローの機会と捉え、温かい歓迎の気持ちと、内定者の未来への期待を込めたメッセージを添えることで、内定者の心を掴み、入社への意欲を最大限に高めることができるでしょう。
内定通知書作成期間の目安と注意点
適切な送付時期と遅延のリスク
内定通知書は、採用決定後、できる限り速やかに送付することが非常に重要です。一般的な目安としては、最終面接から1週間から10日以内に送付を完了させる企業が多いとされています。
この期間を過ぎてしまうと、内定者が他社からの内定を受諾してしまい、優秀な人材を逃してしまうという大きなリスクを伴います。特に、近年は採用活動が早期化しており、学生や求職者は複数の選考を同時並行で進めていることがほとんどです。
参考情報にもあるように、2024年卒では、約2.5社から内定を得ており、内定承諾後も就職活動を継続する学生が半数以上いるという調査結果もあります。このデータからもわかるように、迅速な対応は、他社との競争に打ち勝ち、内定者の入社意欲を維持するために不可欠なのです。
通知が遅れることで、内定者は企業の対応に不安や不信感を抱く可能性もあります。入社意欲が高まっている時に、期待を裏切られるような遅延は、内定辞退に直結しかねません。また、企業側が候補者を「キープ」しているような印象を与えてしまうこともあり、企業のイメージダウンにも繋がります。
採用チーム内での連携を密にし、内定決定から通知書作成、発送までのプロセスを標準化することで、遅延なくスムーズな送付体制を確立することが求められます。
複数内定が当たり前の時代におけるスピード感
今日の採用市場は、特に新卒採用において「売り手市場」の傾向が強く、優秀な人材ほど複数の企業から内定を得ることが一般的になっています。参考情報によると、新卒の内定承諾率の平均は30〜40%程度とされており、これは多くの学生が複数の選択肢を持っている状況を明確に示しています。
このような状況下では、内定通知書の送付スピードが内定者の意思決定に大きな影響を与えます。他社よりも迅速に、そして誠意をもって内定通知書を届けることで、内定者は「この会社は自分を高く評価し、いち早く迎え入れたいと思ってくれている」というポジティブな印象を抱きます。
逆に、通知が遅れる企業は、内定者にとって「他の候補者と天秤にかけているのではないか」「そこまで自分を必要としていないのではないか」といった不信感を与えてしまいがちです。特に、内定承諾後も就職活動を継続する学生が半数以上いるという状況を鑑みると、最初の通知がいかに重要であるかがわかります。
企業としては、内定通知書を送付するまでの期間を極力短縮するための仕組み作りが求められます。採用プロセスの効率化、最終面接後の意思決定の迅速化、内定通知書作成のテンプレート化などが考えられます。スピード感を持った対応は、単なる時間短縮以上の価値を生み出し、優秀な人材の確保に直結する重要な要素と言えるでしょう。
内定通知書発行前の最終確認事項
内定通知書は、内定者との重要な契約の第一歩となる書類です。そのため、発行・送付前には、細心の注意を払って最終確認を行う必要があります。わずかなミスが、内定者の不安を招いたり、企業の信頼性を損ねたりする可能性があるためです。
まず、記載内容の誤字脱字チェックは必須です。内定者の氏名や住所、企業名はもちろん、入社日、就業場所、給与などの条件に間違いがないかを複数人で入念に確認しましょう。特に、内定者の氏名や会社名に誤りがあると、大変失礼にあたり、企業の管理体制に疑問を持たれてしまいます。
次に、提示した労働条件(給与、勤務時間、福利厚生など)と内定通知書に記載されている内容に齟齬がないかを確認します。面接時や口頭で伝えた内容と異なると、内定者が不信感を抱き、最悪の場合、内定辞退に繋がることもあります。
また、同封する書類の漏れがないかも重要です。内定承諾書、誓約書、身元保証書、入社案内、会社パンフレット、労働条件通知書など、必要な書類が全て揃っているかを確認リストでチェックすると良いでしょう。特に、返信用封筒の同封忘れは、内定者の手間を増やし、書類回収の遅延にも繋がります。
複数人に内定通知書を送付する場合は、宛名や内容が他の内定者のものと混同していないか、封入ミスがないかを厳重に確認する体制を整えることが大切です。これらの最終確認を徹底することで、内定者への誠意を示し、安心して入社日を迎えられるようサポートすることができます。
内定通知書の送付方法:封筒・添え状・発送手段
信頼性を高める封筒の選び方と記載ルール
内定通知書を送付する際の封筒は、その第一印象を決定づける重要な要素です。単なる書類の入れ物ではなく、企業の品格と内定者への敬意を示すものとして慎重に選び、記載する必要があります。
まず、封筒のサイズは、A4サイズの書類を折らずに入れられる「角形2号」が一般的です。これにより、内定通知書やその他の同封書類がしわにならず、丁寧な印象を与えられます。ただし、企業から送られてきた書類と同じサイズを選ぶのが最も無難で、整合性も保たれます。また、三つ折りで送る場合は「長形3号」も選択肢となります。
封筒の色は、ビジネスシーンにふさわしい白やクリーム色など、落ち着いた色を選びましょう。派手な色や柄は避け、プロフェッショナルな印象を保つことが大切です。
封筒の表面には、内定者の氏名を正確に記載し、敬称は「様」を使用します。住所は都道府県からビル名、部屋番号まで省略せずに記載します。そして、左下には赤字で「内定通知書在中」と明確に記載し、受け取った内定者が内容をすぐに把握できるように配慮しましょう。さらに、個人情報が含まれる重要書類であるため、「親展」と朱書きで明記することで、本人以外が開封することを防ぐ配慮も重要です。
裏面には、発送日、差出人である企業の住所、企業名、部署名、担当者名を記載します。封字として、のりで封をした後に「〆」マークを記載することで、封印の確実性を示します。また、内定承諾書などの返送書類を同封する場合は、書類の保護と丁寧な印象を与えるために、クリアファイルに挟んでから封筒に入れることをお勧めします。
最後に、切手代は封筒のサイズや重さによって変動するため、郵便局で正確な料金を確認してから貼付しましょう。定形外郵便に該当する場合、目安として120円~140円程度ですが、過不足なく貼ることがマナーです。
添え状(送付状)の書き方と役割
内定通知書を郵送する際には、本体だけでなく「添え状(送付状)」を同封するのがビジネスにおける一般的なマナーです。添え状は、単に書類を送ることを伝えるだけでなく、丁寧な印象を与え、書類内容を簡潔に説明する重要な役割を担います。
添え状には、以下の要素を盛り込むと良いでしょう。
- 日付: 発行日を記載します。
 - 宛名: 内定者の氏名を記載し、「様」をつけます。
 - 差出人: 企業名、部署名、担当者名を記載します。
 - 件名: 「内定通知書ご送付のご案内」など、内容が明確にわかるように記載します。
 - 本文: 時候の挨拶に始まり、選考へのお礼、内定決定の旨、そして内定通知書及び同封書類を送付する旨を簡潔に伝えます。例えば、「この度は、数ある企業の中から弊社の採用選考にご参加いただき、誠にありがとうございました。厳正なる選考の結果、貴殿の採用を決定いたしましたので、ここに内定通知書をお送りいたします」といった内容になります。
 - 同封書類: 最後に、内定通知書を含め、同封されている書類の一覧を箇条書きで分かりやすく記載します。これにより、内定者は届いた書類に漏れがないかを確認できます。
 
