オフィス回帰の最新動向：日本とアメリカの統計データから読み解く

オフィス回帰の現状：世界的な統計データから見るトレンド

リモートワーク定着の背景とオフィス回帰の兆し

コロナ禍を機に、多くの企業でリモートワークやハイブリッドワークが急速に普及し、私たちの働き方は大きく変化しました。オフィスに出社しない働き方が一般化する中で、場所や時間に縛られない柔軟な働き方が従業員に定着しつつあります。しかし、近年、特にアメリカの大手企業を中心にオフィスへの回帰を促す動き、いわゆる「オフィス回帰（RTO: Return To Office）」が顕著になり、企業と従業員の間で理想とする働き方に対するギャップが表面化しています。

KPMGが2024年に実施した調査では、米大手企業のCEOの79%が「今後3年以内に、従業員をフルタイムでオフィスに戻す」と回答しており、経営層の強いオフィス回帰志向が浮き彫りになっています。パンデミック以前の水準にはまだ達していないものの、オフィスへの出勤率は世界的に見て徐々に上昇傾向にあります。例えば、マンハッタンのデータでは、完全なフルリモートで働く人の割合は減少し、週3日出社するハイブリッドワーカーが増加していることが示されています。

この動きの背景には、企業文化の維持、チーム間の連携強化、新人研修やOJTの効率化、そして偶発的な会話による新たな気づきやイノベーションの促進といった、オフィスならではの価値が再評価されていることがあります。企業側は、生産性向上だけでなく、組織全体のエンゲージメントや創造性を高めるために、オフィス回帰が必要だと考えているようです。

ハイブリッドワークの普及とその定義

オフィス回帰の動きが進む中でも、完全なフルタイムオフィス勤務に戻るのではなく、出社とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」が主流となり、多くの企業で定着しています。2025年現在、ハイブリッドワークを導入している企業の割合は全体の65%に達しており、特に大企業では87%と非常に高い導入率を示しています。これは、企業のニーズと従業員のニーズの双方を満たす現実的な解として広く受け入れられていることを示唆しています。

ハイブリッドワークは、従業員に柔軟な働き方を許可しつつ、オフィスでの協業やコミュニケーションの機会も確保できるため、ワークライフバランスの向上と生産性の維持・向上を両立させる可能性を秘めています。従業員の理想の出社頻度に関する調査では、「週3回」が最も多いという結果が出ており、多くの人が週に数日はオフィスに出社し、残りの日をリモートワークに充てる働き方を望んでいることがわかります。

スタンフォード大学の研究では、週2日の在宅勤務を行う従業員は、週5日オフィス勤務の従業員と同等の生産性や昇進の可能性があると指摘されており、ハイブリッドワークが必ずしも生産性を低下させるわけではないというエビデンスも示されています。企業は、従業員が最も効率的に、そして満足して働ける最適なハイブリッドモデルを模索し続けています。

日米におけるオフィス回帰の動向比較

オフィス回帰の動きはグローバルなトレンドですが、その様相は国・地域によって異なります。特に日本とアメリカでは、オフィス回帰のペースやその背景に独自の文化的な要因が見られます。アメリカでは、Amazon、AT&T、JPMorgan Chase、トヨタ北米といった大手企業が、2025年初頭から週数日または週5日のオフィス勤務を義務付ける方針を打ち出し、積極的なオフィス回帰を進めています。

一方、日本のオフィス出社率は、主要先進国と比較して高い水準にあります。これは、日本の産業構成、公共交通機関が発達した都市部の通勤時間の短さ、住宅事情、そして「ハイコンテクスト文化」と呼ばれる、非言語的なコミュニケーションや場の空気を読むことを重視する文化が影響していると考えられます。オフィスでの偶発的な会話や対面での情報共有が、業務遂行上不可欠と考える傾向が根強いのです。

日本の2024年度の雇用型テレワーカーの割合は24.6%で安定的に推移しており、テレワークの継続意向は男女ともに高いものの、欧米のようにほぼフルリモートが一般化するまでには至らないと予測されています。しかし、日本でもLINEヤフーがフルリモート勤務を廃止し、原則週1回または月1回の出社を求めるなど、オフィス回帰を推進する企業も現れています。日米ともにハイブリッドワークが主流である点は共通していますが、その「ハイブリッド度合い」には明確な違いが見られるのが現状です。

