概要: 雇用契約書の更新時期や期間、内定辞退の際の対応について解説します。特に1年更新、3ヶ月更新、週20時間未満のパート・アルバイト、そして内定辞退を検討している方にとって役立つ情報を提供します。
【雇用契約書】更新・期間・辞退の注意点と疑問を解決
雇用契約書は、企業と労働者の間で雇用関係が成立したことを証明する重要な書類です。入社時だけでなく、契約更新時や退職・辞退の際にも多くの疑問が生じます。
本記事では、雇用契約書の「期間」「更新」「辞退」に関する最新の注意点やよくある質問について、具体的な情報とともにお伝えします。皆さんの不安や疑問を解消し、安心してキャリアを築くための一助となれば幸いです。
雇用契約書の期間:1年更新、3ヶ月更新、長期契約について
雇用契約には、期間の定めがある「有期雇用契約」と、期間の定めがない「無期雇用契約」の2種類があります。それぞれの特徴と注意点を理解することが、安心して働くための第一歩です。
有期雇用契約の種類と特徴
有期雇用契約は、あらかじめ契約期間が定められている雇用形態です。一般的には、「1年更新」や「3ヶ月更新」といった期間が設定されることが多く、契約期間満了時に更新の可否が判断されます。
この契約には原則として3年の上限がありますが、専門的な知識を持つ労働者や60歳以上の労働者との契約については、最長5年まで認められています。企業側は、必要以上に細切れにせず、目的に照らして適切な期間を設定することが求められます。
また、2024年4月からは、有期雇用契約の労働者に対し、更新上限の有無とその内容を明示することが義務化されました。これにより、労働者は契約更新に関する見通しをより明確に把握できるようになり、雇用の安定性向上に繋がると期待されています。
無期雇用契約への転換とメリット
無期雇用契約は、正社員などが該当し、契約期間の定めがない雇用形態です。これは労働者にとって、雇用の安定性が非常に高いという大きなメリットがあります。
特に重要なのが「無期転換ルール」です。これは労働契約法第18条に基づく制度で、有期雇用契約が反復更新され、通算5年を超えると、労働者の申し込みにより無期雇用契約へ転換できるというものです。
このルールが適用されることで、企業は合理的な理由がない限り労働者の無期転換の申し込みを拒否できなくなり、雇止めのリスクから労働者を保護します。もし、無期転換の権利が発生したにもかかわらず企業が雇止めを強行した場合、その雇止めは無効となる可能性もあります。この制度は、長期的に同じ企業で働きたいと考える有期雇用労働者にとって、非常に心強いセーフティネットと言えるでしょう。
期間設定の注意点と法改正
雇用契約の期間設定は、企業と労働者双方にとって極めて重要です。企業は、労働者の専門性や業務内容、プロジェクト期間などを考慮し、適切な期間を設定する必要があります。不適切な期間設定は、労働者のモチベーション低下や予期せぬトラブルの原因となる可能性があります。
最新の法改正では、先述の通り、有期雇用契約の更新上限の有無とその内容を明示することが義務化されました。これにより、労働者は契約締結時に将来の雇用の見通しを具体的に理解できるようになります。例えば、「更新は2回まで」「契約期間の総計は3年を上限とする」といった具体的な上限が示されることになります。
また、無期雇用契約の場合でも、試用期間を設ける際はその期間を雇用契約書に明確に記載することが推奨されます。期間の定めに関する情報は、後のトラブルを避けるためにも、常に最新の法規制に基づいて適切に管理・明示されるべきです。
更新時期の目安:1ヶ月前(30日前)までの通知義務
有期雇用契約の場合、契約期間が満了すれば自動的に契約が終了するわけではありません。契約を継続するためには「更新」の手続きが必要です。この更新に関する適切な対応は、企業と労働者双方にとって非常に重要です。
更新通知の重要性と法的義務
有期雇用契約を更新する場合、企業は労働者に対し、契約満了の1ヶ月前(30日前)までに更新の意向を通知することが慣例上、またトラブル防止の観点からも強く推奨されています。これは法的に明確な義務として定められているわけではないものの、労働契約法の趣旨から見て、労働者の生活設計に配慮するための重要な配慮とされています。