添え状は、内定通知書の内容を補足し、内定者への配慮を示す役割も果たします。例えば、入社日までの流れや、不明点があった際の連絡先を改めて明記することで、内定者の不安を軽減し、スムーズな手続きを促すことができます。
形式的な書面ではありますが、内定者に対する企業の姿勢や気遣いが伝わる重要な書類ですので、細部まで丁寧に作成することを心がけましょう。これにより、内定者の企業に対する信頼感や好感度を高めることができます。
確実な発送手段の選択と注意点
内定通知書は、その内容の重要性から、確実に内定者の手元に届けるための発送手段を選ぶことが不可欠です。
最も一般的なのは郵送です。郵送の場合、普通郵便でも届きますが、より確実性を求めるのであれば、「速達」や「簡易書留」の利用を検討しましょう。速達は、通常よりも早く配達されるため、内定決定から通知までの期間を短縮したい場合に有効です。簡易書留は、郵便物の引き受けから配達までの記録が残るため、万が一の郵便事故の際にも追跡が可能で、内定者が受け取ったことを確認できるため、高い信頼性が得られます。内容証明郵便も選択肢に上がりますが、こちらは法的紛争を意識したものであり、通常の内定通知には過剰となる場合が多いでしょう。
また、内定承諾書などの返送を求める書類を同封する場合は、返信用封筒を同封することで、内定者の手間を省き、書類の回収をスムーズに進めることができます。切手貼付済みの返信用封筒であれば、さらに親切な印象を与えます。
近年では、メールでの送付も一般的になってきています。PDFファイルに変換して添付する方法が主流で、郵送よりも迅速に通知できるというメリットがあります。遠隔地に住む内定者や、採用活動のスピードが求められる場合には非常に有効です。ただし、メールは迷惑メールフォルダに振り分けられたり、見落とされたりするリスクがあるため、念のため電話での連絡や郵送でのフォローを検討すると良いでしょう。メールで送付する場合は、添付ファイルにパスワードを設定するなどのセキュリティ対策も忘れてはいけません。
企業としては、内定者の状況や採用プロセスの緊急性に応じて、最適な発送手段を選択し、確実に内定通知書が届くよう細心の注意を払うことが求められます。
内定通知書に不可欠な印鑑(会社印・社判)について
会社印・社判の法的意味と押印の重要性
内定通知書への会社印や社判の押印は、法的な発行義務がない書類であるにもかかわらず、多くの企業で慣例的に行われています。これには、企業としての意思表示を明確にし、書類の公式性や信頼性を高めるという重要な意味があります。
会社印には、法務局に登録された「会社実印(代表印)」と、日常業務で使用される「角印(社判)」の二種類が主にあります。会社実印は、その名の通り企業としての最も重要な契約や法的な手続きに用いられる印鑑であり、押印された書類は高い法的効力を持つとされます。
一方、角印(社判)は、請求書や領収書、社内文書など、日常的な業務における企業の承認を示す際に使用されます。内定通知書においては、通常、この角印を押印することが一般的です。角印の押印は、内定通知書が個人ではなく「企業として正式に発行した書類である」ことを内定者に明確に伝えます。
法的効力という点では、内定通知書自体が「労働契約の成立」を証する書面とされる場合があるため、企業としての意思が明確に示されていることは非常に重要です。たとえ法的な義務がなくとも、印鑑が押されていることで、内定通知書の内容に対する企業の責任感が明確になり、内定者にとっては安心して受け取れる証拠となります。特に、入社前の不安を抱える内定者にとって、企業からの正式な印鑑があることは、心理的な安心材料となるのです。
内定通知書に押印することは、企業の誠実な姿勢と、内定者に対する真摯な対応を示す象徴とも言えるでしょう。
印鑑の種類と内定通知書への適切な使用
会社が使用する印鑑にはいくつかの種類があり、それぞれの用途に応じて使い分けがされています。内定通知書に押印する際も、その特性を理解した上で適切な印鑑を選ぶことが大切です。
主な会社印の種類は以下の通りです。
- 会社実印(代表印): 法務局に登録されている会社の公的な印鑑で、通常は会社の代表者の役職名(代表取締役之印など)が刻印されています。最も強い法的効力を持ち、重要な契約書や登記申請などに使用されます。
 - 角印(社判): 会社の名称が四角い枠の中に刻印されている印鑑で、社印とも呼ばれます。会社実印ほどの法的効力はありませんが、企業の認印として、日常的な業務文書や請求書、領収書などに幅広く使用されます。
 - 丸印(銀行印): 銀行口座の開設や手形、小切手などに使用する印鑑で、会社の代表者個人の氏名が刻印されていることが多いです。
 - ゴム印(住所印、役職印): 住所や会社名、電話番号などがスタンプ形式になったもので、あくまで補助的なものとして使われ、正式な印鑑としては扱われません。
 