アメリカのオフィス回帰：頭打ちの背景と示唆

大手企業によるオフィス回帰義務化の波

アメリカでは、パンデミック収束後、特にテック業界や金融業界の大手企業を中心に、従業員に対しオフィスへの出社を義務付ける動きが顕著になっています。例えば、Amazon、AT&T、JPMorgan Chase、トヨタ北米などが、具体的な出社日数を定めたポリシーを発表し、2025年初頭から週数日、あるいは週5日のオフィス勤務を求めるケースが増加しています。これらの企業は、オフィス勤務のメリットを再認識し、積極的な経営戦略としてオフィス回帰を推進しています。

企業がオフィス回帰を強く推し進める背景には、いくつかの重要な理由があります。一つは「企業文化の維持」です。リモートワーク下では、企業理念や価値観の浸透が難しくなると考えられています。また、「チーム間の連携強化」も大きな理由です。対面でのコミュニケーションは、アイデアの交換や課題解決のスピードを向上させ、偶発的な会話から生まれるイノベーションの機会も創出します。

さらに、「新人研修やOJTの効率化」も挙げられます。新入社員のオンボーディングやスキルアップは、上司や先輩社員との直接的なやり取りを通じてより効果的に行われます。これらのメリットを最大化するため、多くの米大手企業のCEOが従業員のオフィス回帰を強く志向しており、KPMGの2024年の調査では、その傾向が明確に示されています。

従業員のニーズと企業戦略のギャップ

企業のオフィス回帰への強い意向に対し、従業員側のニーズは必ずしも一致しているわけではありません。リモートワークやハイブリッドワークを経験した多くの従業員は、通勤時間からの解放、ワークライフバランスの向上、そして柔軟な働き方による生産性の向上といったメリットを実感しています。このため、フルリモートワークができる仕事へのニーズは依然として高く、求人サイトでは「フルリモート」の検索割合が増加していることが示されています。

この企業と従業員の間のギャップは、人材獲得や離職率に影響を与える可能性があります。オフィス回帰を強く求める企業は、柔軟な働き方を希望する優秀な人材を失うリスクに直面するかもしれません。一方で、フルリモートワークを維持する企業は、より広範囲から人材を確保できるというメリットを享受できます。

しかし、パンデミック以前の「完全なオフィス回帰」ではなく、ハイブリッドワークが主流となっていることも事実です。マンハッタンにおけるオフィス出勤率の動向を見ても、完全なフルリモートの割合は減少し、週3日程度の出社を選択する従業員が増加しています。これは、従業員もまた、リモートワークのメリットを享受しつつ、オフィスでの協業の価値も認識していることを示唆しており、企業は双方のニーズのバランスをとる難しい舵取りを迫られています。

オフィス出社率の現状と今後の推移

アメリカにおけるオフィスへの出勤率は、パンデミックによる大幅な落ち込みから徐々に回復し、パンデミック以前の水準へと戻りつつあります。しかし、この回復は「完全なオフィス回帰」ではなく、ハイブリッドワークモデルへの移行として捉えるべきでしょう。データが示す通り、週に数日のオフィス勤務が多くの企業で新しい標準となっています。

労働政策研究・研修機構が2025年3月に発表したアメリカの在宅勤務に関するデータでも、リモートワークの実施率は高水準を維持しつつ、オフィスへの出社と組み合わせたハイブリッド型が最も一般的な働き方として定着していることが示されています。これは、企業がオフィス勤務のメリットを再評価しつつも、従業員の柔軟な働き方へのニーズを完全に無視できないという現実を反映しています。

今後の推移としては、オフィス出勤率がパンデミック以前の100%に戻る可能性は低いと見られています。企業は、オフィス環境の再設計（コラボレーションスペースの拡充、ABWの導入など）を通じて、従業員がオフィスに来る「価値」を高めることに注力するでしょう。オフィスは単なる作業場所ではなく、チームビルディング、偶発的な交流、企業文化の醸成といった、リモートでは代替しにくい機能に特化した場所へと変化していくと予測されます。