参考情報にもある通り、契約内容に変更がない場合でも、改めて雇用契約書や労働条件通知書を作成・交付することが望ましいとされています。これは、労働条件の明確化を図り、将来的な認識の齟齬やトラブルを防ぐためです。
また、雇用契約書や就業規則などで、契約更新の可否に関する判断基準を事前に明示しておくことも非常に重要です。例えば、「業務遂行能力」「勤務態度」「会社の業績」など、具体的な基準を示すことで、更新の透明性を高めることができます。
更新手続きの具体的な流れ
有期雇用契約の更新は、通常以下のような流れで進められます。まず、契約満了日の数ヶ月前(例えば2~3ヶ月前)に、企業から労働者へ更新の意向確認が行われます。
これを受け、労働者は自身のキャリアプランや状況を考慮し、更新希望の有無を企業に伝えます。その後、企業は提示された更新基準に基づき、更新の可否を判断し、労働者へその結果を通知します。更新が決定した場合、改めて更新後の雇用契約書や労働条件通知書が作成され、双方の合意のもとで署名・捺印を交わし、締結・交付されます。
無期雇用契約の場合は原則として更新手続きは不要ですが、労働条件(賃金、役職、勤務地など)に変更がある場合には、改めて労働条件通知書を交付するなどの手続きが必要となります。トラブル防止のため、無期雇用契約の場合でも年に1回程度の契約内容確認が推奨されています。
更新しない場合の企業側の対応
企業が有期雇用契約を更新しない場合、いわゆる「雇止め」となります。この際、企業は労働者に対して、なぜ更新しないのかという理由を具体的に説明する義務があります。特に、過去に何度も契約更新を繰り返してきた労働者に対しては、より慎重な対応が求められます。
労働契約法では、有期雇用契約の更新を期待することが合理的であると認められる場合(例えば、実質的に期間の定めのない契約と変わらない状態であった場合)に、企業が更新を拒否することは「雇止め法理」により無効となる可能性があります。
さらに、「無期転換ルール」の対象となる労働者(通算5年以上の有期雇用期間がある場合)からの無期転換の申し込みを拒否することはできません。企業は、雇止めを行う際は、労働者の生活への影響を十分に考慮し、法令を遵守した適切な手続きを踏むことが不可欠です。不当な雇止めは、大きな法的トラブルに発展するリスクを伴います。
パート・アルバイトの雇用契約:週20時間未満の場合
パート・アルバイトとして働く場合も、雇用契約書を適切に締結し、労働条件を明確にすることは非常に重要です。特に、勤務時間によって社会保険の適用など、待遇が大きく変わるため注意が必要です。
パート・アルバイトと有期雇用契約
パート・アルバイトの多くは、有期雇用契約として雇用されます。これは正社員と比較して、契約期間や労働時間、業務内容などが柔軟に設定されることが多い特性によるものです。
しかし、たとえ短時間勤務であっても、労働者であることに変わりはありません。企業は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと労働基準法第15条で定められています。
具体的には、以下の項目を明記した雇用契約書や労働条件通知書を交付することが義務付けられています。
- 契約期間
- 更新の有無と更新基準
- 就業場所
- 業務内容
- 始業・終業時刻、休憩時間
- 休日・休暇
- 賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払時期
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
口頭での合意はトラブルの元となるため、必ず書面で確認するようにしましょう。
社会保険適用と週20時間の壁
パート・アルバイトとして働く上で、社会保険の適用は重要なポイントです。健康保険や厚生年金の適用条件は、一般的に「週の所定労働時間が20時間以上」であることが一つの大きな目安となります。
具体的には、従業員数101人以上の企業(2024年10月からは51人以上)で働く場合、週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金8.8万円以上、2ヶ月を超える雇用の見込みがあり、学生でないという全ての条件を満たすと社会保険(厚生年金・健康保険)の適用対象となります。