内定通知書においては、その性質上、角印(社判)を使用するのが一般的で適切です。会社実印は、非常に重要な契約書など、より高い法的拘束力が求められる場面で用いるものであり、内定通知書に使用すると過剰となる場合があります。しかし、企業によっては内部規定で会社実印の押印を義務付けている場合もありますので、自社の規定を確認することが重要です。
角印を押印する際は、企業名の部分に綺麗に、かつ鮮明に押すことで、書類としての体裁を整え、内定者に失礼のないよう配慮しましょう。印鑑は企業の顔とも言えるため、押印の仕方一つにも丁寧さが求められます。
電子印鑑・電子署名の活用と注意点
デジタル化が急速に進む現代において、内定通知書の送付においても電子印鑑や電子署名の活用が増えています。これは、迅速な手続きやコスト削減といった多くのメリットをもたらします。
電子印鑑とは、印影を画像データ化したもので、WordやPDFファイルに貼り付けることで、書面への押印と同様の効果を持たせるものです。一方、電子署名は、電子文書の作成者が本人であることを証明し、文書が改ざんされていないことを検証するための技術であり、「電子署名法」に基づき、紙の文書における署名や押印と同等の法的効力が認められています。
内定通知書をメールで送付する際、PDF化したファイルに電子印鑑や電子署名を施すことで、郵送を待つことなく、より迅速に内定を通知することが可能になります。これにより、内定者が他社へ流出するリスクを低減し、採用競争力を高めることができます。
しかし、活用にあたってはいくつかの注意点があります。
- 法的有効性の認識: 電子印鑑はあくまで印影の画像データであるため、電子署名のような法的効力は通常認められません。正式な証明が必要な場合は、電子署名サービスを利用することが推奨されます。
 - セキュリティ対策: 電子印鑑や電子署名のデータは、不正利用や改ざんのリスクに常に晒されています。パスワード保護、アクセス制限、定期的な監査など、厳重なセキュリティ対策を講じることが不可欠です。
 - 内定者の理解度: 内定者の中には、電子化された書類や電子署名に不慣れな人もいるかもしれません。必要に応じて、郵送での送付も併用したり、電子署名の受け取り方について丁寧に案内したりするなどの配慮が必要です。
 - 保存期間と方法: 電子化された内定通知書も、企業が定める保存期間に従って適切に保管する必要があります。改ざん防止措置を講じた上で、アクセスしやすい形で管理することが求められます。
 