日本のオフィス回帰：独自の動きと将来予測

高水準の出社率を支える日本的要因

日本のオフィス出社率は、欧米主要先進国と比較して高い水準を維持しています。この背景には、日本特有の文化的・社会的要因が深く関わっています。まず、日本の産業構成では、製造業やサービス業など、オフィスでの対面業務が不可欠な業種が依然として大きな割合を占めています。また、東京都心部のような大都市では公共交通機関が発達しており、通勤時間が欧米ほど負担にならないケースが多いことも一因です。

さらに、「ハイコンテクスト文化」と呼ばれる、言葉にせずとも意図を察し合うことを重んじる文化も影響しています。非言語的なコミュニケーションや場の空気感を共有することが、業務の円滑な遂行やチームビルディングにおいて重要視される傾向が強いため、オフィスでの対面コミュニケーションが不可欠と考える企業や従業員が少なくありません。これにより、偶発的な情報交換や連携が生まれやすく、イノベーションにも繋がりやすいと認識されています。

住宅事情も無関係ではありません。欧米と比較して日本の住宅環境は、リモートワークに特化したスペースを確保しにくい場合が多く、自宅よりもオフィスの方が集中できるという従業員の声も聞かれます。これらの複合的な要因が、日本のオフィス出社率を高く保つ基盤となっているのです。

日本のハイブリッドワークの実態と従業員の希望

日本の企業でもハイブリッドワークは着実に浸透しています。2024年度の日本の雇用型テレワーカーの割合は24.6%で安定的に推移しており、多くの企業がリモートと出社を組み合わせた働き方を導入しています。特に大企業においては、ハイブリッドワーク導入企業の割合が87%に達しており、柔軟な働き方への対応が進んでいることが見て取れます。

従業員の理想の働き方としては、柔軟性を求める声が依然として強く、 Job総研の「2025年 出社に関する実態調査」によると、従業員が希望する出社頻度で「週3回」が最も多いという結果が出ています。また、テレワーク継続意向も男女ともに高く、働き方の選択肢としてリモートワークが従業員にとって重要な要素となっていることがうかがえます。しかし、今後の実施希望頻度としては「週2日」が最も多いというデータもあり、完全なリモートよりも、週に数日はオフィスに出るバランスの取れた働き方を求める傾向が強いことがわかります。

企業側も、生産性向上だけでなく、従業員エンゲージメントの維持や人材確保の観点から、ハイブリッドワークの導入を進めています。オフィス勤務のメリット（コミュニケーション活性化、文化浸透）と、リモートワークのメリット（ワークライフバランス、採用の多様化）を両立させることが、日本企業にとっての喫緊の課題となっています。

フルリモート廃止の動きと企業文化の再構築

日本の企業においても、アメリカ同様、一部でフルリモート勤務を廃止し、オフィスへの出社を求める動きが見られます。例えば、LINEヤフーはフルリモート勤務を廃止し、原則週1回または月1回の出社を求める方針に転換しました。これは、従業員のコミュニケーション不足や企業文化の希薄化への懸念が背景にあると考えられます。

企業側は、オフィスでの偶発的な会話やチーム間の連携を通じて、イノベーションが生まれやすくなるというオフィス勤務のメリットを再評価しています。特に、新入社員の育成やOJT、企業理念の浸透といった面で、対面でのコミュニケーションが不可欠であると考える企業が多いようです。こうした動きは、企業が組織全体の生産性や競争力を高めるために、どのような働き方が最適かを見極めようとする試みと言えるでしょう。

しかし、従業員の柔軟な働き方へのニーズは根強く、特に「フルリモート」ができる求人への関心は高止まりしています。企業は、オフィス回帰を進める一方で、従業員のニーズとのバランスをどう取るかという課題に直面しています。今後は、オフィスを単なる作業スペースとしてではなく、コラボレーションや企業文化醸成のための「ハブ」として再定義し、従業員が自らオフィスに来たくなるような魅力的な環境を整備することが、企業文化を再構築する上で重要となるでしょう。