週20時間未満で働く場合は、これらの社会保険の適用外となることが多く、国民健康保険や国民年金に自分で加入する必要があります。これは手取り額や将来の年金額に大きく影響するため、自身の働き方と社会保険の適用状況をしっかりと理解しておくことが大切です。
労働条件明示の重要性
パート・アルバイトとして働く際、労働条件の明示は非常に重要です。正社員と同じく、賃金、労働時間、業務内容、更新の有無と基準、退職に関する事項など、すべての労働条件を明確にすることが法律で義務付けられています。
特に、短時間労働者であるパート・アルバイトの場合、労働時間やシフトの変更に関するルール、残業の有無やその場合の賃金計算方法など、細かな点まで書面で確認することがトラブル回避に繋がります。
例えば、「繁忙期には〇時間まで残業の可能性がある」「シフトは〇日前に確定する」といった具体的な取り決めが明記されているかを確認しましょう。これにより、予期せぬ労働条件の変更や、賃金計算の誤解を防ぎ、安心して働くことができます。
内定辞退と雇用契約:いつまでに何を伝えるべきか
内定をもらい、一度は承諾したものの、その後に他の企業からより魅力的なオファーを受けたり、自身のキャリアプランに変更が生じたりすることは少なくありません。このような場合、内定辞退は可能なのでしょうか。その際の注意点について解説します。
内定辞退の法的側面
内定は、多くの場合、労働契約が成立したとみなされます。しかし、労働契約が成立した後でも、労働者には「退職の自由」が認められています。参考情報にもある通り、「入社予定日の2週間前までであれば、法的な問題なく入社を辞退できます」。
これは、民法第627条に定められた「期間の定めのない雇用契約は、いつでも解約の申し入れができ、申し入れから2週間を経過することによって終了する」という規定に基づいています。内定辞退は、この退職の自由を行使することに他なりません。
ただし、企業側が既に採用のために多大なコストをかけている場合など、状況によってはトラブルに発展する可能性もゼロではありません。辞退を決めたら、できるだけ早く、丁寧に対応することが肝要です。
辞退の伝え方とマナー
内定辞退を決めたら、速やかに、かつ誠実・丁寧な対応を心がけることが重要です。まずは、電話で採用担当者に直接連絡を取り、内定辞退の意向を伝えるのが一般的なマナーとされています。
電話では、内定への感謝と、辞退に至った経緯を簡潔に伝え、迷惑をかけることへの謝罪の気持ちを伝えるようにしましょう。具体的な理由を詳細に述べる義務はありませんが、「自身のキャリアプランを熟考した結果」「他社からの内定を承諾した」など、差し支えない範囲で理由を伝えることで、相手への配慮を示すことができます。
電話での連絡後、改めてメールで辞退の意思と感謝を伝えることで、丁寧な印象を与えるとともに、連絡の証拠を残すことができます。誠実な対応を心がけることで、企業との間に不必要な摩擦を生じさせることなく、円満に辞退を完了させることができます。
損害賠償リスクと回避策
内定辞退は労働者の自由ですが、「入社直前の辞退は、企業に損害を与えたとみなされ、損害賠償請求をされるおそれがあります」。例えば、入社直前で辞退された場合、企業は急遽別の採用活動を行う必要が生じたり、予定していた業務に遅延が生じたりする可能性があります。
具体的には、研修費用、入社準備にかかった費用(備品購入など)、代替要員採用のための広告費用などが損害と見なされることがあります。ただし、実際に損害賠償が認められるケースは非常に稀であり、企業側が具体的な損害額を立証する必要があります。
このリスクを回避するためには、やはり辞退を決めたらできる限り早く、遅くとも入社予定日の2週間前までには企業に明確に伝えることが重要です。また、企業側から強く引き止められたとしても、自身の意思を明確に伝え、曖昧な返答は避けるようにしましょう。誠実かつ迅速な対応が、不要なトラブルを避ける最善策です。
雇用契約書に関するよくある質問(FAQ)
雇用契約書に関する疑問は多岐にわたります。ここでは、多くの人が抱く疑問の中から、特に重要な3つの質問に焦点を当てて解説します。