デジタル技術を積極的に活用しつつも、その特性とリスクを十分に理解し、内定者との信頼関係を損なわないよう慎重な運用を心がけましょう。
内定通知書テンプレート活用術とメール送付について
効率的な内定通知書テンプレートの選び方とカスタマイズ
内定通知書を効率的に作成するためには、テンプレートの活用が非常に有効です。テンプレートを利用することで、作成時間の短縮、記載漏れの防止、そして書面全体の統一性を保つことができます。しかし、ただテンプレートを使用するだけでなく、自社の状況に合わせて適切に選び、カスタマイズすることが重要です。
テンプレートを選ぶ際には、まず以下の点を確認しましょう。
- 法的要件の充足: 特に内定取り消し事由など、法的に重要な項目が適切に記載されているか。
 - 網羅性: 日付、宛名、差出人、応募へのお礼、内定通知、入社日、就業場所、準備書類、同封書類の案内、連絡先など、参考情報で挙げた必須項目が全て含まれているか。
 - 汎用性: 職種や雇用形態に応じて、ある程度の調整がしやすい形式になっているか。
 
適切なテンプレートを見つけたら、次に自社の企業文化やビジョンに合わせたカスタマイズを行いましょう。
例えば、「内定者の心をつかむ効果的な記述」の項目で述べたように、選考へのお礼の言葉や、内定者の入社後の活躍への期待感を示すメッセージを、自社らしい言葉遣いで追加します。会社のビジョンやミッションを簡潔に紹介する一文を入れることで、内定者に企業への共感を促すことも可能です。
また、同封する書類の種類や入社までのスケジュールは企業によって異なるため、それらを具体的に記載できるよう、該当箇所を調整します。テンプレートはあくまで骨子であり、そこに企業の個性や内定者への配慮を肉付けしていくことで、より効果的な内定通知書が完成します。
定期的にテンプレートを見直し、法改正や社内規定の変更、採用市場のトレンドに合わせて更新していくことも、効率的かつ適切な内定通知書運用には不可欠です。
メールでの内定通知:メリット・デメリットと適切な運用
近年、内定通知書の送付方法としてメールが広く採用されるようになりました。その最大のメリットは迅速性とコスト削減です。特に、遠隔地に住む内定者に対しては、郵送よりも格段に早く通知を届けられ、採用活動の早期化が進む現代において、他社との競争力を高める上で非常に有効な手段となります。
しかし、メール送付にはデメリットも存在します。
- 見落とし・スパム扱い: 内定者がメールを見落としたり、企業のメールが迷惑メールフォルダに振り分けられたりする可能性があります。
 - セキュリティリスク: 個人情報を含む書類をメールで送付する際、情報漏洩のリスクが伴います。
 - 確実性の欠如: 郵送のように受領確認が保証されないため、「届いたかどうかわからない」という状況が生じることがあります。
 