オフィス回帰が企業に与える影響と注目すべき銘柄

生産性、企業文化、イノベーションへの影響

オフィス回帰の動きは、企業の生産性、企業文化、そしてイノベーションに多岐にわたる影響を及ぼします。オフィス勤務の最大のメリットの一つは、対面でのコミュニケーションの活性化です。これにより、チーム間の連携が深まり、偶発的な会話から新しいアイデアが生まれたり、問題解決が迅速に行われたりする機会が増加します。企業文化の維持や浸透においても、オフィスでの共同体験や非公式な交流は不可欠とされています。特に、新入社員のオンボーディングやOJTにおいては、メンターとの直接的なやり取りが学習効果を高めると考えられます。

一方で、リモートワークも生産性向上に寄与する側面があります。通勤時間の削減は従業員の集中時間を増やし、ワークライフバランスの改善はエンゲージメント向上につながります。スタンフォード大学の研究では、週2日の在宅勤務が週5日オフィス勤務と同等の生産性や昇進の可能性があると指摘されており、柔軟な働き方が必ずしも生産性を低下させるわけではないことが示されています。

企業は、オフィス勤務とリモートワークの双方のメリットを最大化する最適なバランスを見つける必要があります。これは、各企業の業種、規模、組織文化によって異なるため、一概に「これ」という答えはありません。ハイブリッドワークの導入によって、従業員の柔軟な働き方へのニーズに応えつつ、オフィスでのコラボレーション機会も確保するという、両者の良いとこ取りを目指す企業が増えています。

オフィス不動産市場の変化と企業戦略

オフィス回帰の動きは、オフィス不動産市場に大きな変化をもたらしています。一時的に空室率が上昇したり、賃料に下落圧力がかかったりした市場もありましたが、オフィス回帰のトレンドが強まることで、需要の回復が見込まれます。しかし、パンデミック以前のオフィス需要がそのまま戻るわけではなく、企業はオフィススペースのあり方を再検討しています。

多くの企業が目指すのは、単なる「場所」としてのオフィスから、コラボレーションとコミュニケーションを促進する「ハブ」としてのオフィスへの転換です。具体的には、個人作業用のデスクスペースを減らし、会議室や共有スペース、ラウンジなどのコラボレーション空間を拡充する動きが見られます。また、ABW（Activity Based Working）のような、目的に応じて働く場所を選べるオフィスデザインも注目されています。

この変化は、企業の不動産戦略にも影響を与えます。広すぎるオフィスを縮小する動きがある一方で、従業員が「来たくなる」ような魅力的なオフィス環境への投資を増やす企業もあります。立地条件だけでなく、オフィスビルの設備やサービス、サステナビリティへの配慮なども、企業がオフィスを選ぶ際の重要な要素となるでしょう。オフィス不動産市場は、単なる面積の増減だけでなく、質の変化という新たな局面を迎えています。

オフィス回帰関連で注目すべき銘柄

オフィス回帰のトレンドは、特定の産業や企業に新たなビジネスチャンスをもたらします。以下に、オフィス回帰が本格化する中で注目される可能性のある分野と、関連する企業の一般的なカテゴリを挙げます。（※個別の銘柄推奨ではなく、投資は自己責任でお願いします。）

• オフィス家具メーカー: オフィス環境の再設計に伴い、コラボレーションスペースに適した家具や、集中力を高めるための機能性家具の需要が増加します。例えば、オカムラ、イトーキなどの企業が該当します。
• オフィスビル開発・賃貸事業者: 質の高いオフィスビルや、新しい働き方に対応したオフィススペースを提供する不動産ディベロッパーや賃貸事業者が注目されます。三井不動産、三菱地所などが挙げられます。
• セキュリティソリューション企業: オフィスとリモートのハイブリッド環境では、物理的なセキュリティとサイバーセキュリティの両面で新たな課題が生じます。入退室管理システム、監視カメラ、そしてデータ保護やネットワークセキュリティを提供する企業が重要になります。
• コラボレーションツール開発企業: オフィスにいる従業員とリモートの従業員が円滑にコミュニケーションを取るためのビデオ会議システム、プロジェクト管理ツール、デジタルホワイトボードなどを提供する企業。
• 施設管理・清掃サービス: オフィスへの出社が増えることで、ビルのメンテナンス、清掃、衛生管理といったサービス需要が高まります。ビルメンテナンスを専門とする企業や、オフィス向け清掃サービスを提供する企業が恩恵を受ける可能性があります。