雇用契約書の保存期間について
企業にとって雇用契約書は、労働基準法で保存が義務付けられている重要な書類です。従業員を雇用している企業は、この書類を適切に管理しなければなりません。
2020年4月の労働基準法改正により、雇用契約書を含む労働関係に関する重要な記録の保存期間は5年となりました。ただし、当面の間は経過措置として3年となっています。
この変更は、賃金債権の消滅時効が2年から5年に延長されたことと関連しており、労働者保護の観点から企業に長期的な記録管理を求めるものです。労働者側からすれば、万が一トラブルが生じた際に、過去の雇用条件を証明するための証拠が長く保存されることになり、より安心して働くことができると言えるでしょう。
電子契約のメリットと注意点
近年、雇用契約の電子化が急速に進んでいます。電子契約には、以下のような多くのメリットがあります。
- 業務効率化: 契約書の作成から締結、管理までの一連のプロセスをデジタル化し、大幅な時間短縮とコスト削減が可能です。
- 省スペース化: 紙媒体の契約書を保管する必要がなくなり、物理的な保管スペースが不要になります。
- 印紙税不要: 電子契約は印紙税法上の課税文書に該当しないため、収入印紙代が節約できます。
一方で、電子契約には注意点もあります。特に重要なのは、本人確認の徹底と、データの真実性・見読性・検索性を確保できる状態での保存です。電子署名やタイムスタンプを利用することで、契約書の改ざん防止と非改ざん性の証明が可能になり、法的な有効性を担保できます。企業が電子契約を導入する際は、これらの要件を満たすシステムを選定し、適切な運用を行うことが不可欠です。
副業と雇用契約の関係
近年、働き方の多様化に伴い、副業を認める企業が増加しています。参考情報によれば、「2025年の調査では、副業実施率、企業の副業容認率・受入率が過去最高を記録」しており、副業はもはや特別な働き方ではなくなっています。また、「副業の時給は平均3,617円、中央値2,083円」というデータも示されており、経済的なメリットも大きいことがうかがえます。
しかし、副業を行う際には、現在の雇用契約や就業規則を必ず確認することが重要です。多くの企業では、副業を許可制としているか、あるいは競業避止義務や秘密保持義務といった規定を設けている場合があります。
許可なく副業を行った場合や、本業の業務に支障をきたすような副業を行った場合、企業の就業規則に違反し、懲戒処分や解雇の対象となる可能性もあります。副業を検討する際は、必ず事前に会社への報告・相談を行い、ルールを遵守した上で、計画的に取り組むようにしましょう。
まとめ
よくある質問
Q: 雇用契約書の更新はいつまでに通知されますか?
A: 一般的に、雇用契約の更新時期の1ヶ月前(30日前)までに通知されることが多いです。ただし、契約内容や就業規則によって異なる場合があるため、ご自身の契約書を確認することが重要です。
Q: 1年更新の雇用契約書の場合、更新されないことはありますか?
A: はい、1年更新の雇用契約書であっても、契約期間満了時に更新されない(契約終了となる)可能性はあります。更新にあたっては、企業側が契約継続の意思を確認し、必要に応じて更新の手続きを行います。
Q: 雇用契約書で「3ヶ月更新」とはどういう意味ですか?
A: 「3ヶ月更新」とは、雇用契約が3ヶ月ごとに更新されることを意味します。これは、契約期間が比較的短く、状況に応じて契約内容の見直しや更新の判断が行われる場合に見られます。
Q: 週20時間未満で働く場合、雇用契約書はどのように締結されますか?
A: 週20時間未満で働く場合でも、原則として雇用契約書の締結が必要です。契約期間、業務内容、賃金、就業場所などが明記されます。社会保険の適用有無にも関わるため、内容をしっかり確認しましょう。
Q: 内定を辞退したいのですが、雇用契約書にサインしてしまった場合はどうすれば良いですか?
A: 雇用契約書にサインしてしまった場合でも、内定辞退は可能です。速やかに書面(メールや郵送など)で企業に連絡し、辞退の意思を明確に伝えましょう。ただし、契約内容によっては違約金が発生する可能性もゼロではありません。まずは企業に相談することが重要です。