これらのデメリットを克服し、メールでの内定通知を適切に運用するためには、以下の点に注意しましょう。
- PDF添付とパスワード保護: 内定通知書はPDFファイルに変換し、パスワードを設定して添付します。パスワードは別のメールや電話で内定者に伝えることで、セキュリティを高めます。
 - 電話でのフォロー: メール送付後、内定者に電話で連絡を入れ、内定の旨を伝え、メールが届いているか確認します。これにより、見落としを防ぎ、内定者の安心感も高まります。
 - 件名の工夫: メールの件名は「【〇〇株式会社】採用内定通知書のご連絡(〇〇様)」など、一目で重要だとわかるように明記します。
 - 電子署名の活用: より高い法的効力と信頼性を求める場合は、電子署名サービスを導入し、PDFファイルに電子署名を施すことを検討しましょう。
 - 返信の依頼: 受信確認や内定承諾の意思表示のため、メールへの返信を依頼する旨を記載しておきましょう。
 
メール送付は効率的ですが、内定者の心情やセキュリティへの配慮を忘れず、丁寧な運用を心がけることが、成功の鍵となります。
内定通知後のフォローアップと入社への確実な繋ぎ方
内定通知書を送付したら、採用活動が終わりというわけではありません。むしろ、内定辞退を防ぎ、入社へのモチベーションを維持・向上させるための内定者フォローアップがここから本格的にスタートします。
参考情報にもあるように、「内定承諾後も就職活動を継続する学生が半数以上いる」というデータは、内定者フォローの重要性を強く示唆しています。内定通知後のフォローアップは、内定者が抱くであろう様々な不安を解消し、入社への期待感を高めるための重要なプロセスです。
具体的なフォローアップの方法としては、以下のような取り組みが考えられます。
- 定期的な連絡: 採用担当者や配属予定部署の先輩社員から、定期的に電話やメールで連絡を取り、近況を伺ったり、入社に関する疑問点がないかを確認したりします。
 - 内定者懇親会の実施: 内定者同士や社員との交流の場を設けることで、入社前の不安を解消し、仲間意識や帰属意識を醸成します。オンラインでの開催も有効です。
 - 先輩社員との交流: 配属予定部署の先輩社員と個別に話す機会を提供し、仕事内容や職場の雰囲気について具体的にイメージできるようにサポートします。
 - 入社前研修・勉強会の開催: 業務に必要な基礎知識やスキルを学ぶ機会を提供することで、入社後のスムーズな立ち上がりを支援します。オンライン学習コンテンツの提供も有効です。
 - 社内イベントへの招待: 可能であれば、社員が参加する社内イベント(忘年会、レクリエーションなど)に内定者を招待し、会社の雰囲気を肌で感じてもらう機会を作ります。
 - 不安解消Q&Aの提供: 内定者が抱きやすい質問をまとめたQ&A集を渡したり、特設の相談窓口を設けたりすることで、気軽に疑問を解消できる環境を整えます。
 
これらの活動を通じて、企業は内定者に対し「私たちはあなたを本当に必要としている」というメッセージを伝え続けることが重要です。丁寧で継続的なフォローアップは、内定者の入社への意欲を確実に高め、優秀な人材の定着に繋がる投資となるでしょう。
まとめ
よくある質問
Q: 内定通知書に必ず記載すべき項目は何ですか?
A: 内定通知書には、氏名、採用年月日、配属部署、役職、給与、就業場所、勤務時間、休日、賞与、昇給、退職手当、社会保険、その他労働条件の明示が必要です。また、内定承諾の意思表示を求める記載や、返信期限なども含めると良いでしょう。
Q: 内定通知書を作成するのにかかる期間はどれくらいですか?
A: 内定通知書の作成期間は、企業規模や社内手続きによりますが、一般的には採用決定から1週間~2週間程度が目安です。早めに送付することで、内定者の安心感につながります。
Q: 内定通知書を送る際の封筒はどのようなものを選べば良いですか?
A: 内定通知書は重要な書類のため、折らずにそのまま入れられる角形2号(A4サイズが折らずに入る)以上の白無地封筒が一般的です。表面には「親展」と朱書きすると、より丁寧な印象を与えます。
Q: 内定通知書に会社印(社判)は必要ですか?
A: はい、内定通知書には発行元である会社の正式な証明として、会社印(角印や社判)の押印が必須です。これにより、書類の有効性と信頼性が高まります。
Q: 内定通知書をメールで送ることは可能ですか?
A: 内定通知書をメールで送付する場合、法的には問題ありませんが、原則として書面での交付が推奨されています。メールで送付する場合は、PDF形式で添付し、別途郵送で原本を送付するのが一般的です。メール本文には、内容を簡潔に説明し、不明点があれば問い合わせ先を明記しましょう。
  
  
  
  