これらの分野の企業は、オフィス回帰の流れの中で、企業の働き方改革をサポートし、その需要を取り込むことで成長する可能性があります。

今後のオフィス回帰の展望と働き方の未来

ハイブリッドワークの進化と多様化

オフィス回帰の動きが進む一方で、今後の働き方の中心は、引き続きハイブリッドワークになると予測されています。パンデミックが終息しても、従業員の柔軟な働き方へのニーズは根強く、企業もまたリモートワークがもたらすメリット（人材獲得の多様化、コスト削減など）を完全に放棄することはありません。むしろ、ハイブリッドワークは今後さらに進化し、各企業やチームの特性に合わせた多様なモデルが生まれていくでしょう。

具体的には、週に2〜3日出社する「週数日出社型」が一般的になる一方で、職種によっては「月数日出社型」や、特定のプロジェクト期間のみ出社を求める「プロジェクトベース型」など、より柔軟なハイブリッドモデルが採用される可能性もあります。都市部のオフィスワーカーの過半数が、何らかのリモート勤務を経験する働き方が定着し、働く場所の選択肢がより広がることで、従業員のエンゲージメントと生産性の向上が期待されます。

企業は、従業員がオフィスに来る「価値」を最大化するために、オフィスの役割を再定義します。オフィスは単なる作業場所ではなく、チームビルディング、偶発的な交流、企業文化の醸成、そしてイノベーション創出のための「ハブ」としての機能が強化されるでしょう。これにより、従業員はオフィスでの時間をより有意義なものとして捉え、自ら積極的に出社を選択するようになるかもしれません。

企業と従業員のニーズのすり合わせ

オフィス回帰の動きと、従業員の柔軟な働き方へのニーズの間には、依然としてギャップが存在します。求人サイトにおける「フルリモート」の検索割合が高いことからもわかるように、従業員はワークライフバランスを重視し、リモートワークができる仕事への関心が根強く残っています。企業側は、コミュニケーションの活性化や企業文化の維持といったオフィス勤務のメリットを再評価する一方、従業員の柔軟な働き方へのニーズに応える必要があります。

このギャップを埋めるためには、企業と従業員の間で丁寧な対話と、相互理解に基づいた柔軟な制度設計が不可欠です。一方的なオフィス回帰の強制は、従業員のモチベーション低下や離職につながるリスクがあるため、企業は従業員の意見に耳を傾け、彼らが最もパフォーマンスを発揮できる環境を共に模索する必要があります。

従業員エンゲージメントの維持と生産性向上を両立させるためには、単に「出社」か「リモート」かの二者択一ではなく、それぞれの働き方のメリットを組み合わせた、より洗練されたハイブリッドモデルの導入が求められます。また、オフィスとリモートの従業員が平等に情報にアクセスし、コラボレーションできるようなツールの活用や文化の醸成も重要となるでしょう。

日本の働き方の独自性と国際比較

日本におけるオフィス回帰の展望は、欧米とは異なる独自の動きを見せると予測されます。前述の通り、日本の産業構成、通勤時間、住宅事情、そして「ハイコンテクスト文化」といった要因が、欧米のようにほぼフルリモートが一般化するまでには至らず、ハイブリッドワークが中心となる働き方を強く後押ししています。

労働政策研究・研修機構のデータや各種調査からも、日本のテレワーカーの割合は安定的に推移しており、テレワークの継続意向は高いものの、週2〜3日程度の出社を希望する層が最も多いことが示されています。これは、日本人がオフィスでの対面コミュニケーションや、チームの一員としての連帯感を重視する傾向にあることを反映していると言えるでしょう。

将来的には、日本独自の文化や社会構造に適応した、より洗練されたハイブリッドワークモデルが定着していくと考えられます。欧米のトレンドを参考にしつつも、日本の企業文化や従業員のニーズに合わせた柔軟な働き方が模索され、それが日本の競争力向上にも繋がる可能性があります。オフィス回帰は、単に元の働き方に戻るのではなく、より良い働き方を見つけるための進化のプロセスであり、日本はその中で独自の働き方の未来を築いていくことでしょう。